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第2章 若者定着促進に関わる意識とニーズ
 県民意識調査などの既存調査結果から、本市住民の生活行動動向及び公的サービスの満足度を把握し、テーマ毎の課題を整理するとともに、本市に居住する若者世代各層などへのグループインタビュー調査結果をもとに、若者定着促進に関わる市民意識やニーズを把握、整理した。
1 既存アンケートからみた若者定着に関する動向
 県民意識調査などの既存調査結果及び本市在住者及び転出者アンケート調査結果から、本市住民の生活行動動向及び公的サービスの満足度を把握し、テーマ毎の課題を整理した。
(1) 住民の生活行動と満足度
 車社会の進展などにより、住民の生活行動は自分たちの居住している市町村に留まらず広範に及んでいる。平成10年に和歌山県が行った県民意識調査によると、本市住民が目的別に「日頃一番多く出かける(利用する)場所」に対する回答状況では、「通勤・通学」、「娯楽・スポーツ」、「教養文化施設(図書館、文化会館など)」などは、本市よりも和歌山市(あるいは本市と同率)の利用が多い。和歌山市はその他の「日常的な買物」や「医療機関(病院、歯科医院など)」でも本市に次ぐ利用率で挙げられており、行政区域を越えた市民の生活行動の実態がうかがえる(図表2-1)。
 また公的サービスに対する満足度では、和歌山県全体と比べて、満足度(「満足」と「ほぼ満足」の計)が高かったのは、「病院・救急医療機関など」(市51.2%、県全体39.6%)、「デパートなどの商業施設」(市57.3%、県全体43.5%)などであったが、両者とも上述の生活行動圏内にある和歌山市内の施設利用に対する評価も加わっての満足度の高さと考えられる。
 一方で、不満足度(「やや不満」と「不満」の計)が高かったのは、「文化ホール・図書館など」(市61.0%、県全体42.4%)、「スポーツ・レクリエーション施設」(市51.2%、県全体44.5%)、「公園」(市61.0%、県全体50.7%)、「集会所・コミュニティセンター」(市34.2%、県全体27.4%)など、文化・交流関連施設の充実に対するニーズが中心であった(図表2-2)。
 
図表2-1 市民の生活行動動向
  日頃一番多く出かける (利用する) 場所
第1位 第2位 第3位
通勤 ・ 通学 和歌山市 (47.1) 海南市 (41.2) 下津町、野上町、貴志川
町、大阪府内 (2.9)
日常的な買い物 海南市 (78.4) 和歌山市 (20.3) 貴志川町(1.4)
娯楽 ・ スポーツ 和歌山市 (51.1) 海南市 (31.9) 野上町、大阪府内 (4.3)
教 養 文 化 施 設 海南市、和歌山市 (45.7) 大阪府内 (5.7)
医 療 機 関 海南市 (75.2) 和歌山市 (23.2) 野上町、貴志川町、大阪
府内 (1.4)
資料:和歌山県市町村行政調査研究会「広域行政などにおける県民意識調査」(平成10年6月)より作成
図表2-2 公的サービスの満足度
(拡大画面: 94 KB)
資料:和歌山県市町村行財政調査研究会「広域行政などにおける県民意識調査」(平成10年6月)より作成
(2) 住民の生活行動と満足度
 本市の若者の定着ニーズを把握するために、平成12年度に本市の20歳から39歳までの在住者と転出者を対象に市が実施した「海南市の居住環境アンケート調査」結果を本調査研究の視点で再整理した。
全体的な傾向
  • 海南市の住み良い点は、「自然環境が豊で、温暖な気候であること」、「ほのぼのとした人情味のあるまちであること」、「和歌山・大阪方面や紀南方面を睨める好位置にあること」など。
  • 一方、海南市の住みにくい点は、「若者の働く場の選択が少ないこと」、「交通が不便で好位置の条件を活かしにくいこと」、「町全体に活気が無いこと」など。
  • 海南市への定着意向、あるいは転出者が再び海南市へ戻ってくる意向はについては、それぞれが概ね半々であり、一定の条件が整えば、海南市での定着性はかなり高まることも期待される。
  • その一定の条件とは、本調査研究のテーマでもある「働く」、「暮らす」、「楽しむ」、「子育て」といった条件と重なるものである。
「働く場」としての海南
  • 本市では若者就業の場は限られるので、とくに和歌山・大阪方面との鉄道の利便性を高め、海南市に住んで、市外で働くというパターンが考えられる。
  • ただし、漆器などの既存産業を活用したり、新しいニュービジネス・コミュニティビジネスとしての高齢者福祉産業や観光交流産業を興したりすることは小さな産業おこしではあるが、地域資源を活用した就業の場づくりとして考えられる。
「楽しむ場」としての海南
  • 大型ショッピングセンターや映画館・ゲームセンターなどの娯楽機能を望む声が高いが、海南市の立地条件から見て成立の可能性については検討を要する。
  • むしろ、海南市の個性ある文化活動を促進させ、市民が主体となって作り上げる文化イベントや、海南市の自然条件(海・川・山) を活かした多彩なレクリエーション拠点づくり、あるいは黒江の街並みなど歴史・文化を核としたまちづくり型市民運動などの展開や域外からの観光交流客の呼び込みにより、元気を創出していくことが必要である。
  • 一定の交通の利便性が確保されれば、ある規模以上の楽しみ機能は和歌山や大阪方面で求めることも一つの考え方である。
「暮らす場」 としての海南
  • 若者が入手できる土地、あるいは入居できる住宅の確保が必要であり、とくに住宅については、交通に便利、買い物に便利である海南市中心部周辺において、公的住宅整備の展開が考えられる。
  • 生活文化・教育関連機能(医療、学校、図書館、文化会館) などの公的施設の機能充実が必要。
「子育てをする場」 としての海南
  • 自然は豊かなようで、案外と子どもが安全にしかも身近に遊べる空間が少ない。とくに幼児期の子ども対応の公園づくりが必要である。
  • 女性の社会参加、あるいは共働き家庭の支援という視点も含めた保育体制の充実 (保育年齢の引き下げ、学童保育体制など) が不可欠である。
基盤的環境
  • 「働く」、「暮らす」、「楽しむ」とも関連して、「和歌山・大阪方面との鉄道の利便性向上」、「市内でのバスの利便性向上」 「市の内外をネットワークする道路網の整備充実」 といった交通条件の整備の必要性が極めて高い。
  • とくに旧市街地(黒江・船尾・日方・内海地区) では道路が狭小で、歩道も確保されておらず、消防車などの進入もできない道路が多いことから、防災上の観点からも緊急な整備を要する。
  • 生活基盤としての“安全・快適”を確保するための「街を明るくすること」、「ゴミ処理システムを徹底化すること」、「下水道整備を促進すること」 などが必要となる。
 
2 市民グループインタビューによる若者の定着促進に関わる意識とニーズ
 前述の既存のアンケート調査結果の再整理による若者定着の市民ニーズの把握に加え、さらに詳細かつ定性的な市民の生活行動や定着ニーズを把握するために、本市に居住する「高校生」、「独身社会人」、「子育て中の主婦」、「UJIターン者」などの各層ヘグループインタビュー調査を実施した。グループ別の回答要旨を整理した。
 
(1) 高校生(海南高校3年生の男女)
基本的属性
  • 卒業後は自分のやりたいことができる関西方面(大阪、京都、神戸など) への進学を希望。東京は地方出身者に冷淡と言う印象を持たれており、人気は低い(東京へ出る場合は、関西での就学・就職を経験後に)。
  • 生まれた土地への愛着は必ずしも高くはなく、やりたいことのできる就職先あるいは自然の多いところに居住を希望。転出後にUターンすることはほとんど考えていない(親との同居が必要な場合は、自分の居住する土地に親を呼ぶ)。
  • 一方でやりたいことができれば住み慣れた土地(海南)で暮らしたいという意見も。
「働く場」としての海南
  • 市内には自分のやりたい就職先はない。
「楽しむ場」としての海南
  • 燦々公園のイベントは評価。
  • マリーナシティは周辺の浜辺や花火大会などのイベントは評価しているが、入場料を払ってまで中に入ろうとは思わないなど活性化が必要。
  • 熊野古道や黒江の漆器まるりなど伝統産業や歴史資源を海南の誇りと感じているがPR不足。もっと観光に力を入れるべき(交通機関、休憩所、おみやげ開発などの観光客受け入れの条件整備 を指摘。)
  • 専門書、CDなどの購入で不便を感じる(大阪で購入)。
「暮らす場」 としての海南
  • 最寄り品は市内、買い回り品は品揃え豊富な大阪(天王寺、心斎橋)、和歌山市。
  • 都会性、自分のやりたいことをみつけるための選択肢が少ない。
  • 文化的雰囲気(図書館、文化会館など)が乏しい。
  • 鉄道による大阪方面へのアクセスの悪さ、市内交通の悪さ。
  • 駅前をはじめ全体に車中心に道路が整備されており、歩行者用の道路が狭い(野上鉄道跡地の遊 歩道は好評)。
  • ジャスコの跡地はみすぼらしいので早くなんとかしたほうがよい。
  • 都市的機能を追及するよりも、自然や歴史、伝統産業などの地域特性を活かしたまちづくりを望む。
基本的属性
  • 卒業後はできれば家から通えるところに就職したい。
  • 全員が定着意向を持つ。理由は親と暮らしたい (一緒にいたい・楽だから、住み慣れている、気候がいい、自然環境など)。
「働く場」としての海南
  • 市内で就職をしたいが就職先はない (社会貢献できる仕事なら企業のブランドや規模にはこだわらない)。
「楽しむ場」としての海南
  • 森林公園雨の森や黒沢牧場など豊かな自然環境は高い評価。一方で自然資源を活用して、とくに趣味 (ゴルフ、ジェットスキーなど)や目的がない人でも楽しめる場所が欲しい。
  • 市民のイベントは市民の参加意欲をそそるものにリニューアルが必要 (例.和歌山市スイム駅伝はユニーク/ライブで著名人を呼ぶなど)。
  • 黒江の漆器や黒沢牧場など既存の資源を最大限に活用し、PRするべき (看板もない)。
  • アミューズメント施設 (ボーリング場、スケート場、ショッピングセンターなど)の遊ぶ場所がほしい。
  • 目的がなく、ぶらぶら歩いても楽しいにぎわいのあるまちになるといい。
「暮らす場」 としての海南
  • 最寄り品は市内あるいは和歌山市 (市内は品揃えが少ない)。買い回り品は和歌山市 (近鉄百貨店店)、大阪市 (品揃え良い)、貴志川町 (道が広く運転しやすい)。
  • 交通機関の整備 (車がなくては生活できない/列車の本数を増やし和歌山乗換えをなくして)。
  • 図書館が欲しい (現在は県立図書館を利用)。
(3) 独身社会人(18〜29歳の男女)
基本的属性
  • ほぼ全員が家業の後継者。定着意向は「家業が倒産しない限り住み続ける」など消極的な意見が多く、地域への愛着はあまり感じられない。
  • 「まちに覇気、活気が感じられない」、「都会でもない田舎でもない中途半端なまち」とまちに対する誇り意識や愛着はあまり感じられない。
「楽しむ場」としての海南
  • 紀州漆器、日用品などの伝統産業、黒江の町並みについては高い評価。もっとPRすべきという意見が多い。(※黒江の町並みには風情を残すための何らかの規制・保護が必要という意見も)。
  • 白浜など紀南への通過点となっているという指摘も
「暮らす場」としての海南
  • 「自然に恵まれて、静か」と暮らしやすさは評価。
  • 生活必需品は市内で揃えられることを希望 (※ジャスコ撤退後の衰退する商店街を憂慮)。
  • 文化ホール、図書館などの文化施設のニーズが高い (※保健福祉センターの利用勝手の悪さを指摘)。
  • 道路の狭さを指摘 (※来訪者向けの標識など整備も指摘)。
(4) 独身社会人(30〜39歳の男女)
基本的属性
  • 回答者は10人中9人が女性
「楽しむ場」としての海南
  • 市の自慢は「海山などの自然」、「のどかでふるさとのイメージ」、「居心地がよい」、「漆器、家庭用品などの地場産業」。一方で海南の良さに気づいていない人が多いと複数から指摘。
  • まちに活気がない (閉まっている店が多い)。
  • 遊ぶところがない (思いついたのはすべて和歌山市だった)。
「暮らす場」としての海南
  • 都会でも田舎でもない中途半端なまち。
  • 最寄り品は市内 (船尾市場、Cocoなど。市内で買い物をした事がない、とくに駅前商店街には行かないという意見も)、買い回り品は和歌山市、大阪市。
  • 交通の利便性向上。
  • 定着希望者の理由は「住み慣れている」、「家業の関係」。定着したくない理由は、「閉鎖的」、「若い人を応援しよういう機運がない (頭が固い)」、「近所の目が煩わしい」、「交通の便が悪い」など。
  • 文化施設 (図書館、文化施設) の不足。
(5) 子育て経験のある女性(18〜29歳)
基本的属性
  • 関西 (主として大阪) で夫と出会い結婚、その後自身あるいは夫の実家(海南)に戻るパターンが多い (夫の実家が海南でそこに居住する場合に不満がみられる)。
  • 海南に夫婦の実家がない場合は、仕事の都合で海南に居住しているケースがほとんど。実家も勤務先もないケース (暮らす場、子育ての場、楽しむ場として評価して居住するケース)はきわめて少ない。
「楽しむ場」としての海南
  • にぎわい性のあるまちを希望。
  • 家族による外食や買い物は市外 (和歌山・岩出町) を利用 (家族連れで入りやすい施設、設備が整っている)。
「暮らす場」としての海南
  • 近所づきあいの良さ、人情の厚さは評価。
  • 戸建て志向が強い。家賃5万円以上なら戸建て購入を希望 (良質な賃貸住宅がなく転入者には住みにくい土地)。独力で土地付き戸建てを購入するなら、地価の安い貴志川町か岩出町。
  • 車が移動手段の中心であり、女性、子ども、高齢者には交通の利便性が低い (JRやバスのサービス水準が低い)。
  • 都市公園の整備が遅れている (とくに中心地区以外)。
  • 食料品は市内、衣料品は品数が少ないので貴志川町 (バリアフリーに配慮。車→ベビーカー→店内の移動が容易)や和歌山市内で購入。
  • 市内の買い物は道路の段差や店の通路の広さなど、品数の少なさよりも、ベビーカーを押して移動できない道、入れない店がほとんどなのでやむなく市外という人が多い (地元消費の中心層である子育て層をターゲットにした商店街になっていない)。
  • 近隣町村に比べて、高齢者福祉サービス (年金安い、高齢者のバス優遇制度ないなど)が劣っているのではという声も。
「子育ての場」としての海南
  • 幼稚園3年保育制導入を希望。
  • 幼稚園や小学校への通園(学)には1時間近く要する地区もあり、今後の統廃合も大きな不安(スクールバスの運行を強く希望)。
  • わんぱく公園は、遊具やワークショッププログラムの充実などを評価。一方で閉園時間の早さや自家用車がないといけないことには不満 (子どもが大きくなると野上町の「ふれあい公園」  へ行くという流も)。
  • 子ども同士及び親同士の交流を促す「子育て広場」は好評 (少子化で周囲に遊ぶ子どもがいない、また育児の悩みを共有できる親もいないので交流促進は重要)。
  • 一時的な託児所に強いニーズ (和歌山市が駅上に安価な託児所を開き好評)。
(6) 子育て経験のある女性(30〜39歳)
基本的属性
  • ほとんどが海南及び関西方面(奈良、兵庫、京都)出身。結婚後、夫の実家あるいは自身の実家のある海南へ戻ってきたというパターン。
  • 夫あるいは自身の実家の敷地の中に別棟で戸建てというケースが多い (一人を除き定着意向)。
「働く場」としての海南
  • 結婚・出産というサイクルのなかで継続あるいは復帰して働ける場がない。
  • 就業・ボランティアを通じた社会参加意欲は非常に高い (全員社会参加の意思を表し、その実践に際して行政の理解、支援、受け皿などの環境整備を要望)。
「楽しむ場」としての海南
  • 家族連れでよく遊びに行くところは「わんぱく公園」「湯山荘園」「県立自然博物館」 (わんぱく公園はバーべキューができるようにしてほしいという意見多数)。
  • 京阪神の都市圏の親戚からはそぞろ歩きできる海山の自然と素朴でお洒落な農家レストランが喜ばれる (野上町、下津町)。海南にも来訪客が豊かな自然環境の中でのんびりできて、気軽に休息できる施設があればいい。
  • 黒江 (漆器祭り、町並みなど) は高い評価。
「暮らす場」としての海南
  • 最寄り品は子どもが小さいうちは市内が多い (品揃えで不自由は感じない) が、車での移動が容易な岩出町、貴志川町にもよく行く(新鮮な野菜が並ぶ露天が好評)。
  • 海南は地価が高い (土地を持たない戸建て購入希望者は岩出町、貴志川町へ流出)。
  • 文化面(図書館、市民会館など)の充実を希望。
  • 保健福祉センターなど既存の公共施設の有効活用、利用制限を緩和してほしい (行政には実情に応じた柔軟な対応を望む)。
  • 高齢化していく現実に対して高齢者が住み良いまちづくりを進めることは、子どもにとっても住み良いまちである (市内移動手段の確保、段差の解消、三世代交流など)。
  • 住民の声を市政に反映するしくみがない (行政は主婦、生活者の目線で臨んで欲しい)。
「子育ての場」としての海南
  • 子育ての支援体制が貧弱 (学童保育の早期導入、サークル活動拠点の開放、保育士がいる安価で安心な一時預かり施設の設置などを希望)。
  • 夜間緊急時対応可能な小児科病院が少ない。
  • 車に乗らなくても行ける身近なポケットパークがほしい。
(7) UJIターン者
基本的属性
  • 8名中7名が東京や関西方面で学生時代を過した経験を持つ。その後、家業を継承のためにうUターンするパターン (Uターンして家業などの関係で仕事や住宅が確保されている者のみがUターンする)。漆器などを中心に景況が悪化しており家業は苦しく、危機感は持っているが、まだゆとりがみられる (Uターンに満足)。
  • 高校卒業後、東京や関西方面に就学・就職した同期のうち、海南にUターンする割合は1割以下(Uターン者はほとんどが長男)。
「働く場」としての海南
  • 雇用の場は非常に少ない (一方で就職希望者の見識不足や技術不足を指摘)。
  • 新たな雇用の場の確保に向けた真剣な取組が市全体で少ない (明日の海南を本気で議論する場がない。JC内では家業を守ることで精一杯)。
  • 新産業、雇用のアイディアが少ない (産地ブランド化や遊休農地、漆器などを活用したビジネス、公営ギャンブルなど)。
「楽しむ場」としての海南
  • 漆器や家具、日用品などの地場産業を観光に活用することに対しては事業者間、行政、市民などとのコンセンサスがとれていない (今その契機であるとの認識)。また地元の名所 (温山荘園、黒江などの町並み) PR不足、市民の地元資源に対する認識不足、観光事業者の接客態度が悪いなど観光振興によるまちづくりの推進基盤や受け入れ体制も整っていない。
  • 海南市民は郷土は豊かな自然に包まれた田舎という意識を持っており、都会性を大阪や和歌山市に求める傾向がある。海南を都会化しても外部にそれを求めているので,買物などの流出は止まらないだろう (都会の模倣は無意味)。
「暮らす場」としての海南
  • 楽しむ場も含まれるが、生活の行動範囲が市単位を超えており、こうした実態に即した施策が必要。
  • 行政はハード (駅前、商店街などの施設設備) 志向のまちづくりが中心 (今後はハードを活かすソフト施策 (コーディネータなどの人材育成、市民の意識改革など) が重要との指摘)。
「子育ての場」としての海南
  • 地域への愛着や就業などの目的意識をもった(地元志向の)学生が少ない (郷土愛や地場産業を理解する教育の不足を指摘)。
3 まとめ
 既述の1、2をもとに、本市の定着促進に関わる住民意識とニーズを整理すると以下のようになる。
「働く場」としての海南
  • 若者の雇用の場が少ない。
  • 社会貢献できる職業なら企業の規模や知名度にはこだわらない傾向 (大学生) (子育て主婦)。
  • 就業・ボランティアを通じた社会参加・社会貢献意欲は極めて高い (子育て主婦)。
  • 雇用確保や新たな雇用を創造する気運が未成熟 (ITスキルなど即戦力や地域への誇り意識を育む教育の充実希望)。
「暮らす場」としての海南
  • 人情味があり、近所づきあいのよい海南気質 (子育て中の主婦には好感。独身者には「近所の目が煩わしい」という意見も)。
  • 駅前をはじめ、全体的に車中心の地域整備に不満 (高校生) (大学生) (独身社会人) (子育て主婦)。
  • 地価が高く、土地を持たない若年の戸建て購入希望者は市外 (岩出町、貴志川町など)へ流出(子育て主婦)。
  • 市内外への交通の利便性が悪い (各層:鉄道で大阪方面への通勤・通学は乗換が不便、市内の通園も車がないと移動できない)。
  • 図書館、文化会館、市民会館の整備や若者向けのイベント開催など文化面の充実を希望(各層)。
  • 保健福祉センターなど既存の公共施設の有効活用、利用制限の緩和を希望 (独身社会人) (子育て主婦:行政窓口の硬直的で思いやりに欠ける対応に不信感「生活者の視線で臨んでほしい」)。
「子育ての場」としての海南
  • 子ども同士、親同士、多世代間の交流を促す機会の充実。
  • 子育てから開放されるわずかな時間がほしい。(幼稚園3年保育や学童保育の早期導入、安価で安心な一時託児所への強いニーズ)。
  • 通園 (学) に1時間近く要する地区も有り、スクールバスの運行を要望 (今後の統廃合でさらに不安)。
  • 子育て経験を生かしたボランティアやサークル活動などへの参加意欲が強い。
  • 夜間救急対応可能な小児科(市民病院)の充実。
  • 空き店舗や空き地を活用し、車に乗らなくても遊びに行けるポケットパークがほしい。 (まちの美観にも貢献)。
「楽しむ場」としての海南
  • にぎわい性のあるまちづくりを希求 (そぞろ歩きして楽しいまち、中心市街地の商店街は空き店舗対策、複合型アミューズメント施設 (ボーリング場、ショッピングセンター) へのニーズも高いが、一方で都会の模倣をするより海南らしさを追求したほうがいいという意見も)。
  • 伝統産業や豊かな自然、歴史文化などの地域資源を観光資源として活用するべき (積極的なPR、標識・休憩所・土産物開発などの受入環境整備、海南市民の地域資源に対する学習・啓発機会の必要性、伝統文化・地場産業などを観光資源とするまちづくりに対して市民や地元産業界、各種団体、行政などとの合意形成を今まさに行う時期などという意見も)。








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