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運輸政策研究機構 2002.5NO.6
研究調査報告書要旨
第9回大都市交通センサス
1.調査の目的
 大都市交通センサスは、首都圏、中京圏、近畿圏の三大都市圏において、鉄道、バス等の大量公共輸送機関の利用実態を調査し、各都市圏における旅客流動量や鉄道、バス等の利用状況(利用経路、乗り換え関係、端末交通手段、利用の時間帯分布等)を把握するとともに、人口の分布と輸送量との関係、輸送需要構造等の分析を行い、三大都市圏における公共交通政策の検討に資する基礎資料を提供することを目的に実施するものである。
 
2.調査体系
 第9回大都市交通センサス調査は、鉄道利用者等を対象とした「鉄道利用者調査」と、バス・路面電車利用者等を対象とした「バス・路面電車利用者調査」の2つに分かれ、両調査においてさらに以下の[1]〜[9]の実態調査を実施した。
(1)鉄道利用者調査
[1] 鉄道定期券利用者調査
定期券利用者アンケートによる行動実態を含むOD調査
[2] 鉄道普通券調査
鉄道事業者の自動改札機データまた着券によるOD調査
[3] 鉄道輸送サービス調査
事業者アンケートによる供給輸送力の調査
(2)バス・路面電車利用者調査
[4] バス・路面電車定期券利用者調査
定期券利用者アンケートによる行動実態を含むOD調査
[5] バス・路面電車OD調査
バス・路面電車事業者によるOD調査
[6] 系統別輸送サービス調査
事業者アンケートによる系統別供給輸送力の調査
また、本調査に関連して、当機構が主体となり、以下の3種類の調査を実施した。
[7] 鉄道利用実態調査
鉄道利用者アンケートによる行動実態(属性、目的、経路、時間等)調査
[8] バス利用実態調査
バス利用者アンケートによる行動実態(属性、目的、経路、時間等)調査
[9] 乗換え施設実態調査
現地踏査による鉄道駅の乗換え時間・乗換え距離等の調査
 
3.調査結果の概要
(1)三大都市圏における鉄道利用者数の動向(鉄道定期券、鉄道普通券)
[1] 首都圏
 首都圏における鉄道利用者の総数は5,071万人/日・往復であり、定期券利用が69.8%、普通券利用が30.2%を占めている。平成7年と比較すると、定期券利用は1.4%減少しているが、普通券利用は6.3%増加しており、新線開業による利用増も含めて、全体では0.8%の増加となっている。この10年間では、定期券が減少し普通券が増加しており、定期券から普通券利用ヘシフトしている傾向がみられる。
 
[2] 中京圏
 中京圏における鉄道利用者の総数は420万人/日・往復であり、定期券利用が68.5%、普通券利用が31.5%を占めている。平成7年と比較すると、定期券、普通券とも減少しており、特に定期券の減少が大きい。
 
[3] 近畿圏
 近畿圏おける鉄道利用者総数は、1,995万人/日・往復であり、定期券利用が67.2%、普通券利用が32.8%を占めている。平成7年と比較すると、定期券利用は5.8%減少し、普通券利用は6.4%増加しているが、合計では2.1%の減少となっている。この10年間は鉄道利用者の総数は減少傾向にあるが、普通券については、増加傾向が続いており、首都圏と同様に普通券へのシフト傾向がみられる。
(2)三大都市圏の通勤・通学輸送の動向(鉄道定期券、バス等定期券)
[1] 通勤・通学別の総交通量
 三大都市圏における公共輸送機関を利用する通勤・通学総量は、首都圏では893万人/日・片道、中京圏では87万人/日・片道、近畿圏では、346万人/日・片道であり、首都圏は中京圏の約10.3倍、近畿圏の約2.6倍となっている。通勤・通学者の割合を圏域別にみると、首都圏では通勤者が全体の8割を占めているが、中京圏では6割、近畿圏では7割となっている。性別の定期券利用者をみると、中京圏、近畿圏においては、男女比がほぼ半分ずつとなっているが、首都圏においては、男性が6割、女性が4割となっている。
 
[2] 通勤・通学総交通量の推移
 平成2年から10年間の流動量の変化をみると、首都圏では、平成7年より62万人/日・片道が減少しており、これまで一貫して増加していた通勤・通学者が減少に転じている。中京圏では、平成2年から平成7年にかけては微減であったが、平成7年から12年にかけては約19万人/日・片道の減少となっている。近畿圏では、平成2年以降減少に転じており、平成7年から12年にかけては約36万人/日・片道減少し、この10年間で2割近く定期券利用者が減少している。
 
図−1 首都圏の地域間交通流動量変化(H7→H12)

 
(3)通勤・通学交通流動(鉄道定期券、バス等定期券)
[1] 首都圏
 首都圏においては、東京23区を発着地とする通勤・通学流動が主体となっており、特に、23区外周の地域ブロックからの交通流動が多いが、平成7年と比較すると、23区外周の地域ブロックからの流動が減少している。神奈川県内の地域ブロック間や、圏域外縁部の地域ブッロクから23区への流動は微増傾向となっている(図−1)。
 
図−2 中京圏の地域間交通流動量変化(H7→H12)

 
[2] 中京圏
 中京圏においては、名古屋都心地区を発着地とする通勤・通学流動が主体となっている。平成7年と比較すると、ほとんどの地域ブロックからの都心地区へ向かう流動が減少している(図−2)。
 
[3] 近畿圏
 近畿圏においては、大阪都心地区を発着地とする通勤・通学流動が最も多いが、神戸市、京都市を中心とする交通流動もみられる。平成7年と比較すると、ほとんどの地域ブロックから都心地区へ向かう流動が減少している(図−3)。
 
図−3 近畿圏の地域間交通流動量変化(H7→H12)

 
(4)通勤・通学所要時間の変化(鉄道定期券、バス等定期券)
[1] 首都圏
 首都圏全体の平均所要時間は68.2分であり、平成7年と比べて0.7分の短縮となっている。通勤の所要時間は66.9分であり、通学の所要時間は、通勤の所要時間よりも6.1分長く73.0分である。経年的にみると、通勤の所要時間は微増しているものの、通学の所要時間は平成7年よりも4分の短縮となっている。
 
[2] 中京圏
 中京圏全体の平均所要時間は64.3分であり、平成7年と比べて4.2分の短縮となっている。通勤の所要時間は59.0分であり、通学の所要時間は、通勤の所要時間よりも13.6分長く72.6分である。経年的にみると、通勤・通学とも平成7年に比べて所要時間の短縮がみられる。
 
[3] 近畿圏
 近畿圏全体の平均所要時間は64.9分であり、ほぼ中京圏と同程度である。また、平成7年よりも2.8分短縮している。通勤の所要時間は61.2分であり、通学の所要時間は、他の都市圏と同様に、通勤の所要時間よりも14分長く75.2分である。経年的にみると、中京圏と同様に、通勤・通学とも平成7年より短縮している。
 
報告書名(1) : 「平成12年大都市交通センサス報告書総集編」
(資料番号130048)首都圏 A4版 290ぺージ
(資料番号130051)中京圏 A4版 261ぺージ
(資料番号130054)近畿圏 A4版 298ぺージ
報告書目次
I. 調査の目的と構成
II. 三大都市圏における公共輸送機関の利用実態
III. 調査結果の概要
IV. 関連調査の概要
V. 参考
 
報告書名(2) : 「平成12年大都市交通センサスデータ利用マニュアル」
(資料番号130047)首都圏・中京圏・近畿圏 A4版 74ぺージ
報告書目次
1. データ・ファイルに関する概要
2. 拡大率
3. 時刻推計
4. ターミナルー覧
5. 用語の説明
 
報告書名(3) : 「平成12年大都市交通センサスコードブツク」
(資料番号130049)首都圏 A4版 477ぺージ
(資料番号130052)中京圏 A4版 153ぺージ
(資料番号130055)近畿圏 A4版 347ぺージ
報告書目次
I. 事業者コードの部
II. ゾーンコードの部
III. 鉄道コードの部
IV. バス・路面電車コードの部
 
報告書(4) : 「平成12年大都市交通センサス資料編」
(資料番号130050)首都圏 CD-ROM
(資料番号130053)中京圏 CD-ROM
(資料番号130056)近畿圏 CD-ROM
報告書内容
1. 行政区間移動人員表
2. 初乗り・最終降車駅間移動人員表
3. 駅別発着・駅間通過人員表
4. ターミナル別乗換え人員表
5. 初乗り・最終降車駅間経路別人員表(一部)
6. 通勤・通学所要時間帯別人員表(居住地別)
7. 通勤・通学所要時間帯別人員表(勤務・就学地別)
8. 端末交通手段別人員表(初乗り駅・最終降車駅別)
9. 一般乗合バス・路面電車停留所間移動人員表(乗車停留所・降車停留所別)
10. 購入金額別人員表(居住地・勤務地行政区別)
11. 鉄道路線別着時間帯別駅間輸送定員表
12. バス系統別着時間帯別停留所間輸送定員表
 
【担当者名:山根章彦、深山 剛】
【本調査は、日本財団の助成を受けて実施したものである。】








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