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3) シリンダヘッド(カバー)
 シリンダヘッドは機関の頭部に位置し、吸排気ポート、吸排気弁、燃料噴射ノズルまたは副燃焼室を内蔵する複雑な構造の部品である。シリンダヘッドの下面は爆発力を直接受けると同時に冷却水側、燃焼室側との温度差による熱応力を受ける。このため燃焼面の弁間部や弁と副燃焼室口金との間に熱疲労による亀裂が発生し易い。この対策として冷却水通路、ヘッドの厚さ、弁間距離など構造的な対策と同時に使用材料を鋳鉄から鋳鋼やニッケル、モリブテンを含む、特殊合金鋳鉄が出力率の高い機関に使用されてきている。
 シリンダヘッドとシリンダとの接合面からのガスもれも最高圧力の上昇とともに生じ易く、ヘッド自体の剛性と耐久性のあるパッキン材料の使用が配慮されている。
 したがって、機関の分解時には、特にこれらの点に留意して点検することが必要である。

(1) 点検および整備
 3・3表 シリンダヘッドの点検、整備による。
3・3表(A) シリンダヘッドの点検、整備(1)
点 検 計 測 内 容 整 備 内 容
(1) 分解したままの状態で点検  
 [1] 燃焼室、吸排気孔および吸排気弁弁かさ部カーボン堆積状態を目視  燃焼室のカーボン落し(カーボン堆積多い場合、オイルアップおよび吸排気弁案内よりのオイルダウンなど調査)
 [2] 水ジャケット部のスケール付着を目視 水ジャケット部のスケール落し(スケール多い場合、水ポンプ、冷却水路点検)
(2) カーボン、スケール掃除後の点検  
 [1] 燃焼室の亀裂有無 (カラーチェック)  亀裂ある場合部品交換
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 [2] シリンダライナとの締付け面の変形、ひずみを目視および定盤上で点検  ひずみがある場合はすり合わせ修正または研削修正
 [3] ジャケット部の漏水の有無点検 (要すれば水圧治具使用し水圧テスト) 修理できない時は交換
 [4] 水ジャケット部の腐食状況を点検 腐食はなはだしいものは交換
 [5] 防食亜鉛の損耗度合い点検(海水冷却機関) 1/3以上損耗のときは交換
 [6] 吸排気弁シートリングのゆるみを点検 (テストハンマ使用) ゆるみある時はオーバーサイズ部品と交換
 [7] 吸気、排気弁の弁面とヘッドのシートリング(弁座)の当り面の荒れ、損傷、亀裂、摩耗量、変形計測 すり合わせ修正基準以上摩耗の場合は交換(弁座の当りはシート幅の1/2〜1/3完全に当ること)
 [8] 吸排気弁案内のゆるみ、浮上りを点検(テストハンマ使用) ゆるみある時は交換
 [9] 吸排気弁と弁案内間隙点検 基準以上は交換
 [10] 各植込みボルトの曲がり、ゆるみ、ねじ部の損傷点検 修正、またはねじの損傷のときは交換
 [11] 弁の弁棒部の摩耗、焼付き点検 軽度のものは修正、使用限度以上は交換
3・3表(B) シリンダヘッドの点検、整備(2)
点 検 計 測 内 容 整 備 内 容
 [12] 弁ばねの損傷、変形を点検 損傷変形のあるものは交換
 [13] 弁ばねの自由長計測 使用限度以上は交換
 [14] ばね受と止め金の当りおよび摩耗点検 当り不良、摩耗はなはだしいものは交換
 [15] Oリング、パッキン類の損傷、当り不良を点検 傷、損傷のあるものは交換
 [16] 弁腕軸と軸受のスキマ計測および軸受(ブッシュ) の固定具合点検 スキマの限度以上のもの、ブッシュの動くものは交換








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