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第2章 桑名・員弁地域の情報化の計画と基盤
 本章では、桑名・員弁地域の広域的地域情報システムを検討する上で前提となる三重県、桑名市などの地域情報化計画、電子自治体化構想とその現状、CATV(※)、ADSL(asymmetric digital subscriber line:非対称デジタル加入者線伝送方式。既存の銅線を使って高速データ伝送する技術)、光ファイバなどの地域情報基盤の整備状況について整理する。
1 地域情報化関連計画
(1) 21世紀三重情報化社会推進プラン
ア 概要
 21世紀三重情報化社会推進プラン(※)は、平成9年3月に、「デジタルコミュニティズヘの旅立ち」を副題として策定された。基本理念として「デジタルコミュニティズ(三重県において実現を目指す21世紀の新しい豊かで潤いのある社会)の創造」を掲げ、県民を主人公として情報平等主義のもと、豊かな情報生活の確立を目指すものである。
 
イ 施策展開
 21世紀三重情報化社会推進プランでは、「生活」、「安全・安心・環境」、「仕事・産業」、「交流・地域づくり」、「文化」といった5つの分野別にビジョンを設定し、それぞれ重点目標と施策の方向性を示している。
 この目標の実現に向け、具体的な事業からみた施策の展開を図ることとし、「情報化を担う人づくり」、「行政情報化の推進と公共サービスの高度化」、「魅力的な情報の創出と提供」などの展開テーマごとに図表2-1に示したような具体的な事業を検討している。
図表 2-1 具体的事業からみた施策展開
項目 主な事業
情報化を担う人づくり 教育関係機関ネットワーク構築
デジタルアカデミー設置
行政情報化の推進と公共サービスの高度化 電子県庁の実現と行政マルチメディアネットワークの構築
電子博物館、遠隔教育・遠隔講座の実施
遠隔画像診断・遠隔健康相談
保健・医療・福祉情報ネットワーク
地図情報システム
魅力的な情報の創出と提供 みんなの情報広場
バーチャル県民文化の森
産業高度化支援 工業団地への情報通信基盤の優先的設置(桑名リサーチパーク)
情報通信基盤の整備 MIEマルチネットワークの構築(高速大容量情報通信網整備、CATVの広域ネット化)

資料:三重県「21世紀三重情報化社会推進プラン」 (平成9年3月)


 
ウ デジタルコミュニティズ実験事業
 21世紀三重情報化社会推進プランにおいて示されたデジタルコミュニティズ(情報ネットワークを活用して、行政や住民が自発的に情報をデジタル化し受発信していくことで、多様な情報交流を行い、地域や行政区分を越えた新しいコミュニティの創造)の実現に向けて、平成9年度から3年間をかけて実験事業が進められた。実験事業には、行政とともに産業界、教育研究機関などが参加し、情報通信技術による地域課題の解決を図ることを目指した。
 実験事業は、プレワーキングでの検討を重ねて実験テーマ案を固めた後、三重デジタルコミュニティズ実験協議会を設置して、実験事業の公募を行った。実験協議会でテーマを決定した後、テーマごとで構成されたワーキンググループで実験事業を実施した。実験事業の概要は図表2-2に示したとおりである。中でも、教育・文化分野の「三重デジタルミュージアムネットワーク事業(※)」、「Teenage Walkers Project(※)」、環境・防災分野の「環境学習における環境NPOとの情報連携システム・家庭と学校の環境マネージメントシステム事業」、「防災移動端末による情報収集システム事業」、産業・その他分野の「みんなの情報広場構築事業」について、事業化成熟度がとくに高いと評価され、デジタルコミュニティズ(DCs)推進事業としての継続、担当部局での事業継続が図られている。
図表 2-2 デジタルコミュニティズ実験事業の概要
実験テーマ 実験の概要 事業化への評価






実験 1:
インターネットを活用した学校間パイロットモデル事業
学校をインターネットで結び、教育現場での利活用の有効性を明らかにする。また、マルチメディアTV会議システムの教育現場における有用性についても検証していく。 事業化成熟度 B
関連事業で実験継続
実験 2:
三重デジタルミュージアムネットワーク事業
県立博物館、斎宮歴史博物館、県立美術館3館のデジタルミュージアムへのインターネットアクセスが行える環境を整備する。また、上記3館の主な収蔵資料のデジタルデータベース化およびネットワークを利用した共同事業実験を行う。 事業化成熟度 A
DCs推進事業として継続
実験 3:
スーパー生涯学習センター・仮想公民館事業
講演会、講義などの生涯学習教材をリアルタイムとオンデマンド (要求に応じてその場で) でネットワークを通じて提供し、いつでも、どこでも、誰でも参加できるようにするためのシステムを構築する。 事業化成熟度 B
関連事業で実験継続
実験 4:
三重県大学間マルチメディア教育実験プロジェクト
大学間などを結び、テレビ電話とインターネットを組み合わせた講義の実施、大学間などの共同研究、地域住民・小中高校との交流を実施し、県内の大学など高等教育機関を核とした地域アカデミック・コミュニティを形成する。 事業化成熟度 B
関連事業で実験継続
実験 5:
Teenage Walkers Project
世界のティーンエイジがインターネットを利用してネットワーク・コミュニティを形成し、自由に交流が行える機会を提供するため、ホームページの作成、交流発表会、ホームスティなどのプログラムを実施する。 事業化成熟度 A
担当部局による実験継続






実験6:
医療情報ネットワークによる地域医療支援事業
地域中核病院を中心に地域の医療機関を通信網でネットワーク化し、医療情報の共有化と情報交換を行うネットワークシステムの運用実験を行い、医療情報の電子化の方法、情報共有のしくみ、情報交換と運用管理の方法について考察する。 事業化成熟度 B
DCs推進事業として継続を検討
実験7:
在宅リハビリ者支援事業
リハビリ訓練指導者と在宅の訓練者を情報ネットワークを介して結び、自宅にいながらあたかも訓練指導者から対面指導を受けているような臨場環境を作り、適切なリハビリテーションを早期に継続的に行うことができるようにする。 事業化成熟度 C
事業化は見送り
実験8:
CollecTV (コレクティービープロジェクト)
色々な立場の人たちが参加する 「バリアフリー関連情報」 のデータベースを作り、情報を共有するしくみ作りと、サポートする人材育成を図る。また、インタ−ネット上で情報交換ができる場として、障害者が自主運営するデジタルサロンを開設する。 事業化成熟度 B
事業化は見送り






実験9:
環境学習における環境NPOとの情報連携システム・家庭と学校の環境マネージメントシステム事業
県民自らが運営する環境ネットワークシステムを構築し、家庭、学校、企業における環境行動を促進するためのシステムの有効性を検証するとともに、行政と県民が一体となった環境保全への新しいシステム作りの実験とする。 事業化成熟度 A
機能を拡張して事業化
実験10:
防災用移動端末による情報収集システム事業
災害現場の的確な状況把握を行うため、既存の防災行政無線ネットワークの全県移動局を活用して、単信無線回線における静止画伝送システムの実験を行う。 事業化成熟度 A
担当部局で事業化を検討







実験11:
バーチャル・産業観光プロジェクト
地場産業と観光の活性化を図るため、一般利用者や観光旅行業界、観光協会に対してマーケッティング調査を行い、消費者ニーズに基づいた各企業や観光協会の提供するデジタルコンテンツ(※)を作成する。 事業化成熟度 C
関連事業で実験継続
実験12:
三重サスネットーアグリ・プログラム開発事業
安全で信頼される三重の農業、農産物のあり方を、「生産者の顔が見える農産品」=生産物の情報公開のシステム可能性、「生産者と公開された表示情報の一致を保証する」=認証制度の市場の評価とその仕組みの研究、の観点から検証する。 事業化成熟度 B
DCs推進事業として継続
実験13:
「みんなの情報広場」の構築事業
地域における魅力的な情報の創出を支援するため、インターネットを利用して地域の情報を収集・発進し、県民が情報交流できる場となる「みんなの情報広場」を作る。 事業化成熟度 A
担当部局による事業継続

資料:
三重県デジタルコミュニティズ実験協議会 「デジタルコミュニティズ実験事業報告書
(平成13年3月)


(2) 桑名市テレトピア計画
ア 概要
 平成5年度に、郵政省の指定を受け、「人と情報ネットワークがつくるふれあいシティ桑名」を基本理念に、コミュニティタウン型に重点を置き、併せて福祉・医療型、都市問題解決型を含むテレトピア計画を策定した。
 
イ システム内容
 構築に向けて検討されたシステムは、コミュニティタウン型が「コミュニティ情報システム」、「生涯学習システム」、福祉・医療型が「緊急通報システム」、都市問題解決型が「防災連絡システム」、「リサイクル情報システム」である。このうち、「くわなマイタウン情報システム(CATVなどを通じて地域に密着した情報を提供)」、「市政情報システム(市の広報をCATVで実施)」および「緊急通報システム(独り暮らし老人が通報システム端末を身につけ、緊急時に連絡できるシステム)」が稼働している。構築の検討されたシステムの内容、稼働状況について図表2-3に示した。
図表2-3 テレトピア計画の概要
タイプ システム名 サブシステム名 概要 稼動状況
(未稼動の理由)









コミュニティ情報システム 桑名マイタウン情報システム 地域のコミュニティ活動の活性化を図るために、CATV、ビデオテックスを通じて、地域に密着した、イベント情報、観光情報、商店街情報、学校教育・文化情報などを提供する。 (株)勢慶映像ネットワーク(桑名テレビ)として稼動済み
行政アンサーシステム 完全週休二日制の導入や夜間などの閉庁時においても対応できるように、各種行政情報を市民からの電話・ファクシミリによるアクセスにより電話網を通じて提供する。 未稼動(提供情報内容、利用率から費用対効果検討中)
市政情報システム 市民の、桑名市における課題や現況・将来への展望についての意識の高揚を図るため、CATVを通じて、市の広報などを行う。 稼動済み
図書検索システム 市民が図書館に行くことなく、最寄の公共施設や自宅から、図書館の蔵書情報や新刊情報をビデオテックス端末や、パソコンを通じて検索が行えるようにする。 未稼動(蔵書コード置き換え予算未獲得)
生涯学習システム 施設利用案内システム 家庭や最寄りの公共施設に設置した端末から各施設の利用状況の検索を行えるようにする。 未稼動(施設関係者と協議中)
市民講座放映システム 中央公民館などで行われている各種市民講座を、高齢者や障害者などの外出が困難な人や、時間的都合により受講できない市民のために、CATVを通じて家庭に居ながらの受講を可能にする。 未稼動(CATV 加入者の伸びが鈍く、情報格差を生じる可能性)





緊急通報システム 緊急通報用のボタンを押すだけで電話回線を介して在宅老人データベースを備えた施設に通報が発信される緊急通報装置を対象宅に設置する。通報をうけた施設では、電話よる状況の確認や、現地への急行、または、状況に応じては消防署をはじめ家庭や協力員などに連絡する。 稼動済み






防災連絡システム 災害時や災害が予想される場合に、市職員の電話による呼び出しや連絡を緊急一斉連絡装置を利用し行う。同時に市民には、CATVを通じて注意を促す。 未稼動(防災行政無線を優先的に推進)
リサイクル情報システム リサイクル運動の活性化をめざし、ビデオテックスを通じて広く市民にリサイクル情報の交換の場を提供する。 未稼動(内容検討の遅れ)

資料:
桑名市 「桑名市テレトピア基本計画書」(平成5年10月)および「進捗状況調書」
(平成12年7月)より作成








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