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測線E−3 今津町桂 
淡海財団植栽群落(消波あり)
ヨシの形状特性等
 ヨシ茎個体総数は199本であり、平均茎個体数密度はコドラート平均で55.4本/m2であった。平均形状は、茎高が206.3cm、草丈が242.3cm、茎径は6.4mmであった。全地区総平均値に比べて、茎密度、草丈、茎径のいずれもやや大きい結果となった。1m2あたりの平均湿重量は1788g、乾重量866g、ヨシ1本あたりの平均湿重量は32.1g、乾重量は15.9gであり、これらも総平均を上回った。
 測線の断面変化では、陸側から沖に向けて12m付近までは茎密度が増加し、その後漸減する傾向が見られた。草丈と茎径は、平均的に陸沖方向での変化が少ない状況にあった。
植生の概況
 岸はメヒシバ、(刈取草地)優占群落である。岸から沖へ向けてヨシ群落が連続し、その草丈に変化は少ない。ヨシ群落内の混生種はアメリカセンダングサ・キシュウスズメノヒエ・アゼナ・ヒレタゴボウ等、多様であった。
地形・土質の概況
 汀線は東北東を向いている。湖底地形の縦断面形状は概ね平坦であった。
 湖底堆積物の土質は、15m付近までは「砂」、消波柵までは「砂+シルト」「砂+礫」、消波柵から側では「砂+シルト+礫」であった。
 湖底堆積物の硬さは、15m付近までの「砂」層では「中位の〜硬い」、消波柵までの「砂+シルト」では「硬い」、「砂+礫」層では「硬い」であり、消波柵から沖側の「砂+シルト+礫」層では「硬い」であった。
 6.0m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.20〜0.35m、土質「砂」、硬さ「硬い」であり、19.5m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.20〜0.35m、土質「砂+礫」、硬さ「硬い」であった。
底質・粒度の概況
 ヨシ帯内では陸端の地点において強熱減量と全窒素がヨシ帯内の他の地点の約10倍の高い値を示しており、有機物が蓄積しやすい状況であると考えられた。本地点は酸化還元電位は比較的高い(+273mV)が、含水率が高く、粒度分布の約45%がシルト質以下の粒子で構成されており、硫化物濃度も比較的高いため継続して嫌気的になりやすい底質であると考えられた。陸端を除く他の地点では、陸から沖に向けて、強熱減量、全窒素、全リン及びIL/N比がほぼ一定の分布を示し、有機物の堆積および無機化の状況が類似していることが考えられた。また、酸化還元電位(ORP)からみる底質の状態は、沖に向けて好気的な状況(+331mV,+290mV)を示した。粒度分布には明確な差異は見られなかった。
 群落外沖合の地点では、強熱減量はヨシ帯内沖側地点と同程度であり、有機物の堆積状況が類似していると考えられた。全リンはヨシ帯内より高い濃度であった。また、粒度分布は全体に小さい粒径で構成されており、シルト質以下の粒径が占める割合が約55%(ヨシ帯内沖側では1%以下)と高くなる傾向が見られ、硫化物濃度が他の地点より高かったことより、継続して嫌気的になりやすい環境であったことが示唆された。
 本測線では、陸側に有機物の堆積が多いが、ヨシ帯内の沖寄りでは群落外沖合に近い状況であった。しかし、本測線のヨシ帯と沖合の地点間には防波柵があり、地盤高が防波策を境に約0.6m低下していたことから、ヨシ帯内、外の底質の連続性は考えにくい。参考として現地採取したヤシマットを分析した結果、全窒素は1.4mg/g・dry、全リンは0.550mg/g・dryであり、ともにヨシ帯内(陸端除く)よりも高い値であった。
 
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図3.4.36 E−3測線の植生・地質断面及びヨシの形状特性
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図3.4.37 E−3測線の底質・粒度
〈備考〉横軸は基点からの距離(m)
 
**第3章引用・参考文献**
1)滋賀県自然保護課.2001.3.ヨシ群落造成事業の実績と評価 調査報告書.18pp(資料編除く)
2)淡海環境保全財団.内部資料平成4〜11年度ヨシ植栽調書、植栽事業概要書
3)滋賀県自然保護課 調.2000.11.ヨシ群落造成地の現況調査資料
4)地盤工学会基準 JGS1431−1995.ポータブルコーン貫入試験方法
5)滋賀県琵琶湖研究所.1987.3.湖岸システムの機能とその評価に関する総合研究報告.滋賀県琵琶湖研究所プロジェクト研究報告書.65−102、110−131.
6)土質工学会編.1979.土質試験法(第2回改訂版).学芸出版社
7)テルツァギ・ペック.1969.土質力学基礎編.星埜、加藤、三木、榎並共訳.丸善(株)
8)松田敬一郎編.1997.土壌学.文永堂出版(ISBN 4−8300−4031−9)








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