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第5章 総合考察
5.1 適正なヨシ植栽条件に係る考察
 前章の分析・検討の結果得られた結果を再度整理しつつ、既存の知見も交え、今後のヨシ植栽事業を進めていくにあたり留意すべき条件的事項について以下に考察した。
(1)植栽地盤高について
 ヨシの生育範囲としての水深については多くの既存文献において記述されており、
 ◇湖中の水深1mぐらいまでの範囲(梅原、1996)
 ◇B.S.L.−0.8m程度まで生育可能(宇多ら、1994)
 ◇琵琶湖のヨシが良好に生育している水深は0.6〜0.8m程度(中村ら、1993)
などと言われている。
 琵琶湖の水位は年間を通じて、また年によっても変動することから一概には言えないが、過去10年間について見ると、年平均水位はB.S.L.−19cm程度となっており(前出図4.2.6参照)、これを標準と考えれば宇多らの知見によるB.S.L.−0.8mは年平均水深にして60cm程度、梅原の言う水深1mが年平均水深を指すとすれば逆に琵琶湖水位換算にしてB.S.L.−120cmまでが生育範囲ということになる。
 本調査でB.S.L.−130cmまでの範囲にヨシの生育が見られたことは、梅原の知見と概ね整合しており、また、解析の結果から良好なヨシの生育地盤高がB.S.L.−70〜−20cmと得られたことも、宇多らや中村らの知見と矛盾しない。
 本調査の解析の結果を再整理すると、
 ◇陸域〜B.S.L.−30cm:草丈が高く密度が低いヨシ
 ◇B.S.L.−70〜−30cm:密度の高いヨシ
 ◇B.S.L.−80cm以深:草丈が低く密度の低いヨシ
(生育条件として厳しい)
であった。
 結論的に言えば、ヨシ植栽を実施する場合には、B.S.L.−70〜−20cmの地盤高の範囲で行うのがヨシの生育条件的側面から最も好適であると推察される。
 淡海環境保全財団の植栽事業は、2000(H12)年度以降はB.S.L.−30cmまでを盛土造成して行われており、上記の好適地盤高の範囲であるが、実際にはもう少し深いエリアまでを対象にした方が有効と考えられる。ただし、あまり深いエリアは、植栽時期にもよるが作業効率においてマイナス面を生じることも考えられるため、少なくとも1998(H10)〜1999(H11)年度の植栽地盤高であるB.S.L.−50cm前後までを対象とし、それ以深へのヨシの自然の拡大を期待することが適切であろう。
(2)消波施設の設置について
 今回の調査は、実験計画法の考え方に基づき、主として地盤高に水準を置いて実施したものであり、消波施設について具体的構造等に言及し得るような調査は実施していない。しかし、解析において消波施設の有無を因子として考慮することにより、その効果についての検証を一部試みた。
 結果として、今回の調査地について見るならば、消波施設の設置されたヨシ帯が、設置されていないヨシ帯と比べて必ずしもヨシの生育特性面において勝っていると言える結果は得られなかった。
 しかし、もともと消波施設の設置されているヨシ帯は、波浪の影響の強い苛酷な条件の立地であり、消波施設がなくても生育できる立地との条件的差異があると考えられることから、生育の違いを単純に比較すること自体に無理があるとも言える。
 実際に本調査においても波浪の影響がある測線では沖部のヨシの株立ちが顕著な箇所や、植栽を繰り返せども活着していない箇所が見られており、このような場所での消波施設の設置は不可欠と考えられる。消波施設には単に波浪の影響を抑止するだけでなく、荒天時の流木・古タイヤ等のローリングによるヨシ群落の直接的破壊を防止する効果(桜井ら、1991)もある。
 ただし、前章の解析によれば、消波施設のある測線ではヨシ帯内の底泥の全リン濃度が高くなり、これによって草丈の低いヨシとなる傾向が認められている。また、同一地区内における消波施設の有無を比較検討した結果からも、消波施設の設置された測線では全リン濃度をはじめ、pHや土粒子の均等係数などの値が高くなり、混生植物の種数や被度が増加するといった傾向も認められている。消波によって水の停滞傾向が強まり、枯死植物の堆積・湖水の低酸素が進行し、次第に土壌状態等が変化することによって、そのような環境に適合する他植物が進入し繁茂するようになったためと推察される。これを防ぐためにも、消波を行う際には完全に遮蔽するのでなく、適度に水の交換が確保できるような構造に配慮する必要がある。
 吉良(1991)は、琵琶湖岸の浸食・堆積の少ない安定した岸を縁取る比較的狭いヨシ帯(stable:安定型のヨシ帯)では、適度の水の動きによって土砂の堆積が起こらず、群落内の泥も波の荒い時に一部流されて過度に集積しないため、ヨシ帯内の環境条件がヨシの存在を許す範囲を超えて変化することがないと述べている。このことからしても、過度の消波はヨシの生育にマイナスの効果をもたらす可能性のあることに留意する必要がある。
 今回調査のE地区(今津)のように、消波施設が高く頑丈な箇所では、ヨシ帯内の陸化が認められるとともに、これと土留め布団篭によってヨシ帯がその沖側水域と完全に区切られている状況にあった。先の地盤高条件と合わせ、少なくとも沖側に比較的緩やかな地形勾配が確保できる場所では、ヨシが自力でさらに水深の深い沖側に拡大できるよう、多少の余裕を持たせて設置するよう配慮することが必要と考えられる。
 この意味において、消波施設や土留めの設置位置は、B.S.L.−120cm前後とすることが望ましいと思われる。
(3)植栽地の底泥の物理的条件について
[1]底泥硬度
 底泥の物理的条件として調査した指標のうち、底泥の硬度については、今回の調査ではヨシの生育との間に明確な関係は見られなかった。
 既存の知見として、桜井ら(1991)が土壌の浸食防止のためにフェルトマットを用いて実施した植栽実験の結果から、マットが地下茎の成長や新芽の成長を抑えたということを報告しているなどを勘案すると、地盤の硬さもヨシの生育と全く無関係とは言えないと考えられるが、今回の調査から、植栽にあたり特に留意すべき条件は見出せていない。
 極度に堅い地盤(コーン貫入抵抗800kN/m2以上)や非常に軟らかい地盤(200kN/m2以下)を避ける程度の配慮で十分と考えられる。
[2]底泥粒度
 既存の知見において、ヨシが砂質を好むという知見は多いが、具体的な粒径にまで言及した例は比較的少なく、その見解も必ずしも同じとは言えない。
 桜井ら(1989)は、ヨシを植栽する場合の土壌の粒径は細砂以下の細かい粒子を多量に含む土壌の層厚が50〜60cm必要と述べており、栗原ら(1999)は、ヨシは粘土が30〜70%の範囲で生育可能としている。
 今回の調査では、粒度に係る指標のうち、ヨシの生育指標との間に有意な関係を示したのは、
 ◇粗砂以上割合(個体数密度に対して)
 ◇細砂割合(茎径に対して)
 ◇シルト以下割合(乾重量に対して)
 ◇10%粒径(個体数密度に対して)
 ◇均等係数(個体数密度・草高・茎径・湿重量・乾重量に対して)
の5指標であったが、分布特性と各指標値に対するヨシ生育の出現頻度の傾向からは、上記の指標に中心粒径(50%粒径)や曲率係数も含めた各指標において、ヨシの生育個体数密度に対する少なからぬ関連性が示唆される結果となった。
 本調査の検討の結果を踏まえると、ヨシの生育に適切と考えられる底泥の粒度は、シルト以下5%未満の砂質土壌(細砂〜粗砂)かつ、10%粒径が細質に該当する土壌で、粒径幅があまり広くなく粒子の大きさが比較的一様に揃った土壌(均等係数10未満)と考えられる。
 ヨシ植栽に際しての地盤造成において、川砂や山砂を使用する場合には、あまり粒径が粗すぎないこと、湖底の浚渫土を使用する場合には、ヘドロ等の堆積物によりシルト以下の粒径の粒子が多量に含まれないことに留意する必要があり、できれば事前にその粒度を確認した上で造成することが望ましい。
(4)植栽地の底泥の化学的条件について
 ヨシ生育地の底泥の化学的条件について報告された既存の知見としては、陣野ら(1995)がヨシの生育地の土壌の含水比は約40〜60%、電気伝導度は6.16〜96.5mS/cmとした報告のほか、桜井ら(1986)が地下50〜60cm層の窒素・リン含有量とヨシの地上部現存量との間に正の相関関係が認められたことを報告した例などがあるが、他の有機物量その他の指標について記載されたものは少ない。
 本調査の解析において、分散分析の結果からヨシの生育指標との間で有意な関係が認められた指標は、
 ◇含水率(個体数密度に対して)
 ◇全リン(草高・茎径・湿重量に対して)
 ◇酸化還元電位(草高に対して)
の3指標のみであったが、分布特性や出現頻度に着目して傾向を調べた結果によれば、
 ◇pH、強熱減量、全窒素、硫化物、酸化還元電位
の各指標について、現状のヨシの生育地の環境条件を特徴づける(特定の数値の条件のもとにヨシが比較的集中して生育している)傾向が見られた。
 後者については、統計的有意性が得られていない指標が大半であり、また特定の数値帯に集中しているからといって、ヨシが敢えてそのような環境を選んで生育しているとは限らないという側面は否定できない。ヨシの生育の有無にかかわらず、たまたま湖岸の環境状態そのものの分布特性を反映した結果である可能性もあり、その点を検証できていないからである。また、前章で植栽ヨシ群落の前進・後退や消波施設の有無による環境条件の違いを検討した結果に見るように、生育状況の良好なヨシの立地が常に特定の数値を示すといったものでもなく、ヨシが土性に対して高い適応力を有する(陣野ら、1995)所以からか、数値にばらつきがあり、環境の状態は様々である。
 しかし、実際に今回の調査で認められた、ある程度の幅の条件領域にヨシの多くが生育しているという事実は、植栽の条件をそれに合わせることで、それ以外の条件の箇所に植栽を実施するよりも安全であると判断する根拠にはなり得るであろう。
 このため、ここでは、前章の検討により得られた各指標ごとのヨシの集中する数値帯を、植栽に際しての底泥の化学的特性条件の1つの目安として以下に挙げておくこととする。
◇pH : 概ね6.0〜7.0  
◇強熱減量 : 概ね1〜2%  
◇全窒素 : 概ね0.75mg/g・dry以下  
◇全リン : 概ね0.05〜0.2mg/g・dry  
◇硫化物 : 概ね0.10mg/g・dry以下  
◇酸化還元電位 : 概ね−50〜+250mV  
 植栽の実施に際しては、前記の粒度の確認と併せ、これらの項目についての底泥の化学的性状についても分析を行い、これらの数値帯から大きく逸脱しない状態であることを事前に確認しておくことが望ましい。
 なお、全リン含有量については、先に述べた消波施設との関係から、消波施設の存在によって濃度が上がり、ヨシの生育にマイナス要因となる可能性が示唆されていることから、植栽後の時間経過に伴い次第に数値が上昇し、極度に富栄養化しないよう、消波施設の通水性の確保と合わせて配慮することが必要と考えられる。
 また、酸化還元電位については、地盤高との兼ね合いで、上記の数値が必ずしも適当と言えない場合もある。前述の好適地盤高B.S.L.−20〜−70cmの確保と合わせて配慮する必要があると考えられる。
(5)混生植物に対する留意点
 ヨシと混生植物との関係について検討した結果、陸域でしばしば優占種となる種のうち、アメリカセンダングサとシロネ、ならびに水域で優占種となるスズメノヒエに関しては、これらがヨシ植栽地に進入・繁殖することによって植栽ヨシの消失を招いていると判断し得る根拠は得られなかった。
 しかし、陸域のアメリカセンダングサの群落及び水域のスズメノヒエの群落という構図は、植栽ヨシが消失した後の植生環境を代表するパターンとも言え、これらが繁殖する環境はヨシ群落の末期を連想させる。ヨシ群落の維持管理面でこれらの種の排除を求めるものではないが、これらの種の繁殖は、植栽地の条件がヨシに適合していない証であり、植栽失敗の目安として捉えるべきであろう。
 一方、陸域優占種のメヒシバ及び水域優占種のマコモやウキヤガラに関しては、その被度の増加がヨシの生育に少なからぬ関わりを有していることがうかがえる。
 栗林ら(1988)は、ヨシの生育可能領域は広いものの、泥厚が厚くなると地盤レベルの低い領域ではマコモとの、高い領域ではウキヤガラとの競争に負ける場合があることを述べており、マコモやウキヤガラが増加し、ヨシの衰退が認められる場合には、泥の堆積が進行している可能性があると考えられる。ヨシ群落保全条例が、マコモ、ウキヤガラ等の抽水植物も含めて保全の対象としていることから、これらの種が繁茂し始めたからといって排除することは好ましくないが、これらの種を指標として、過度の泥の堆積を招かないよう、ヨシ群落内の水の交換を保つための消波施設の構造等に留意することが必要と考えられる。
(6)植栽工法の選定
 植栽工法について検討した結果、淡海環境保全財団が特許を保有する挿し木苗法については、陸域からB.S.L.−40cm付近までの水深の浅い領域において、ヨシの生育が良好とは言えず、また、この領域で植栽失敗となる確率のやや高いことも示された。この工法を用いる場合には、陸域は避け、水中でも、やや水深の深いB.S.L.−40〜−70cm付近を対象に植栽を行うのが有効と考えられる。
 実生苗法(ポット法)は、ヨシ茎個体数密度の高い場所もあるが、植栽失敗となる確率も高く、準備や管理、移植に手間のかかる方法であることから、あまり推奨される工法とは言い難い。
 これに対し、マット法は、今回の調査地区に含まれる測線で採用された工法の中では、ヨシ茎個体数密度等の生育特性は最も平均的であり、失敗箇所も比較的少ない。水中植栽が基本となるが、植栽失敗箇所やヨシ生育状況のやや劣るデータに水深の深いものが多いことから、浅い領域(B.S.L.0〜−50cm)に対しての採用が有利と考えられる。
 株植え法(大株法、小株法:堀取苗)は、陸域での植栽において失敗の少ない工法であり、今回の調査の結果からは、密度は平均的であるが形状の大きい(高くて太い)ヨシが期待される工法と言える。
 したがって、今回の調査から判断すると、
 ◇陸域植栽の場合は株植え法(堀取苗)
 ◇水中の浅い領域(B.S.L.−50cm付近まで)への植栽の場合はマット法
 ◇水中のやや深い領域(B.S.L−40〜−70cm付近)への植栽の場合は挿し木苗法
が適当であるように思われる。
 なお、植栽工法に関し、田中・藤井ら(1999)が植栽実験より得た知見によれば、各種植栽工法のうち、マット法は植栽1年目の新芽存在数が最も多く、かつ水深に対する耐久性が高いこと(水深79cmの状況下でも成長)、浸食に対する耐性も高いこと(11cmの浸食部分においても高生育)が示されているほか、森田ら(1998)の植栽実験でも底質が細砂の場所でのマット法植栽において高い活着率が報告されているなど、幾つかの事例でマット法の有効性が確かめられている。
 一方、田中・藤井ら(2002)は、上記後のモニタリングの結果から、植栽後の年数が経過するにつれてヨシの生育特性に対する植栽工法の寄与が小さくなることを示すとともに、活着時には波浪等が大きく影響するが、活着後はある程度の水深を好み、陸域では他植物の侵入などで衰退する傾向のあることも示している。
 すなわち、植栽工法は、初期の活着と作業的効率性を重視して選定し、好ましい場所に好ましい条件のもとで行うことが重要と考えられる。
(7)地形勾配
 解析の結果、本調査で対象とした地区のヨシの大半が生育集中している地形の平均勾配は0〜−0.05、すなわち下り勾配5度(1/20)であった。鈴木ら(1993)や宇多ら(1998)が示した3度と比べればやや大きい値であるが、現状の立地からすれば、ヨシの生育に好適な条件として十分考慮し得る範囲と推察される。
5.2 総括
(1)報告の概要
 以上、本調査研究は、琵琶湖岸におけるヨシ植栽事業の今後の効果的推進に向け、適正なヨシ植栽の条件を見出すことを目的として、既存文献調査、現地調査及びそのデータ解析を行ったものである。
 現地調査は、南湖東岸3地区、北湖東岸1地区、北湖西岸1地区の計5地区の既往ヨシ植栽群落及び自生ヨシ群落を対象として、各地区3〜4、計16測線を設定し、地盤高10cmごとにコドラートを設けて植生、ヨシの生育特性等を調べるとともに、代表箇所の地質・底質を分析した。
 これによって得られたデータをもとに、ヨシの生育特性と環境条件との関わりを、多元配置分散分析の手法を用いて解析するとともに、各データの分布特性から、ヨシの生育に影響を及ぼしていると考えられる指標の抽出とその大まかな数値範囲の推定など、今後のヨシ植栽において参考とし得る条件を見出すべく、種々データ分析を実施した。
 解析・検討の結果推定された主な結論の要点については、前節において考察したとおりである。
(2)植栽成功率の向上目標
 上記の調査研究の成果を踏まえ、今後のヨシ植栽事業に向け、目指すべき植栽成功率の目標を設定する。どの状態をもって植栽が成功したかを評価するのは難しいが、仮に前章の検討において示したヨシ茎個体数密度が平均値以上であることをひとつの目安とするならば、現状における植栽成功率は、
 ◇挿し木苗法:28.5%
 ◇マット法:30.4%
 ◇実生苗法:33.3%
 ◇株植え法:37.5%
となる。
 滋賀県及び淡海環境保全財団が現状で採用している工法の主体がマット法であることから、これを基準とすれば、植栽成功率10%向上で全体目標は40%、20%向上で全体目標は50%となる。
 本報告では今後の目標設定を次のとおりとする。
 
**植栽成功率向上目標**
 現状プラス20%
 平均ヨシ密度50本/m2以上の
 ゾーンが植栽全面積の50%以上
(3)まとめ
 調査研究のまとめとして、前節で述べた本調査研究の結果に基づく今後の植栽事業実施に際して留意することの望ましい条件を表5.2.1に総括した。
 琵琶湖におけるヨシ群落は、景観保全、生物保全、水質浄化など様々な機能を有し、琵琶湖そのものの自然環境の維持と人々の生活文化の継承に貢献してきた。現在、滋賀県及び淡海環境保全財団等が進めるヨシ植栽事業及びその維持管理事業は、これまでの人為干渉によって減少したヨシ群落の復元と機能の回復を目指すものである。
 このため、植栽の主旨はあくまでも琵琶湖を取り巻く自然環境に目を向けたものでなければならない。
 ヨシ群落保全基本計画に沿って、目標とするヨシ群落の面積を確保すべく努力の必要なことは言うまでもないが、目標は面積だけでなく、琵琶湖岸のヨシ帯の本来の姿に求める必要がある。
 植栽事業を進めるにあたっては、画一的なヨシ団地を造成するのではなく、なだらかな湖岸に自然的に生育するヨシ原を復元させることに最も力を注ぐことが大切と考えられる。そのためには、少ない植栽エリアから派生的に自生のヨシが拡大するような活力のあるヨシ群落の再生を目指し、それが可能な植栽工法の採用、条件の整備について、今後さらに検討していくことが必要であろう。
 
 
**第5章引用・参考文献**
1)中村宣彦・山下祥弘・北牧正之.1993.琵琶湖におけるヨシ植栽.ダム工学.No.9.p66−76
2)桜井善雄・苧木新一郎・田代清文.1989.湖岸・河岸帯の植栽時における侵食防止材料の検討.日本陸水学甲信越支部
3)桜井善雄・苧木新一郎・田代清文.1991.湖岸・河岸帯の植栽時における土壌侵食防止材料の検討(第2報).水草研究会会報.No.44.p100−105
4)桜井善雄・渡辺義人・村沢久美子・滝沢ちやき.1986.湖沼沿岸帯における抽水植物の立地条件.日本陸水学甲信越支部.No.11.p138−139
5)陣野信孝・梅野美佐.1995.長崎県諫早市本明川水系におけるイネ科植物(ヨシ、ツルヨシ、アイアシ、オギ、ススキ)の生育地の土壌性質.長崎大学教育学部自然科学研究報告.NO.53.p19−26
6)田中周平・藤井滋穂・山田淳・市木敦之.1999.琵琶湖岸ヨシ生育に及ぼす植栽工法・条件の影響.日本水環境学会年会講演集.Vol.33.p218
7)栗原康・山崎博道・鈴木孝男.1999.エコテクノロジーからみた浚渫底泥の有効利用−3.人工汽水性湿原法.用水と廃水.VoL.41−7.p22−26
8)鈴木紀雄・川嶋宗継・遠藤修一・板倉安正・木村保弘.1993.琵琶湖におけるヨシ群落に関する研究―ヨシ群落内の物理・化学・生態的性状―.滋賀大学教育学部紀要 自然科学・教育科学No.43. p19−41
9)梅原徹.1996.原野と基調植物.琵琶湖研究所シンポジウム記録(農山村地域の生物と生態系保全).第14回.p427−437
10)宇多高明・吉田隆昌・西嶌照毅・富士川洋一.1994.植生を利用した湖浜保全に関する一考察―琵琶湖を例として―.海岸工学論文集.Vol.41.p1111−1115
11)栗原実・永野正弘・梅原徹.1988.琵琶湖北湖のヨシ帯の現状とその保全.滋賀県生活環境部. p1−29
12)宇多高明・小菅晋・伊藤正光.1998.風浪の作用下での湖岸への植生の繁茂条件について.海岸工学論文集.Vol.45.p1116−1120
13)吉良竜夫.1991.ヨシの生態おぼえがき.琵琶湖研究所報 特集:水辺保全のあり方を探る.No.9. p29−37
14)田中周平・藤井滋穂・山田淳・市木敦之.2002.多元配置分散分析による植栽ヨシの生育影響要因の解析.日本水環境学会年会講演集.
表5.2.1 今後の植栽事業の実施に際し留意することが望ましい条件の総括
指標 望ましい植栽条件
植栽地盤高 B.S.L.-70〜-20cm
(B.S.L.-50〜-30cm程度を主体に植栽し、その前後への自然的拡大を期待するのも有効)
消波施設 波浪の影響の予想される箇所(基本的には内湾等を除く全箇所)に設置。
ただし、ヨシ群落内と沖側の水の交換が確保できる構造に配慮する必要あり。.
設置水深:布団篭と合わせ、B.S.L.-120cm前後への設置が望ましい。
底泥硬度 極度に硬い地盤と極度に軟らかい地盤を避ける程度の配慮でよい。
底泥粒度 シルト以下5%未満の砂質土壌(細砂〜粗砂)
かつ、10%粒径が細質に該当する土壌で、粒径幅があまり広くなく粒子の大きさが比較的一様に揃った土壌(均等係数10未満)
底質特性 pH:概ね6.0〜7.0
強熱減量:概ね1〜2%
全窒素:概ね0.75mg/g・dry以下
全リン:概ね0.05〜0.2mg/g・dry
硫化物:概ね0.10mg/g・dry以下
酸化還元電位:概ね-50〜+250mV
平均地形勾配 下り勾配0〜5度(1/20)
植栽工法 ◇陸域植栽:株植え法(堀取苗)
◇浅水域(B.S.L.-50cm付近まで):マット法
◇やや深水域(B.S.L.-40〜-70cm付近):挿し木苗法








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