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講演
「21世紀の新しい観光まちづくり <産業観光>について」
宮崎県綾町、雲海酒造株式会社 「酒泉の杜」事業部取締役支配人
山本 達雄
 
 ご指名いただきました山本と申します。皆様、こんにちは。
 限られた時間でございますので、ポイントだけご紹介をしていきたいというふうに思っております。
 私は、宮崎県の西側になりますけれども、綾町にあります宮崎水の里綾「酒泉の杜」と申しまして、雲海酒造の観光事業部と言ったほうがよろしいかと思いますが、そちらを代表いたしまして山本と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 結論から申し上げますと、私どもの施設につきましては、平成元年の11月にオープンをしまして、今年でちょうど12年目を迎えております。綾町にまいりましたのが平成元年でございますけれども、綾町自体が1985年ぐらい、昭和60年代には観光客といいますのは大体年間30万から35万人ぐらいでございました。この資料の中で見ていただければわかると思います。
 それから約11年経ちまして、今現在は私どもで大体100万人、綾町全体で120万人のお客様をお迎えをして、観光のお手伝いをさせていただいているわけでございますが、こうなりましたのも綾町のいろいろな背景、それから私ども雲海酒造の取り組みというのもございまして、何とか行政と民間とのお互いの気持ちといいますか、利害が一致している部分もございますので、あわせて説明したいと思います。
 綾町の資料2部、それから私どもの資料も1部、皆さんの手元にあるかと思いますが、実は綾町の最初の観光の基礎を築かれましたのは、大変残念ながら昨年の4月にお亡くなりになられました前町長の郷田さんとおっしゃる方が基礎をつくっておられます。昭和40年代、1965年には綾町の人口も約9,000人ぐらいいらっしゃったわけでございます。綾町の面積といいますのは、9,500ヘクタールの中に山林が約80%を占めるような小さな町でございます。
 その小さな町の中で、9,000人近い人口があったわけでございますが、経済的にもなかなか生活が成り行かないということから、次第に町外、あるいは県外のほうに住民が流出していきまして、昭和45年ぐらいになりますと、7,000人台に落ち込んでおります。そのような中で危機感を大変考えられまして、前町長であります郷田氏がこれではいかんということで、基本的な施策を打ち出したのが「産業観光」という一つのコンセプトでございます。
 どういうことかと申し上げますと、綾町には先ほど言いましたように、大変すばらしい山林、要するに照葉樹林帯が残っておりまして、実はこの照葉樹林帯から生まれてくるいろいろな文化、それから水、そういった環境が照葉樹林文化の基礎になっているということから、これに基づいた手づくり工芸、その伝統をぜひ将来にわたって継承していきたい、そういった手づくり工芸のまちづくりに取り組んでいかれております。
 それから、この自然の生態系を利用しました農業、要するに有機農業を推進していこうということで、昭和40年代の前半から有機農業に取り組んでいかれまして、今現在は日本の三本指に入るぐらいのすばらしい有機農業の率先地でございます。
 こういった産業観光を農業、商業の面から進めていかれるのですが、それではなかなかまだ活性化につながっていかないということから、綾町に産出するすばらしい水がございます。「銘水百選」にもなっておりますけれども、この水を利用した形で酒造業、酒造りの企業にぜひ綾町に進出していただきたいと。ぜひ産業観光という施策に合わせた製造産業ということを頑張っていただきたいということから、私どもの雲海酒造のほうにお声を掛けていただきましたのが昭和60年でございます。
 昭和60年に私ども雲海酒造、現在、北海道から鹿児島まで7つ、工場がございますけれども、そのうちの一番大きい工場をこの綾町にもってきております。それが昭和60年代でございまして、町長のおっしゃるように、町の施策に合わせました産業観光というものを基本にした工場をつくっております。もちろん社会性を持たせるために、見学ができる製造工場ということでこの綾町につくっておったわけです。そういうことから、産業観光の中で観光客が綾町のほうに体験も含めてお越しになりますけれども、そういった見学の皆様も入れますと、大体36万人ぐらいお客様が増えてきております。しかしそれではまだまだ活性化につながっていかないので、町、それから雲海酒造一緒になりまして、何か町の核となるようなものをつくろうということになりました。そこで私どもの「酒泉の杜」が立案されたわけでございまして、平成元年の11月24日にオープンをさせていただいております。
 綾町にはいろいろな伝統文化がございます。伝統工芸群でいきますと、ガラス工芸、紬、木、竹、それから陶芸も含めましてたくさんの工芸家がおられます。今現在、44の工芸家がおられますけれども、実際、もとから綾町に住んでいらっしゃる方は18ぐらいでございました。あとの方は約30近い方々は町外、あるいは県外からの綾町に夢を見てお越しになった方々であります。そういった工芸家を私の施設のほうにお招きして、工芸館群を一つ、つくりました。それから私どもの第2次産業であります酒造業の酒、焼酎、リキュール、ワイン、ビール、そういった製造工程をぜひ見学していただくこと、つぶさに見ていただくという酒造りの産業の部分の施設、そういったものが一体となりました形で基本をつくりまして、その中にお客様の利便性を高めるために飲食物販施設、温泉、そして日本旅館という形で一つのテーマパークを形成しております。基本的には「産業観光テーマパーク」という名前で呼んでおります。
 そういったテーマパークをつくったわけでございますが、オープンしましても宣伝、そういったものが全国的に行き届いておりませんので、オープンした1年間では大体三十四、五万のお客様がおみえになっておられます。綾町全体としますと、45万人ぐらいに、大体十四、五%ぐらい観光客が増えたわけでございますが、それから大体4年ぐらいはさほど増減はございませんでした。
 第2次計画としまして、平成6年の10月に「綾ワイナリー」というのを建設しております。これは私どもの基本でございますが、当然地場の原料を使いまして、焼酎などをつくっている企業でございます。宮崎県には生食用のブドウが大変たくさんございますので、そういったブドウを使いまして、ワインはできないかという研究を進めておりました。何とかいいものができたと思っておりますけれども、平成6年の10月にオープンさせております。そのオープンによりまして、大体60万人ぐらいのお客様がおいでになり、それからその1年半後でございますが、宮崎で一番最初に地ビールを開発しておりまして、第3次計画として地ビールをこの施設の中に追加設備でつくりました。平成8年の4月でございましたけれども、そういった第3次計画も何とか産業観光の中の地場のいろいろな環境でできた原料、それから水、そういったものをうまく利用しながらやっていく事で、やっと100万人ぐらいのお客様がおみえになったということでございます。綾町全体で何とか120万人というお客様を収容しているということでございます。
 先ほど申し上げましたように、綾町のその背景は、町長さんのほうでそういう町の一つの活性化として産業観光を興されたわけでございますが、それに合わせまして特にお隣の中国から分布しております広葉樹、照葉樹林と呼んでおりますけれども、これは綾町に大変分布しておりまして、これを林野庁さんのほうで伐採して、杉の木をどんどん植えていこうという計画がなされたのが昭和40年代の初めでございます。それは何とかやめてほしいということで、林野庁のほうへ地域住民のほうで陳情しまして、今現在ある照葉樹林が残ったという経過がございます。これにつきましても町自体はそういった伐採と植林がなされますと、補助金がたくさん出ますものですから、町の中でも賛成派の方もいらっしゃったり、いろいろと問題もあったようでございますが、町民の総意ということで、その照葉樹林の伐採を何とか止めていただきまして、後世に残してきたというのが一つの原点にもなっております。
 その照葉樹林を観光客の方がたくさんお越しになりまして大吊橋から見るわけでございますが、今現在、142メーターの高さで250メーターの長さの吊り橋でございますから、大体歩く吊り橋としましては世界一でございます。高さ、長さにしましては、東洋一というふうになっております。これもどちらにしましても、つくる時点ではいろいろな中傷もございましたが、今現在は年間20万人ぐらいのお客様がその照葉樹林を見学に、その大きな大吊り橋にお越しになっているという状況でございます。確かそれは昭和58年の完成でございました。
 その後、昭和60年になりまして、もともとここはその昔島津と伊藤氏の勢力争いの一番真ん中にございまして、伊藤氏の48の出城の1つとして綾町にそのお城跡があります。そのお城跡に城を復元したいということで、町中の大工さんこぞって650年以上前の山城を復元したお城も今、つくってございます。漆喰の立派なお城ではございませんが、木造の3層のお城でございます。年間15万人ぐらいのお客様がお見えになっております。釘を一本も使わないという一つのポリシーがございまして、昔の山城をそのまま復元をしていると、そういった意気込みもやはり町の皆さんの産業観光というものを基本にした一つの意気込みではないかと、気持ちではないかなというふうに思っております。
 私ども企業としましては、やはり利潤をどんどん追求していかなければいけないのが一つの基本でございますが、雲海酒造としましては、ただ単にハード面の製造をして販売をしていくというものではなくて、地域に根ざした企業ということを基本に考えていかなければなりません。雲海酒造のそういった焼酎とか、酒類につきましては、どういうふうにできているのかという形の中でいきますと、製造を直にお客様に見ていただきまして、より自社の中身を知っていただきたい。要するに雲海酒造のソフト面を私どもが担当しながら、あわせまして地域振興の一番先頭を走って、綾町と一緒に頑張っていこうと、そういった形も考えながらの進め方ということでございます。
 120万人というお客様がおみえになっておりますが、もちろんその牽引役として年間100万人、私どものほうでお客様を集客しているのは事実でございますけれども、先ほど言いましたように、綾町で二十数年間、一生懸命こつこつとやってこられました、この自然を大事にする、守り育みながら産業観光を推進するという姿勢というのは、並々ならぬものがございまして、そういった背景を私どものほうもうまく利用させていただきまして、この産業観光という中で発展をさせていただいているのも事実というふうに考えております。
 今現在、宮崎県のほうは、国内旅行に限らずお隣の台湾、香港、それから韓国を中心としまして、県民挙げてチャーター便を飛ばし、産業観光交流を行なっています。この四、五年、年ごとに活発にやってきております。昨年、ご存じのように外相サミットもございましたし、太平洋島サミットもございましたけれども、そういった海外の皆様にもぜひ宮崎県のそういう自然、人情、人工の美も含めましてつぶさにご見学いただきながら経済観光交流を進めていきたいという中で、私ども綾町のほうも企業をあわせまして協力していきながら、大変多くの観光客がおみえになりつつございます。
 今現在、一番たくさんお越しになっているのが台湾地区でございます。今年の4月24日から韓国のソウルと宮崎の空港に、アシアナ航空の定期便も出るようになりましたので、今、徐々に韓国のお客様が増えてきているということが今日でございます。実は二、三日前にも韓国の視察団が私どもの綾町のほうにもおみえになっております。
 そういった中で、この町の基本的な産業観光というのはどういうふうに進めてきたのか、あるいはその産業観光を基本にした形の企業のまちおこしについてはどういうような形で動いてきたのかというのをほとんどの方が勉強にお越しになるわけですが、そういった状況の中でその視察の皆さんに対応しながら、私どもも一つずつ勉強しながら更に進めて行きたいと思っております。
 今現在はそういうことで中国系の社員を3名、採用しております。中国出身でお2人、それから台湾出身でお1人ということです。中国系のお客様が大変多く、私どもは英語は何とか社員が対応できるのですが、中国語、韓国語ができる社員が少ないということで、日本の大学に留学をされて、卒業後入社試験を受けていただき、その中で選抜して社員として頑張っていただいているということでございます。
 なかなか頑張っていただいておりまして、実際通常の私どもの地元の社員よりも、どちらかというとよく頑張るような社員ばかりでございます。そういった視察団及びその案内、それから台湾、韓国、香港あたりへの旅行会社への誘致活動にも営業として率先して社員として頑張っていただいているという今日でございます。
 確かに「酒泉の杜」は、この綾町の活性化の一役を担ってきている中で、成功の事例というふうに言われているかもしれませんが、当初、オープンから四、五年ぐらいはやはり宣伝もまだ行き届かないことから、お客様はたくさんお越しになりますけれども、例えば三十五、六万人としますと、地元が約7割でございまして、県外の方が3割ぐらいという比率でございました。それから営業体系を全国に営業マンを飛ばしまして、綾町及びこの「酒泉の杜」の宣伝活動をするわけですが、北部九州から関東地区まで、営業宣伝をしていきながら進めてきている中で、第2次計画及び第3次計画とあわせますと、今現在、私どもで100万としますと、大体6割の方が県外の方で、4割の方が県内という比率になります。
 ところが、今現在は大変経済が冷え込んでおります。経済が冷え込みますと、観光はもろに響いてきます。何とか100万人の集客を維持しているものの、今現在はお客様は宮崎県内の方が約50%近くを占めておりまして、残り50%を県外の方、特に九州北部、それから関西地区、それから関東地区という順になっております。ただ、お客様を誘致すること自体は私ども何とかイベントをしたり、あるいは営業展開をしながら誘致にまいりますけれども、やはりどうしても中身がよくないわけです。
 簡単に申し上げますと、私ども宮崎県内のお客様が私どもに見学、あるいはショッピングにお越しになりますと、大体おみやげでいきますと、お一人がちょうど1,000円ぐらいの単価を落とされます。ところが、福岡県のお客様がおみえになりますと、大体平均が私どもの統計でございますが、1,600円ぐらいでございます。ところが関東、関西及び東北、北海道のお客様が来ますと、3,600円ぐらいになるというのが一般的な購買金額でございます。ただ、県外が増えて、県内が落ちたからいけないということではなくて、相乗効果で自然とよくなっていくのが一番いいわけでございますが、大阪、東京のお客様、県外でも大都市圏のお客様が海外旅行に押され、九州までおみえになっていない。例年に比べますと大幅に落ち込んでおります。その分を私どもとしましては、町と一緒になりまして、いろいろなイベント、効果的な企画を立てながら運営していく中で、100万人を挙げていくには、どうしても地元が増えて、県外が落ちるという傾向にございます。そういった構造が大体今の現状でございます。
 そういうことで進めてきてはおりますけれども、私どもが一番大事にして、基本的な形で進めているのは、やはりこの産業観光を進める上での町の背景でございます。町のいろいろな伝統工芸をやっていらっしゃる方につきましては、私どもに参加をされている方と参加をされていない方もいらっしゃいます。ただし、どうしても参加ができない方につきましては、やはり零細的なものもあります。できる限り私どものほうでお預かりをして、商品を説明販売をするというやり方もしております。
 それから農業に関するものがたくさんございますが、町は有機農業の里でございます。できるだけ有機農業の産物をお預かりして、私どもの食材として活かす。それからいろいろな畜産関係もあります。肉牛もおりますし、乳牛もおります。それから豚舎もたくさんございます。そういった家畜のほうも綾町は大変たくさん飼育をされておりますので、私どもの観光とはまた別な部門でいきますと、雲海酒造の焼酎、清酒を製造しますと、少なからずそのかすが出ます。焼酎かす、それからお酒のかすが出るわけですが、今まで企業では200海里以上向こうに海上投棄をしてもいいということになっておりました。ところが平成9年からロンドン条約にもよりますけれども、それが厳しく制限されるようになりました。昨年の平成12年には全面禁止ということになりまして、それまでの間にそういった酒類メーカーにつきましては、自社で設備投資をするなり、ほかの方法を考えろということが強く言われてきました。
 私どものほうは基本的にはそういった穀物のかすでございます焼酎かす、酒かすにつきましては、牛の飼料、えさとしまして、今、再加工をするようにしております。これをぜひ綾町のいろいろな乳牛、それから肉牛のほうにも試験飼育に使っていただき、全酪連のほうからも出向で来ていただいて、いろいろな研究をしながら進めているということでございます。ただ、それだけでもやはりまだまだかすが出てまいりますので、そのかすと、それから食事をした残りの残飯類を混ぜあわせて先ほど言いましたように飼料の他に、今度は肥料にしていこうということで、すべて私どもで製造するお酒類かすにつきましては、牛のえさであり、それからいろいろな作物の肥料として再利用できるようにしながら、綾町の産業観光の中で環境にやさしい取り組みもしていこうとしています。この数年前から取り組んでおりまして、何とか今やっと軌道に乗りつつあるということでございます。
 そういうことで進めてまいりましたが、観光ということでいきますと、先ほど先生方のほうから「光を観る」と書く中で、いろいろな議論がございましたが、宮崎のほうは昔からそうでございましたが、日南海岸のすばらしい景観を見ていただいて、人情の美、自然の美、そして人工の美ということを盛んに訴えて観光を推進してきたわけでございます。しかし、私たちはこの観光の中で、先駆者がやられた観光ともっと違った観光ということで、この綾町の産業観光を取り入れながらやっているわけです。今現在、大変厳しい中で、皆様もご存じのように、宮崎の大型リゾート施設のほうが会社更生法を出しているような状態でございますが、そういった中で何とかお客様が年間100万人を維持していられるということをよく考えますと、やはり都会の方が忘れられている古里とか、古里が見える町並み、それから都市と地方とが共生できる、本当に受け入れやすい、そして行きやすい、ぜひ住んでみたいというまちづくり、そういったものが私どもの綾に何らかの形で見られるのではないかなということが一番に言えると思います。
 つい6月の初めまでホタルがたくさん飛んでおりまして、私どもは毎日この季節になりますと、ホタルは見ておりますから、何ら珍しいものではございませんけれども、都会の子供たちがお越しになりまして、ご案内してホタル見学に連れていくのですが、ホタルが飛んでいることすら知らないと。教科書に載っているのは、写真に載っているのは、葉っぱに止まったホタルしか知らないわけでございまして、こんなに地元の子供と差があるのかということもまざまざと見せつけられるような今日でございます。この四、五年、ホタルツアーをたくさんつくりまして、たくさんのご家族、子供たちに来ていただくような企画をつくったりしております。ホタルのほうも生き物でございます。あまりいっぱい来て、騒ぎますと、少しづついなくなるような状態でございますが、全くの自然、天然でございますので、何とかそういったものを維持していくというのも、本当に小さなことかもしれませんが、産業観光の一つだというふうに思ってもおります。
 それで、今年もたくさんのホタルが出ているわけですが、どうしても天気に左右されますので、雨、あるいは風が吹きますと、なかなか出てきません。出てこなかった場合に、わざわざ遠いところからお越しになってお泊まりになっているのに、出てこないではどうしょうかというのもございますから、そういった場合には何とか私どものいろいろな体験をさせたり、それからお酒のお好きな方であれば何とかお酒でごまかして、満足度を得てもらおうと思い、いろいろな策をつくりながら観光に来られた、あるいは体験に来られた皆さんと仲良くさせていただいているというのが現状であります。
 雲海酒造といいますと、ちょっとハード的に聞こえるかもしれませんが、私どものほうはお酒をつくった後、お酒を試飲していただいたり、お酒がどういうふうにできるかというのをお見せしたり、お酒に合う料理をつくったり、それからこの町ではこんなすばらしい水が出ていて、このすばらしい水のために町がどれほど努力をしているか、これを観光客に見ていただく。それからウォークラリー的なものをさせたり、自然の川で泳がせたり、ホタルを見せたり、そういったことをしながら雲海酒造のソフト的なところを部門としてやっていきながら、地域の中で新しい観光を模索しているというのが、簡単に言いますと現状でございます。
 産業観光と先ほどから何回も言っておりますが、いろいろな産業が各市町村にあるわけでございます。よくご相談におみえになるのは、温泉をつくったけれどもどうしょうかと、もう5年経ってお客さんがいないと、もう町の福祉的なものになってしまって、なかなか従業員の給料も払えないがどうしょうということで来られる方が半分以上でございます。ですから、大体温泉でまちおこしをしょうというのが間違いでございまして、基本的にはその町の特徴のあるものを小さいながらも一生懸命育んで育てていく、そのお越しになったお客様の付帯設備として温泉もあると、それからこういったものもあるよという形のやり方をしないと、なかなかお客様は来ません。その町だけで売上を上げて維持していくというのはなかなか難しいわけでございますから、町外、県外、あるいは国外からもお客様が訪ねてこなければ利益は取れないということを考えれば、そういったコンセプトはなかなか難しいところがありますが、十分研究していく必要があると思います。
 私どもはそういうことまで考えてやったわけではございませんが、体で感じてそういうふうに生きてきておりますし、進めてきております。今現在、海外のお客様がたくさんおみえになっておりますので、そのお客様に「私どもの取り組みはこうである」という形の中をお見せしながら、幅広く宣伝していって、また私どもが見抜けていない新しい産業がもっともっとたくさんあろうと思いますが、何だろうということを探しながら、新しい産業観光を模索しているということでございます。
 どちらにしましても、後ほどパネルディスカッションもあろうかと思いますが、お聞きになりたいこともたくさんある分につきましては、参加の皆さんからご質問があろうと思います。大体オープンする前はあの土地は田んぼでございましたので、稲刈りをし、土を入れまして、図面を書いた本人でございますので、大体99.9%、お話はできます。企業としてどうしても言ってはいけないことが1%ぐらいあるかと思いますので、それ以外につきましては、何とかお答えできると思っております。また後ほどゆっくりお話をさせていただきたいと思います。
 あまりわかりやすい説明ではございませんでしたけれども、そういう気持ちで進めておりまして、何とか観光の中の一つとして数えられるようになりましたし、宮崎県の観光のルートの中の一つ、それから国内旅行の中で何とか宮崎県の日南海岸、あるいは綾の「酒泉の杜」というような形で名前が挙げられるようにようやくなってきたところでございます。残念ながら今は大変厳しい中を国内観光は進んでおりますけれども、私どもももちろんでございますが、第2弾の一番苦しい時代を今、迎えておりますけれども、何とか町の皆さん、それから社員と一緒になりまして頑張っていきたいと考えております。
 まことに短い時間でしたけれども、簡単にご紹介させていただきました。ありがとうございました。








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