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3) ダイハツディーゼル低NOx機関DK36型
    ダイハツディーゼル株式会社
 
1. はじめに
 船舶から排出される排気ガスに関して、’97に開催された海洋汚染防止条約締約国会議において、海洋汚染防止条約に「船舶からの大気汚染防止」に関する新附属書VIを追加するための議定書が採択され、同時に、強制コードとして「舶用ディーゼルエンジンからのNOx排出規制に関するテクニカルコード」が採択された。
 ダイハツディーゼル(株)は、舶用発電機、舶用主機および各種陸用向けに、このような時代の要求にあったディーゼル機関の開発を継続している。
 
2. DKシリーズの開発コンセプト
 当社の中速ディーゼル機関はPSシリーズに始まり、DS、DL、そして最新のDKシリーズに至っている。環境問題を念頭に置いた新開発DKシリーズに共通した開発コンセプトは次の通りである。
[1]環境保全
[2]信頼性と耐久性の向上
[3]ランニング・メンテナンスコストの削減
[4]高効率
[5]小型高出力
 
3. NOx低減技術
 NOxの低減技術としては、水添加、燃料噴射時期遅延、排気ガス再循環、多噴口燃料噴射、排煙脱硝等が知られているが、当社では、高圧縮比の採用、燃料の高圧短期噴射、給排気システムの最適化等と、最も基本的なNOx対策である燃料噴射時期遅延をうまくマッチングさせることにより、燃費の悪化を伴うことなくNOxの低減に成功している。
 燃料噴射時期遅延により、シリンダ内の燃焼温度を下げNOxの生成を抑制する方法は最も容易であるが、単に噴射時期を遅延させただけでは燃費を悪化させてしまうため、上述のような燃焼の最適化によって燃費の悪化を防止している。これらを当社の最新機関であるDK-36を例にとり具体的に述べてみる。
 
3.1 DK-36機関主要目
DK-36機関の概観と機関主要目を表1に示す。
機関形式 6DK-36 8DK-36 12DK-36
シリンダ数 6 8 12
シリンダ径 360mm
ストローク 480mm 460mm
回転数 600min-1(600rpm)
最大燃焼圧力 15.7MPa(160kgf/cm2)
最大機関出力 3310kW
(4500PS)
4413kW
(6000PS)
6325kW
(8600PS)
正味平均
有効圧力
2.26Mpa
(23.0kgf/cm2)
2.26MPa
(23.0kgf/cm2)
2.25MPa
(23.0kgf/cm2)
機関乾燥重量 44ton 55ton 70ton
6DKM-36
3.2 シリンダライナ
 シリンダライナは耐摩耗性に優れた高温強度の高い特殊鋳鉄製で、特にシリンダ上部は、ガス圧による変形を少なくするために厚肉とし、熱負荷を軽減するため、きり穴加工による強制冷却構造としている。また、シリンダライナの摩耗を軽減し、潤滑油消費量を低く安定させるために、シリンダライナ上部にはプロテクトリングを設けている。

図1 シリンダライナ
 
3.3 シリンダヘッド
 シリンダヘッドは、機械的強度が高く熱伝導性のよいバーミキュラ鋳鉄を使用している。シリンダヘッド高さを大きくとり、燃焼面は厚肉構造とし、きり穴加工により強制冷却する構造で、4本のシリンダヘッドボルトは油圧工具で強固に締め付けられている。この構造の採用により、高い燃焼圧力に対しても弁シート部の変形は少なく、各部の熱変形を均一化し、弁と弁シートの当たりを良好に保つことで、弁温度を適正な温度に保持している。

図2 シリンダヘッド
 
3.4 ピストン
 特殊鍛造鋼クラウンとダクタイル鋳鉄のスカート部からなる組立型ピストンを採用しており、薄肉・軽量でしかも燃焼圧力に十分に耐えられる設計とした。1st、2ndリング溝には硬質クロムメッキを施し、耐摩耗性向上を計っている。また、確実なガスシールと潤滑油消費の安定化をねらい、ピストンリングは圧縮リング3本、オイルリング2本で構成している。特に1stリングには厚さ200μmのクロムメッキを施工しており、12000時間のピストン無開放運転が可能である。

図3 ピストン&連接棒
 
3.5 燃料噴射系
 機関性能に大きく影響を及ぼす重要部品であり、特に高強度に設計している。短期間の燃料噴射を実現するため燃料噴射ポンプは常用150MPa(1530Kgf/cm2)が可能なクローズドタイプのプランジャバレルを採用している。また、シリンダヘッドと燃料噴射ポンプは高圧に耐えられるよう鍛造鋼ブロックで接続しており、分解・組立作業が非常に容易な構造となっている。

図4 燃料噴射装置
 
3.6 過給システム
 過給機は、無冷却・高効率過給機を採用している。一本の排気管で構成されるDSP(ダイハツシングルパイプ)排気システムと高圧力比のコンプレッサをうまくマッチングさせることで、排気のエネルギーを有効に回収している。その結果、低燃費、低NOxを達成し、燃焼室構成部材の温度を低く押さえることができた。

図5 DSP排気管
8DK-28 NOx TEST DATA
8DK-28試験機 NOx試験結果 720rpm*3100ps

図6 NOxテストデータ
 
4. 低NOx性能
 図7に、DKシリーズのNOx排出濃度とIMOの規制値を示す。図のようにDKシリーズは、標準仕様でIMOのNOx規制に対応可能な低NOx機関として開発されている。DK-36型機関は、日本海事協会(NK)のNOx鑑定証書を99年6月に取得しており、DK-36以外のDK機関もすべて取得済みであり、NK以外の船級についても順次NOx鑑定書を取得するよう受検していく予定である。なお、IMOのNOx規制は2000年1月1日以降の起工船に対して適用される。

(拡大画面: 50 KB)
図7 DKシリーズのNOx排出濃度
 
5. おわりに
 DKシリーズは、'93年12月にDK-20初号機を出荷して以来、市場ニーズに応えることができ年々出荷台数を伸ばし、'99年7月には出荷台数1500台を越えるに至った。DK-36の開発により、次世代を担うDKシリーズの基本ラインナップが完成したが、現状の性能、品質、操作性に満足することなく、よりいっそうユーザの皆様に喜んでいただけるよう、また段階的に厳しくなるNOx排出規制に対応できるようにさらなる改善、改良の努力を続けていきたい。








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