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(3)地盤高と生育特性の関係
 地盤高別のヨシ茎個体数密度の分布を図4.2.4に、地盤高別のヨシ存在コドラート数の頻度分布を図4.2.5に示す。
 
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図4.2.4 地盤高別ヨシ茎個体数密度の分布
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図4.2.5 地盤高別ヨシ存在コドラート数
 図4.2.4によれば、地盤高B.S.L.−90cmに密度300本/m2超、−70cmに250本/m2超の特異的に高いデータが見られるが、これを除くと概ね山形の分布を呈しているのがわかる。
 すなわち、地盤高B.S.L.−130〜+40cmのかなり広範囲にヨシの生育が認められるが、分布の中心はB.S.L.−40cm前後にあってその辺りのヨシの生育密度が相対的に高く、範囲の両端に近づくほど生育密度は低くなる傾向が認められる。
 ヨシの生育できる水深は一般に0.8〜1m程度とする知見があるが、今回の調査ではB.S.L.−130cmというかなり深い領域までヨシの生育が見られた。もっとも、これには琵琶湖水位の変動も関与していると考えられることから、B.S.L.−130cmが水深130cmと等価というわけではない。ヨシの主な生育期間である4月〜8月の平均水位は、ここ10年間でみると一部の年を除きB.S.L.±3cm程度の年が多く(図4.2.6参照)、その意味ではB.S.L.水位がヨシの生育水深に近いとの見方もできる。しかし、今回の調査の前年である2000年は8月の水位が低く(B.S.L.−60cm程度まで低下)、渇水に近い状況であったことから、これに影響されて、今回の調査年(2001年)はたまたまより深い領域までヨシの範囲が拡大していた可能性も否定できない。
 
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図4.2.6 過去10年間の琵琶湖の水位
 いずれにしてもB.S.L.−100cm以深のヨシはどれも「低少」のグループに分類されるヨシであり、良好な生育条件とは言えない。それ以浅のヨシ帯が活性を有し、水深的に生育可能な限界付近・他の条件を含めた許容範囲まで精一杯拡がった結果と考えられる。ちなみにこれらのヨシコドラート(7データ)は次のコドラートである。いずれも南湖の測線に設定したコドラートであり、B−1、B−2は北山田地区で植栽帯から沖側に派生したヨシ、A−4、C−3はそれぞれ南山田地区と木浜地区の自生ヨシである。
《B.S.L−100cm以深のヨシコドラート》
 B−1(21.7m)B.S.L.−100cm 低太少
 B−1(25.2m)B.S.L.−110cm 低太少
 B−1(30.9m)B.S.L.−120cm 低太少
 B−1(34.6m)B.S.L.−130cm 低太少
 B−2(44.1m)B.S.L.−110cm 低太少
 A−4(23.5m)B.S.L.−100cm 低細少
 C−3(43.2m)B.S.L.−100cm 低細少
 図4.2.5のヨシ存在コドラート数の頻度分布からは、全般的な分布の中心とは別に各分類群の分布傾向の特徴が見える。
 ここで各分類群ごとに地盤高の平均値±標準偏差から主要な分布範囲を算出してみると、
 ・高多:B.S.L.−65〜−12(平均:−39)cm
 ・低多:B.S.L.−70〜−14(平均:−42)cm
 ・高少:B.S.L.−32〜+23(平均:−4)cm
 ・低少:B.S.L.−49〜+46(平均:−2)cm
となった。
 「高多」と「低多」のグループには大きな差はなく頻度分布図を見てもこれら個体数密度の高いヨシの分布の主体は上記の範囲に比較的集中している。
 「高少」グループのヨシ分布の主体は上記2グループよりも相対的に地盤の高いエリアである。
 「低少」グループのヨシは各地盤に比較的満遍なく分布していることから数値的には上記のとおりとなったが、前述のように、水深の深いエリアに分布するヨシのほとんどはこのグループである。
 結論的に言えば、密度の高いヨシの生育条件として好適な地盤高はB.S.L.−70〜−20cm程度であり、浅い水深(B.S.L.−30cm程度)から陸域にかけては背が高くて密度の低いヨシとなる傾向にあると言える。また、水深が1mを超えるエリアに生育できるヨシは稀であり、かつ生育できても背が低く密度の低いヨシとなる可能性が高いと考えられる。
 これらのことは、前節の2元配置分散分析において、地盤高の範囲B.S.L.−70〜−20cmがヨシの生育にプラスの効果を示し、B.S.L.0cm以高は緩やかな負の効果、B.S.L.−80cm以深は負の効果が大きかったこととほぼ整合するものである。








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