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SR500「船舶技術の創造的展開に関する調査研究」
SR501分科会「新海上物流システムの調査研究」
成果報告書 要 約
 
SHIP RESEARCH PANEL 501
Research for New Marine Transport System
 
Highly advanced marine transportation systems are investigated in order to be more effective, more rational and more competitive. To step forward, the method and possibility of the research about this field are studied.
1. Actual situations of domestic and overseas marine transportation are clarified.
2. The simulation technology of marine transportation are developed.
3. The network analysis technology are also developed.
4. The methodology and possibility of these research are studied to advance forward.
These results are to be applied to practical use of shipbuilding, shipping, goverment and bank.
1. 研究の目的

 陸海空とも総合的な物流の効率化等の要求が求められ、また、モーダルシフト等の観点から海上交通への期待が高まっている。また、グローバルな物流システムの変革の嵐が新しい海上物流システムを検討する必要性を強めている。こうした状況の中で、船舶が社会に貢献した面と、逆に社会的条件に規定されて設計される側面を取り上げて検討する研究も起こってきた。例えば、物流シミュレータやモーダルシフトの研究である。従来のこれらの研究成果を踏まえると、安全や環境に配慮しつつ、より効率的で高度な海上物流システムの構築を提言する展望が見えてくる。本研究はより高度な新海上物流システムを提言できる研究の方法や可能性を調査研究する。
2. 研究の目標

従来の研究成果を踏まえ、次の3点の具体的目標を立てる。
(1)海上輸送に関わる物流の調査検討
物流情報、物流インフラ情報の調査及び整理を行なうとともに、工学的手法により物流情報を定量化・システム化する技術の現状及び今後の方向に関し調査検討を行う。
(2)海上輸送のシミュレーション技術とその活用
品目・品種・航路・船速等を定め、物流シミュレータによるシミュレーションの試行を行なう。また、今後検討すべきシミュレーションの機能・規模・体制等をその活用方策とともに検討する。
(3)海上輸送のネットワーク技術とその活用
海事ITS時代も踏まえ、国内海上輸送のネットワーク関連技術の調査検討を行うとともに、アジア、さらにはグローバルなコンテナ輸送の基本モデル等の国際海上輸送のネットワーク関連技術についての調査検討を行う。
そして、この成果や開発経験に基づいて
(4)新海上物流システム研究の方法と可能性を検討する。
上記(1),(2),(3)の課題を解きながら、時代の要請に応える新海上物流システム研究の方法や将来展望を言語化し、創造的に研究分野を開拓する可能性を示す。
3. 研究の内容
3. 1 海上輸送に関わる物流の調査検討
 国内物流については、平成7年度全国貨物純流動調査の非集計データを用いて、全国のユニットロード物流、とりわけ長距離ユニットロード物流の分析を行い、後述の国内物流シミュレータに必要な知識を集積した。
 国際物流では、米国税関輸出入貨物データ(PIERSデータ)によって太平洋定期船航路を調べた。
3. 2 海上輸送のシミュレーション技術とその活用
 国内物流では、長距離フェリー・RORO船航路について需要予測と最適船型を求めるプログラムを開発した。
 国際物流では、太平洋定期船航路のシミュレーションプログラムを作成し、1ヶ月間の米国税関輸出入貨物データを用いて現状を再現すると共に、将来の定期船秩序を構想するための船型決定モデル、航路編成モデルを作成した。
 また2010年における太平洋定期船航路の予測を踏まえ、シミュレーションによって船社会計と荷主へのサービス水準を定量的に評価し、今後の航路編成と船型評価を中心とする課題を抽出した。
3. 3 海上輸送のネットワーク技術とその活用
 代表的な船社のヒアリング結果を踏まえて海上輸送ネットワーク設計問題を定式化し、船社の航路設計支援ツールを開発して、小規模な例題について試設計を行なうと共に、航路、船型等の輸送ネットワーク形成要因分析を行なって航路設計における課題を抽出した。
また、試設計に平行して入カデータの電子化及び精度向上を図ると共に、解析データの可視化プログラムを試作した。
 さらに解析結果から現状の海上輸送ネットワークの見通しを行なって、各海運アライアンスの特徴と位置付けを明らかにすると共に、大型化や高速化による経済性向上のメリットを分析、評価して将来の海上輸送ネットワーク形態を推測し、関連する課題を抽出した。
3. 4 新海上物流システム研究の方法と可能性
 海上輸送シミュレーション及び海上輸送ネットワーク解析における各種データベースの位置付け及び役割を明確化すると共に、国内物流解析の基礎となる国内純流動調査データを分析し、任意の都道府県OD間の輸送経路を自動的に計算表示するソフトを開発した。また、1ヶ月間の米国税関輸出入貨物データを詳細に分析し、各種シミュレーションのデータベースとしての有効性を確認した。
以上の成果を踏まえ海上物流データベースや各設計ツールの実用化に関する技術課題を抽出、とりまとめた。
4. 得られた成果と今後の課題

具体的研究課題では
(1)純流動調査データを中心にした国内物流に関する調査検討がなされ、分析のツールが開発された。
(2)米国税関輸出入貨物データ(PIERSデータ)を中心にした太平洋海上輸送の物流調査検討がなされ、種々の知見と分析ツールが開発された。
(3)国内ユニットロード物流のネットワーク解析ツールが開発され、フェリー・RORO航路の診断ができた。
(4)太平洋定期船航路のシミュレータが開発され、遺伝的アルゴリズムによる航路編成の技術開発とともに、定期船航路の検討ができるようになった。
(5)定期船航路の設計支援の海上輸送ネットワーク設計ツールが開発され、海運アライアンスの分析が行われた。また、新海上物流システム研究の方法と可能性について検討した結果、
(6)物流研究の一層の高度化を展望する物流研究の諸課題が挙げられ、IT時代の経済・経営および国家戦略に関する知識の生産が産業社会の再生に必要不可欠であるという認識が得られた。
5. 成果の活用等

 成果が活用されるためには実用化を目指したより一層の高度物流解析技術の開発が行われる必要がある。その前提の下で、次のように成果を活用できる。
[1] 国内物流ネットワーク解析によって、フェリー・RORO航路の診断ができるので、船社は航路を経営する観点から、造船所は船舶を設計する観点から、金融機関は事業に融資する観点から、国は国内物流効率化を目指す観点からこの技術を活用できる。
[2] 太平洋航路の海運秩序の変化を検討する、定期船シミュレータと遺伝的アルゴリズムによる航路編成技術によって、外航船社のアライアンスを視野に入れた経営戦略や航路効率化による経営効率化に役立つ。外航海運の世界動向を分析することによる国家戦略構築にも活用できる。
[3] 海上輸送ネットワーク設計ツールによって、定期船航路の最適化が行われるので、船社や造船所に活用される。








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