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2 市民団体に対する意識
(1) 地縁団体とテーマ型団体の関係に関する見方
 地縁団体とのテーマ型団体の関係について、良い関係にあるという肯定的な見方や、活動目的が一致すればうまく協力できるという楽観的な見方がある。
 例外として、河川改修をめぐって、推進したい町内会と貴重な魚であるカワバタモロコを保護することを目的としたテーマ型団体の間で意見が対立したことがある。藤枝青年会議所がカワバタモロコを保護するために、やぶた湿地帯の保全を提案し、藤枝市では、カワバタモロコを保護しつつ、河川改修を実施した。
(2) 市民団体などに対する期待
 地域の適切な運営のために、いくつかの分野において、人手不足の状況があるとする見方が多い。例えば、障害者福祉に関して、平成15年度から福祉サービスの利用法が、措置から利用者の選択・契約に変更されるため、施設の整備ばかりでなく、福祉サービスに従事する人材の確保が課題となっている。また、専業農家の減少により、河川愛護の面でも人手が不足している。
 このような人手不足という背景もあって、次のような意見がある。
・ 市民に参加してもらわざるをえない。
・ 市民団体・NPOに補完してもらいたい。
・ 介護サービスの評価など未開拓分野をNPOに期待したい。
 また、市民としての自覚を促すような意見も見られた。これらの意見の背後には、行政の枠組みの限界に関する認識、より良い地域運営には市民参加が不可欠という認識などがあると考えられる。行政マンとしての本音も含まれており、市民と行政が地域運営に関する共通の認識を持つには、このような率直な意見の交換が必要と考えられる。主な意見は、次のとおりである。
・ 市民の意識は役所任せであり、自分たちがやるべきとは思っていない。
・ これまで、市民は役所まかせであったが、自らの事業としてやってほしい。
・ 現在は、市が市民を引っ張って、市民を育てている。今後は市民が政策などを提案する番と言いたい。
・ 市民は、行政におんぶにだっこでなく、参加を。参加を通じて責任も生まれる。
・ 市の情報提供をもとに、市民からの提言がほしい。
・ 提案する団体があってもよい。ただし、偏った考え方は困る。
 年齢階層でいうと、新しい高齢者層を形成する団塊世代への期待が大きい。自ら責任を持って自立してほしいという期待である。
 市内の各地区については、次の意見があった。
・ 地域のことは、地域の住民が積極的に取り組んで欲しい。
・ 町内会は、地域内のシステムの母体になってほしい。
 高洲地区において、自治会(民生委員)が中心となり災害弱者に関する地域の緊急システムを構築したように、市では、他の地区でも同様のシステムの構築を期待している。
 市民団体に対する要望としては、次の意見があった。
・ 市民団体は、地域の問題を民生委員から聞き、問題を共有してほしい。
・ 市民団体同士のつながり、社協とのつながりを持ってほしい。
(3) 市民団体と行政の役割分担
 市民団体と行政の役割分担に関して、次のような意見があった。
・ 行政はボランティア団体の受け入れ体制を整備したり、その他の支援を行ったりし、市民団体は、関係団体のネットワークづくりを進めることが望ましい。
・ 地域社会のために何かしたいという意思のある人に支援することが行政の役割であり、それが市民参加の仕組みづくりだ。
(4) 市民や市民団体に対する見方
 藤枝市職員の間では、新市民は意識が高いという評価がなされている。ただし、一部に、新市民は自己主張しすぎると指摘する向きもある。
 委員会への参加だけでは十分ではなく、具体的な行動を期待する意見もある。ある部署では、意識の高い人に、市民活動を展開するように誘導している。
 市民団体に関する見方として、「団体の資質は高く、活動するにあたり問題は見受けられないと思う。しかし、活動に対する意識の差はある。」というものがある。評価しつつも、多様性が認識されている。また、「全市的な組織でないと協働しにくい」という意見もある。これは、これまで、自治会や町内会と協力してきた経験から出されたと考えられる。市民団体はテーマ型であり、全市をカバーするようなものは限られており、協働の方法は、自治会・町内会とは異なることを十分認識する必要がある。
(5) 市民団体への支援のあり方
 市民団体への支援のあり方についての意見は次のとおりである。
・ 行政は間接的な支援を行うべきである。
・ 女性活動センター等での勉強会や講習会に、より多くの人が集まり、日常的に開催できるように協力することが、行政の役割としては重要である。
・ 働いている人で市民団体の活動に参加を希望する人が、参加しやすい環境を整備したい。また、市民団体が働いている人(日常的に活動に参加できない人)に、門戸を開くよう呼びかけたい。
(6) 藤枝市内部の意見
 ヒアリングを通して出された藤枝市内部の意見の多くは、情報不足である。ある程度の情報は、行政側が市民団体の情報を取りに行くことで入手可能である。主な意見としては次のようなものがあげられている。
・ 町内会、自治会は身近に感じるが、市民団体は距離を感じる。
・ NPOと接する機会がないため、NPOに関するイメージがない。
・ 市内にどのようなNPOがあるのか知らない。
・ ボランティアで草刈りを行っている会社もあるが、市としては把握しきれていない。
・ 道路関係では、老人クラブや小学校の生徒がごみ拾いなどを行っているが、情報が無く、どの団体がどのように活動しているのかわからない。
・ 講座等の講師を市民団体へ委託しても良いが、その適正か否かわからない。専門的に教えることが可能な団体があるかどうかもわからない。適正な人材がいれば活用したい。
(7) 市民団体への委託について
 市民団体への委託に関する考え方は、部署によって異なる。委託を行っていない部署では、その理由として、次のようなものを挙げている。
・ 専門性を必要とする分野しか外部に委託しないため、市民団体等に委託するようなものは無い。
・ 市民団体は市の指名業者に登録されておらず、指名入札に参加できないため、委託できない。
 競争入札ではなく、随意契約で委託できるような業務については、市民(市民団体)に委託可能だとする部署もある。また、今後は、市民団体(ボランティアも含む)の活用も必要、NPOへの業務委託はこれから作り出すという部署もある。中には、具体的な事業の提示もあった。
 ただし、NPOの法人格は特に気にしないが、行政との関係を考えると法人格があった方が望ましいという注文もある。
 一方で、市民団体に関する情報がないため、委託することに関して不安がある、行政としては、市民団体の性質がわからないと責任ある活用はできないという声もある。市民団体の情報が不足しているため、市民団体に業務を委託できるほどの力がないという見方、中には職員よりも優秀な団体はあるのではないかという見方の両方がある。








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