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運輸政策研究機構 研究調査報告書要旨 2002.5 NO.4
航空貨物輸送分野におけるRFID技術の活用に関する調査研究
1. 調査目的
 本調査は、速達性等の高度な物流品質が要求される航空貨物輸送分野において、個別の貨物単位でのRFID(Radio Frequency Identification:無線利用による移動体の自動認識)技術の活用を研究対象とし、RFID技術の国際標準化の動向や今後の技術的発展性を把握し、物流事業者のニーズをふまえた航空貨物情報システムのモデルを構築、さらに、構築したシステムモデルの利用を図るうえでの課題と普及推進のための方策等について検討を行うものである。
2. 航空貨物輸送業務の現状と課題
 現行の航空貨物輸送業務の現状を把握するために、荷主、航空フォワーダー、航空会社を中心に物流フローの調査を行った。その中で物流効率化の観点から改善余地のある業務と個別貨物情報管理の効率化ツールとしてRFID技術の活用が可能な業務を抽出した。その業務の多くにおいて個別貨物の管理がバーコードを活用して各会社ごとに行われている状況が明らかになり、バーコード読取作業や付加情報の入力工数、低いバーコード読取り精度、個別貨物への情報記録ができない等の課題を抽出整理した。
3. 航空貨物輸送事業者のRFID技術に対するニーズ
 航空貨物輸送事業者が、RFID技術に対してどのような期待を持っているのかを調査した。貨物が大量にある場合でも自動的に一括情報入力ができる等の貨物情報入力の省力化に対する期待や危険品貨物の厳密な管理に対するRFID技術への期待等をニーズとして整理した。
4. RFID航空貨物情報システムモデルの検討
 RFID航空貨物情報システムモデルとして、バーコードの代替手段としてRFIDタグを活用し、読取作業の省力化を図る「バーコード代替モデル」と、RFIDタグの航空貨物輸送事業者等の危険物チェックの実施状況を記録し、航空機搭載前等にチェック洩れがないかどうかを確認する「危険物チェック洩れ確認モデル」の2つを提示した。
(次ページ参照)
5. 課題と普及方策
 RFID航空貨物情報システムを実現するためには、視認性の確保、輸入貨物におけるRFIDタグの貼付負担、危険物の認識洩れの削減、RFIDタグの価格、RFIDの使用方法の工夫、他機関との連携の必要性、事業者間の貨物管理番号体系の非統一性・非整合性などが、課題として指摘できる。
 RFID航空貨物情報システムの普及方策としては、RFIDタグ組込型帳票類の開発、RFIDタグの価格引下げおよび性能向上、税関のX線検査における適用、貨物管理番号体系の統一化・整合化の推進などがあげられる。
RFID航空貨物情報システムモデル例
○ バーコード代替モデル
 バーコード読取作業をRFIDタグの読取作業に代替する。輸出貨物のケースでは、航空フォワーダーが個別貨物にRFlDタグ付の貨物票を貼付し、タグに航空フォワーダーの貨物管理番号等を入力し、各事業者の輸出貨物の荷役に用いる。
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○危険物チェック洩れ確認モデル
 RFIDを用いて航空貨物輸送事業者等の危険物チェック(例、危険物貨物の包装やマーキング、ラベル表示、輸送容器への積込みが、IATAの危険物規則書で定める通り行われているかどうかのチェック)の実施状況を再認する工程を追加する。
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報告書名等
報告書名:「航空貨物輸送分野におけるRFlD技術の活用に関する調査研究」
(資料番号130045)
本編 A4版 133ぺ一ジ
巻末資料編 A4版 88ぺ一ジ
 
報告書目次
I. 本調査の目的
II. 国際航空貨物輸送及び国際航空貨物情報システムの現状について
1. 貨物輸送量の動向
1-1 全般的動向
1-2 分担率の動向
1-3 事業者別輸送量の動向
1-4 航空貨物貿易額の動向
1-5 品目別内訳
1-6 地域別内訳
1-7 形態別内訳
1-8 空港別輪出入額
2. 対象貨物の特徴
3. 対象貨物の流れ
3-1 小口貨物の流れ
3-2 混載貨物の流れ
3-3 国際宅配便貨物の流れ
4. バーコードの利用状況
4-1 「カ一ゴ2000ジャパンプロジェクト中間報告書」のアンケート調査
4-2 バーコードの適用例
5. 主な航空貨物情報ネットワーク
5-1 航空フォワーダーの例
5-2 インテグレーターの例
5-3 航空会社の例
5-4 CCSJ
5-5 Air-NACCS
6. II章のまとめ
III. RFID技術について
1.RFIDとは
1-1 概念
1-2 特徴
2. RFIDの類型
3. RFIDタグ製品の仕様、価格、用途
4. RFIDの普及状況
4-1 市場規模
4-2 用途別内訳
4-3 販売企業形態
5. RFIDの国際標準化動向
6. RFIDの技術動向
6-1 ヒアリング調査対象先
6-2 価格低下をもたらす技術
6-3 性能向上をもたらす技術
7. RFIDタグの将来価格予測
7-1 経験曲線分析とは
7-2 推計方法
7-3 予測結果
8. III章のまとめ
IV 物流分野におけるRFID利用の類似事例
1. 東京納品代行のICタグシステム
2. ダイムラー・クライスラー社のグローバルロジスティクスセンター
3. 日本通運の海上コンテナ管理システム
4. JR貨物のコンテナ自動管理システム
5. IV章のまとめ
V 国際航空貨物輸送の業務フロー
1. 荷主の状況
2. 航空フォワーダーの状況
3. 航空会社の状況
4. (参考)上屋会社の状況
5. 〔5〕章のまとめ
VI 関連事業者のRFID二ーズ
VII 現行航空貨物情報システムの課題と解決策
VIII RFID航空貨物情報システムモデルの検討
1. モデルの概要
1-1 業務フロー
1-2 RFIDタグヘの記録情報の書込者と読取者
1-3 RFIDタグの機能
2. 期待される効果
2-1 効果項目と帰属先
2-2 輸出貨物におけるバーコード読取作業の航空フォワーダーにおける省力化効果の試算
3. 導入費用
IX RFID航空貨物情報システムを実現するための課題と普及方策
1. 課題
2. 普及方策
X おわりに
 
【資料編】
1. RFID技術動向に関するヒアリング調査結果
2. 航空貨物輸送事業者向けヒアリング調査結果
3. 荷主向けヒアリング調査結果
4. 危険品貨物の取扱いについて
5. 米国国防総省におけるRFIDの導入例について
6. 航空貨物輸送に用いられる帳票類
7. RFID関連製品の写真
8. 用語説明
 
【担当者名 神子信之、高石幸一】
 
【本調査研究は、日本財団の助成金を受けて実施したものである】








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