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2) 舶用主機関用油圧逆転機HMG50形        
 阪神内燃機工業株式会社

1 はじめに
 当社では舶用主機関から船尾のプロペラまでを製造していますが逆転機付機関に関してのみ、他社製の逆転機を装備していました。しかし、今回HMG50形逆転機の開発により主機関−逆転機−プロペラといった一連の製品を当社の製品で構成できるようになりました。


2 概要
 HMG50形は前進用及び後進用の独立したクラッチ機構と遊星歯車式逆転機構、前後進用推力軸受部より構成されています。また、機関との接続は弾性継手を必要としない直結式となっています。
 許容最大トルクは50406N・m(1636kW・310rpm)であり、当社主機関ではLH34L(1618kW・310rpm)、LH32L(1471kW・280rpm)、LH30(1323kW・300rpm)形機関に装備します。

容量線図

形式名称 H M G 50
逆転機構 逆転方式 遊星歯車式
クラッチ(前・後進) 湿式多板油圧操作式
本体 許容最大トルク 50406N・m
主要寸法
全長 1580mm
全幅(裾付部) 1300mm
全高 1635mm
乾燥重量 5100kg
充油量 120リットル
付属品 油ポンプ 20m3/h×1.2 M P a(機関回転数310rpm)
油冷却器 5m2×1
油こし ポンプ吸込側 金網式( 50メッシュ)
ポンプ吐出側 金網式(150メッシュ)
使用油 SAE#30相当品
予備ポンプ容量 8m3/h1.2MPa
表1 主要目
 
3 特長
[1] 逆転機構には遊星歯車機構を採用しており、後進時にも低振動、低騒音であり、バックラッシの調整も不要です。
[2] クラッチは信頼性の高い湿式多板式であり、クラッチ材にはノンアスベストペーパ素材を使用し、クラッチ嵌入時のフィーリングがよく、信頼性、耐久性にも優れています。
[3] 推力軸受けには摩擦抵抗の少ない自動調心ころ軸受けを逆転機後部に内蔵しています。
[4] 主機関との接続には弾性継手を使用しない直結式を採用しています。
 
4 逆転機構
 HMG50形の逆転機構は図1に示すように中心のサンギヤ(出力軸)とそれを取巻く4対(8個)のプラネタリギヤ、そして外周のリングギヤにより構成される遊星歯車機構です。
 入力は各プラネタリギヤの軸を公転運動させるキャリアに伝達されており、後進クラッチが噛み合うとリングギヤが固定され、リングギヤとキャリアに速度差が発生します。この速度差が外周側のプラネタリギヤの自転運動になります。この自転運動は対になった内周側のプラネタリギヤにより方向を反転させ、サンギヤをキャリアと反対方向へ回転させます。
 リングギヤとサンギヤは歯数比が2:1になっており、サンギヤ(出力)はキャリア(入力)に対し2倍の速度で回転します。この結果、入力と出力の速度比は1:1となります。

図1 遊星歯車機構
 
5 動力伝達経路
 [1] 中立時
 中立時は回転している機関に接続された入力軸と停止しているプロペラ軸に接続された出力軸との回転差をリングギヤを空転させることにより吸収します。
 [2] 前進時
 前進時は前進クラッチ機構により人力軸と出力軸を直結させ、無駄の無い動力伝達を行います。この場合、サンギヤとキャリアの速度差が0に固定されるため、プラネタリギヤは自転運動できずに公転運動のみを行います。
 [3] 後進時
 後進時はリングギヤを後進クラッチにより停止させ、遊星歯車機構の働きにより出力軸を入力軸の回転と反対方向へ同速度にて回転させます。

動力伝達経路図
動力伝達経路図
 
6 さいごに
 油圧逆転機HMG50形はすでに3台が出荷され順調に稼働中です。
 今回のHMG50形の開発により主機関からプロペラまでを当社製品のみで構成することが可能となり、主機関と一貫した品質管理及びサービス体制ができることからもユーザ各位の期待にそえるものと確信しています。

HMG50断面図








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