日本財団 図書館


第3章 船舶安全法
1.船舶安全法の概要
 船舶安全法は、船舶の安全性について主として施設面から規定した法律であり、我が国の船舶を航行の用に供するための条件として、当該船舶が、その堪航性(船舶が航行上、通常生ずることのある危険に堪え、安全に航行できる性能)及び人命の安全を確保するために必要な船体、機関、設備等に関する技術上の基準に適合するように施設することを求めている。
 また、船舶安全法は、船舶が技術上の基準に適合していることを確認するため船舶所有者(長さ30m以上の船舶の製造時には製造者)に対し、定期的及び必要な場合には臨時に管海官庁の行う船舶検査を受けることを求めている。
 なお、船舶の定期的検査の基本的枠組みについては、船舶に係る技術進歩、運航に係る状況変化、船舶の構造・設備に関する国際的規制の動向等船舶検査を取り巻く状況の変化を受けて平成9年7月に船舶安全法が改正された。この結果、定期的な検査の時期に関しては、平成9年7月1日前に建造された船舶については、同日以後に最初に受検する定期検査以降
の全ての船舶検査、同日以降に建造される船舶についてはその全ての船舶検査に関して改正規定の適用を受けることとなった。(注:検査の時期にかかわらず検査の内容については全て以下の改正規定に従う。)
 平成9年7月に改正された船舶安全法の体系と関係規則一覧表を3・1表及び3・2表に
示す。
 
1.1 検査の種類
1) 強制検査(3・1図)参照
(1) 定期検査
 初めて航行の用に供する時、又は船舶の大きさ、航行区域等に応じて5年又は6年と定められている船舶検査証書の有効期間の満了した時に船舶の船体、機関、設備等の全般について行う精密な検査である。
(2) 中間検査
 定期検査と定期検査の中間において、船舶検査証書の残存有効期間内の安全性を担保するため船舶の船体、機関、設備等の全般について行う簡易な検査であって第1種中間検査、第2種中間検査及び第3種中間検査の3種類がある。検査の実施時期については、2.2検査の方法で述べる。
第1種:特殊船及び総トン数5トン以上の旅客船は定期検査から1年毎、その他の船舶は定期検査から起算して1年9ヶ月から3年3ヶ月の間(証書の有効期間が5年の船舶)又は定期検査から起算して2年9ヶ月から3年3ヶ月の間(同6年の船舶)に行われる。(船体の上架が必要な検査)
第2種:主に国際航海に従事する船舶(外航貨物船)の場合に受けるもので定期検査から1年毎に行われる。(浮上中で受検可能)
第3種:主に国際航海に従事する船舶(外航貨物船)の場合に船底検査等を分離して受けるもので定期検査合格日又は当該検査合格日より3年以内に行われる。(船体の上架が必要な検査)
(3) 臨時検査
 定期検査又は中間検査以外の時期に船舶の構造、設備、無線設備等の改造若しくは修理を行う時又は満載喫水線の位置その他船舶検査証書に記載された条件の変更を受けようとする時等に行う検査である。
(4) 臨時航行検査
 船舶検査証書を持たない船舶を臨時に航行の用に供する時に行う検査である。
(5) 特別検査
 運輸大臣が一定の範囲の船舶について、著しく事故が発生している等により、その材料、構造、設備又は性能が技術上の基準に適合していない恐れがあると認める場合に、これらの船舶について特別検査を受けるべき旨を公示して行う検査である。
(6) 製造検査
 長さ30m以上の船舶の製造時に製造者が受けなければならない検査で、船体、機関、排水設備及び満載喫水線について、船舶の製造に着手した時から受ける検査である(法第6条第1項)
 
2) 任意検査
(1) 長さ30m未満の船舶の製造検査
 長さ30m未満の船舶の製造については任意に製造検査を受けることができる。(法第6条第2項)
(2) 予備検査(法第6条第3項)
 検査は特定の船舶について行うのが原則であるが、機関、設備等については備え付ける船舶が決まっていなくても、その製造、改造、修理又は整備について予備検査を受けることができる。
(3) 準備検査
 船舶安全法の検査が必要であるか否か定まっていない船舶又は物件であっても、将来船舶安全法の検査対象となった際に合理的な検査を可能とするためあらかじめ検査を受けることができる。
 
(拡大画面: 34 KB)
z1128_01s.jpg
 
〔検査合理化制度〕
 法第5条の検査(特別検査を除く。)および法第6条の検査に監視受験者の任意で以下の制度の適用を受けることができ、その場合検査の一部が省略される。
・認定事業場  
  ・製造又は改造・修理 (第6条ノ2)
  ・整備        (第6条ノ3)
・型式承認と検定    (第6条ノ4)
3・1表 船舶安全法体系の概要

(拡大画面: 238 KB)
z1129_01.jpg
3・2表 船舶安全法関係規則の概要

(拡大画面: 136 KB)
z1130_01.jpg
3・1図 船舶検査制度の概要一覧図
 
1.2 検査対象船舶
 船舶安全法は、3・3表に示す「適用除外船舶」を除き全船舶に適用される。また日本各港間または湖川港湾のみを航行する外国船、裸庸船された外国船には、船舶安全法の全部又は一部が準用される。
3・3表 船舶安全法の適用除外船舶
適用除外船舶・適用除外条件 運送人員 ※1 推進機関の連続最大出力 ※4 引・押船の連続最大出力 航行区域等の制限 備考
ろかい舟 6人以下 - - -  
推進機関を有するもの 長さ1.5m未満の船舶 - 2PS(1.5kW)未満 - -  
長さ5m未満の船舶 3人以下 船外機
5PS(3.7kW)以下
- 潮若しくはダム・せき等により流水が貯留されている川の水域であって面積が50km2以下のもの又は一定条件に適合する川以外の水域で告示で定めるもの ※2 注1. 危険物ばら積船及び特殊船は適用除外とはならない。
  ・特殊船とは,原子力船,潜水船,水中翼船,エアクッション艇,海底資源掘削船,半潜水型又は甲板昇降型の船舶,潜水設備(内部に人員をとう載するものに限る)を有する船舶,その他特殊な構造又は設備を有する船舶で告示で定めるもの(水陸両用船)をいう。
長さ5m以上12m未満の船舶 船外機
10PS(7.4kW)以下
- ※1 運送人員:船員及びその他の乗船者以外の人数
※2 現在告示されている水域:能取湖,屈斜路湖,風蓮湖,洞爺湖,小川原湖,十和田湖,浜名湖,宍道湖,中海(制限あり),浦ノ内湾(制限あり),江田島湾(制限あり),羽地内海(制限あり)
※3 非自航船:推進機関及び帆装を有しない船舶。ただし,推進機関を有する他の船舶に押されるものであって,当該船舶と堅固に結合して一体となる構造を有するものを除く。
※4 省令では馬力(PS)で規定されている。
帆船 ヨット 補助機関付き 長さ1.5m未満の帆船 - 2PS(1.5kW)以下 - -
長さ5m未満の帆船 3人以下 船外機
5PS(3.7kW)以下
- 潮若しくわダム・せき等により流水が貯留されている川の水域であって面積が50km2以下のもの又は一定条件に適合する川以外の水域で告示で定めるもの ※2
長さ5m以上12m未満の帆船 船外機
10PS(7.4kW)以下
-
長さ12m未満の帆船 - - - 非国際航海,平水,沿海区域のみを航行する船舶
※3 非自航船 長さ5m未満の非自航船 3人以下 - 10PS以下 潮若しくわダム・せき等により流水が貯留されている川の水域であって面積が50km2以下のもの又は一定条件に適合する川以外の水域で告示で定めるもの ※2
長さ5m以上12m未満の非自航船 - 20PS以下
上記以外の非自航船 - -   非国際航海,平水,沿海区域のみを航行する船舶
災害発生時のみに使用する救難用の船舶で,国又は地方公共団体の所有するもの - - - -  
係船中の船舶 - - - - 注2 船舶検査証書の返納が必要
告示で定める水域のみを航行する船舶 ※5 - - - - ※5 現在告示されている水域:奈良,横浜ドリームランド及び宝塚ファミリーランドの人工池,宝塚ファミリーランド内の武庫川水域,競艇場,本栖湖及び安城の競艇選手養成水域,東武動物公園,東京ディズニーランドの人工池及びレオマワールドの人工池,ポルトヨーロッパ,パルケエスパーニャ,ナガシマスパーランドの人工池及び人工水路
専ら本邦の海岸から12海里以内の海面又は内水面において従業する総トン数20トン未満の漁船 - - -    
係留船 多数の旅客が利用することとなる用途として告示で定めるものに供する係留船であって,2層以上の甲板を備えるもの又は当該用途に供する場所が閉囲されているもの以外のもの 告示 (例) 劇場,映画館,公会堂,ナイトクラブ,飲食店,旅館,図書館,体育館,駐車場,事務所等
 
1.3 検査機関
 船舶の検査は船舶の種類、大きさにより分担して執行される。又、国に代わって検査、検定などを行う機関が定められている。これらの検査機関と検査等の範囲を3・4表に示す。
   3・4表 検査機関   
検査機関名 実施検査機関名 検査の範囲
運輸省 (JG) 地方運輸局 9、海運監理部 1、総合事務所 1、海運支局53、海運事務所 2 (管海官庁) 全部 (但し,小型船舶検査機構が行う船舶を除く)
国にかわって検査・検定等を行う機関 日本小型船舶検査機構 (JCI) 全国34支部 小型船舶(総トン数20トン未満の特殊船等を除く),船舶・機関・船用品の検定
認定船級協会 (財) 日本海事協会 (NK) 非旅客船の船級船
指定検定機関 (財) 日本舶用品検定協会 (HK) 船用品等の検定
製造認定事業場 H.10-4現在 41物流
64事業場
特定物件の製造工事
H.10-4現在 8物流
7事業場
型式承認による特定物件の確認
改造・修理認定事業場 H.10-4現在 2物流
5事業所
特定物件の改造修理工事
整備認定事業場 H.10-4現在
膨張式救命いかだ
85事業場
内燃機関 1事業場
特定物件の整備工事
認定公益法人 (社) 日本海事検定協会 (NKKK) 危険物の積付検査,危険物のコンテナへの収納検査
指定測定機関 微紛精鉱の水分側定
指定検定機関 微紛精鉱の積付
 
1.4 船舶検査証書及び船舶検査手帳
1) 船舶検査証書
 定期検査に合格した船舶には、船舶検査証書(小型船舶にはそのほかに船舶検査済票)が交付される。これらは船内に掲示又は備え付けて(船舶検査済票は両舷側に貼り付ける)おかなければならない。船舶検査証書の有効期間は5年である。ただし、旅客船以外の船舶であって平水区域を航行区域とするもの、または総トン数20トン未満の船舶であって危険物ばら積船、特殊船又はボイラを有する船舶以外のものは6年となっている。
 船舶検査証書の有効期間の起算日の設定については3・5表に示す。


(1).旧証書の有効期間の満了前3月以内又は満了後に定期検査に合格した場合
 
(拡大画面: 57 KB)
z1133_01s.jpg
 
(2).旧証書の有効期間の満了前3月以前に定期検査に合格した場合
 
(拡大画面: 13 KB)
z1133_02s.jpg
3・5表 船舶検査証書の有効期間の起算日の設定方法
 
2) 船舶検査証書の有効期間の延長
(1) 国際航海に従事する船舶
a. 船舶検査証書の有効期間が満了する際外国の港から本邦の港又は定期検査を受ける予定の外国の他の港に向け航海中となる船舶について、3月以内(従前5月以内)の延長が認められる。注1
b. 短航海注2に従事する船舶であって船舶検査証書の有効期間が満了する際航海中となる船舶について、1月以内の延長が認められる。
c. 延長手続は従来の「日本領事館」に加え、「管海官庁」においても取り扱うことができる。
 注1:但し、検査回航を終了した場合は、その終了した日を船舶検査証書の有効期間が満了した日とする。
 注2:「短航海」とは、航海を開始する港から最終の到着港迄の距離が千海里を超えない航海をいう。
(2) 国際航海に従事しない船舶
 船舶検査証書の有効期間が満了する際航海中となる船舶について、1月以内の延長が認められる。
 
3) 船舶検査手帳
 最初の定期検査に合格した船舶には、次回の検査年月日及び検査に関する事項を記録した船舶検査手帳が交付される。この船舶検査手帳には、その後の検査内容が逐次船舶検査官により記入され、機器関係の履歴(整備、修理の記録)、注意点が分かるので、整備又は修理の際の一つの目安となっている。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION