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石井 謙治(大6.5.29生)
 東京都世田谷区
 日本における和船研究の乏しさを憂い昭和30年より和船研究を始め、日本海事史学会や多くの博物館の設立に参画、その運営に尽力すると共に、研究論文を次々と発表し、現在では和船研究の第一人者として後進の指導にも精力を傾けている。
(推薦者 神山榮一)
 
Kenji Ishii
(Born on May 29,1917)
Resident of Setagaya-ku. Tokyo
Apprehensive that the study of traditional Japanese vessels was rapidly fading into obscurity, Ishii began to revive the field in 1955. Over the years he has helped establish, organize, and run the Japan Maritime History Association, as well as a number of maritime museums throughout the country. He has also published a number of research reports, and nowadays he energetically mentors younger researchers in the hopes that they will succeed him as leading experts in the study on Japanese style vessels.
Recommended by Eiichi Kamiyama.
 
 欧米諸国では船の建造史が多くの学者によって継続的に研究され、関係書籍も多数ある。ところが、わが国は海洋国を自認しながら、日本へのあらゆる文化の導入に貴重な足として使われた日本船(いわゆる和船)に関する資料が乏しく、また、数少ない専門書も問題とされる記述が散見されると言われている。とくに明治政府の船舶の西欧化政策によって脆弱で低性能な和船という誤った評価が定着し、和船研究が大きく遅れた原因ともなった。
 石井さんは、そんな和船研究の状況を憂い、専門外ながら昭和30年頃から全国を回り、船匠の古伝書(木割書、設計図、建造記録など)の調査、収集に乗り出した。
 昭和32年に石井さんが執筆した「日本の船」(東京創元社)は、中世の絵画資料なども駆使して日本船舶史を技術者の目で体系的に叙述した好著として柳田国男、小林秀雄らにも絶賛され、中世和船研究の金字塔とされている。
 昭和38年には、日本海事史学会の設立に主体的に参画(のちに石井さんは第三代会長に就任)。学会創立後は会の運営に尽力すると同時に、会誌「海事誌研究」に「伊達政宗の遣唐使節の船型について」「巨船安宅丸の研究」「菱垣改善の菱垣について」など注目すべき研究論文を次々と発表してきた。
 国立歴史民俗博物館、船の科学館、横浜海洋科学博物館、帆船日本丸記念財団、横浜マリタイムミュージアムなどの創設・運営にも尽力したのを始め、各地の博物館の和船模型の展示や和船資料の調査鑑定は石井さんに負うところが多く、現代和船研究の第一人者と言われている。
 東京両国の江戸東京博物館や千葉県佐倉の歴史民俗博物館をはじめ各地の県立博物館に展示されている和船の模型の多くは、石井さんの指導により多くの収集資料に従って復元されたものである。後進の指導にも力を注ぎ多くの俊秀が氏のもとから巣立っている。
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現物が少ないため船大工の作った模型は貴重な資料
受賞の言葉
 昭和30年以来、日本造船技術史を研究し、特に江戸時代の廻船と軍船の技術史料を博捜して、その実態を明らかにできました。その結果をもとに船の科学館はじめ各地の博物館の展示模型の製作などを監修してきましたが、今後も和船技術の再確認に寄与したいと思います。








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