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第2章 土地利用の整備方向
1 基本的視点
 調査対象地区の今後の整備を考える上での基本的な視点は、次の3つである。
図表2-1-1 基本的視点
■ 資質からみた浅羽海岸沿岸部の捉え方
 浅羽町は“海によって創られたまち”であり、そのシンボル空間が沿岸地域(本調査対象地区)である。
 即ち、沿岸地域の問題は、町全体の問題として取り組んでいくもので、今まで営まれてきた海との繋がりを基本に考え、これを保全・継承していくことは浅羽町民にとってのアイデンティティの形成に繋がるものである。
■ インパクトヘの対応の考え方
 当面調査対象地区へ直接的に影響を与える大きなインパクトは無い。とりわけ国道150号バイパス問題に対しては長期的なスタンスで取り組んでいく必要があり、調査対象地区の有効な土地利用を進めることがバイパス促進の誘引材料になるという捉え方から取り組んでいくものである。
■ 土地利用の有効活用促進の考え方
 調査対象地区の土地利用を進めていくには、土地所有者はもとより、住民全体のコンセンサスづくりが前提であり、大きなグランドデザインを描くと共に、小さな土地活用事業を実行し、目に見えて地域が良くなる実績の積み上げがポイントとなる。
 また、土地所有者が細分化されている問題を解決するため、土地を管理・コントロールする機関を設け、そこを介した土地利用の誘導を図っていく。
2 整備のコンセプト
 調査対象地区の整備のコンセプトは次のものとする。

整備のコンセプト
海によって創られ、海によって育てられたまち浅羽
そのシンボル空間が海岸沿岸部である
浅羽海浜オープンエアー・ミュージアム
 
 調査対象地区は、一見すると遊休・荒れ地化が進む海辺の空地ともみられるが、元を辿ると浅羽町の原型を形成したところである。
 また、各種の神社や開拓の事跡等、様々な歴史・文化が内包されている地区でもある。
 さらに、アカウミガメに象徴される海との繋がりを有する地区で、これは浅羽町だけの財産ではなく、広く遠州灘圏域、引いては地球環境規模の財産でもある。
 このような認識に立ち、グランドデザイン的な土地利用の方向付けとしては、誰にでも開かれた海の公園づくりという視点から「浅羽海浜オープンエアー・ミュージアム」と称するものである。
3 展開の方向
 先のコンセプトを受けた土地利用展開としては、次の3つの方向付けをおこなう。
図表2-1-2 土地利用の展開方向
■ 海浜環境の保全と管理システムづくり
 砂浜、松林、アカウミガメといった海を介した様々な自然の資源を有する海浜環境は本地区の基本資源である。これらの環境は、次世代へ継承していく財産としてしっかりした保全及び管理のシステムづくりを確立する。
■ 海浜レクリエーションパークづくり
 海浜環境は保全や管理のシステムを確立するとともに、一方で誰でもが親しめる開かれた空間でもある必要がある。
 現在はサーファーや釣り客等一部の限られた利用になっているが、そのことが利用マナーの問題を生む一因にもなっている。優れた海浜環境はその場で過ごすだけでもリフレッシュの場であり、また、自然を学ぶ貴重な学習フィールドでもある。適正な土地利用コントロールの基に、誰にでも開かれ、気軽に親しめる海辺の公園としての環境づくりを推進する。
■ 地域全体の景観づくり
 長期的な視点に立ち、“きれいな空間づくり”を徐々に進めていき、対象地区が遠州灘の中でも最も快適で美しい地域になるように、住民や企業さらには周辺地域の都市住民の協力も含め、官民一体となった景観づくりに取り組む。
 また、大きな土地利用のゾーニングの考え方としては次のことを基本とする。

●将来の国道150バイパス路線を境に、南は自然環境の保全・再生を基本とした海浜の美しいレクリエーション空間の形成を目指す。北は農地の保全を基本とし、中核となる農家への農地の集約化等を図りながら、農業の基盤整備を進める。
●海浜部は“自然と人がおりなす海浜美術館”という考え方から、基本的には車の乗り入れは禁止し、併せて駐車場・トイレ等の基盤環境の整備を随所に展開していく。
●既存の工場は“インダストリアルパーク”という考え方から、工場敷地及び周辺隣接環境への緑化の推進に努めていく。


図表2-1-3 土地利用ゾーニングの概念








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