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2 新しい組織の提案
 ふるさと市民を活用して鹿角市における今後のまちづくりを本格的に進める体制として、2つの新しい組織の設立を提案する。すなわち、地域情報サイトの開設・運営を中心にバーチャル系の仕事にあたる「十八の里情報センター」と、鹿角の資源を活用して地域振興を図るリアル系の「十八の里まちづくり会社」である。2つの組織は現実には1つの組織として運営されてもよいが、ここではわかりやすくするため、分けて提案している。
(1) 十八の里情報センター
 
 ふるさと市民制度及び事業の根幹となる情報を活用するために、新たな組織をつくる必要がある。ふるさと市民のデータベース管理、ふるさと市民に対する情報サービス、地域の課題を地域内外の多くの人たちに知らせ、解決のためのアドバイスをもらうなど、ふるさと市民制度を運用するためには多様な情報の収集処理が必要であり、また情報サービスも欠かせない。これらの情報収集処理と情報サービスを担う組織として、十八の里情報センターを設立する。
 
ア 情報センターとして果たすべき役割
十八の里情報センターの果たすべき役割は以下のとおりである。
・地域情報を受発信する機能と、地域の情報化を推進する機能の2つを持つ。
・鹿角の情報を全国、世界に向けて発信するとともに、世界の情報を鹿角市民につなげる役目を担う。
・地域の課題を地域内外の多くの人たちに知らせ、解決のためのアドバイスをもらう。
・鹿角のITビジネスの核となる。
・参加者が相互に持っている情報を利用し合うシステムとして機能する。
 
イ どのような事業を展開するか
十八の里情報センターは、以下の事業を展開する。
・地域情報サイトの運営
・ふるさと情報サービスの運営
・まちづくり課題相談発信コーナーの運営
・インターネット・ショッピングモールの運営
・地域情報化教育・研修
・企業のIT化支援
・シルバーネットの運営
 
ウ どのような組織をつくるか
(ア) 組織の構成
十八の里情報センターは内部組織として以下の部門を持つ
・システム・コンテンツ企画部門
・制作部門
・営業部門
・相談部門
・教育・研修部門
・IT化支援部門
 
(イ) 設立と運営
 現在活躍している「NPO法人インターネットかづの」を軸に組織化を図るのが適当と思われる。しかしながら、現在のNPO法人のインターネットかづのは、ボランティアに支えられており、組織としては弱い面がある。現在建設中の「(仮称)人・情報交流プラザ」への転入を契機として大幅に拡充することを考えたい。インターネット上で協力者を徴募するなど、最初からネットワークを生かした組織づくりをすることも視野に入れるべきである。
 なお、ふるさと情報サービス、インターネット・ショッピングモールなどの実業部門を運営するためには、出資者や経営者など、現在と異なる新たな人材を徴募する必要がある
(2) 十八の里まちづくり会社
 
 鹿角の資源を活用した地域起こし、営業、PRなどを行う組織である。地域振興策の企画立案、実行を担う組織として、市役所と並ぶ重要な役割をもつ。地域外との情報交流の成果を鹿角の地域振興に向ける機能も重要である。この組織は、それらのことを考え続けるための組織である。ただし、市民、ふるさと市民を巻き込んでまちづくりをという役割の性質上、従来の市役所や商工会のような重い組織ではなく、フットワークの軽い小回りの効く組織として設立運営することが重要である。すなわち、事業提案を見て、まずできない理由を探し安全と思われるものだけ実行するというような取組ではなく、できるためにはどうすればよいかを考えるDの精神、関係者全体の了解を取り付けてからようやく事業にかかるのではなく、共鳴者(仲間)を募ってやってみるというNの精神、しかつめらしく問題に取組むばかりでなく遊び心をもって取組むというAの精神、合わせて「DNAの精神」をもって間題を考えることのできる、若くてはつらつとした組織にする必要がある。
 
ア どのような事業を展開するか
(ア) 鹿角の資源を活かした産業と消費者を結ぶ商社機能
 鹿角の産物、素材、技術などの資源を、売るための機能である。たとえば、学校の総合学習に用いるわら細工のわらを手配し、同時にわら細工の指.導者を派遣するなどの事業を行う。鹿角特産のトマトを生で出荷するだけではなく、乾燥トマトやオリーブオイル漬としてイタリア・レストランに出荷するとかなり高価で取引されるなど、消費者側の情報を的確につかむことにより、商品価値が上がることも実際にある。鹿角の産品を望まれているところに望まれている形で売ることを考えたい。
 この事業については、福井県名田庄村の「名田庄商会」や、高知県馬路村の「まかいちょって家」などの先行事例がある。
 
(イ) チャレンジショップ・工房の運営
 市内の空き家、空き店舗、空き工場などを借り上げ、市内外の意欲のある人や企業に貸し出す事業である。新しい起業家と鹿角市内の不動産所有者とを結びつけ、また起業家が負うリスクの一部を肩代わりするためには、地域内で信用のある組織である必要がある。
 
(ウ) 広告・宣伝・市場開発
 市内の産品の販売促進のため、広告・宣伝、パッケージのデザイン改良、特産品開発などの役割を担う。
 
(エ) イベント・プロモーション
 ふるさと市民の人脈などを用いて、音楽や芸能などのイベントを企画し、実行する。
 
イ どのような組織をつくるか
(ア) 組織の構成
 市内の2つの商工会(鹿角商工会と十和田商工会)、JAかづの、十和田八幡平観光物産協会、鹿角観光ふるさと館、鹿角市の共同出資による組織としての設立を考える。出資の各団体から毎年一人ずつ、40歳以下限定の職員が出向し、2年間で何らかの成果を挙げて母体に戻るなど、常に新しい血を導入し斬新なアイデアを練るというような仕組みをつくる必要がある。
 
(イ) 設立と運営
 現在、花輪の中心市街地で、商店街活性化のための組織としてTMO(タウンマネージメント機関)を設立する動きがある。まちづくり会社の役割は、このTMOと重なる部分があるが、より広範な機能と広域的地域対応を持つことが求められている。TMOの設立は、これからであり、現在はまちづくり基本計画が策定された段階である。
 そこで、TMOとは異なる新しい組織としての設立を提案する。組織は第三セクターの株式会社として設立してもよいが、NPO法人として立ち上げ、収益をまちづくりに関する別の事業に使う仕組みを導入する方がふさわしいとも考えられる。








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