日本財団 図書館


3. 実証試験海域の実態調査
 本調査では、システムの実証試験海域について本研究参加の各自治体から提示された侯補地に対して調査を行い、その調査結果に基づいて最適な実証試験海域を評価選定し、さらに選定した海域について現状の水域環境を把握し、システムの試設計のためのデータの取得を目的として、実態調査を実施した。
3.1 実証試験侯補地の調査
 本システムの実証試験海域について、表3-1に示すような条件に基づき、千葉県、東京都、兵庫県の各自治体から7箇所の侯補地が提示された。
表3-1 実証試験海域の条件

 1. 浄化が必要とされている水域   

 2. PR効果のある水域   

 3. 閉鎖性の水域   

 4. 水域の規模   
   20,000m3〜50,000m3  

 5. 陸上にシステムが設置できる  
    電源がある
    下水道がある

 6. 水辺までアクセスし易い   

 
 これらの侯補地から実証試験海域を選定するにあたって、実証試験海域の条件に対して各侯補地における調査結果をもとに評価を行った。
 表3-2に評価結果を示す。兵庫県の尼崎北堀運河が、総合的に高く言平価され、本システム実証試験海域として選定を行った。
表3-2 実証試験海域の評価・選定
条件/
候補地
千葉県 東京都 兵庫県
千葉ポートパーク前面
水域
船橋東ふ頭船溜 海老川河ロ船溜 お台場海浜公園レク
リェーション水域
新芝運河重箱掘 尼崎北堀運河 尼崎中堀運河
浄化が必要とされている水域
PR効果のある水域
アピール性に乏しい
X
一般の人があまり来な
X
一般の人があまり来な

知名度高いレジャース
ポット

「尼崎21世紀の森」構想

「尼崎21世紀の森」構想
閉鎖性の水域
通水性のある突堤で仕
切られている
水域の規模

20,000〜50,000m3

水域規模が大きすぎる
(55,000m2)

23,000m3(11,500m2)

(10,200m2)

水域規模が大きすぎる
(440,000m2)

21,000m3(8,400m2)

水域規模が大きい
60,000m3(24,000m2)

水域規模が大きい
(43,600m2)
陸上にシステムが設置できる
設置場所は奥の部分に
限られる

限られている
電源がある
下水道がある
装置の設置対象地から
遠い

隣接する地主との交渉
必要

装置の設置場所によっ
ては遠い
X
水辺までのアクセスがし易い
アクセスし易い場所が
限られている
装置の設置のし易さ
(周辺環境への配慮等)
X
小型船舶が数多く停泊
X
小型船舶が数多く停泊

装置の騒音、景観等の
点で周辺への配慮必要
水面利用者への安全性
の配慮必要

船舶の出入りあり
一部民間が水面占用

船舶の出入りあり
その他           管理上の条件
・水面利用や構造物等に影響がないこと
水質(参考) 周辺海域水質
COD3.4〜4.2mg/l
C類型レベル
千葉市データ
周辺海域水質
COD3.1〜5.0mg/l
C類型レベル
千葉県データ
海老川八千代橋
BOD11.0mg/l
SS7.0mg/l
千葉県データ
周辺海域水質
COD6.2mg/l(75%値)
C類型レベル
東京都データ
運河域平均
COD6.5mg/l

東京都データ
周辺海域水質
COD6.5mg/l(平均)
C類型レベル
尼崎市データ
周辺海域水質
COD6.5mg/l(平均)
C類型レベル
尼崎市データ
3.2 実態調査
3.2.1 実態調査の概要
1)調査の目的
 対象水域の現状の把握及び高速海水浄化システム実証プラント試設計のためのデータ取得を目的とする。
2)調査場所
 本調査は、実証試験海域として選定を行った尼崎市の北堀運河を対象として実施した。図3-1に調査場所の位置を示す。
(拡大画面: 319 KB)
図3-1 調査場所
3)調査内容
[1]水質調査
[2]底質調査
[3]生物調査
[4]地形調査
海域……水深調査
陸域……システム設置場所の調査
[5]流速調査
 
3.2.2 実態調査結果
[1]水質調査
 調査した地点の位置を図3-2に示す。
(拡大画面: 202 KB)
図3-2 調査地点
 本調査は12月4日に実施した。表3-3に各地点における上層及び下層における水質分析結果を示す。
表3-3 上層及び下層の水質分析結果
採取層 上層 下層 上層 下層
COD  mg/l 3.4 3.8 4.2 3.8
浮遊物質量(SS)  mg/l 5.6 5.7 3.3 7.3
全窒素(T-N)  mg/l 3.0 2.3 4.1 2.2
全りん(T-P)  mg/l 0.059 0.078 0.073 0.093
亜硝酸イオン(NO2-N)  mg/l 0.025 0.021 0.019 0.027
硝酸イオン(NO3-N)  mg/l 2.3 1.6 3.5 1.3
アンモニウムイオン(NH4+N)  mg/l 0.31 0.54 0.38 0.48
りん酸イオン(PO4-P)  mg/l 0.048 0.040 0.052 0.036
クロロフィルa  μg/l 2.0 1.8 0.58 4.0
TOC  mg/l 3.56 3.74 3.17 2.66
懸濁体有機窒素(PON)  mg/l 0.0933 0.0953 0.0442 0.1949
懸濁体有機りん(POP)  mg/l 0.009 0.023 0.018 0.050
強熱減量  % 12 13 12 13

*ここで上層は、水面から50cm下、下層は水底から50cm上の位置でサンプルの採水を行った。
 仮に「水質汚濁に係る環境基準」(環境省)で設定されている水質レベルに照らし合わせてみると、CODは、全てC類型のレベルにある。全窒素は、全て基準値を上回るレベルにある。また、全リンは、ほぼlV類型のレベルにある。
 
[2]底質調査
 底質については、図3-2のSt2の地点においてサンプルを採取し分析を行った。
 表3-4に底質の現地観察結果を示す。
表3-4 底質現地観察結果
調査地点 St.2
調査時刻 10:10
泥温(℃) 17.3
泥色
性状 粗砂
臭気 弱魚貝臭
混入物 植物片

 表3-5に含有量試験の結果を示す。また、表3-6に溶出試験の結果を示す。
表3-5 底質含有量試験
調査地点 St.2
COD mg/g 9.3
全りん(T-P) mg/g 0.18
全窒素(T-N) mg/g 0.57
強熱減量 % 2.2

表3-6 底質溶出試験
調査地点 St.2
亜硝酸イオン(NO2-N) mg/l 0.003
硝酸イオン(NO3-N) mg/l 0.19
アンモニウムイオン(NH4+N) mg/l 0.08
りん酸イオン(PO4-P) mg/l 0.022

[3]生物調査
 植物プランクトンについて図3-2に示すSt2の地点において採水し分析を行った。
 細胞数は、珪藻類のSkeletonema costatum、Pleurosigma spp、渦鞭毛藻類のProrocentrum triestinum、その他ミドリムシ等が多かった。
 また、大きさでは、珪藻類のCoscinodiscus astercmphalus、Coscinodiscus sp.が大きく、それぞれ120μm、100μmであった。前述した細胞数の多かった藻類は、5〜20μmと比較的小さい。
 
[4]地形調査
 地形調査としては、海域と陸域について行っており、海域については、水深を調査し陸域については、システムの設置できる可能性のある場所について調査を行った。
 
●海域調査
 水深調査を行うに当たって運河両岸沿い及び中心線沿いに10m間隔で測定を実施した。
 調査対象としては、北堀運河の港橋から北堀水門に至るまでの範囲(600m)と北堀運河と中堀運河の合流点から中堀運河側に約80mの範囲である。
 水深は、中心部が比較的深く2〜4mの範囲にあり、護岸沿いが比較的浅く、中堀運河及びその周辺においては1m以下の部分もある。
 
●陸域調査
 北堀運河護岸沿いの陸域においてシステム本体が設置可能な場所について調査を行った。
 調査地点の中では、システムの設置面や管理面等から比較的設置可能性の高い場所として3ヶ所侯補地が上げられた。
 
[5]流速調査
 流向・流速の測定点を図3-3に示す。
 測定は、電磁流速計を各測定点に設置して連続して測定を行った。
 測定期間は、12月4日12:00〜5日12:00である。
(拡大画面: 382 KB)
図3-3 流速調査の測定点
 図3-4に各測定点における10分間の平均値をもとにした流速ベクトル図と外潮位の変化を示す。
 北堀水門は、運河の水位を維持するため、外潮位が一定のレペル(0.P.+110cm)より下がると開き、これより上がると閉じるような制御が行われている。測定期間内では4日の23:36〜5日の6:54にかけて開いており各点の流れがそれによって変化している様子がわかる。
 測定点[1]において顕著にその変化が現れており水門開口と同時に西向きに流れ、途中から東向きの流れに変化している。流速値も他の時間帯より大きい。これは、水門の外側の水位が下がるにしたがって運河内の水が外に流出し干潮を過ぎて潮位が上がり出すと逆に外側から水が流入するという動きによるものと想定される。
(拡大画面: 59 KB)
図3-4 各測定点における流速ベクトル図








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION