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序 調査研究の概要
 本調査研究の目的と背景、視点及び調査研究体系、報告書の構成、体制などを整理した。
1 調査研究の目的と背景
 美しい山と海に囲まれ、温暖な気侯に恵まれた海南市は、和歌山県北西部に位置する。古くから名勝の地として知られ、熊野詣の要衝地として栄えた歴史を持ち、また近世に入ると、漆器・和傘・棕櫚・塩などの特産が生まれるなど、商業の地として発展を遂げた。
 現在では、臨海部に立地する電力・鉄鋼・石油などの基幹産業や、日本四大漆器の一つに数えられる紀州漆器(黒江塗り)、全国シェアの約8割を占める日用家庭用品(とくに水回り品)などの伝統的地場産業、海南インテリジェントパークに集積しつつある先端的技術産業などがバランス良く調和した工業都市を形成している。
 しかしながら、昨今の長引く不況や産業構造の変化などによる影響で、本市の産業は、全般的に停滞傾向にある。
 本市の人口は、昭和45(1970)年以降、一貫して減少しており、とくに転出者の約7割は20〜30代の男女が占めるなど、若年層を中心に市外への流出が著しく、近年急速に少子高齢化が進行している。また、平成13(2001)年2月には中心市街地の商業機能の核となっていた大規模小売店舗が撤退するなど、さらなる市街地の空洞化や地域全体の活力低下が懸念されている。
 このような状況をふまえ、本市では平成13年3月に策定された第3次長期総合計画において人口減少対策の一環として「若者定着プロジェクト」を重点施策として位置付け、庁内横断的な検討組織である人口減少対策検討協議会を設置するなど、若者定着促進に向けた施策・事業の具体的な展開を図ろうとしている。
 本調査研究では、「若者定着プロジェクト」の具現化を目指し、本市における若者定着施策体系を構築する。その中で、とくに重要性、緊急性、戦略性の高いものを重点プロジェクトとして抽出し、具体的な展開方向を提案する。
2 調査研究の視点
 
(1)海南市の若者の定着意識や行動動向の実像に迫り、実情をふまえた提言を行う 
全国的な若者の定着動向調査や、平成11年度に本市で実施した人口動向調査などの詳細分析に加えて、さらにより詳細な海南市の若者の定着意識・行動動向調査(若者各層へのグループインタビュー)を実施することにより、実情に応じた提言を行う。 
(2)若者定着促進の総合的な施策体系を構築する 
若者定着促進の総合的な対応を行うために「若者定着プロジェクト」の重点施策として掲げられている「働く場」、「楽しむ場」、「暮らす場」に「子育て環境」及び若者定着を支える生活基盤と住民参加を支援する「基盤的環境」を加えた5つのテーマを中心に、若者定着促進のための施策体系(枠組み)とその公的支援のあり方を提示する。 
(3)市内外との交流やテーマ間の関連性を重視し「楽しむ場」を重点プロジェクトとする 
若者定着促進の事業化の足がかりとなる重点プロジェクトは、5つのテーマの中で行政施策としての拡がりが期待できる「楽しむ場」を中心に検討する。検討の視点として、「市内同士、市内外との交流」や、「職・住・遊・育などその他テーマとの複合・関連性」を視座におき、戦略性の高い事業を創出する。
 
 
3 調査研究の体系
 
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「若者」の定義について:本調査研究における若者の年齢範囲は、これからの担い手層も含め、特に指定のない場合、 高校3年生〜子育て世代層(18〜39歳)とする。ただし、統計処理的な扱いの場合には、統計年齢区分に準じて18〜39歳、 既存アンケート調査の場合は20〜39歳とする。
4 調査研究報告書の構成
第1章 海南市の地域特性と若者定着の動向
 本市の地域特性(広域的な位置関係及び土地利用の状況、経済状況など)を、既存の統計資料分析及び行政担当者などへのインタビュー調査などから明らかにした。また、国勢調査結果及び既定の関連調査・計画などから、本市の若者定着の動向及び若者定着施策の実施状況を把握し、その傾向や特徴を整理した。
 
第2章 若者定着促進に関わる意識とニーズ
 県民意識調査結果などから、本市住民の生活行動動向及び公的サービスの満足度を把握し、テーマ毎の課題を整理するとともに、本市に居住する「高校生」、「独身社会人」、「子育て中の主婦」、「UJIターン者」などへのグループインタビュー調査結果をもとに、若者定着促進に関わる市民意識やニーズを把握、整理した。
 
第3章 若者定着の全国動向と施策体系
 既存の統計資料分析などから、人口移動の全国的な動向及びUJIターン希望者の意識や定着ニーズを把握するとともに、国及び地方公共団体のUJIターン施策や過疎対策などから若者定着施策の考え方と枠組み、支援制度などを整理し、本市の若者定着の可能性と課題を明らかにした。
 
第4章 若者定着に向けた展開方向
 1〜3章までの現状把握、分析結果をふまえて、若者定着の視点からみた地域評価及び5つのテーマ別(「働く場」、「楽しむ場」、「暮らす場」、「子育て環境」、「基盤的環境」)の課題を整理し、若者定着促進展開の基本的な考え方及び施策体系と展開の方向を示した。
 
第5章 重点プロジェクトの展開
 4章で示した本市の若者定着促進施策体系のなかから、官民の意識改革と協働の取組を強化し、効果の複合性・波及性があり、かつ着手の容易性、実現性が高い施策を、重点プロジェクトとして設定し、その目的や具体的な内容、推進の考え方を先進事例の紹介などを交えて提案した。
 
第6章 今後の取組の考え方
 今回の提案内容を具現化していくために、関連主体の役割分担や、当面の取組に向けての重点プロジェクトの優先度、行政対応の方向などを示した。
5 調査研究体制
(1) 実施主体
 本調査研究は、海南市と(財)地方自治研究機構との共同研究とする。
 
(2) 実施体制
 本調査研究にあたり、有識者による調査研究委員会を設置し、検討を行うものとする。
 また、委員会の下に事務局を設け、本調査研究の具体的な推進に必要な事務、調査、調整を行う。
 
(3) 組織構成
 委員会および事務局の構成は以下の通り。
 
(委員会)
・学識経験者
・市内外有識者
・各種団体
・海南市幹部
・(財)地方自治研究機構
(幹 事)
・海南市総務部企画課
・(財)地方自治研究機構調査研究部
(基礎調査機関)
・(株)ジェド・日本環境ダイナミックス








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