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 [4] 社会保障財源の構成割合の国際比較
 社会保障財源の項目別構成割合を国際比較をすると、イギリスはNHS(National Health Service)であることから医療が基本的に税金で賄われており、支出の多くを国庫負担が占めている。言い換えれば、社会保険方式に余りなってなく、基本的に税金を中心とした運営になっている。
 アメリカも公費(国庫負担と地方負担の計)が多くなっている。これは、アメリカは医療などをほとんど民間保険による対応とされており、その部分を除くとメディケアやメディケイドといった弱者対策や高齢者対策としての医療制度に公費が充当されているため、公費の割合が大きくなっていることが推測される。
 その中で、日本は、被保険者拠出金と事業主拠出金が中心とされた制度になっており、この方式はドイツやフランスにおいても同様の形態になっている。
 また、スウェーデンは被保険者拠出金がほとんどなく、事業主拠出金、国庫負担及び地方負担により構成されている。
 
図表1-3-4 社会保障財源の構成割合の国際比較
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(資料)国立社会保障・人口問題研究所「平成10年度 社会保障給付費」(平成12年12月)
社会保障研究所「海外社会保障情報」No.123 Summer'98
 
 
 [5] 国民負担率の国際比較と推移
 現在の日本の租税負担率は2001(平成10)年度で36.9%となっており、1970(昭和45)年当時と比較すると12.6ポイント上昇している。さらに、将来推計では2025(平成37)年度には、約51%に達するということが見込まれている。
 現在の国民負担率を国際比較すると、アメリカは民間保険に依存していることから低く、イギリスは赤字を入れなければ5割弱となっている。また、ドイツ、フランス、スウェーデンに至っては5割を大きく上回る状況になっており、ヨーロッパでは非常に高い国民負担率になっている。
 さらに、現在の日本の状況を項目別に分析すると、国民負担率の上昇の要因は社会保障負担が、1970(昭和45)年に5.4%であったものが、2001(平成13)年には8.9ポイント上昇し14.3%となっており、3倍近く増加していることがあげられる。その他には、地方税は税制改正等のため3ポイント上昇し9.2%の増、国税は概ね横這いで0.7ポイント上昇し13.4%となっている。
 このことから、国民負担という視点からすると、税負担だけではなく社会保障負担をどう見るかということが、経済運営でも非常に重要な視点の一つとなっている。
 
図表1-3-5 国民負担率の国際比較
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(注) 1. 日本は2001年度(平成13年度)見込み。諸外国は暦年実績。
2. 財政赤字の国民所得比は、日本、アメリカ、スウェーデンは一般政府から社会保障基金を除いたベース。その他の国は一般政府ベース。
3. 2025年度の日本の国民負担率(推計)は、社会保障以外の支出に係る公費負担の対国民所得比が現在の水準(2割程度)で変化しないものとした場合の厚生省推計。
 
図表1-3-6 国民負担率の推移
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(注) 国民負担率=[(国税負担+地方税負担)+社会保障負担]/ 国民所得
 [6] 医療福祉産業の雇用規模・産業規模予測
 医療や福祉は、ビジネスの面から判断すると成長産業ではないかという視点がある。その理由として、医療は現在株式会社による病院経営ができないことから、株式会社に病院を経営させてもいいのではないか、あるいは、医療保険の対象外の自由診療や混合診療を認めてもいいのではないかといった議論がある。例えば自由診療や混合診療を認めることにより高所得者はより高度な医療を個人的に受けることが考えられ、そこにまたビジネスが創出されるのではないかといったことが推測される。
 さらに、福祉についても、ケアハウスに民間法人が参入してもいいのではないか等の議論があり、医療・福祉分野が今後の雇用の最大の引受け先になるのではないかという視点がある。
 それらを基にして、2010(平成22)年における医療福祉産業の雇用規模の試算では、雇用規模が1995(平成7)年からの15年間で132万人の増加に繋がり、最近の失業者の大幅増という状況がある一方、医療や福祉で一つの雇用吸収ができるのではないかという議論がある。
 
図表1-3-7 2010年における医療福祉産業の雇用規模・産業規模予測
  現状(1995年) 2010年 増加分
雇用規模予測 約348万人 480万人程度 132万人程度
市場規模予測 約 38兆円 91兆円程度 53兆円程度
資料出所: 「経済構造の変革と創造のための行動計画(第2回フォローアップ)」(平成11年1月閣議決定)による。








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