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第2分科会
2日目 午後の部 第二分科会
 「これからの作業所運営〜小規模授産施設への移行〜」
「これからの作業所運営〜小規模通所授産施設への移行〜」
「社会福祉基礎構造改革と作業所運営の課題」
ワークショップメンバーズ
吉塚 晴夫
 
1. 社会福祉基礎構造改革がもたらす作業所への影響
(1) 「措置」から「契約」への転換が意味するもの
〔厚生省による説明〕
 社会福祉基礎構造改革…
○ 社会福祉事業、社会福祉法人、措置制度など社会福祉の共通基盤制度について、今後増大・多様化が見込まれる国民の福祉への要求に対応するための改革
○ 介護保険制度の円滑な実施や成年後見制度の補完、地方分権の推進、社会福祉法人による不祥事の防止などに資するもの
 措置制度…行政が行政処分によりサービス内容を決定
 利用制度…利用者が事業者と対等な関係に基づきサービスを選択
《これからの社会福祉サービス利用の考え方》
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〔社会福祉事業における公的責任の所在の変化〕
 公的責任のあり方が《実施責任→監督責任》に
 ⇒実施主体の多様化の促進、事業運営に対する規制緩和等、実施しやすい環境整備
 
〔「選択制」の条件〕
 ・サービスを選択できる状態というのは、供給されるサービスの総量が需要を上回っていること。 …福祉サービスが供給過剰の状態
 ※現状は、言ってみれば「配給制」の福祉
 ・必要以上のサービス量の創出と、選択にあたっての十分な情報提供の体制の整備
 ・福祉サービスの特質(利用者は相対的に弱い立場にあるということ)から、
 その利用にあたっての権利擁護体制についての格段の整備
 
(2) 地域福祉の拡充における作業所への期待
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≪小規模作業所(共同作業所)が小規模通所授産施設へ移行するための条件≫
[1]小規模授産施設としての土地建物を所有しているか、または国、地方公共団体からの貸与、または、民間の賃借による場合は資産として100万円(現金、確実な有価証券、不動産)を所有している。
[2]公的補助を受けての事業実績が5年以上である。(NPO法人の場合は3年以上)。
[3]施設の面積についての基準はないが、作業室または作業場、静養室、食堂(またはと兼用可)、洗面所、便所、があること。
[4]利用者数が10名以上19名以下であること。(支障がなければ、20名以上も可)。
[5]施設長1名、精神保険福祉士・作業療法士・社会復帰指導員2名以上(施設長兼務可)がいること。内、1名は常勤であること。
※[2]については、補助年数の実績のみの問題なので、時間が解決すること。また、同一法人で小規模通所授産施設を複数運営しようとする場合は、その内の1ヶ所について実績年数がクリアできていればよい。
※[3][4][5]についても、多くの作業所でクリアできる水準で、解決も可能。
※問題になるのは、[1]。
⇒資産以外の条件は、多くの作業所では大きな問題にはならない。
 小規模通所授産施設は「小さな授産施設」ではない。
 今までどおりの「作業所」が法律の裏づけを得た、ということ。
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 「この小規模授産施設は授産施設のいわゆる安い版だと私どもは理解していないのです。これは小規模作業授産施設と言いまずけれども、新しい施設体系なのだと。本当にこの小さな規模が比較的自由にいろいろな地域に芽生えていくという、一つの施設体系なものですから、あまり一般の授産施設と比べてどうだこうだということよりも、この良さをどう生かしていくか…(以下略)」
 今田 厚生省障害保健福祉部長談(公衆衛生審議会精神保健福祉部会/2000.12.11)
 
(2) 社会福祉法人化の意義と役割
・ 現状の作業所運営主体の安定化=事業運営の安定性の確保
・ 地域の核となる事業主体の設置
 
《小規模通所授産施設による社会福祉法人が実施できる事業》
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 民間社会福祉事業の核となる社会福祉法人を設立することが、制度的保障の充実と社会的認知を高めることにつながり、今後の精神障害者の地域生活支援活動の多様な展開の基盤となる。
 小規模通所授産施設への移行と、社会福祉法人の設立は、新たな活動に取り組んでいくための、とても重要な「スタートライン」。
 
3.作業所運営の課題
(1)事業の公開性・透明性がなぜ必要か
・ 補助金(公金)を主たる財源とした公益的事業であることからの必然性
・ 事業の本来的な主体は利用者であり、十分な情報提供が必要とされるということ
・ 福祉サービスの特質(利用者は相対的に弱い立場にあるということ)により、意図せぬ権利侵害の恐れをはらんでいること
 
(2)運営主体に求められるもの〜事業の社会的責務と求められる役割〜
 〔作業所の公的性格の認識〕
・ 作業所は、設立者等の私的所有物ではなく、広く社会的な財産であること
・ 補助金は、作業所を運営している団体や個人の「がんばり」に対して支払われているのではなく、事業の公的性格に根ざしてその運営の一部を財政的に担うものであること
・ ひとつひとつの作業所は、単独で存在しているのではなく、他障害の作業所も含め、多くの人々の運動と実践の蓄積の歴史の上にあり、自分たちの実践もその歴史の一翼を担っていること
 
(3)家族会活動と作業所運営の課題
 ・ 精神障害者作業所は、他障害の作業所から派生し、その後、多くは家族会により設立・運営されてきた
 
 〔家族会立作業所のパターン〕
a)家族会活動の中から自発的に生まれてきた作業所
b)保健所等の行政機関によって、家族会の名の下に(あるいは作業所運営のために家族会が結成されて)設立された作業所
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 ・ 行政の家族会への依存(行政の責任転嫁)が、家族会による作業所づくりを推し進めてきたという側面を見逃してはならない
 …長い間、家族会運営でなければ作業所への補助金を出さないという自治体が存在してきたが、これは、家族会活動の実績への評価・信頼ということの反面、家族会の持つ強い使命感や責任感を利用した「安上がり福祉」施策のあらわれという側面も持っている。
 
 「よりよい支援サービスを求める」という立場からの、作業所づくりへの参加を
 
 家族は、障害者本人とまたちがった意味で、精神障害者問題を抱える当事者。「もっとよい支援サービスを」と求めていく立場である。
 作業所づくりは、そのことを自分たち自身で実現する過程であったし、今後も、そのような支援活動に直接的に参画することはとても意義深いことである。しかし、家族(会)だけで作業所を抱え込むと、日々の活動の維持や資金づくり等の事業運営に翻弄され、本来求めていた「よりよい暮らしを」という切実な願いが埋没されていく危険をはらんでしまう。
 事業を背負わされるのではなく、家族としての体験や家族会活動の成果を、よりよい作業所づくりに反映させていくという視点、関わり方が大切。
 
4.今後の地域活動の課題
(1)小規模通所授産施設に対する国の補助基準のさらなる充実と、自治体補助の拡充
・ 国の基準額は、日本中どこにいても最低限のサービスが受けられる体制をつくるという意味で、十分な額の確保が極めて重要
 
 【平成13年度の国の補助基準額】
・ 運営費 1100万円(年額)※国1/2、都道府県1/4、市町村1/4
・ 施設整備費 2400万円(上限)※国1/2、都道府県1/4、設置者1/4
・ 設備整備費 800万円(上限)※国1/2、都道府県1/4、設置者1/4
 
・ 国基準は全国の最低基準であり、各自治体は、その地域特性に見合った基準を設定することが必要
(例えば)
 
・ 自治体の運営費基準額を国基準以上のものとすること
 (特に、現行の作業所補助基準額が既に小規模授産施設への国の補助基準額を上回っている自治体では、「(作業所から小規模通所授産施設への)移行」を魅力あるものとするだけの基準額設定が不可欠)
・ 資産確保における自治体からの支援(現金資産、不動産等の提供)
・ 家賃補助等、施設確保のための経費の助成、公的施設の無償提供
・ 利用者の通所交通費の助成
・ イブニングケアや夜間休日相談等、授産施設としての日常活動に付随されて実施される事業への経費助成
・ その他、地域の実情に照らして必要とされる経費の助成
 
(2)「無認可」として残る作業所にとっての今後の課題
・ 「小規模通所授産施設」の創設は、すべての作業所にとっての法定化とはいえない
…理念が違う、活動内容が「授産」と合わない、資産をつくれない、事業実績(年数)が足りない、人数規模要件が足りない、自治体において予算化されない、等
→移行したいができないところと移行したくないところが残る。そしてさらに今後も作業所自体が増え続ける(新設)ことも予想される。
 
〔当面の課題〕…小規模通所授産施設、作業所、双方の拡充が必要
[1] 小規模通所授産施設の拡充の視点から
・ 補助基準額のさらなる充実が図られること
・ 作業所が狭義の「作業」にとらわれない幅広い活動を展開してきたように、「授産」にとらわれない活動が大幅に認められることにより、移行の促進が図られること
・ 利用者10人未満の作業所に対し、小規模授産施設を本体とした分場方式の適用等、何らかの救済策が講じられること
・ 小規模通所授産施設における活動の充実を図るとともに、そこからさらに新たな課題を見出し、今後の施策づくりへの取組みを行っていくこと
[2] 作業所の拡充の視点から
 
 小規模通所授産施設に期待を集めるあまり、作業所の補助金の低さ、公的支援の弱さが放置されることが懸念される。作業所そのものが担ってきた活動を積極的に評価し、さらなる拡充が図られる必要がある。
 
・ 福祉的デイサービス機能に着目した、作業所活動への再評価と公的支援の拡充。さらに今後の新たな国レベルでの施策の整備
・ 現在の作業所活動総体についての概念整理と、施策の抜本的改正
・ 「施設内処遇」を軸とした従来の施設観からは見えてこなかった、「地域に支えられて存在する」「地域での暮らしを前提とする」という作業所の持つ特質に、今後の社会福祉のあり方を考える基盤があることを認識し、その支援施策の充実と、実践内容・方法についての理論化を図ること
 
(3)居宅生活支援事業、地域生活支援センター等、関連事業と作業所の課題
・ 地域生活支援センターは、1999年の精神保健福祉法改正により社会復帰施設のひとつとなり、それまでの「社会復帰施設への附置事業」から独立した施設に位置づけられることになった。従来より、運営主体は市町村または非営利法人とされているが、市町村の事業とした上で「都道府県知事の認める団体」に委託できることから、作業所等の任意団体が実施している例も増加している。
 
 「大きな施設の中の1室」という形から脱却し、地域の中につくっていくことがより求められてきている。
 …作業所のように、地域の中から生まれた活動体が、積極的にこの事業に参画していくことが大切。
 
・ また、小規模通所授産施設による社会福祉法人については、地域生活支援センターの運営ができることになる。それまで市町村からの委託事業としていたところは、社会福祉法人となることで直接的な実施主体となることができる。
・ グループホームに関しても、小規模通所授産施設による社会福祉法人で運営できることになった。精神障害者の生活支援において、地域を基盤とした活動を総合的に推進していくという観点から、作業所を基盤としたグループホームづくりに加え、社会福祉法人運営によるグループホームの増設の意義は大きい。
・ ホームヘルプ事業(平成14年度〜)や地域福祉権利擁護事業(平成12年度〜)等、精神障害者の地域生活に関わる様々な事業が格段に拡充されていくことが期待されている。作業所はこれまでの実績を生かしながら、それらに積極的に参画していくことが必要である。








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