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3) ナカシマ新型特殊舵UPラダー
ナカシマプロペラ株式会社

 UPラダーは、高速船用吊舵としてナカシマプロペラで開発された特殊舵です。高速船の吊舵は、船速が速いため、おのずと舵発生力が大きくなります。従って、舵上部の構造強度が要求される結果、従来の舵軸と舵板とをフランジ結合にした場合、舵軸の直径も大きくなり、また、フランジの寸法も大きくなるため、全体的な抵抗が非常に大きくなります。
 UPラダーは、舵軸のフランジを円盤におきかえ、この円盤を直接支持する軸受け構造としたことにその特徴があります。大きな曲げモーメントの懸かる頸部軸受部を大きな円盤にすることにより、強度的に安全な物にするとともに船体抵抗となっていた従来の舵軸、フランジを廃止した結果、付加物抵抗が全く無くなったことにその特徴があります。
 また、UPラダーは、航空機の主翼に設けられるフラップの原理を応用した特殊舵でもあり、舵は、主舵板とそれにヒンジで結合されたフラップからなっていて、前述の円盤を貫通するヒンジには、簡単なリンク機構が船内側に設けられていて、舵を取った時、フラップが主舵板に対してその舵角以上になる構造となっています。主舵板の最大舵角は、45度に設計されており、この時、フラップは、船の前後方向に対して90度の方向を向くように設計されています。(図1参照)従って、主舵板の舵角を45度にした時、プロペラ噴流のほとんどが横方向に曲げられる為、通常航海中は勿論、離接岸等の定速時においてもUPラダーが優れた操船性を発揮します。
 さらに、UPラダーは、フラップを作動させるためのリンク機構が従来、船体外にあったものを船内に設けたことからオートパイロットで高速航行中、主舵板を動かさないでフラップのみを操舵することによって航行することが可能な構造も用意されています。図2にUPラダーの取り付け構想図を示します。また、写真1にUPラダーを実際に装備したFRP漁船(もじゃこ船/ヤンマー造船建造)の例を示します。
 
 特長
1. 舵抵抗が極めて小さい。
2. 高速航行中は、フラップのみ操舵して航行するため保針性が良い。
3. 船体と舵とが一体となったような構造となっていて水流の逃げが無いため、舵発生力が大きい。
4. 一体構造で組み立てられた舵構造物のため、短時間で取り付けが可能である。
5. フラップを作動するリンク機構が船内側にあることからメインテナンスが容易である。
 
 <特許公開 2000−16393>
図1 操舵時の主舵板とフラップとの状態
図2 UPラダーの取り付け構想図
写真1 UPラダーの実船取り付け例(FRP漁船)








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