日本財団 図書館


2) MTU エンジンシリーズ電子制御装置について   
 株式会社大阪補機製作所

 近年の環境問題に関しましては、大気中の窒素酸化物(NOx)により酸性雨、炭酸ガスによる地球温暖化等の大気汚染が大きな問題となっており、それら排出源への排出量規制が実施されています。特に欧州におきましては、運河交通が内陸深くまで展開されていることから、運河交通に使用されている船舶ディーゼル機関についても、早い時期から窒素酸化物(NOx)規制が適用されており、段階的に厳しいレベルの規制が適用されています。
 このような厳しい現状に対し、MTU社では、従来採用しておりました機械式ガバナでは対応が困難であると考え、電子制御装置の開発を行い、実用製品化しています。
 機械式ガバナでNOx低減を実現させる場合には、燃料噴射タイミングを遅延させるのが一般的技術ですが、この場合にはNOx改善度合いに応じまして燃料消費量が増大すること、機械的に設定される為、調整点に対応した負荷近辺のみでしかNOx低減を享受できない等の欠点があります。
 燃料消費量が増大した場合(つまり効率が悪くなり)排気ガス中の炭酸ガス(CO2、二酸化炭素)量が増大する為、大気汚染問題のもう一方の問題であります地球温暖化対策には逆行します。
 また高速艇や作業船、小型船の主機関の場合、広い負荷領域で使用される特徴がありますので、極めて狭い範囲内でのNOx低減では、実際の使用条件に対応できないという欠点があります。
 こういった厳しい要求に対し、既に自社内で開発実用化されております電子ガバナと、やはり既に十分な実績を有しております機関制御・監視システムと組み合わせたものが、MTU社電子制御技術の実用化(ECS)です。
 本装置は低燃費率を維持し、操縦性の良い、環境にやさしい次世代のエンジンを目指しております。これまで培って参りました、確かな技術を背景に皆様の時代のニーズを先取りしました、新しい機能で一層のサービスの提供をお約束するものです。
 このシステムは、MTU社の標準シリーズである183、 2000、 396、 4000シリーズの全てのエンジンに適用されています。
 
・電子ガバナ183/2000/396/4000シリーズ
 ガバナ機能をコンピュータにて制御、噴射システムと統合し、エンジンの様々な係数(各温度、圧力、回転数)を瞬時に演算し、その瞬間における最適な燃料噴射量及び噴射タイミングを制御します。これにより、常に燃料と空気の量が最適にマッチングするためクリーンな排気を実現すると共に、急激な負荷変動による過剰燃料の噴射を防ぎ、黒煙の発生を最小限に防ぐことが可能で、更に回転数の追従性がアップします。
 
・ユニットインジェクションポンプ −2000シリーズ
1シリンダ毎に燃料噴射ポンプを装備している。
利点:
・高圧噴射による効率の良い燃焼
・燃料高圧管が短いため、安全性アップ
・噴射遅れが無く低速から高速まで安定した燃焼
・噴射ポンプの小型化、軽量化
 
・コモンレール式燃料噴射システム −4000シリーズ
 コモンレールと呼ばれる各気筒で共通する筒状容器に高圧ポンプで加圧した燃料を蓄え、それと隣接した各気筒の噴射弁で噴射量と噴射時期、噴射圧力を制御する。噴射弁にはニードル弁を開く電磁弁が内蔵され、電磁弁に電流を流す時間や時期で噴射量や噴射時期を調整する。そしてその電
流をECU(エンジンコントロールユニット)がエンジンの運転状態に合わせて制御する。
利点:
・低回転域においても燃料噴射圧の高圧化が得られ、NOxの排出が大幅に低減
・高圧噴射により燃料と空気の混合が促進されムラなく燃焼が可能
・噴射量や噴射時期を多段階に細かく調整することが可能となったため、広い回転域で騒音、黒煙、NOx、燃料消費量が減少

 
電子制御システム
 MTUの電子制御システムは主に操縦レバーシステム(リモコン、RCS)、モニタリングシステム(MCS、DIS)、及びエンジン制御システム(ECS、LOP)の3要素により構成されています。


モニタリングシステム(MCS)、コントロールシステム(RCS)は上記のような構成になります。システム間のやり取りは全てデジタル信号にて行われるため配線量は大幅に低減されます。また今までのような複数のアナログ計がLCDによる1つの画面表示に代わるため設置場所を選びません。


表示盤(DIS)
操舵室及び監視室に設置
各計測値、警報、エンジン状態、その他エンジン情報を1つのLCD画面で表示します。


コントロールレバー(RCS)
操舵室に設置
エンジンの回転数、ギアボックスの嵌脱/前後進、トローリング(オプション)を1つのレバーで制御しています。


機側制御監視装置(LOP)
機関室に設置
操舵室の表示盤を内蔵。各計測値、警報、エンジン状態を瞬時に選択、表示また、エンジン回転数の上下、ギアボックス嵌脱、各エンジンテスト機能等のボタンを備え、エンジンの制御が可能です。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION