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第2章 廃棄物対策
1 はじめに
 私たちは毎日、実に多くのものやエネルギーを消費して生活している。そして、この日々の生活に伴って、目に見えるところ、また見えないところで大量の「ごみ」を排出し続けている。その結果、1年間に家庭等から排出される一般廃棄物はおよそ5,115万トンに達し、東京ドームのおよそ138杯分となる。さらに、工場や事業所等から排出される産業廃棄物は、約4億2,600万トンに及ぶ状況である。
 一方、このような大量の廃棄物を処理するために多くの時間と経費をかけなければならなくなっており、この廃棄物処理に伴い発生するダイオキシン類の対策や最終処分場の不足、不法投棄問題といった問題が生じている。このような問題を解決するために、国では廃棄物の排出抑制、再生利用の推進等から循環型社会への転換を図ろうと努力している。
 この章では、廃棄物行政の現状、今後の廃棄物行政のあり方について、従来からの取り組んできた国の政策を交えながら考察する。
 
2 廃棄物処理行政の現状
 (1) 廃棄物・リサイクル問題の現状
 ○ 廃棄物の区分と処理責任
区分 一般廃棄物(一廃) 産業廃棄物(産廃)
定義 家庭からでるごみ・し尿等を中心とする産業廃棄物以外の廃棄物 事業活動から生じる廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類等19種類の廃棄物
処理責任 市 町 村 廃棄物を排出した事業者
排出量 約5,000万トン/年 約2億トン/年
 
 
 ○ 廃棄物問題のポイント
 [1] 廃棄物最終処分場のひっ迫
一般廃棄物・・・・12.3年分(首都圏は11.4年分) (平成10年度)
産業廃棄物・・・・3.3年分 (首都圏は0.8年分) (平成10年度)
 
 不法投棄の件数の増加による廃棄物に対する住民の不信感の増大、依然として変わらない廃棄物の大量排出などから、新たな施設の建設が困難な状況となっており、最終処分場は非常にひっ迫した状況となっている。
 
 [2] 多発・悪質化する不法投棄と大都市圏・地方の対立
不法投棄件数・・・・1,049件 (43.3万トン) (平成11年度)
 
 度重なる廃棄物処理法の改正によって、不法投棄対策の強化(処理責任の拡大、罰金の強化等)が図られ、悪質、大規模な不法投棄の件数は確かに減少しているが、不法投棄の件数は増加傾向で推移している。また、大都市から排出された産業廃棄物が、大都市周辺部に不法投棄される事例が増加し、大都市・地方の新たな問題に発展している。
 
 [3] 廃棄物処理施設に対する住民の不信の増大
産廃施設反対紛争件数・・・・235件 (平成8年度までの10年間)
 
 「ノット・イン・マイ・バックヤード」(NIMBY)と言われるように、ごみへの不信、自己責任・公共心の薄れから、近年、廃棄物処理施設の建設反対の声が高まりから、産業廃棄物処理施設のみならず、一般廃棄物処理施設についても建設が困難な状況となっている。
 
 [4] 一般廃棄物の処理状況
区分 平成元年度 平成5年度 平成10年度
ごみ減量処理率 78.4% 85.6% 92.5%
リサイクル率 3.1% 8.0% 12.1%
最終処分率 35.0% 30.3% 22.2%
 
 [5] 産業廃棄物の処理状況
区分 平成2年度 平成5年度 平成10年度
減量化量 39% 40% 44%
再生利用量 38% 39% 42%
最終処分量 23% 21% 14%
 

 (2) 廃棄物・リサイクル対策推進のための法体系
図表1-2-1 循環型社会の形成の推進のための法体系
(拡大画面: 105 KB)
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 [1] 循環型社会形成推進基本法
・ 廃棄物処理の優先順位を、[1]発生抑制、[2]再利用、[3]再生利用、[4]熱回収、[5]適正処分とし、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される「循環型社会」の形成を推進するための基本的な枠組みを定め、拡大生産者責任 (EPR:ExtendedProducer Responsibility) 及び汚染者負担の原則 (PPP:Polluter Pays Principle) を明確に位置づけている。
 
※1 拡大生産者責任(EPR):生産者の責任を、物理的、財政的に製品の使用済み段階まで拡大すること。生産者が製品の処理又は処分に対し、物理的、財政的に責任を負う。
※2 汚染者負担の原則(PPP):環境悪化の発生源が明らかな場合、汚染原因者が明らかな場合は、その汚染した者が汚染防止と規制措置に伴う費用を負担すべきであるとの原則。
 
図表1-2-2 循環型社会形成推進基本法の仕組み
(拡大画面: 173 KB)
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 [2] 廃棄物処理法
・ 汚物総除法(明治時代)→清掃法→廃棄物処理法(昭和45年)
・ 廃棄物(汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質等を除く))の発生抑制・適正処理を目的とし、廃棄物処理施設の設置規制、廃棄物処理業者に対する規制、廃棄物処理基準の策定等を内容としている。
 
図表1-2-3 廃棄物処理法の概要
目的 [1]廃棄物の排出抑制、 [2]廃棄物の適正な処理(運搬、処分、再生等)、[3]生活環境の清潔保持により、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ること
定義 廃棄物
○汚物又は不要物であって固形状又は液状のもの(放射性物質等を除く)
一般廃棄物 産業廃棄物
○産業廃棄物以外の廃棄物 ○事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃プラスチック類等の廃棄物
特別管理一般廃棄物
○爆発性、毒性、感染症等人の健康又は生活環境に被害を生ずるおそれのある一般廃棄物
特別管理産業廃棄物
○爆発性、毒性、感染症等人の健康又は生活環境に被害を生ずるおそれのある産業廃棄物
処理責任等 ○市町村が自ら作成した一般廃棄物処理計画に従って、生活環境の保全上の支障が生じないうちに行う ○事業者が、その責任において、自ら又は許可業者への委託により行う
処理業(収集運
搬業又は処分業)
○市町村長の許可制。
○施設及び申請者の能力が基準に適合し、申請内容が一般廃棄物処理計画に適合する場合に許可。
○都道府県知事の許可制。
○施設及び申請者の能力が基準に適合する場合等に許可。
指導監督 ○市町村長による報告徴収、立入検査、改善命令、借置命令等 ○都道府県知事による報告徴収、立入検査、改善命令、措置命令等
処理施設 ○都道府県知事の許可制。(ただし市町村が設置する場合は届出)
○設置計画が構造基準に適合し、設置計画及び維持管理計画が周辺地域の生活環境の保全に適正に配慮されたものである場合は許可。
○都道府県知事の許可制。
○設置計画が構造基準に適合し、設置計画及び維持管理計画が周辺地域の生活環境の保全に適正に配慮されたものである場合は許可。
指導監督 ○都道府県知事による報告徴収、立入検査、改善命令等 ○都道府県知事による報告徴収、立入検査、改善命令等
再生利用特例 ○生活環境保全上支障のない一定の再生利用について環境大臣の認定を受けた場合には、処理業及び処理施設の設置の許可は不要。 ○生活環境保全上支障のない一定の再生利用について環境大臣の認定を受けた場合には、処理業及び処理施設の設置の許可は不要。
投棄禁止 ○何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。
野外焼却禁止 ○何人も、処理基準に従って行う場合等を除き、廃棄物を焼却してはならない。
罰則 ○不法投棄の場合、5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその併科。(産業廃棄物について、法人によるものは、1億円以下の罰金)
 








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