日本財団 図書館


[4]底泥粒子の均等係数と曲率係数
 上述のように底泥の粒子の割合や粒径がヨシの生育にある程度の関わりを持つことが示唆されたが、さらに粒度の分布形態が影響しているか否かを、均等係数と曲率係数を指標として見てみる。
 これまでと同様、それぞれヨシ茎個体数密度との関係を図4.2.13に、ヨシ存在コドラート数の頻度分布を図4.2.14に示す。
 
z1138_01.jpg
図4.2.13 粒度係数とヨシ茎個体数密度の関係
z1138_02.jpg
図4.2.14 粒度係数値別ヨシ存在コドラート数
 なお、図表示にあたり、E−1測線の沖域底泥採取点(20m地点、ヨシ無し)の均等係数と曲率係数はそれぞれ226.7及び28.2、またA−2測線26.7mの均等係数は120.4と他のデータと比べて特異的であり、これを表示すると全体の傾向が見えにくくなる可能性がある。このうち前者のE−1(20m地点)はもともとヨシの存在しない地点でもあるため図中から除外した。
 第3章で示したように、均等係数は粒度分布曲線の傾度を表す指標であり、値が大きいほど粒度分布の幅の広いことを示す。図4.2.13によると、分類群「低多」の1つのデータ(A−2,26.7m)を除けば、この値が小さいほど密度の高いヨシから低いヨシまで多くのコドラートが集中し、値が大きくなると密度も低下する傾向が見られる。ヒストグラムによれば全体の半数強(18/32)が均等係数10未満、8割強が均等係数20未満である。
 一方、曲率係数は粒度分布のなだらかさを表す指標であり、これにより粒度が幅広く一様に分布するか、同一粒径の集まりが断続的にあって分布曲線が階段状を呈するかを読みとることができる。
 曲率係数も均等係数と同様、値の小さい側に密度の高いヨシから低いヨシまで多くのデータが集まり、曲率係数の値が大きくなるにつれてヨシ密度が低下する傾向が見られる。全体の約8割(26/32)が曲率係数1.5未満である。
 ここで、日本統一分類法による粒度分布の良否判定の方法を用い、対象データの判別を行ってみる。
 判定方法を表4.2.2に、判定結果を分類群ごとのヨシ茎個体数密度との関係と合わせて図4.2.15に示す。
表4.2.2 日本統一分類法による粒度の判定方法
 
 均等係数U、曲率係数Fの値が
 
 U≧10 かつ 1<F≦U のとき → 「粒度が良い」
 U<10 のとき → 「粒度が悪い(均等粒度)」
 U≧10 かつ F≦1 or F>U のとき → 「粒度が悪い(階段粒度)」
 
 
z1139_02.jpg
図4.2.15 粒度分布良否とヨシ密度の関係
 これによると「粒度が良い」と判定された底泥はいずれもヨシ草丈の低い(低多・低少)グループであり、ヨシ草丈の高い(高多・高少)グループは全て「粒度が悪い」と判定された。
 「低多」の粒度は全てが「粒度が良い」または「階段粒度」であることから、均等係数は全て10以上ということになる。また、これ以外のグループのデータは大半が「均等粒度」である。
 すなわち、このデータのみの解釈によれば、粒度分布の幅の広い底泥の場合には背丈が低く密度の高いヨシが生育する傾向があり、主として背丈の高いヨシは、比較的粒度の幅の狭い(粒径の近い粒子により構成される)底泥に生育する傾向のあることが示唆される。
 均等係数は、前節の1元配置分散分析において、平均茎個体数密度と草丈、茎径、湿重、乾重の各生育指標に対し5〜1%有意の判定結果となり、最もヨシの生育に影響を及ぼしていると考えられる指標であった。また、曲率係数も平均茎個体数密度に対し5%有意の判定が得られている。
 このことから、特に均等係数はヨシの生育条件としての土壌の粒度を評価するのに最も適する指標になり得る可能性があると考えられる。 以上より、土壌の粒度に関して結論的に言えば、全般的には細砂〜粗砂の間の粒子で、かつ粒径幅があまり広くなく粒子の大きさが概ね一様に揃った(均等係数が小さい)粒度を有する底泥であることを、ヨシ植栽の一つの条件的目安として挙げることができるように思われる。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION