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2・12図 ライナの外周
3) シリンダヘッド
(1) 構造と機能
 シリンダヘッド(シリンダカバーともいう)は鋳鉄で造られ、シリンダ上部に取付けられ、シリンダヘッド、シリンダライナ、ピストンで燃焼室を形成している、シリンダヘッド下面には吸、排気弁、同弁座、噴射弁のほか空気始動用始動弁、電気始動用予熱栓などが設けられ、シリンダヘッド内部は吸、排気ポートおよび弁案内に加えて、冷却のための水通路があり、燃焼室で発生した熱を冷却するようになっているため非常に複雑な構造をしている。さらにシリンダヘッド上部は弁腕支え台、弁バネ、弁腕などの動弁機構を納めた弁腕室となっている。
 シリンダヘッドは各シリンダごとに独立したものと数シリンダ又は全シリンダを一体にしたものがあり、副室式燃焼室形式では予燃焼室や渦流室などの副室部分をシリンダヘッド内部に設けている。また最近の小形高速機関には2・13図に示すように吸、排気弁を3〜4本設けたものが多くなっている。これらのシリンダヘッドは2・14図
に示す構造をしており、シリンダ上部にガスケットパッキンや銅パッキンなどを介してシリンダヘッドボルトで取付けられている。
2・13図 吸、排気弁の数
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2・14図 シリンダヘッド
(2) 点検と整備
(イ) シリンダヘッドのガスケットパッキン又は銅パッキン取付面の歪、ガス吹抜け傷および水、油もれなどを点検する。歪および吹抜け傷は修正限度以内であれば削り落とす。ヘッド下面(ガスケット取付面)の歪はストレートエッジとスキミゲージにより点検する。
2・15図 シリンダヘッド下面の歪計測
(ロ) 海水冷却式の場合は水連絡管付近の水通路の腐蝕に注意する。外部の盲栓、その他水通路点検蓋などからの水もれ塩吹きあとに留意する。同時に防蝕亜鉛の点検を行い1/2〜1/3以下になっていれば新品に交換する。
(ハ) 燃焼室、吸、排気ポート、噴射弁穴などへのカーボン付着、浸入状況をチェックする。点検後はこれらカーボンを清掃する。
(ニ) 触火面および弁間、噴射弁穴、始動弁穴などのカラーチェックを行い亀裂の有無を点検する。ヘアクラック程度の浅いものはグラインダで削り落すか、亀裂端部を削り亀裂の進展を防止する。
2・16図 カラーチェック
(ホ) 修正が完了したら水通路の水圧検査を行って水もれの有無を点検する。
(ヘ) シリンダヘッドを交換した時は勿論であるがライナ、ピストン、連接棒、軸受メタルなど主要部品を交換した場合は、トップクリアランスを規制している機関においては規定トップクリアランスになるようガスケットパッキン又は銅パッキン又は調整板にて調整する。なお、シリンダヘッドを取りはずした場合は必らずガスケットパッキンは新品に交換する。
(ト) 弁座の脱落、浮き出し、シートの当り幅、当り状況、摩耗量などを点検する。
 弁座の弛み、脱落、浮き出しのある場合はその弁座を取外し新品の弁座と交換する。
 弁座シートの当り幅が狭過ぎたり広過ぎる場合又は当り具合が悪い場合は弁シートグラインダ又は弁シートカッタなどを用いて標準当り幅に修正する。偏摩耗、吹抜けなどのある場合も同様に弁シートカッタ等を用いて切削したのち摺合せする。
なお、詳細は2・3項の動弁装置を参照のこと。








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