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1.2 報告書の構成及び作業フロー
 調査研究の成果は、本報告書の第2章から第5章までの4章構成でとりまとめた。各章の内容と構成を作業の流れと併せて図1.4に示す。
 
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図1.4 本調査研究の内容及び作業の全体フロー

 報告書の第2章では、本調査研究において種々の調査・検討を行うに際し踏まえるべきヨシに関する知見ならびに参考にし得る必要な情報の収集・整理を行った。収集した文献や資料については、文献資料名・発行諸元・分野区分・キーワード等を整理して一覧表を作成するとともに、パソコン上で検索・分類が可能なようにデータベース(DB)化した。また、これらの文献資料記載内容から本調査研究に有用と考えられる情報を抽出し、ヨシの生理・生態(生育と環境条件との関わりを含む)、ヨシの環境保全機能、ヨシの植栽工法の区分で、これまでに得られている既存の知見の概要をとりまとめた。さらに、当淡海環境保全財団や滋賀県が保有する資料及び過去の報告書等をもとに、琵琶湖岸におけるヨシ植栽のこれまでの実績と内容等を把握し、その概要を整理した。
 第3章には、琵琶湖岸の既往ヨシ植栽地の代表的な場所で実施した現地調査の内容と結果を掲載した。先ず、現地調査の事前準備として、第2章で整理した琵琶湖岸におけるヨシの植栽実績を踏まえ、現地下見を行った上で既往植栽地の中から代表調査地区を5カ所選定し、各地区ごとに3〜4断面の調査測線を設定した。次に現地で各調査測線の断面測量を実施して地形の高低変化を把握したのち、琵琶湖水位(B.S.L.)を基準とする比高に配慮しつつ、測線上に代表調査地点(コドラート)を設定した。これらのコドラート調査を基本とする現地調査は、ヨシの生育密度・形質特性、植生、底泥等の各要素を対象として夏季に実施し、次章以降の解析及び考察・検討を行うための基礎情報とする観点から結果を整理した。
 第4章では、上記の現地調査で得られた各コドラートのヨシの生育特性及び地盤高・底泥の粒度・底質・混生植物等のデータを用い、ヨシの生育と環境条件との関わりをみることを主眼としてデータ解析を行った。解析には実験計画法に基づく分散分析の手法を用い、ヨシ茎個体数密度を目的変数とした2元配置分散分析と、ヨシの生育特性値と関連性を有する地質・底質指標の抽出・評価を行うための1元配置分散分析を実施した。また、この結果を踏まえつつ、統計的検定の手法とは別の視点から、各コドラートの環境要素データの分布傾向や頻度を定性的に分析し、これら要素とヨシの生育との関連の可能性及びその大まかなデータ範囲について考察した。なお、上記の解析前半に当たる分散分析の手法を用いたヨシ生育条件の解析については、立命館大学が水資源開発公団及び財団法人琵琶湖・淀川水質保全機構との既往の共同研究において、野外植栽実験施設での調査により得られたデータの解析に採用した実績があり、その成果の中で有効性が確かめられている。このため、本調査研究でも基本的にその手法を踏襲した。
 以上のヨシに係る既存の知見(第2章)、既往植栽地での現地調査データ(第3章)、これらを用いた分散分析その他の解析の結果(第4章)をもとに、報告書の第5章では、種々の環境条件とヨシの生育との関係について得られた定量的・定性的に総括的に考察し、得られた知見を結論として整理した。
 この結論を、今後のヨシ植栽事業において留意することが望ましい条件として、植栽成功率の向上に有効に役立てるための提言とし、報告書全体のまとめとした。
1.3 調査研究の体制
 本調査研究は、淡海環境保全財団が日本財団より平成13年度助成事業の認定を得、実業務を東レエンジニアリング(株)に委託して実施した。
 東レエンジニアリング(株)は、自らの体制として各分野の専門性を有する技術者を主担当技術者として配し、これを管理技術者が統括するとともに、加えて、当該分野の研究に先行的に取り組んでいる立命館大学理工学部の山田淳教授の研究室と共同研究体制を組み、当該研究室在籍の田中周平氏らの助力を得るとともに、京都大学大学院工学研究科の藤井滋穂教授(元立命館大学助教授)の指導を得て調査研究実務を遂行した(図1.5)。
 
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図1.5 調査研究の体制

 大学側からは全般にわたり指導・助言・調査等実務の協力を得たが、中でも多元配置分散分析手法を用いたデータ解析には、藤井教授及び田中周平氏の既往の研究技術が特に活かされた。本報告書第4章「4.1分散分析によるヨシ生育環境条件解析」の項のほか、現況調査結果の記述の一部は、田中周平氏に分担執筆していただいた原稿をもとに編集・とりまとめた。
 
**第1章引用・参考文献**
 1)西川嘉廣.1999.12.ヨシと人の暮らしと係わり.関西自然保護機構会報、21(2):301−338
 2)前河孝志.1999.12.ヨシ群落と魚類群集.関西自然保護機構会報、21(2):161−166
 3)須川恒.1999.12.ツバメの集団塒地となるヨシ原の重要性.関西自然保護機構会報、21(2):187−200
 4)滋賀県発行.1996.9増補改訂版.ヨシ群落保全条例のあらまし.滋賀県琵琶湖環境部エコライフ推進課編集.49pp
 5)滋賀県自然保護課.2001.3.ヨシ群落造成事業の実績と評価  調査報告書.18pp(資料編除く)
 6)藤井滋穂(研究代表者).2000.3.湖沼沿岸域におけるヨシ帯群落の機能ならびに成長要因に関する研究.平成9年度〜平成11年度科学研究費補助金基盤研究B(2)研究成果報告書.145pp








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