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4.3.2 調査研究課題の概要
 本研究では、上記に挙げた問題点を有する試験法のうち、爆燃伝播性試験および爆発威力試験に注目し、以下の点から検討した。
 
4.3.2.1 爆発威力
 C80圧力・熱量測定装置、小型密閉系爆燃性試験装置による時間/圧力曲線からの爆発威力推定の可能性を検討するとともに,化学反応計算、熱力学計算により、反応時あるいは分解時に発生する熱量の総量および発生速度を推算し、それらの適用可静性についても検討を行う。
 
4.3.2.2 爆燃伝播性
 数百ミリグラム規模で、正確な爆燃特性を計測することのできる、小型の密閉系爆燃試験装置を開発し、その時間/圧力曲線から、時間/圧力試験、爆燃試験の結果の推定の可能性。
4.3.3 自己反応性物質及び有機過酸化物の国連勧告試験方法及び判定基準のスクリーニング化に関する研究
 
4.3.3.1 試薬
 テストシリーズCおよびFの試験法の実施例として危険物輸送に関する国連勧告(通称:オレンジブック)に挙げられている物質の中から、各試験で共通的に使用されている5種類の試薬を選定し試験を行った。今回使用した、5種類の試薬は、以下に示すとおりである。
[1]ADCA:アゾジカルボンアミド(大塚化学(株)、純度99.0%以上)
[2]AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬(株)試薬特級、純度98%)
[3]AMBN:2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(和光純薬(株)、純度98%)
[4]BP0:ジベンゾイルパーオキサイド(和光純薬(株))
[5]DTBP:ジターシャリーブチルパーオキサイド(日本油脂(株))
 
4.3.3.2 国連評価試験結果
 上記試薬に対する、爆発威力および爆燃伝播性に関する国連評価試験結果を表3.1に示す。
Table3.1 各試薬の国連評価試験結果
 
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 Test series C:     To evaluate propagation of deflagration
 Test series F:     To evaluate explosive power
 MkIII:   Ballistic mortar MK. IIId test
 B.M.:    Ballistic mortar test
 Trauzl:   BAM Trauzl test
 Mod. Tr.: Modified Trauzl test
 H.P. Auto.:High-pressure autoclave
 T/P:    Time/pressure test
 Def.:    Deflagration test
 n.a.:    not available
 n.d.:    not detected
 *:     75%with water
 
4.3.3.3 予備試験
(1) RADEXによる加熱分解時の圧力発生挙動試験
 当初、予定していたC80熱量計の高圧センサー付き高圧容器の導入が遅れたため、C80熱量計と同様に、試料加熱時の熱発生挙動と圧力発生挙動を同時に測定することのできるRADEX熱量計(写真3-1,2)を用いて、予備的な検討を行った。尚、RADEXは参照セルを持たないため、容器の熱容量や熱慣性(Thermal inertia)の影響を大きく受けるため、熱量測定の精度的については、C80よりも低いことが予想される。
 試料として、AIBNを用い、試料量約200mg、昇温速度10K/minおよび2K/minで測定を行った。(図3-1)
 その結果、RADEX熱量計では、容器の熱容量が大きいために、設定温度と試料温度の差が比較的大きく、その差は昇温速度が大きいほど、また温度が高いほど大きくなった。そのため、昇温プログラムの組み方によっては、資料セル内部が設定温度に達する前に、炉の方の安全装置が働いて、昇温が打ち切られるなどの問題点があり、温度設定に際しては考慮が必要があることが確認された。また、圧力発生値は理論値よりかなり低く、この条件では試料が完全には分解していない可能性が示唆された。
 この結果を受けて、C80熱量計における測定は、試料量:200mg、昇温速度:2K/min(C80による最高昇温速度は3K/min)を基準とすることにした。
 
(2)C80による加熱分解時の圧力発生挙動試験
 C80熱量計(既設機器)に今回の事業予算にて購入した高圧センサー付き高圧容器を組合わせ(写真3-7,8,9)、試料として、同じくAIBNを用い、試料量100mgおよび200mg、昇温速度2K/minで熱量及び圧力の同時測定を行った。(図3-2)試料量200mg、昇温速度2K/minでの、C80熱量計とRADEX熱量計の結果と比較すると、C80による発生圧力は5倍程度高く、また、圧力発生ピークもよりシャープに観測されている。しかしながら、100mgの試料では熱分解温度(約109℃)における圧力発生がほとんど見られず、100mg以下の試料量では観測が難しいことを示していると思われる。今回の予備検討で、比較的少試料量(200mg規模)での圧力発生の観測の可能性が確認されたので、他の試料でもほぼ同条件で観測を行うこととした。
 
4.3.3.4 本試験
 予備試験によって得られた知見に基づいて、試料量、実験条件を定め、それぞれの試験を行った。
(1) C80D熱量計による、各試薬の圧力および熱発生挙動の測定
 AIBN,AMDN,BPO,DTBPの4試料に対し、C80D熱量計による圧力および熱発生挙動の測定を行った。試料量は、予備実験から得られた知見として、AIBNの場合200mgを基準とし、他の試料では、AIBNの圧力および熱発生を参考に重量を決定し、測定結果に問題がある場合には、試料量の調整を行い再測定した。結果的に採用されたデータは、いずれも試料量200mg、昇温速度2K/min、常温から200℃までの測定のものとなった。結果をTable3.2に示す。
Table3.2 C80D熱量計測定結果
 
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(2) 小型爆燃性試験装置による、各試薬の圧力発生挙動の測定
 今回の事業予算で開発を行った小型爆燃性試験装置(写真1)を用い、ADCA,AIBN,AMDN,BP0,DTBPの4試料に対し、爆燃時の圧力発生挙動測定を行った。試料量はいずれも200mg、着火は、ペレット状B/KNO3 (22/78)250mgと粉末Ti/KN03 (45/55)100mgの2段着火システムとし、着火からの圧力発生挙動を歪み式圧力センサーで計測した。時間-圧力曲線から、圧力発生速度を求める際に、5点平均で計算した結果をTable3.3に、20点平均計算した結果をTable3.4に示す。

Table3.3 小型爆燃性試験結果(5点平均で計算)
 
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Table3.4 小型爆燃性試験結果(20点平均で計算)
 
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