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はじめに
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 ハンセン病は人類の歴史の中で、最も古くから恐れられてきた病気の一つです。天刑、呪い、過去の罪業の報いなどと考えられた時期もありました。1873年にノルウェーのアルマウエル・ハンセンによってらい菌が発見されてからは、伝染病であるとして人々から忌み嫌われ、社会から排斥されたり、一般社会から隔離されてきました。
 1982年にWHO(世界保健機関)が発表したMDT(多剤併用療法)により、現在ではハンセン病は完全に治癒する病気となりました。1年以内という短い期間で治療は終了し、早期に治療を始めれば、障害に至ることもありません。近年MDTにより患者数も激減しています。また特定の病院や療養所に行かずに、簡単に外来治療が受けられるようになりました。しかしその反面、ハンセン病に対する根強い偏見のため、社会復帰することが困難な人たちも、全世界に数多くいます。
 ハンセン病患者・回復者を中心とした国際ネットワーク・アイデア(IDEA)のインド会長であるゴパール博士はこう言います。
 「人類がハンセン病に対して勝利を収めたと言えるのは、回復者が一般の人々と変わらない生活をできるようになったときです」。
 今後は、ハンセン病の患者も、回復者も、一般の人々となんら変わらない生活ができるように、治療だけではなく、偏見をなくしていくための多面にわたった活動を続けていかなくてはなりません。
 この冊子は、ハンセン病についてできるだけ多くの方に知っていただくため、ハンセン病の概略、ハンセン病制圧に取り組む国の例や現状、今後の課題、回復者の声をまとめたものです。ハンセン病が過去の病気となり、回復者が回復者であることを意識せず、共に生きていける世界になるまで、私たちの努力は続きます。
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