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2.11 リモートコントロール装置(遠隔操縦装置)
 最近の舶用エンジンの運転操作は採算性の向上、省人化のために、殆どがブリッジから遠隔操縦で行えるようになっている。ブリッジでエンジンの操作をするためには、主機関の始動、停止、調速、クラッチの切替、等が行えると共に機関の運転状態が確認出来る計器盤や警報装置などを備えブリッジに居ながらにして対処できるようにしなければならない。又装置の故障は直ちに船舶の事故につながるので取り付け及び、作動確認を、十分に行う必要がある。
 遠隔操縦装置としては次のような種類がある。
 [1] ワイヤ式(ボーデンワイヤ式及び、プッシュプルワイヤ式)
 [2] 油圧式(静油圧式、及び動油圧式)
 [3] 電気式
 [4] 空気圧式
 又操作方式により次の2種類がありそれぞれ組み合わせて使用される。
 [1] ワンハンドルリモコン
 エンジンのガバナ操作と減速逆転機の前後進切替操作を1本のハンドルで行う方式
 [2] ツウハンドルリモコン
 エンジンのガバナ操作と減速逆転機の前後進切替操作を別々のハンドルで行う方式
1) ワイヤ式リモコン
 小型船の遠隔操縦に多く用いられておりリンクやワイヤなどで始動部と受動部を連結し、手動により機械的に操作するもので、小形エンジンのガバナ操作や、操作力の小さな油圧クラッチの切換等に使用されている。
 ワイヤには、従来はボーデンワイヤが多く用いられていたがボーデンワイヤは引張り操作のみで押す操作が出来ないため、最近は殆どが押しと引張りの両方向に使用できるプッシュプルワイヤが使用されている。
 2・214図に2ハンドル、プッシュプルワイヤ式リモコンの構造図を示す。
 1ハンドル式のものは、ハンドルを中立の位置から前進側に少し倒すと回転速度は最低速のまま、クラッチが前進側に嵌入し、更にハンドルを倒すと機関の回転速度が上昇する方式で、後進側も同じ作動となる。2ハンドル式のものは、回転速度とクラッチの嵌脱が、単独に操作出来るが、高速回転でのクラッチの切換は故障の原因となるので、クラッチの切換は必ず回転を最低速に落としてから行わねばならない。
 
2・214図 2ハンドル、プッシュプルワイヤ式リモコンの構造図
 
2・215図 ワイヤの端部
    
 なお、ワイヤの全長は長すぎると抵抗が大きくなり、途中の伸びなどで操作が不安定となり、作動が不確実となるので最長は15m程度とし、曲げ半径は30cm以上にすると共に、リモコンヘッドからの垂直垂れ下がり部に約60〜90cm程度白由に揺れるだけのスペースを設けるようにする。
 又、途中は止め金具などで振れないように固定し、ストロークがずれないようにする。
2・216図 1ハンドルリモコンの作動位置
 
2) 油圧式リモコン
(1) 静油圧式リモコン
 2・217図にクラッチリモコンの構造図を示す。
 この方式は始動部と受動部に設けたそれぞれの油圧シリンダを2本の銅管で連結し、その中へ作動油を充満しておき始動部のピストンをハンドルにより動かすことにより、作動油を媒体として受動部側のピストンを動かす方式である。
 構造が簡単で故障の少ない利点もあるが、配管が長すぎたり、曲がりが多いと管内抵抗が大きくなるため、大きな操作力を要し、又空気が完全に抜けなかったり、配管の途中で熱を受けたりすると作動が不安定となり、始動部と受動部のストロークに差異を生じ思わぬ事故を起こすことがあるので、配管に当たっては十分な注意が必要である。なお、始動部と受動部のストロークに差異が出来た時は調相弁で合せる構造となっている。
 2・218図はガバナリモコンの構造図で、始動部と受動部を1本の銅管で連結し、この中に作動油を充満して始動部のピストンを動かすと、油圧で受動部のピストンが動くようにしたもので、回転上昇時は、始動部のハンドルでピストンを動かすと油圧で受動部のピストンが動き、ガバナスプリングを圧縮して回転が上昇し、下降時は始動部のハンドルを戻すことにより油圧が下がり、受動部のピストンはガバナスプリングにより戻されて回転が下がる構造となっている。
 
2・217図 クラッチ用リモコンの構造図
 
2・218図 ガバナ用リモコンの構造図
       
 なお、ガバナリモコンの油密には、ベロフラムを使ったものとOリングを使ったものとがある。
 一般にガバナの始動部は、丸形ハンドルで、ネジによりピストンを動かし、油圧クラッチ側は棒ハンドルが多く用いられている。








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