日本財団 図書館


5) 自動スラジ排出型潤滑油清浄機CL16A型     
 阪神内燃機工業株式会社
 
1. 潤滑油清浄装置の種類と特長
 潤滑油清浄装置の種類として遠心式、フィルタ式、遠心分離機とフィルタ併用式の三つに分けられる。
 
1) 遠心式(三層分離形)
 水を利用した三層分離式遠心清浄機が一般的で遠心力により潤滑油とスラッジ、水に分離させて分離したスラッジ、水を捕捉する。(油と比重差の少ないスラッジは捕捉しにくい)
 スラッジを排出する時に潤滑油も排出するため潤滑油の損失が多い。
 又、排出されたスラッジに多量の水(分離に利用した水が同時排出される)と潤滑油が混じっているためスラッジ処理が困難である。
 メンテナンスについては分離板の清掃等に時間が掛かる。
 メンテナンスが悪ければ異常流失を起こすことがあり、起こせば潤滑油の損失につながる。
 
2) フィルタ式
 濾材で濾してスラッジを捕捉するが濾材の目の大きさより小さいスラッジは捕捉できない。
 (水の捕捉もあまり期待できない)
 静止形のためスラッジの捕捉性能も遠心式に比べると少し落ちる。
 メンテナンスは簡単ではあるが交換するフィルタの費用が発生するのでメンテナンス費用は遠心式に比べて高くなる。
 
3) 遠心分離機とフィルタ併用式
 遠心式で分離できない潤滑油と比重差の少ないスラッジや濾材の目の大きさより大きいスラッジを捕捉できる。
 排出されたスラッジにはわずかな油と捕捉した水を含んでいるが、半固形化するので処理がしやすい。
 メンテナンスの時間は、遠心分離機の内部に分離板がないため三層分離形の遠心機より短い。
 メンテナンス費用としてフィルタ交換の費用が必要になるが、遠心分離機が付属しているためフィルタ式のみに比べて交換の期間は長くなりフィルタ式のみに比べて安くなる。
 CL16A形は遠心分離機とフィルタ併用式です。
 
2. 自動スラッジ排出形潤滑油清浄機について
1) 開発の目的
 遠心式清浄機のメンテナンス時間の短縮、潤滑油損失の減少、捕捉スラッジ処理の容易さを目的に開放掃除形潤滑油清浄機(阪神HC-L形)を開発し製造、販売してきたが乗組員の高齢化及び減員、労働時間短縮に対し、捕捉スラッジ排出に要する労力及び時間を更に軽減、短縮するために本製品を開発した。
 
2) 特長
(1) 遠心機を分解することなく捕捉スラッジを自動で遠心分離機外に排出
 プログラムに従って定期的に自動で捕捉スラッジを遠心分離機外に排出できる。
 捕提スラッジ排出に要する労力が軽減され、時間も短縮できる。
(2) 遠心分離機の回転を止めることなく、捕捉スラッジを排出
 再スタート時の過電流や振動等による過渡的な間題も解消され、遠心分離機及びモータに使用しているベアリングの寿命も延ばすことができる。
 メンテナンスの費用が削減できる。
(3) 捕捉スラッジは濃縮されて遠心分離機外に排出される。
 捕捉スラッジは濃縮されて排出されるため船内処理が容易である。
 潤滑油の損失を少なくできる。
 スラッジ処理の費用が削減できる。
(4) 捕捉スラッジ排出時は回転速度を一旦低下
 捕捉スラッジ排出時はインバータ制御により常用回転速度から一旦回転速度を低下させる。回転速度を一旦低下させることにより使用可能な潤滑油をタンクに戻し、捕捉スラッジと一緒に排出しない。
 潤滑油の損失を少なくできる。
(5) スラッジ受け用容器を設置
 容器内部にナイロン製ごみ袋を用意していただいて、装着することにより手を汚すことなく捕捉スラッジの処理が簡単にできる。
 捕捉スラッジの処理に必要な労力が軽減される。
(6) 全自動式では自動スタートの押釦を押すだけであとは全て自動で運転
 通常時の労力はスラッジ受け容器内の捕捉スラッジを処理するだけになる。
 メンテナンスに必要な労力が軽減される。
(7) フィルタの交換寿命が長い。
 遠心分離機で大きなスラッジを捕捉した後、フィルタに通油するためフィルタが目詰まりするまでの時間を長くすることができる。
 又、フィルタエレメントはプリーツ式を採用しており、外形寸法は小さくても濾過面積を広く取ることができるので交換までの寿命が長くなる。
 フィルタ交換費用が削減できる。
(8) フィルタが目詰まりしても清浄能力がある。
 フィルタが目詰まりし、通油量が低下しても遠心分離機で全量清浄されてタンクに戻る。
(9) フィルタの取付け、取外しが容易
 フィルタはカートリッジ式にしているため取付け、取外しが容易にできる。 交換に必要な労力が軽減され、時間も短縮できる。
(10) 油供給ポンプ1台が不要(特許取得済)
 通常、遠心分離機に油を供給するポンプと遠心分離機からフィルタに油を移送するポンプで2台必要ですが、遠心力により遠心分離機からフィルタに油を移送するため油ポンプは1台で済む。
(11) 架台にまとめて一体形にしているため据付が容易
 遠心分離機、フィルタ、加熱器、操作盤を架台に乗せて一体形にしているため据付が容易です。 (但し、油供給ポンプは別置き)
 
3) 要目
形式 CL16A
1. 遠心機
   回転速度
   遠心力
   通油量
1800 min-1
405.5 G
330 リットル/H
2. 消費電力
   遠心分離機
   加熱器
   油供給ポンプ
   ノズル駆動モータ
1.5 kw、 4 P
6 kw
0.2 kw、4 p
40 w
3. フィルタ
   エレメント法

φ234 × 755mm
(2μm ・ 9.0 m2)
4. 外形寸法
   長さ×奥行き×高さ
1264×870×1250mm
4) スラッジ排出モード
遠心分離機の運転及びスラッジ排出は、下記のプログラムで自動的に行われる。

 
5) 試験結果
(1) 遠心分離機とフィルタの性能
 新油に試験用ダスト(JIS試験用粉体I,7種)を混入し、遠心分離機とフィルタそれぞれの出口で粒度分布を測定した。
 測定結果は遠心分離機出口で21.17μm以上を100%捕捉、13.08μm以上を99%捕捉している。又、フィルタ出口で12.00μm以上を100%捕捉、8.48μm以上を99%捕捉している。
 従来より製造、販売している開放掃除形潤滑油清浄機(阪神HC-L形)に比べ、遠心分離機のスラッジ捕捉性能がアップしているのでフィルタの負担が軽減されフィルタ取換時間の延長につながる。
 
3. あとがき
 今回開発した自動スラッジ排出形の潤滑油清浄機は内航船及び漁船の環境にマッチした装置で、顧客各位の御期待にそえるものと思います。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION