日本財団 図書館


4) 潤滑油清掃管理装置LUBCLIN
株式会社 新潟鉄工所
 
1 はじめに
 高出力ディーゼル機関の長期高性能維持のため、潤滑油には潤滑作用以外にも燃焼生成物や摺動部から生ずる金属摩耗粉を分離除去する作用が必要不可欠です。更に、近年の地球環境保護の観点より排出廃油の処理が問題化しており、また保守点検作業の容易化が強く要望されております。
 このような状況を踏まえ、従来から清浄装置メーカは装置やフィルタの改良を行ってきましたが、各社の使用実績から(株)住本科学研究所製の潤滑油清浄管理装置がこれらの要求を満たす装置と判断し、1998年8月25日に製造・販売契約を結び、一部設計変更を加えて新潟製潤滑油清浄管理装置「LUBCLIN(ルブクリン)」〔写真1〕として新潟内燃機工場で製造することとなりました。以下にLUBCLINの概要・性能を紹介致します。

 [写真1−1]CS200SA−NF3       [写真1−2]CS60M−NF3
 
2 従来型清浄管理装置の問題点
 従来からC重油機関で一般的に使用されてきたピューリファイアの潤滑油中スラッジ排出方法は、多量に排出されるエマルジョン状の廃油水の処理と分解掃除等の取扱いの問題がありました。又、船舶では、この廃油水を受け入れ設備のある港で、陸揚げして廃棄物処理する必要がありました。
 又、A重油機関では、一般的にグレーシャフィルタ等が採用されるケースが多く、この場合クランクピンメタルなどの摺動部品がC重油機関に比べて摩耗が早い傾向にあるという事例も最近報告されております。
 
3 LUBCLINの特徴
 LUBCLINは廃油水がなく取扱いもペール缶状の精密フィルター(商品名:ネフロンフィルタ〔写真2〕の交換のみで、缶ごとの交換であり保守が容易です。また、高性能清浄システムによる潤滑油の高清浄化で、摺動部品の摩耗率低下が可能となります。

 [写真2]ペール缶状ネフロンフィルタ   
 
4 清浄原理
 潤滑油を最初に遠心分離機を通し大粒径(10μm以上)のスラッジを除去した後、精密フィルタにて微細なスラッジ(1μm以上)を捕捉します。〔図1〕
 
5 遠心分離機
 精密フィルタで微細なスラッジを捕捉することから、高回転による大きな分離能力を必要とせず、シンプルな構造で、故障も
 少なく取扱いも簡単です。また水を使用しないため、廃油水は発生せず、スラッジが処理の簡単な固形状となり排出されます。従って潤滑油に水が全く入らず、また潤滑油の損失もほとんどありません。

[図1]LUBCLIN系統図
 
6 精密フィルタ(ネフロンフィルタ)
 LUBCLINの心臓部であるネフロンフィルタは、1μm以上の微細なスラッジを捕捉する能力と、捕捉したスラッジを出来るだけ多く内部に保持〔図2〕出来る能力とを有します。原理はロール状の積層エレメントを使用し微差圧(0.05MPa)で潤滑油を濾紙間隙に通しスラッジを濾紙表面に付着させるものです。また、エレメント全体(立体)でスラッジを保持するため従来の貫通タイプのフィルタとは異り、保持容量が大きく交換頻度は年に1〜2回程度です。推奨交換時間は3000〜4000時間です。フィルタはペール缶に収納されておりフィルタを直接手で触ることなくペール缶ごと交換可能です。取り替えたフィルタの処理は、ユーザで困難な場合は、販売元が有料で引き取り処理(住本科学で焼却)することも可能です。

[図2]ネフロンフィルタの構造
 
7 性能
 実プラント(B重油・清浄装置なし)6L34Xで約5366時間使用した潤滑油を回収し、本装置の性能を確認致しました。LUBCLINの清浄による潤滑油中の粒径の変化を〔図3〕に示しますが、粒径1μm以上の微細なスラッジが除去されていることが判ります。
 さらにLUBCLINの清浄により潤滑性が回復するというデータも得られました。

[図3]潤滑油中の粒径分布の変化
 
8 効果
 LUBCLINが、実際のコージェネレーションシステムで使用された効果の実例を〔図4〕に示します。LUBCLINを設置することにより、軸受けの摩耗量が大幅に改善されていることがわかります。このように、LUBCLINを使用した場合、ディーゼル機関の摺動部分が非常に良好な状態に保たれる結果となっています。

[図4]クランクピンメタル磨耗量の比較
 
9 おわりに
 環境面に大いに役立つのみならず、経済性、省人化といった観点からも大きな利点を持ち合わせる潤滑油清浄管理装置「LUBCLIN」を、当社では幅広い出力レンジをカバーできるように全自動型他各種シリーズ化し用意しております〔図5〕。今後、次世代を代表する新中速シリーズ機関にはLUBCLINを標準装備し、より高い信頼性を御提供致します。また、従来型清浄装置で廃油処理・分解整備の後継者にお困りのユーザの皆様にも、LUBCLINへのリプレイスという形で経済性・高信頼性を提供できるものと確信しております。

[図5]LUBCLlN標準選定範囲








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION