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9 ふるさと市民との絆を強化する事業
 ふるさと市民の鹿角との関係の基礎は、鹿角市との様々な形の交流、やりとりである。ふるさとへの思いを具体化してもらうことを期待するには、ふるさと市民に対して、ふるさと鹿角は何を提供できるかを考え、継続して提供していかなければならない。すなわち、ふるさと鹿角との絆を維持・強化するためのサービスを展開する必要がある。
(1) ふるさと情報サービス
 
 鹿角の社会経済の現況を知らせる市の広報紙や鹿角ふるさとニュース(「十八の里あんとらあニュース」など独自の名前をつけることを考える)を、ふるさと市民に定期的に届けるサービスを展開すべきである。送付は郵便とともにメールマガジンなどを活用する。
 また、観光やイベント情報、ふるさとの物産の情報なども、ふるさと市民がいつも知ることができるよう、地域情報サイトなどを構築し、提供する。このサイトでは、ふるさとに帰りたい人のために、求人や空き家の情報なども提供することを考えたい。
 これらは、鹿角のPRのために行うものであり、基本的に無料で提供する。
(2) 歳祝い情報サービス
 
 鹿角には、厄年に同期生が集まって盛大な行事や会合を行う「歳祝い」という習俗がある。歳祝いの時期が近づくと、該当する世代の人たちは、市民はもちろん、出身者も準備のための情報がとても気になるようになる。
 そこで、各世代の市民、出身者に対して歳祝いの情報を提供することを考える。
 とくに、この同期生の名簿は有力な「ふるさと市民侯補」のデータであることから、情報提供とともに一定の理解のもとで情報を収集・蓄積していくことが期待される。
 このサービスも、市役所や観光物産業界などをスポンサーとして、無料サービスとして考える。あるいは、歳祝い時点で必要経費をその他の経費に含んで徴収するなど、見かけ上は無料という形も考えられる。
(3) 安心情報サービス
 
 出身者の安心をもたらすサービスとして、ふるさとに住んでいる近親者の安否の確認を定期的に行い、万一、病気や事故などが起きた場合には、緊急連絡などを行うものである。
 出身者や在住者の希望によって有料でサービスを行う。
 安否の確認については、新聞、郵便、牛乳などの配達員、ホームヘルパーや保健婦などから情報を得る仕組み、必要な処置を速やかに行う仕組みを整える。
 当初は人による確認システムから出発し、将来的にはIT技術活用した自動安否確認情報システムの構築を目指す。
(4) ふるさと産品の送付
 
 きりたんぽやりんご、しそ巻きあんずなどふるさとの味覚や、工芸品などを、注文によって宅配する有料サービスである(申込制)。例えば、2千円から1万円程度の特産品セットをつくり、受注販売することを考える。このセットは、在住者の手みやげとして、あるいは在住者、出身者等の贈答用として買ってもらうことも考えたい。インターネット販売、カタログ販売(ふるさと情報サービスの提供時などに簡単なカタログを同封するなど)を中心に行う。
 また、アンケートによれば、ふるさと会員として会費負担をすることも考えている人は7割おり、会費3千円程度を適当とする人が半数以上いる。1万円から3万円を負担しても良いと言う人も合わせて18%程度いる。このことから、ふるさと会員として、年会費をもらい、金額に応じて年に4〜6回程度、特産品のセットを送るサービスも考える(会費制)。
(5) オーナー制度
 
 果樹や市民農園のオーナー制度は、ふるさと市民をふるさとに結びつける強力な手段となる。りんごの木オーナー、水田オーナー、ふるさと市民農園など、果樹の収穫権や農地の使用権を、期限を決めて貸すことにより、耕作や収穫作業のためにふるさと市民が定期的に鹿角に訪れるようになる。また、普段の管理は鹿角の農家が行うことになるが、ふるさと市民に農作業の指導をしたり、生育状況の報告をしたりすることで市民とふるさと市民との絆が強まることにもつながる。
(6) 交流機会の提供
 
 さまざまなタイプのふるさと市民が、リアルの場で、あるいはバーチャルの場でふるさと市民同士、ふるさと市民と鹿角市民(ふるさと市民ではあるが)が交流する機会を設ける。
 例えば、建設が進められている「(仮称)人・情報交流プラザ」の中に交流の場を設け、出身者等が鹿角に帰省や観光で訪れる際に、在住者やふるさと市民同士が自由に交流する機会を提供することも考えられる。バーチャルな場としては、「ふるさと市民サイト」での交流―具体的には掲示板や意見交換の場の設定―が考えられる。
 また、低迷する観光を振興するためには、新しい交流型観光―人と人との交流―の展開を積極的に進め、人に出会うために来る人を迎える仕組みが必要である。
 そこで、観光クーポンの発行や後述する集落ゲストハウスの利用などにより、ふるさと市民が鹿角市内に安価で泊まれる機会を提供することを考えるべきである。
 アンケート調査によれば、ふるさと市民間の親睦を期待する意見もあることから、ふるさと市民同士の親睦や情報交流の場・機会として、「ふるさと市民」会報などを作成して配布することも考えられる。








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