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2.4 出力不足および回転低下
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1) 燃料系統の不良
(1) 燃料油の選択ミス
 機関の使用に合わない燃料を用いると、濾器詰まりを生じ、燃料が十分送油できなくなり出力低下する。取扱不良などで、水分含有量の多い燃料油を用いたり、粘度の高い燃料油を用いたりすると、出力低下する。
(2) 燃料閉塞
 配管径が細過ぎたり、濾器などが詰まりを生じていると、十分な量の燃料が供給できなくなり、出力が低下する。
(3) フィードポンプ不良
 ピストン、バルブ、カム山などが摩耗すると吐出量が大巾に減少して、供給量が不足し出力が低下する。
a) フォードポンプの判定テスト要領
ア) 油密テスト
 吐出口を閉塞し、吸入口から約0.2MPa(2.0kgf/cm2)の空気圧を加え、軽油の中へ入れて空気もれのないことを確認する。プッシュロッドと本体からもれる小さな気泡は50cc/min以下であれば良い。
イ) 吸上げテスト
 フィードポンプを噴射ポンプに取付け、内部の燃料を全部排出したあと、吸入口に内径8mm、長さ2mのパイプを取付け、燃料油面をフィードポンプから1m下げて次のテストを行なう。
・ 手動吸上げテスト
  プライミングポンプを約60回/minの速度で作動した時に、30ストローク以内に、吸上げ吐出すれば良い。
・ 吸上げ能力テスト
  1,500min−1の回転で40秒間以内に吸上げ吐出すれば良い。
・ 吐出圧力テスト
  吐出側を閉塞して、枝管を設けて、そこへ圧力計(0.5MPa(5.1kgf/cm2))を取付け、噴射ポンプを600min−1で回した時に、吐出圧力が0.18〜0.22MPa(1.8〜2.2kgf/cm2)以上になれば良い。
・ 吐出量テスト
  1,000min−1で回した時に、送油量が規定量以上あれば良い。
(4) 噴射タイミング不良
 噴射タイミングは、各部の摩耗などにより徐々に狂いを生じている。特に燃料カム山及びタペットの摩耗は大巾な狂いを生じると同時に、リフト量が小さくなるので、大きく出力が低下する。
(5) ノズル不良
 噴射圧力は、使用時間の経過と共に徐々に低下してくる。その他色々なノズルのトラブルによって、シリンダ内での噴霧状態が悪化し、燃焼に悪影響を与えるので出力が低下する。
 従って、ノズルは定期的に点検し、噴射圧力を調整しなければならない。
 次図は色々な噴霧状態を示しており、極端な片寄りや噴霧割れなどがなく、噴射後の切れが良くなければならない。
 噴霧不良の時は、燃料油の中で分解洗滌しながら、組立て、再度噴霧テストにより確認する。噴霧状態が良化しない場合は、ノズルチップを交換しなければならない。
 
〔6ホール噴射弁=直接噴射形燃焼室用〕
〔スロットル噴射弁=過流室用〕
(6) 噴射ポンプの故障
 噴射量の減少や無噴射となり、出力が低下する。
(7) コントロールラックのリンク不良
 コントロールラックとガバナを連結するリンクやピン、軸などに曲がりやこじれがあると、円滑に作動できなくなり、噴射量が減少したり、 ユニットポンプの場合は各シリンダ間のバラツキが大きくなり、出力低下する。
 ユニットポンプの場合は、各シリンダ間の微量調整は定格時における各シリンダのヘッド出口排気温度を30℃以内のバラツキに修正する。
 またV形機関の左右バンクのコントロールラックを連結しているリンクや連結桿がこじれたり、曲げられると左右バンク間の噴射量に差を生じて、出力が低下する。左右バンクの連結桿を外して、こじれや曲がりを修正したあと、次の要領で取付ける。
 左右の噴射ポンプのコントロールラックは、フリーの状態では、いずれも無噴射位置になっており、リンクや連結桿を左側ポンプのコントロールラックに連結して、フリーの状態におく。右側のコントロールラックの連結ピン穴に、ピンが楽に挿入できるようにターンバックルで長さを調節して、ロックナットでターンバックルを固定したあと、ピンを挿入して左右のコントロールラックを連結する。連結ピンを無理に挿入すると、ピン穴のずれた分だけ、コントロールラック位置が動き、噴射量に差異を生じるので注意しなければならない。








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