日本財団 図書館


虐待とは
 「児童虐待の防止等に関する法律」では次のように定義しています。
 
(児童虐待の定義)
 第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。)に対し次に掲げる行為をすることをいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること
四 児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと
 
 (一)は「身体的虐待」、(二)は「性的虐待」、(三)は「ネグレスト(怠慢、無視、放置)」、(四)は「心理的虐待」と言われています。
 この法律の第三条では「何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。」と児童に関する虐待を禁止し、第六条では「児童虐待を受けた児童を発見した者は、速やかに、これを児童福祉法第二十五条の規定により通告しなければならない。」と、児童相談所または福祉事務所への通告を行うとされています。
z0001_18.jpg
 虐待の具体的内容は厚生労働省の解説では、以下のようになっています。
 
身体的虐待
打撲傷、あざ(内出血)、骨折、頭部外傷、たばこによる火傷など明らかな障害を生じさせる行為
首を絞める、殴る、蹴る、投げ落とす、熱湯をかける、布団蒸しにする、溺れさせる、逆さ吊りにする、異物を飲ませる、冬戸外に閉め出す、縄などにより身体的に拘束するなどの外傷を生じさせるおそれのある行為
 
 明らかな外傷による目に見える虐待と、外傷ができるおそれのある虐待とに分けて例示しています。これに類する虐待では、乳幼児を揺さぶることによって頭蓋内に出血を起こす「揺さぶられっ子症候群」があります。全部が虐待によるわけではありませんが、泣きやまないときにカッとなって胴体をつかんで揺さぶって起こる場合があります。
 2歳未満に発症し、特に乳児期は脳と脳を包む膜との間の結合が緩いのでその間の血管が切れて頭蓋内出血を起こしやすく、注意が必要です。
 
性的虐待
子どもへの性交、性的暴力、性的行為の強要・教唆など
性器や性交を見せる
ポルノグラフィーの被写体などに子どもを強要する
 
 性的虐待は子どもの心への傷が大きいとされており、虐待事例としての報告は学童期高学年以降に多くみられます。わが国ではまだまだ取り組みが不十分で、平成12年の相談件数では虐待されている子どものうち3.7%ですが、アメリカでは10%を占めています。
z0001_19.jpg
ネグレクト
子どもの健康・安全への配慮を怠っているなど
子どもに対して継続的に無視し続けるなど子どもにとって必要な情緒的欲求に応えていない(愛情遮断など)
食事、衣服、住居などの極端な不適切で、健康状態を損なうほどの無関心・怠慢など
 
 ネグレクトは、子どもにとって必要なことがなされない虐待であるともいえます。体に暴力をふるわれないので、虐待ではない、またあっても軽いと考えられがちですが、実際には関わりが薄いために子どもは見捨てられたという思いを持ち、自尊心が低いなどの人格形成にも重大な影響を及ぼします。
 これに類して古くから母性剥奪症候群といって、適切な養育が受けられないために身体発育が不良であったり、知的発達の遅れ、表情の乏しさなどがみられるものもあります。
 また、子どもの健康に配慮を怠るものに、メディカル・ネグレクトと呼ばれている、医療が必要な病気があるのに治療を受けさせない虐待があります。
 
心理的虐待
言葉による脅かし、脅迫など
子どもを無視したり、拒否的な態度を示すことなど
子どもの心を傷つけることを繰り返し言う
子どもの自尊心を傷つけるような言動など
他の兄弟と著しく差別的な扱いをする
 
 心理的虐待は単独の虐待もありますが、他の虐待と合併して多く起こります。
 身体的虐待、ネグレクト、性的虐待、心理的虐待のいずれも、複合して起こることがよくあります。子どもをたたきながら、「おまえは生まれてこなければよかった」「何をやってもどうしようもない子だ」と言ったり、ぼろぼろの服を着せられているがほかの兄弟はきれいな服で、はっきり待遇を差別しているというように複合して起こることがしばしばみられます。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION