日本財団 図書館


笹川 陽平 日本財団理事長からのご祝辞
 
 社会貢献支援財団はちょうど設立30周年ということでございます。この財団は「日本顕彰会」として笹川良一が設立したものです。設立の趣旨は「これからの日本は経済で栄え、精神的なもので滅んでいく国になる。日本の国の良き伝統、良き習わし、良き習慣を通じて、それぞれの場所でそれぞれの能力に応じて、社会のために黙々と働いている方々を激励することによって、古来から持っている日本人の良さを発揮し、単にお金だけではない心豊かな日本国を国民が作っていかねばならない」というものでございました。
 残念ながら、創設者の見通しが若干当たっているように思う昨今でございます。日本国は、自分の与えられた範囲で、自分の家族、身の回りの人、地域の人々のために何か事をするのが当然の社会でございました。ところがご承知のように、グローバリゼーションという名の下、私たち日本人が古来から持っていたそのような良き習わしが失われ、ともすれば皆様方のような献身的なお働きをする人が大変少なくなってきたのは憂うべきことでございます。しかし、本日表彰された方の中には若い青年もいらっしゃいます。決して我が日本国の将来は悲観すべきものではないと思います。
 我々はともすれば日本国のあり方を批判し、あるいは政治家を批判し、さまざまな人を批判する事で、何か事を処したような気持ちになってしまいがちです。しかし、黙々として自分たちの与えられた範囲の中で、世のため人のために行いを為すことが自然の行為である、そういうDNAを私たち日本人は持っているわけでございます。
 受賞者の皆様方の長年の労苦に、心から感謝申し上げたいと思います。その労苦に報いるというには些少ではございますけれども、社会貢献支援財団が表彰させていただくということは、世の中の見えないところで日々ご努力なさっている方々を、見ている人もいるのだということの結果の一つと存じます。
 どうか皆様方には、引き続きましてのお働きをお願いしたいと思います。同時に一人でも多くの国民が、自分の与えられた範囲でできる善行を皆様方のようにしてくだされば、多少経済が落ち込んでも、平和で精神的に豊かな素晴らしい国ができあがると、私は確信致しております。ご受賞なさった皆様方、本当に長い間ありがとうございました。
 
30年のあゆみ
 
 社会貢献支援財団は、昭和46(1971)年5月1日に設立されました。
 設立時の名称は「財団法人競艇記念日本顕彰会」。これは昭和26年のモーターボート競走法制定から20周年であることを記念して設立されたことによります。財団の基礎である基本財産は、財団法人日本船舶振興会(日本財団)から2億円の拠出を受けました。初代会長には、振興会会長だった笹川良一氏が就任しました。
 設立の趣旨について、昭和55年に創立10周年を記念して作成された「財団法人日本顕彰会の概要」から引用してみましょう。「よりよき社会を建設し、明るい日本の未来をひらくこと、これは私達のひとしく希求するところであります。
 そしてこれが達成は国民一人一人の努力にまつべきものであることは言うまでもないのでありますが、なかでも一生を環境のきびしい職場に捧げた人、自らの危難を顧みず海難その他の事故や災害の救難にあたった人、人間の幸福のためきわめで有益な発明をした人など犠牲的精神、努力、創意工夫によって専心社会に尽した人々の功績は誠にはかり知れないものがあります。これらの人々に感謝の意を表わし、その功労に報いることはわれわれ国民として当然なさねばならないことと信ずるのであります。」
 文章からは「高度成長期の日本」が感じられます。また、競艇事業は運輸交通との関わりが深いためもあり、海難救助のことが取り上げられています。このように、日本の未来や社会のために尽した人に報いるということが、設立時の姿勢でした。
 7ヶ月後の昭和47(1972)年2月16日、名称は「財団法人日本顕彰会」に変更されます。
この年から現在に至るまで、当財団は社会貢献者表彰を毎年行っています。
 当時の社会貢献者表彰は、公益法人などの「推薦団体」から推薦をいただくという形式でした。受賞者の数も、200名から、多いときには700名近くに上っていました。また、僻地施設の慰問や、表彰受賞者の社会貢献事業に対しての物品の協力援助などの事業も行われていました。
 平成7年には笹川会長が亡くなられ、設立当初から副会長を務めていた堀武夫氏が会長に就任しました。事業の方向性に大きな変化が起きたのは平成11年です。推薦団体からの候補者に加え、一般からの推薦を受けつけるように、この年から制度が変更され、受賞者の数も30人前後となりました。また副賞として日本財団賞(賞金100万円)が贈られることとなり、表彰選考委員会のメンバーも一新されました。この年、三代目会長に樋口廣太郎氏が就任しました。
 平成12年には、それまでの第一部門「緊急時の功績」第二部門「多年にわたる功労」に加え、第三部門「特定分野の功績」が設けられました。テーマごとの社会貢献者への表彰を行なうもので、「国際貢献賞」「ハッピーファミリー賞」「21世紀若者賞」が新設され、13年からは「海の貢献賞」が加わりました。
 そして平成13年8月27日に設立30周年を機に、名称が社会貢献支援財団に変更されました。当財団は今後、表彰事業を中核に、幅広く社会貢献支援に取り組んでいく予定です。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION