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観光まちづくりにつながるエコ観光、オーストラリア、クイーンズランド州の事例について
オーストラリア、クイーンズランド観光局
デイビッド・モーガンズ
 
 皆様、こんにちは。
 本日、午後になりまして、この観光まちづくりセミナーに参画できましたこと、非常な喜びと思っております。
 このようなすばらしいセミナーにご招待を受けまして、そして重要なフォーラムに参画できますこと、そして観光まちづくりの将来について話し合えますことを非常に光栄に思っております。
 本日、特に私が焦点を当てたいところですけれども、エコツーリズムが観光まちづくりにおいて指導的な役割を演じているということと、エコツーリズムがどのようにオーストラリア、クイーンズランドでもって行われているかということについてお話し申し上げたいと思います。
 特に、私の組織でありますクイーンズランドの観光局がどういうことを行っているかについてお話し申し上げたいと思います。
 クイーンズランド観光局ですけれども、クイーンズランド地方自治体のもとに、クイーンズランドの観光、開発、そしてマーケティッグを行っているわけであります。ですから、私のプレゼンテーションでは政府がどういった役割を果たしてまちづくりに対して支援をしているかということについてお話し申し上げたいと思います。
 まず初めに申し上げたいことですけれども、地域の開発におけるエコツーリズムの重要な役割について焦点をあてたいと思います。このため、まず、いくつかの重要な定義を紹介したいと思います。
 まず最初の定義ですけれども、これはいわゆるまちづくり、コミュニティー・ディベロップメントというのは何なのかということで、さまざまな定義があります。ここで選びました一つ、ホービッチ市のものであります。これは地元の人々に対して貴重な資源を管理する権限を与えるというものです。その方法は資源を持続させるだけでなく、それらの人々の社会的、文化的、経済的ニーズに合う形で管理するというものであります。この定義から特に重要な要素をここで選び出しました。この重要な要素と申しますのは、地元住民に権限を与えるということ、そして地域住民が資源を管理するということ、そしてこれらの資源を維持するということ、そして社会的、文化的、経済的なニーズに合致させるということであります。
 2番目の定義ですけれども、これも見ていかなければならないところであります。バルマさんもおっしゃったことですけれども、生態学的に持続可能な開発、発展ということであります。ESDと言われるものでありますが、これは何なのかということです。コミュニティーの資源を使用し、保全し、そして向上させる。そうすることにより生命が依存している生態学的なプロセスを維持させて、そして全体の生活の質が現在も将来も高められるということであります。今日はますますESDという言葉を聞くようになりました。特にこの3つの重要なところに関して伝えられるようになりました。この3つのところというのは、生態学的、経済的、そして社会文化的な持続可能性、これを強調しているのであります。ここでも主要なエレメントを出したいと思います。すなわちコミュニティーの資源、これを使い、保全し、向上させるということ、それから生態学的なプロセスを維持させるということ、そして生活の質を高めるということ、そして生態学的、経済的、社会文化的な持続可能性、これらが主要な用語であります。
 そして、最後に私が見ていきたい定義ですけれども、これはエコツーリズムに関しての定義であります。エコツーリズム、これは15年ほど前に初めて使われるようになりました。それからさまざまな定義が出されたわけであります。
 ここで4つの定義を私は選択いたしましたので、エコ環境とはどういうものかということを見ていきたいと思います。ヤング氏によるものであります。
 自然地域への観光、すなわちそれは環境への理解、認識、あるいは保全を促すものであり、そして文化や地域社会の安寧を維持するものである。
 2番目の定義ですけれども、これは国際エコツーリズム学会のものであります。エコツーリズムというのは自然地域への責任ある旅である。そしてそれは環境を保全し、そして地域住民の安寧を維持するものである。
 3番目の定義ですけれども、これはオーストラリアのエコツーリズム協会で使われている定義であります。生態学的な持続可能な観光であり、環境、文化的な理解、認識、保全を促進するものであります。
 最後の定義は、我々がクイーンズランドで使用しているもので州政府によって採用されているものであります。エコツーリズムというのは自然をベースにした観光であり、教育や自然環境への解釈なども意味します。そして生態学的に持続可能であるよう管理されるものであるということです。
 これらの定義を見てみますと、それぞれ主要な要素があります。エコツーリズムというのは、自然環境に非常に依存しているということ、これが第1番目です。エコツーリズムの中で自然環境というものが最も重要な要素を占めているのです。2番目は、生態学的に持続可能性があるということ、そして3番目は、自然の保全に対して貢献するべきものであると、そして4番目は、観光客は教育であるとか、その自然環境に対しての解釈を持つということ、そしてそれから文化的にも持続可能なものであること、それから地元の地域社会を維持していくこと、そして経済的に持続可能なものでなければならないということです。観光というものが全く利益をもたらし出さないということでありますと、全くコミュニティーに対しての便益をもたらさないからであります。
 最後ですけれども、どのような観光でも楽しいものでなければならない。喜びをもたらさなければならないし、そしてそれと同時にリラックスする、そういった気持ちももたらさなければなりません。
 このような楽しみや喜びやリラックスというものがなければ、決して観光というものが発展することがないわけです。そして自然に対して知ることもできないでしょう。そしてその自然をまた社会のほうに還元することもできないでしょう。
 最後のところですけれども、エコツーリズムというのは、これは規模によって定義されるものではありません。すなわち小さなスケールでもいいわけです。また大きなスケールでもかまわない。エコツーリズムというのは、サイズ、規模で定義されるわけでなく、この鍵となる要素にどれだけ忠実であるかということによって定義されるわけです。
 さて、3つの定義がここでも出てきます。まちづくり、いわゆるコミュニティーディベロップメント、そしてESD、生態学的に持続可能な開発と、そしてエコツーリズムということです。
 これらの定義をそれぞれ見てみますと、共通のテーマがあらわれてきます。これらの定義の中にあらわれてくるものは、エコロジカルで、経済的、社会的、文化的持続可能性というものが出てきます。そしてここで非常に焦点を当てられているのは、地域社会を巻き込み、地域社会を持続し、維持していくということであります。そして私はここでも信じていることですけれども、これらの共通のテーマは、このドキュメントの中でも示されていることであります。
 例えば観光まちづくりの利点を見てみますと、そしてこれに関してのガイドブックがAPTECでも出されましたけれども、それぞれが地域社会の活性化ということを言っています。そしてコミュニティー意識を高めるということを言っています。そして歴史的資源や住環境、地域のアイデンティティなどを高めている、維持していくということを言っています。エコツーリズムというものがまさに持続可能な観光へとつながってくるわけであります。そしてそれはともにいわゆるESD、生態学的な持続可能な開発の例であるということが言えると思います。エコツーリズムといいますのは、まさに観光まちづくりにつながる道であるということを申し上げたいと思います。
 さて、どうしてこのエコツーリズムに対して関心が高まっているか。そして非常に強い焦点が当てられているか。特にこの10年間非常に関心が高まっている分野であります。これには幾つかの理由があるわけです。エコツーリズムですけれども、ただ単に短期的な観光の気まぐれや一時的な流行ではありません。数年で終わるというものではないのです。エコツーリズムは非常に明確な、そして成長する分野であるということが言えると思います。これはもちろん私の国におきましては、エコツーリズムが特に観光産業、あるいは産業の中でも成長する分野であるということが言えると思います。
 そして2番目の理由といたしましては、エコツーリズムというのはまさに環境にやさしい観光であるということに焦点を当てているということ、それが理由であります。観光産業というのは持続可能性ということをもたらされなければならないわけです。いろいろなテクノロジーであるとか、何とか持続可能な観光産業を高めていこうという努力がなされています。我々の国でもエコツーリズムというのがまさにエネルギー保全であるとか、水の保全であるとか、コミュニティーに対してどういう貢献を与えるかと、そういったことに非常に直接的につながってきているわけであります。
 3番目ですけれども、エコツーリズムはまさに今、環境意識が非常に高まってきているコミュニティーに対して、それに対して応えているというものなんです。環境に対して責任を果たさなければならない、そういった商品を提供しなければならないということなんです。この惑星、非常に脆弱であります。そして持続可能性のある環境を維持していかなければなりません。いろいろな活動、いろいろな行動がなされています。人々はどんどん環境意識が高くなってきているわけです。環境的にも責任のある商品を彼らも選択しているわけであります。ですから、エコツーリズムはこれらに対して応えているということになります。
 エコツーリズムの経済的利点があります。もちろんそれほど明確ではないことかもしれませんけれども、地域で還元されるということがあります。私の国におきましても、既にあるいはゴールコーストであるとか、ケインズなんですけれども、伝統的な観光地がありますけれども、こういった地域でもエコツーリズムが進んでいるわけです。エコツーリズムがまさに今、我々オーストラリアの中でどこでも広がってきているということがあります。クイーンズランドでは特にそうなんです。
 さて、地域のコミュニティーに対しての貢献が非常に高いということが言えると思います。地域の活性化、そして産業の活性化をもたらすわけであります。クイーンズランドの経済ですけれども、農業が主体となっています。牧畜であるとか、そういったことなんですけれども、今現在、エコツーリズムが非常に大きな割合を果たしているということであります。そしてそれによって雇用創出になり、そして若い人たちがこのコミュニティーの中で働くようになってきている。そして大きな都市への流出が防止されているということになります。
 それと同時に、新しいインフラ整備ももたらされているわけです。多くの人がクイーンズランドに行き、そしていろいろな道が改善されたり、いろいろなインフラ整備が向上されているということがわかります。これも地域社会に対しての貢献だと言えます。
 ちょうど「ジャパンタイムズ」を見たのですけれども、日本でもこういうことが起こっているようです。例えば捕鯨ということも問題になっているようです。経済的な利点と環境の意識のどちらを取るかということになっています。今、どちらかというと、ホエールウォッチングのほうに進んでいるということを聞きます。人々はどんどんコミュニティーの人々がむしろ捕鯨をするよりも、クジラを見ようという、ホエールウォッチングのほうにつながっているということで、グローバルにも環境意識が高まっている一つの例だと思います。そして、まさにコミュニティーの文化につながってくる、そして文化を創出するものであるというふうにも考えられます。
 それでは、これらを見てまいりましたけれども、97年ですが、クイーンズランド政府のほうがエコツーリズムを持続可能な形で発展させようと考えました。クイーンズランドエコツーリズムプランという計画をつくったのです。ただ、それだけでできたのではありません。そのドキュメントの作成においては、産業との協調努力がありましたし、また地域社会も参加していたということです。また、このドキュメントの目的ですが、戦略的な州全体のドキュメントであるということ、枠組みが示されています。計画、開発、管理、そしてまた事業、運営、マーケティングというものをクイーンズランドでどうするか、そのビジョンはどうあるべきかが書かれているわけです。クイーンズランドにおけるエコツーリズムは生態学的、文化的、商業的にも持続可能だ、環境的にもそうだということです。ESDということになるわけです。
 ビジョンを達成するには4つの要となる目的があります。環境の保全、またエコツーリズムの産業界の発展、インフラの整備、そしてまたそれによってエコツーリズムをサポートするということ、そしてまた地域社会開発があります。まちづくりです。まちづくりといいますのが、4つのトップの重要な要となる目標の中で明確に示されています。
 また、4つの目標でありますが、それを達成するにあたっては、7つの要となる戦略があります。まず、どういうふうなエリアに絞るのか、そこは自然、そして文化の価値が高いということ、また管理計画をするということ、それが持続可能性につながります。また、どういうふうな観光の中身にするのか、そしてまた非常にいいマーケティングをつくるということ、プロモーションをするということ、インフラの整備、そして最後の2つですが、まちづくりということがあります。そしてまた一般的な地域社会づくりがあります。そしてまた36のアクションによって戦略の実行が行われます。それぞれをやはり達成しようということです。この36の行動でありますが、政府だけではないのです。産業界も入り、そしてまた地域社会も参加するということ、ツーリズムクイーンズランドが私の組織でありますが、そのリーダーシップのもとでこれらの戦略がそこで満たされていくというふうになっています。
 また、日本でも同じかどうかはわかりませんが、私どもの国によりますと、ドキュメントは作成されても、それが読まれないでほこりにまみれてしまうということですが、ただ、これは生きているドキュメントだということを強調したいのです。フォーカスが非常に強く当たっていまして、行動ということが重視されています。そしてもしそれが実行されなければ私の仕事はだめになってしまうわけです。これを実行するのが私の責務なんです。そしてまたそれは私が職を自分の手に留めるということでも重要でありますし、そしてまた1年に1回、必ず州政府のほうにその状況を報告しなければいけないわけです。タイムラインも設定されています。このドキュメントはレビューされます。それは来年ということになりました。そしてまた2年経ちますと、すなわち97年に終わったわけです。87%、アクションが取られました。完了しました。そしてまた残りの20をまだやっているということです。そして2年から5年ということで、70%ぐらいがまだ残っているということであります。
 したがって、実行ということで考えてみますと、このアクションはかなりうまく進んでいるということが言えましょう。そしてその実行状況が州政府に対しては必ず報告されるようになっているわけです。
 さて、ドキュメントに則って実行しているわけですが、実際に何をしているのでしょうか。具体的にまちづくり、地域社会ということでは、その資するところは一体どういうものであろうか、どういうふうな便益を生み出しているのでしょうか。非常に多くの分野があって、実際に行動しています。過去4年間、そうでありました。そしてそのうちの幾つかをお話ししましよう。
 まず、一つの要となるところですが、それは地域社会の能力づくり、キャパシティーづくりと呼ばれるものです。つまり政府機関でありますが、それはやはりリーダーシップが役目ではないであろうと、すなわち我々は環境づくりが我々の役目であります。そしてまたオーナーシップはコミュニティーが持つということになります。その観光の開発に当たってはツーリズムが起こった場合にはそれがコミュニティのほうにベネフィットを還元するのでなくてはいけません。我々の役目としては、これらの地域社会と協調して仕事をするということです。あるところではサンデーズコミュニティーと呼ばれる地域社会があります。これはクイーンズランドの海岸地域の中央にありまして、非常に美しいところです。グレートバリアリーフの近くで、コーストラインが美しいです。エコツーリズムを特に重視してやってきました。我々が向こうの地域社会に対して何をしましようというのではなく、私たちはヘルプだったのです。つまりいろいろな関係者に対して話をし、そしてまたそこに援助の手を差し伸べるということでありました。そうすることによってこのドキュメント、そしてまた原則といいますのが、クイーンズランドのエコツーリズムプランが実行されるようにということであります。そしてエコツーリズムプランは自分たちの共同体でクイーンズランドの一部として実行するということで計画づくりをしたということです。そして非常にいいものができました。そしてまたいろいろな詳細が描かれています。どういうふうなサイトにフォーカスを当てようか、そしてまたどこを開発しないでおこうか、何人がそこに関わるべきであろうか、どのような形で経済界が資するようにできるであろうかといったことが書かれております。したがって、リーダーシップというよりは、我々は共同体のための環境づくりに徹したということであります。
 過去4年間のそうした流れの中でいろいろと結果が出ています。今、我々がまとめようとしているのは、出版づくりということであります。今後、2ヵ月でそうしたものが出てくるでしょう。結果を描いたドキュメントであります。それによって皆様方にもお伝えすることができるようにと考えています。
 そのドキュメントづくりは我々の理念の一環であるということが重要だと思います。すなわちクイーンズランドエンバイロンメンタルツーリズムの一部だということです。それは自分たちの力になるように、コミュニティーのためにも、産業界のためにも、それを読むことによっていろいろなことがわかるように、そしてまた観光業のよき結果がわかるようにということを目指してつくったものです。
 最初の出版物の一つですが、それがこのドキュメントということになります。"グロー・ユア・エコ・ツーリズム・ビジネス"と呼ばれております。2冊のものです。真の意味で、これは一つの答えだったということです。いろいろな地域社会から、あるいは産業界から質問がなされました。何をすべきなのか、いい持続可能なツーリズムとはどういうものであるのか、それに対する答えです。我々は小さな部署です。時間にしましてもすべてのグループ、あるいはすべての旅行業者と話すことはできません。過去4年間、こうしたものを資料としてつくりました。それを書いたのは学会用のものではありません。単純なわかりやすい英語で書かれています。少なくともシンプルなイングリッシュで書かれている。そしてまたわかりやすい文言を使っています。複雑ではない。また、いろいろな助けになるようなものが盛り込まれています。もう既に産業界で活躍している人のための実際の用に資するということです。そういうことをやってきました。
 さらにまた非常にフォーカスを当てたのは、農村地域とも手を結ぼうということでありました。ツーリズムの結果がそこにもやはり還元されるようにということです。またアボリジニーの人たちも入っています。その文化の遺産ということも視野に入れながらのツーリズムにしたいということでありました。それと同時に、地域社会すべてのツーリズムの局面に目を当てるように、文化だけではないということです。全体の計画づくり、マーケティングという中で、アボリジニーの人たちも参加して、全体的な様相がその中に反映されるようにということを考えました。
 常に今やっているのはワークショップです。州全体でいろいろなミーティングを持ちます。先週もそうでありました。ウェスターンクイーンズランドから戻ってきました。一連のワークショップを組んだわけです。過去3年間続けています。そうした地域社会に入り込んで、ワークショップを司ります。そしてそのような形で大体夕方ということが一番ふさわしい時間ですので、仕事の後で集まってもらいます。ワークショップにおいてはいろいろな説明をします。エコツーリズムがどういうものであるのか、そしてまた観光業には落とし穴があるかもしれないという話もします。そしてできるだけの援助をし、理解を深めてもらおう、そしてまた観光業の開発が地域社会にもしかすれば影響を与えるかもしれないということの理解を進めてもらうのです。
 さらにまたニュースレターも発行しています。これのタイトルは「エコトレンド」というものでありまして、このエコツーリズムのトレンドを描いています。四半期ごとに1回ということで、ハードコピーでもありますし、ツアーリズムクイーンズランドのウェブサイトでも表示されています。常にこれを使うことによって、一つの手段でありますので、エコツーリズム産業と、そしてまた地域社会が今一番のトレンドは何か、その潮流はどうであるのかということを知ってもらうということです。エコツーリズムは昔はなかったものです。ですからそうした手段が重要であると考えています。
 ほかの出版物もあるわけで、一つ、ここでお示ししていますのは、特にターゲットとして絞っているのは旅行業者です。そこを助けようということ、ツーリズムのビジネスで一体何が必要なのかということ、そしてまたよき持続可能なオペレーターとしてのあり方、そしてまた新しいやり方、そしてまたそのインタープリテーションということを考えてもらいます。つまり旅行業者がいかにすればよりよいインプット、そして啓蒙的な資料をツーリズム用にその経験を反映したものとしてつくることができるのかということです。
 こうしたすべての資料は、やはり産業界を助ける、そしてまた地域社会、また自助努力に資するためということが言えましょう。これは幾ら強調してもしたりないと思います。共同社会が産業ということに、自分たちが自らその主導権を取るのでなければ何らいい結果は出ないということです。
 また、最後にこれもお示ししたいと思います。啓蒙的、教育的な資源も必要だということであります。これは産業界ということでありませんで、出版物があります。「エコクイーンズランド」がありますが、過去10年間の動きを示しています。一貫して新しい自助努力の対象となるような資料づくりということでありまして、また今後、数力月間でそれが出版されるでしょう。"エコツーリズム・ラピッド・アセスメント・モデル"というものが入っています。これはチェックリストだと考えてください。こういうものを目にしてその判断をしてくださいと、自分たちの地域にどういうふうな可能性があるかの判断材料にしてもらうわけです。まだモニタリング用のものでありまして、先ほどDr,バルマがそのモニタリングの重要性ということを強調されました。主要な要となる役目が、そしてまた産業、地域社会共にということでありますが、その旅行業者を実際にするという中で、モニタリングを忘れてはいけないということ、つまりもともとこういうことをしますよという観光業でうたい文句があるならば、それを実行しなくてはいけないという、その責務があるということです。つまり我々は地域社会、クイーンズランドをいろいろと援助しようとしています。ベストなエコツーリズムをと考えています。
 また、ほかにも幾つかの分野があって、このような構想が息づいています。これは認証制度と呼ばれるものです。これはどういうものかといいますと、一つのオーストラリアのエコツーリズム協会というものがあります。そこが認証制度をとっているわけです。これを開発したのは産業界自体であります。産業界のためということです。それによって真のエコツーリズムの旅行業になるようにということです。
 幾つかの問題があるでしょう。日本、オーストラリア以外のほかの地域でもそうだと思います。多くの人たちが言うことですが、エコツーリズムといっても実際はそうではないじゃないか、その言葉だけを使っているんだ、その原則は生かされていない、マーケティングのツールになっているだけだということが言われます。しかし、認証制度はワールドリーダーだと自負しています。これは今、実際に運営されておりまして、非常に大規模な形で運営されているものの唯一のものではないかと思います。クイーンズランドにおいてはこのような認証制度がやはり重要であると考えています。非常に重要なドキュメントでありまして、産業界の旅行業者だけではなく地域社会も使うことができるのです。地域社会がもしもエコツーリズムを主眼に置こうということであるならばガイドブックが必要であるというふうに思います。どこでうまくいくのかということ、それはやはりエコツーリズムの原則がどのようにして満たされる、そのためには何をするべきなのかということがわかる指標になるということです。
 したがって、重要性はただ単に認証ということに留まりません。一つの資源であり、もしもある地域社会がエコツーリズムを考えるならば、3つのレベルでそれを考えることができます。ネイチャーツーリズム、エコツーリズム、そしてまた先進のエコツーリズムと呼ばれております。つまり自分の事業がどれぐらいなのかということでネイチャーツーリズム、一番低いレベル、そしてまた高いレベルならばアドバンストということで選ぶことができます。これはやはり信頼性の高いものでありまして、エコツーリズムのグリーングローブと呼ばれる協会があります。全世界的な認証制度ということになります。これはネイチャーとエコツーリズムの認証制度というものを、これはグリーングローブの中に入れていくということでありますので、つまりそれを見ましても非常に高いスタンダードが得られている、それが維持されている一つの制度だということがおわかりいただけると思います。
 クイーンズランドはこのようなさまざまなプログラムを組んでいるということでありましたが、NEAPの認証制度ということです。8つのキーエリアが設定されています。評価のためということなんですが、これがこれらのエコツーリズムの原則を反映した8つの分野ということです。特に2つにご注目いただきたいのです。一つは文化的な要素として、それと同時に地域社会の取り組みということ、これを強調しています。非常に重要だと思うのです。地域社会との協調ということ、そしてそうしたもので特に強調されています。また、ローカルなベネフィットが本当にあるのか、インパクトを小さいようにするということ、そしてまたコミュニティーがどれぐらい参加するかということ、これもやはり認証制度ということでありまして、フォーカスを特に当てているのがまちづくりなのです。
 ツーリズムクイーンズランドがやっているわけではありません。これは産業協会、旅行業者の協会がやっているわけですが、いろいろな形で私どものほうもサポートしています。つまり政府機関がどのような役割を果たすかということの一つの集約でもあると思うのです。つまりこういうことはしてはいけないということの一つのルールがありまして、産業界がやはり主導権を取るべきだ、しかし我々はヘルプをすべきだ、そのためにはいろいろな方法があるということです。例えばジァーナリストプログラムがありますし、フォトジャーナリストを呼びまして、そしてジャーナリストにストーリーを書いてもらう。エコツーリズムはどういうふうなものであるか、そしてまたこの認証制度のもとにあるものはどうであるかということです。すなわ無料のプロモーションが得られます。そのローカルな雑誌、新聞に掲載されるということで、我々が組織し、そしてまたお金も払っています。
 そしてこのようなストーリーでありますが、これは認証制度で認可されたものがそこに掲載されるということであります。また、さまざまな機関の運営ということになります。また、企業用のプロモーションマテリアルもつくっています。ワークショップもやっています。すなわちツーリズムのオペレーターの認可ということでありまして、消費者に対して自分たちの会社はやはり認証を受けた企業としての旅行業者なのだということが言えるということです。
 また、マーケティングということでありますが、我々がつくるすべての冊子、何千という部数がいつも印刷されているわけですが、そこにおいてその認証制度が何なのかということは欠かさず説明されています。そしてまたエコツーリズムの旅行業者で認証されたものは私たちの冊子に載っているわけです。またロゴを使うことができるようになっています。認証制度、そしてその人たちの提供する製品にもそのロゴを使うことができます。これはサポートだと思います。つまり産業が主導権を取ったさまざまなプログラムに対する重要なサポートだと思うのです。
 また、最後の構想、取り組みですが、特にこれもご紹介したいと思います。クイーンズランド・ヘリテージ・トレール・ネットワークと呼ばれるものです。これは合同で行われているプログラムです。クイーンズランドの州政府が入っています。それと同時に連邦政府も参加しているということです。オーストラリア連邦政府です。1億ドル、これはオーストラリアドルでありますが、そのプログラムですが、約60億円に相当するでしょうか。3年間でこのお金を使ってヘリテージツーリズムのインフラ整備をしょうということです。すなわちいろいろな遺跡・遺産ツーリズムということになりましょう。そして州、連邦政府ということだけではなく、その地域社会がそのお金をどう使うかを決定できるというところが注目すべきことだと思います。政府はやはりヘルプだということです。地域社会がどういうふうなツーリズムにしたいのかということを助けるということです。つまりこれによって持続可能なものにつながるということです。また、クイーンズランドにおいて雇用の創出にもつながります。そしてまた刺激を与えるということで、地域開発につながります。
 そしてまた特に重要なんですが、自然の資源、また文化的な遺産を保存するということです。サポートのマネーなんです。コミュニティーがそれをもらって、受けて、それをどう使うかを決めるということです。約30のプログラムが今、クイーンズランドで進行中です。そのうちの3つを特にご紹介しましょう。多様性ということがおわかりいただけると思うのです。
 どういうふうなコミュニティーでの実際の実施があるかということですが、ラーククオリと呼ばれております。これは石切り場ではないのです。なぜ「石切り場」という名前が付いたのかわかりませんが、これは化石のサイトなんです。このサイトにおいては、何億年も前に恐竜が非常に多く駆け抜けた、その足跡が化石となって残っているところであります。岩にその足跡が示されております。世界でもベストなものだと思います。それがウエスターンクイーンズランドにあります。長期にわたってお金がなかった、資金がなかった、あるいは推進力もかかっていなかったという状況が続いていました。
 ここで我々が重視しているのは、ただ単に保護、保全ということではないのです。この恐竜の化石の足跡ということではなく、もちろん天候によって阻害される、劣化するということがあるわけですが、それを保護するということが重要です。それと同時に地域社会が参加するということ、一番いいやり方で保護してもらう。そしてまたそれを提供してもらいたいと考えています。化石の保全とプレゼンテーションです。200万オーストラリアドルを使ってこのような設備を使い、努力をしているということです。
 2つ目、小さなコミュニティー、チリゴーと呼ばれるもので、これは州の北方地域にあります。非常に後退した地域でありました。鉱山地域ということで、繁栄した地域も何年も何年も前にあったのですが、ただ、その町を離れる人も増えたということでゴーストタウンのようになってしまいました。旧鉱山ということです。将来像は見えないような、そうした地域になってしまったのです。しかし、その中ですばらしい資源があるではないか、すなわち鉱山の歴史だということを目を当てました。また、化石の歴史もあるのです。さらにまた石灰岩の石窟もあります。そしてまた大理石が地中から掘り出されておりますし、またアボリジニーのストリーの豊かな地域であります。これらのすべてをまとめようということで、この地域においては非常に活性化が進みました。そしてまたコミュニティーが一体どういうものであるのかというアイデンティティがはっきりした、それに対して自信を持つようになったということです。
 クイーンズ・ヘリテージ・トレール・ネットワークのプログラムは、その中でつまり資金が必要であります。いろいろな設備づくりに使われます。しかし、お金だけでは十分ではないということで、熱意を喚起するということ、それが地域の人々の中に生まれなくてはなりません。その意味で助けてきたということで、サイカセイカのツーリズム、そしてまた文化的な遺産に目を当てた観光開発、まちづくりということでありました。
 また、最後でありますが、熱帯雨林、これはクイーンズランドの北方にある地域であります。ここでは自然、天然の遺産と文化遺産との間のリンクがあるということです。特に熱帯雨林においてはアボリジニーがおります。アボリジニーの人たちがしていることで、熱帯雨林について我々が知らないことはたくさんあると思います。いろいろな違った観点から全体的なオーストラリアの人たちからいろいろと聞こうということです。このプログラムもコミュニティーが中心になってやっているということ、それに対して資金提供、あるいはいろいろな援助をしているのが我々政府機関ということであります。
 今までいろいろと話しましたように、背景があるということでありました。エコツーリズム、クイーンズランドにおいて私の組織が何をしているのか、どういうふうな観光の中身にしているのか、経済的にやはり非常に重要なことだということです。ただ、それ以上に重要なのはエコツーリズムによってリーダーシップが得られるようになったということです。持続可能な旅行、観光に拍車がかかったということです。エコツーリズムこそがやはり模範になり得るということ、ESD、すなわち産業界に対しても全世界の産業界ということでありますが、どういうことすれば真の生態学的に持続可能な観光が可能なのかということをお手本として示していると思うのです。
 また、エコツーリズムはその意味では先陣を切ることができる、観光まちづくりの一つの出発点になると思うのです。エコツーリズムにおきまして、いろいろないいものが集約していると思います。ベストなものの集合ではないでしょうか。観光まちづくりの集約があると思います。それと同時にまた観光まちづくりの土台になるということです。ツーリズムベースのコミュニティーディベロップメント、これは産業界が主導権を取るということ、そしてまたまちづくりベースの観光開発ということで、これは産業界がやはりコミュニティー中心に発展するということです。
 そういうことを考えてみますと、やはりエコツーリズムがこの産業界として特にその中に町が全体に包含されるようなものを考えるということだと思います。
 今日の話にも出ました。やはり地域社会が前進するということです。そしてまた自分たちの町のあり方、将来像を描けるということが重要だと思うのです。
 どうもありがとうございました。








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