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(1) 京都市
人口 1,387,729人
面積 610.22km2
人口密度 2,274人/km2
世帯数 592,943世帯
 
 京都市では、ごみの減量及びリサイクル、ごみ収集車の排ガスのクリーン化、環境事業への市民の理解の促進の観点より、食用廃油のバイオ・ディーゼル燃料化事業を実施している。バイオ・ディーゼル燃料とは、レストランや食品工場、家庭から排出される食用廃油を、ディーゼルエンジンに転換したものである。
 図表1-3に、京都市のバイオ・ディーゼル燃料化事業の概要を示す。なお、事業の詳細を資料1に示す。
図表2-3 京都市のバイオ・ディーゼル燃料化事業のフロー
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[1] 回収
ア 地域での回収
 平成13年4月現在、京都市では市内の602拠点(116学区)で家庭系食用廃油の回収を実施している。小学校区単位で説明会を開催し、理解の得られた地域で自治会の役員などが世話役となって回収している。
 回収頻度は原則として月1回1時間程度である。回収日の前日までに市が委託した業者が回収用ポリタンクを配布する。世話役は、回収日にポリタンクとのぼり旗を自宅前などに出して、市民が廃油を持ち寄って回収を行う。廃油の回収は午前中に行われ、午後に業者が廃油の入ったポリタンクを回収し、処理施設まで運搬する。世話役は、ポリタンクやのぼり旗などの保管と、回収時の立ち会いを行っている。
 
イ 公共施設などでの回収
 市役所などの公共施設では、常設の回収場所が約20カ所ある。回収時間は施設がオープンしている時間であり、施設の職員が管理を行っている。ポリタンクがいっぱいになった時点で、職員が業者に連絡をとり、ポリタンクの回収を行っている。
 
ウ 回収量
 食用廃油の回収実績は図表2-4に示すとおりである。
図表2-4 京都市の食用廃油回収実績
平成年度 拠点数 学区数 回収実績(リットル)
9 13 7 4,265
10 175 50 22,731
11 531 99 62,445
12 602 116 95,747
13(4〜6月) 653 121 29,025
 
[2] 処理
 回収した食用廃油は、委託業者によって滋賀県にある民間の処理施設に搬入される。この処理施設では、京都市の家庭から回収された食用廃油のほかに、近畿一円の飲食店などから回収された廃油も搬入される。
 食用廃油をバイオ・ディーゼル燃料にするためには、食用廃油の粘り気や引火点を下げる必要があり、食用廃油にメタノールを10%加えることで、粘り気や引火点の低いメチルエステル(バイオ・ディーゼル燃料)に転換している。投入した食用廃油に対して90%のバイオ・ディーゼル燃料が得られる。
図表2-5 バイオ・ディーゼル燃料と軽油との比較
  バイオ・ディーゼル燃料 軽油
エネルギーの種類 リサイクルエネルギー
(自然循環型エネルギー)
一次エネルギー
(限りある資源エネルギー)
廃棄物の観点 ごみとして排出された油のリサイクル 特になし
原料 食用廃油(植物性油脂) 原油(化石燃料)
燃料製造に要する期間 約1年(大豆・なたね等の育成期間) 数億年
(原油ができるまでの時間)
供給面 原料の植物がある限り製造可能 40〜50年で枯渇
炭酸ガス吸収 原料となる植物が吸収 なし
排ガスによる環境負荷
の低減
軽油に比べて硫黄酸化物や黒煙が少ない。 バイオ・ディーゼル燃料に比べて硫黄酸化物や黒煙が多い。
 
[3] 活用
 上記処理施設で生成したバイオ・ディーゼル燃料の約90%は京都市が買い取って使用している。
 ごみ収集車全車(210台)でバイオ・ディーゼル燃料を軽油と混合せずに使用している。処理施設からバイオ・ディーゼル燃料を購入し、東西南北の4カ所のクリーンセンターに給油スタンドを設けて使用している。また、市バス81台で軽油にバイオ・ディーゼル燃料を20%混合して使用している。
 バイオ・ディーゼル燃料の使用量は年間約150万リットルであり、家庭から回収した約9万リットルの食用廃油から生成した燃料を遙かに上回っている。
 
[4] 効果
ア 硫黄酸化物・黒煙の抑制
 バイオ・ディーゼル燃料には硫黄酸化物がほとんど含まれていないため、排ガス中の硫黄酸化物が抑制できる。また、黒煙の排出量は軽油の1/3〜1/6に抑制できる。そのため、特に、車両が集中する地域での排気ガスによる環境負荷を低減できる。
 
イ 二酸化炭素の抑制
 軽油が限りある化石燃料であるのに対して、バイオ・ディーゼル燃料は食用廃油から生成される。バイオ・ディーゼル燃料を150万リットル使用することで、軽油使用により発生する二酸化炭素排出量を年間約4,000トンも抑制することができる。








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