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1. 調査研究の目的
 船舶により運送される物質の危険性評価について、危険物船舶運送及び貯蔵規則(以下「危規則」)は、運送前に荷送人が危規則により定められた試験方法及び判定基準により分類(危険性の種類)及び容器等級(危険性の大小)等を決定することを要求している。
 この「試験方法及び判定基準」は、国際海上危険物規程(I MDG Code)が引用している国連危険物輸送専門家委員会が策定した「危険物輸送に関する勧告(以下、国連勧告)」に定められた試験方法及び判定基準に基づいている。
 当協会では、3年間にわたり、日本財団助成事業として、国連勧告に新たに導入された新試験方法の基本的調査研究を行い、その成果を平成12年度に冊子として公表した。この中でSIT試験方法による「自己発熱性試験方法」のスクリーニング試験及びARC試験方法による「SADT試験値の予測」についての調査研究においては、スクリーニング試験として有効であるとの結論を得た。
 一方、国連勧告に定める試験方法及び判定基準は、策定経緯からその全てが外国において実施されていた試験方法及び判定基準が採り入れられており、殊に、発火・爆発性に関する試験方法の中には試験設備の点から我が国においては対応が困難なものもある。
 発火・爆発性危険物である自己反応性物質及び有機過酸化物は、ファインケミカルとして我が国化学工業の得意分野の一つであり、必然的に新しく開発される物質も多く、それら未知物質に対する輸送上の危険性評価の必要性も高くなっている。国連勧告におけるこれら物質の危険性評価方法としては、火薬類と同様,複雑な手順並びに試験方法及び判定基準が定められており、我が国においては試験の場所や設備の点からその実施上の多くの問題点が存在している。
 このような状況にある自己反応性物質及び有機過酸化物に分類される未知物質の危険性評価手法のなかから「MCPVT圧力容器試験」に注目し、その評価手法を策定することを今次調査研究事業の目的とした。
 さらに、最終的には自己反応性物質及び有機過酸化物の分類判定スキーム全体に国連勧告が要求する危険性評価手法と同等の安全性が担保されたスクリーニング試験方法を導入、簡便化し、その成果を国連危険物輸送専門家委員会に日本案として提案することを目標とし、「スクリーニング化に関する研究」をテーマとして取り上げた。
 また、今後、危険物は輸送のみならず、製造、貯蔵、消費、及び廃棄にいたる全ライフサイクルについて、適切な危険性評価に基づく取扱いが重要となる、このグローバルハーモニゼーションヘの対応のためにも我が国に適応し、かつ、国際的にも望まれる適切な評価基準策定のための研究は重要であり、上記調査研究成果をもってグローバルハーモニゼーションに対する適切な評価基準策定に寄与させる。








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