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[3]地盤高がヨシの生育に及ぼす影響の検討
 主効果Gjに関する係数値を整理し、地盤高別の効果を図4.1.1にて検討した。
 
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図4.1.1 主効果Gjの地盤高別の分布
 図より、地盤高B.S.L.−70cm〜−20cmにおいて、主効果Gjがプラスに寄与していることが分かる。一方、B.S.L.−80cm以深では負の効果が大きく、ヨシの生育には厳しい条件下であることがわかる。また、B.S.L.0cm以高の地盤高においても、緩やかながら負の効果が得られた。ヨシは抽水植物であり、冠水する立地を好む傾向が表れたものと考えられる。
 A〜Eの各地区別のヨシの地盤高別生育特性を図4.1.2に示す。
 
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図4.1.2 地区別の地盤高別ヨシ生育特性
 これによれば、地盤高B.S.L.−60cm〜−40cmにかけては全ての地区において茎密度が高い傾向を示した。C地区では地盤高B.S.L.−30cm以高においてヨシ茎個体数密度0本/m2を示したが、陸域には石積があり、ヨシが生育できない環境となっていた。また、E地区ではB.S.L.−70cm以深は消波柵によって区切られており、ヨシが沖域に進出できない環境であった。他地区の結果から判断すると、C地区では現在より20cm高い地盤高までヨシの生育が可能であり、E地区では沖に地盤整形を伴い消波柵を移動することであと10cm深い位置までヨシの植栽が可能であると推測される。
 地区別では、A地区が陸域で高く、C地区が沖域で高い茎密度となった。
 測線別の地盤高別ヨシ生育特性を図4.1.3に示す。
 
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図4.1.3 測線別の地盤高別ヨシ生育特性
 
 先ず、A地区では、A−2測線が陸域で高い茎密度を示し、A−4測線が沖域で高い茎密度を示した。A−4測線は帰帆北橋の内湾側に位置し、他地区に比べて波浪の影響が小さいことから、沖域まで茎密度を伸ばしたと考えられる。一方で、A−1測線の地盤高B.S.L.−70cmにおける高密度は株立ちのヨシであり、波浪影響のある測線では沖域での生育が不良であった。A地区における植栽では、波浪影響を取り除くことが重要であると推察される。
 B地区では測線ごとの茎密度の差が大きい結果となった。B−1測線は自生群落の割合が大きく、沖域での生育も良好であった。一方で、B−3測線は植栽を繰り返せども活着していない。この場所は、地盤高ではなく波浪方向が大きく寄与しているものと推測される。波浪の影響が強いと推測される凹型の植栽地では十分な消波が必要であると推察される。
 C地区では、自生群落であるC−3測線が沖域に広がっているのに対して、植栽地のC−1、C−2測線のヨシが狭い地盤高に集中して生育している様子が見て取れる。消波施設の効果からか高い密度を示したが、湖辺のヨシ群落に求められる効果として生物種の多様性を挙げるとすれば、もう少し広範囲に植栽地盤高を広げることも必要であると考えられる。
 D地区では、自生群落のD−1測線でB.S.L.−70cmまで群落の広がりが見られた。D−2測線、D−3測線はなだらかな勾配の整形地に高い消波施設が設置された植栽地であり、広範囲にヨシが分布していたが、D−3にて茎密度が高く、D−2では低い傾向を示した。D−3測線では、消波施設の間に水流を確保する隙間があり、一方D−2測線ではその隙間が無いことから、水の停滞が関与している可能性も考え得るが、沖に近いヨシ帯内の滞水の溶存酸素量(DO)はともに2.0mg/l程度で、どちらも低酸素状態という点においては違いが見られていない。
 E地区では、比較的高い地盤高にヨシが植栽されていた。E−3測線は消波施設も高く頑丈なことから、ヨシ植栽地がほぼ陸化している。ヨシは生育していたが、湖辺のヨシ群落に求められる多様性を育む場としては、もう少し沖域まで群落を広げる検討も必要ではないかと考えられる。








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