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6. 機器分析法
 本稿では省略したが、現場ろ過/吸着法を使用し、1000L程度の海水の非汚染状態での採集が可能になったとしても、測定を妨害するきょう雑物質の数量も同時に増大しているため、PCBsの分析に常用されるガスクロマトグラフ−電子捕獲型検出器(GC-ECD)で高精度の測定を行うのは非常に難しい。実際、海洋モニタリングのためにGC-ECDによる海水中PCBs異性体組成を議論している報告もあるが、共溶出現象(co-elution)によって多数のきょう雑物質が同時に測定される可能性が高いことが指摘されている。この問題を解決するためには最近まで高分解能質量分析計を使用する以外選択の余地がなかった。実際、この方法を用いれば分解能10,000以上で10fg(1fg=10-3pg)以下のPCB異性体が測定可能であるが、非常に高価なため最近まで普及していなかった。ダイオキシン問題が社会的注目を集めたここ数年は、民間分析会社でもこの装置を購入するところが増えたが、これが裏目に出て、高機能な装置に頼ってコスト削減のために分析法の簡略化に走るところも多い。
 しかし、ダイオキシンも含めて従来のPOP微量分析法は全て上記の共溶出現象(co-elution)による分析誤差の危険性を解決しないまま使用されている。理想的には検出器に入る前に測定対象以外の物質を全て除けば高分解能質量分析計のように高価な検出器を用いる必要はない。この観点で最も有望なのが、最近、急速に応用研究が始まっている2次元ガスクロマトグラフ(2DGC)や分取ガスクロマトグラフ等、従来のガスクロマトグラフを改良した分析装置である。Phillips(1997)は2DGCを用いて209種の全PCB異性体をキャピラリーカラム上で完全に分離している。Schulz-Bull(1991)はこの方法を海水中のPCBsの分析に用い、きょう雑物質を効果的に除去することで従来のGC-ECDでは不可能だった高精度の異性体別測定を行っている。これらの報告では安価な検出器であるECDを用いながら高分解能質量分析計以上の超低濃度分析を高精度で行っている。
 深海海水中の超微量POPの分析にはこの種の機器分析学上のブレークスルーが必要と考えられる。








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