III章.啓発活動の実際
III章では、パンフレット等を利用した配布物による啓発活動の実践方法について詳しくお伝えします。また、全国精神障害者家族会連合会による全国啓発交流活動の取り組み調査のなかから、特に興味深いと思われた事例を、ヒアリングに基づき紹介します。この事例の中には、啓発活動を行っていく上でのポイントが具体的な形でつまっており、これから啓発活動を行っていこうという方にも、現に行っているがもう少し発展させたいと思っている方にも、大変参考になると思われます。
なお、啓発活動といっても幾つかのタイプがありますので、ここでは4つの啓発活動をとりあげることにしました。
一つは、地域ぐるみの活動を行っている新潟県守門村の事例です。二番目にあげるのは、数千人規模の人を集める愛媛県今治市の「くるしまフリーマーケット」、三つ目は中学校のボランティア教育と連携した、長野県佐久町のさくまち共同作業所の事例、4つめは企業の協賛を得て市民と精神障害者のウォークラリーを行っている長崎県佐世保市の事例です。いずれの活動も、創意工夫に満ちた活動となっていますので、ぜひ皆さんの活動の参考にして下さい。
1.広報資料類の制作・配布の実際
以下では、社会会復帰促進センターが実施した全国の啓発交流活動の取り組み調査資料をもとに、啓発活動の背景と内容に、具体的な広報資料類がどう効果的に関わるかを、例として家族会や作業所の日常活動を想定して整理しました。
また、上記の広報資料類について、表現効果をあげるポイントや、制作と配布作りの体制についても例をあげました。
なお、これらは主に印刷物を想定していますが、今後は、ビデオ(自主制作や公の施設での放映)やホームページでの情報や訴え、地域のケーブルテレビの利用など、具体例がいろいろ報告されてくるでしよう。
1)日常活動と広報資料類を利用した啓発活動との関わり
日常活動と啓発(ネットワーク)図1
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図1では啓発活動の背景として、精神障害者の家族会や作業所などの日常活動をAとし、精神疾患や障害に関する知識や情報を伝え、地域の人たちと連携して精神保健福祉を進めていくためのイベント活動などをBとしました。また、作業所の運営や将来の活動のための定期的な収益事業をCとし、その収益などを基盤に施設作りを目指していくPR・宣伝活動をDとしました(これは施設コンフリクトの解消を目指すという、偏見を無くしていくための活動として、主体的で戦略的な側面があります)。
基本的には、Aの日常活動の中で継続的な機関紙などを発行して地域社会の中で理解の基盤を形づくっていくこと、それに加えてB・C・Dの活動を、周辺の社会資源などとネットワークを組みながら有効に機能させていくことが、啓発活動の実際になるかと思われます。(この円の外側には国や都道府県レベルでの啓発活動の取り組みがあると考えられますが、規模が大きくなるのでここでは言及しません)
こうした活動の中で印刷物を活用していくことができるわけですが、その具体例が図1における円の外側の●で示されています。また、◎はマスコミや地方自治体への広報依頼です。以下ではそうした印刷物を利用した啓発活動の具体的な作成方法などについて紹介いたします。
A.日常活動
例:地域において、一家族会、二作業所が、協力者とともに機関紙発行や活動報告などの編集をすることを想定しました。
POINT1
発行し続けるために、編集グループを作りましょう。構成員として作業所の職員、家族会員、そしてパソコンやワープロで紙面を作ることを考え、地域の協力者を参入させることも検討しましょう。また、名簿の管理(宛名の打ち出し)を別の人に担当させるとよいでしょう。構成としては3〜5人で始めてはどうでしょうか。こうした例はあくまで理想なのですが、役割分担がされていて発行の目的が明確であれば、波が合っても数人が続けることで、マンネリを避けて魅力ある誌面が維持できる、ということです(図2)。
一人の担当者がひたすら努力し続けているのは大変なことです。負担を軽減するとともに、読者の目も意識した広がりのある紙面内容を目指すには複数人数での運営が大切です。
図2 パンフレットの制作と配布の体制(例)
・このように一応の目安で発行の号数の担当を割り振る方法もあります。
必ずしもだれもが毎号続けてできるものでもありませんから複数で関わりましょう。
POINT2
発刊の頻度はあまり無理のないスタンスで行いましよう。(月刊→隔月刊→季刊など。ただし不定期は避けましょう)
POINT3
発行し続けるためには、シンプルな紙面を作りましょう。
・少人数での発行 A4の3つ折りがお勧めです。表裏2面のみの印刷であり送料は定型のA4で約4枚まで80円です。
図3 パンフレットのサイズと封筒(例)
・大量の発行部数 第三種郵便物として認可申請をしましょう。部数・送料は悩みの種です。定期的に発行でき(最低月1回)、50gまでは15円(超えた場合は1kgまで50gごと5円増し)。認可部数や、申請への対応は都道府県の中央郵便窓口に問い合わせてください(対応にかなり差があります)。認可された場合、封筒上部の一部開封や帯封となります。
POINT4
作業所の講演会の方やボランティアを介して一般の市民にも読者層を広げることが大切です。
POINT5
・編集の実際について
□誌名 例「こころポカポカ通信」などは印象的に、くっきり目に飛び込む文字にしましよう。
□中心記事のタイトルははっきり大きく。空間をとって本文の書体以外の文字(ゴチック太字)などで。文章量のある本文記事は小見出しを必ずつけます(目安として本文500〜600文字に一つ)。記事はできるだけ少ない文字数で簡潔に。つい長くなるのが多いようです。
□記事の依頼をする場合、目的に応じた内容で、字数をはっきり伝えましよう。写真や資料を借りると記事が楽しくなります。締め切りは余裕を持って伝えることが大切です。(サバをよんでおくこと)
□案内記事や、報告の記事は、日時・場所・人名・主催・共催・連絡先をはっきり掲載すること。
□タイトル周りにイラストや漫画を入れて、ホットにしあげてみましょう。写真や図表はゆったり配置します。判別しにくい写真や表は避け、文字の大きさは7ポイント(10級)以上を維持しましょう。
B.イベント
例:地域で作業所がボランティアや商店会の協力者と実行委員会を組織し、「ハートフルまつり」のチラシやポスターを制作することを想定しました。
POINT1
まず目的(周知・募金・訴え)と企画(コンサート・運動会)を全体で確認します。
POINT2
「○○会フェスティバル」などは、もっと訴求力のある名称にしましょう。目的がわかり、気持ちの入った表現を。またタイトル文字も活字にこだわらず筆文字や、見出しの太い目立つ文字を使用しましょう。
POINT3
実行委員会で結成された毎回の企画内容を、依頼書を作って、地域の協力者(町内会長、民生委員、商店主など)に、直接手渡しで協力依頼に訪問しましょう。具体的な協力提案が得られ、共に考えていくネットワークの芽生えはここからと、心得たいものです。
POINT4
実行委員会で決定されたその都度の計画書(予算・役割分担・日程など)にそって、チラシの扱い数(町内会や組織数)、ポスター掲示可能数、チケット扱い数と担当(特に会計)を決めます。日時・場所(地図)・連絡先はいつもわかりやすくデザインしましょう。主催、共催や協力関係を忘れずに記載すること。
POINT5
チラシは特に効果が期待できます。予算が苦しいときも、チラシを工夫してだせるように努力したいものです。また、コンサートやダンスパーティーのプログラムに、お店や医療機関や法人などに協力広告を依頼するのも効果的です。
C.バザーなど
例:定期収益事業は日常の地域の協力体制が重要です。作業所や町内会の協力で市庁舎駐車場でのバザーの準備を想定しました。
POINT1
町の住民に「いつもの・・・だね」と定着した催しであることを印象付ける表現を心がけましょう。チラシなどの基本的なタイトルや色使いをシンプルに、統一しておきましよう。
POINT2
定期開催なら制作担当を決めましょう(地域のボランティアと共同で作れば楽しい)。イベントなどの取り組みと基本は一緒。ただ、マンネリに陥りやすいものです。同じメンバーの努力だけでなく、もっと多くの協力を依頼していき、新たな理解者が増えれば啓発効果ももっと期待できるでしょう。主催であれば、地域の商店や、個人の協力を依頼し、チラシにもその旨をうたって特色を出したり、季節感を演出したりするのもいいでしょう。
POINT3
公の場所を借りての定期的な取り組みなどは、むしろ市民の楽しみの場ととらえると長続きしそうです。つい作業所の運営資金作りなど当方の目的を前面に押し出しがちですが地域とのつながりの中での長いおつき合いを、まず大切にしましょう。また、学校でのバザーなども、むしろ子どもや地域のお母さんが楽しんでくれることが、大切でしょう。その内、チラシやポスターなども一緒に作ることが出来ます。
POINT4
実施後は実行委員会の反省会を早目にやりましょう。企画はどうだったか、広報チラシが分かりやすかったかなど、問題点や課題を売り上げ報告と一緒にみんなのものにしておきましょう。
D. PR・宣伝
例:地域生活支援センターを設立するために作業所が街の協力者と設立準備会を組織し、チラシや寄付金集めのパンフレット作りをすることを想定しました。
POINT1
まず目的(募金・訴え)を全体で確認しておきます。コンフリクト(施設摩擦)がおこっている場合は、対応方法の基本的な認識と、設立準備会の方針を徹底して話し合っておくことが大切です。イベントを組み合わせる場合、おまつりだけでなく、訴えをきちんと出せる企画をつくりましよう。
POINT2
この施設がなぜこのまちに必要か、精神障害者がどんな悩みや苦しみをもって暮らしているのか… 等々、市民に知って欲しいことを素直に表現するパンフレット・ポスターを目指しましょう。作業所のメンバーの意見の反映を大切にしましょう。
POINT3
パンフレットは不特定多数の市民向けであることを最前提としています。親しみやすさを全面に出してください。特に現状では精神障害と知的障害の違いを多くの市民が理解できないことが多いようです。このことを踏まえて、言葉を出来るだけ分かりやすく簡潔にする必要があります。数字やたとえが分かりやすく、効果的であるようです。
POINT4
現実の精神障害者の悩みや希望、生活を具体的に紹介することはとくに大切です。実際、コンフリクトが起きていた地域では、市民との対話の機会をチラシで知らせて、町内にチラシを戸配して参加案内をしたり、障害者の一日をマンガ入りで伝え、辛いこと嬉しかったことなど紹介している実例もあります。
POINT5
イラストや写真を入れて優しいイメージをつくりましよう。実際の作業所での活動(絵や陶器の製作や人形劇、交流の風景)をメインの絵柄にするのもいいでしよう。
POINT6
募金活動は、多くの地域協力者への実働依頼が大きく効果を左右します。施設設立委員会で、街の協力者にパンフレット上に名前を連ねてもらうために訪問し依頼するとか、パンフレットを置いてもらうような依頼文も作っておきましょう。