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SR239「船舶の摩擦低抗低減法に関する研究」 要約
 
SHIP RESEARCH PANEL239
Research on the Reduction of Frictional Resistance of Ships
 
 For further energy saving by the reduction of propulsive power of ships, researches are needed to study on how to reduce frictional resistance. In this research panel, three kinds of means for the reduction of frictional resistance, namely micro-bubbles, air-sheet and surface treatment are picked up, and four-year investigations were carried out to develop estimation procedures of the amount of frictional resistance reduction in full-scale performance.
 In the final year, full-scale measurements of the effect of micro-bubbles on frictional resistance reduction were performed by using M.S.“Seiun-maru”, a training ship owned by the Institute for Sea Training. The reduction of frictional resistance was recognized in some of the measured items in some cases of the test. Micro-bubbles were injected from the side of the bow, and reduction of frictional resistance seems to depend on the position of the bubble injection.
 
1. 研究の目的と狙い
 船舶の省エネ対策の最重要項目である推進性能向上については、造波抵抗や粘性圧力抵抗(形状抵抗)は十分に低減されており、実用上有効な低減技術が殆どない摩擦抵抗の低減が望まれて居る。近年、乱流境界層の研究が進んで摩擦抵抗の低減法が幾つか発表されており、船舶についても基礎的な研究がされているが、摩擦抵抗低減のメカニズムは十分に解明されて居らず実用レベルには達していない。本研究部会発足に先立って摩擦抵抗低減に関する研究をレビューし、船舶への適用性が高く研究開発を進めるべき方法として下記3種を選定した。

[1] マイクロバブル法…微細気泡を境界層内に供給して摩擦抵抗を減らす。80%の低減が得られた実験例もある。抵抗低減のメカニズムは充分に解明されて居らず、相似則も確立していない。
[2] 空気膜法…船底を薄い空気膜で覆うことにより摩擦抵抗を低減する。薄い空気膜を維持する方法の開発が課題である。超撥水性塗膜との組み合わせが注目されている。
[3] 表面処理法…防汚機能を有し摩擦抵抗低減が期待できる塗料として自己研磨型塗膜および撥水性塗膜がある。また、適度の密度と弾性係数を持つ弾性皮膜で覆うことにより摩擦抵抗が減少するという実験例もある。

これらの摩擦低抗低減法の実船への適用の目処を得るために、平成10年より平成13年までの4年間に下記の項目について検討を実施した。

[1] メカニズムの研究とデバイスの考案…現象を支配する主要なパラメータを見出し、その影響を実験的に調査して、実船への適用可能なデバイスを考案する。
[2] 実船性能推定法の検討…上記の摩擦抵抗低減法の現象を支配する要因を抽出し、その尺度影響や相似則について検討し、模型実験や理論解析を組み合わせた実船の性能推定法を提案する。
[3] 大型模型による実験…摩擦抵抗低減技術については実船性能の推定に不可欠な尺度影響についての知見が殆どないので、実験設備の許容範囲内で出来るだけ大型の模型で高速の実験を行う。
[4] 実船実験…考案された摩擦低抗低減法の効果と尺度影響を確認するために、実船実験を実施する。計測装置や計測法の開発を行って供試船に装備し、実海域での実験・計測を実施する。計測・解析の結果から、摩擦抵抗低減法による実船の省エネ効果を定量的に評価する。
 
2. マイクロバブル法に関する調査
2.1 摩擦抵抗低減特性の調査

 実船に適用した場合に発生すると予想される各種の影響を調べるため、平板あるいは曲面模型に沿った流れにマイクロバブルを吹き込んだ状態において、

(a) 平板模型全体に働く摩擦抵抗
(b) 局部摩擦抵抗(平板上の極一部に作用する摩擦抵抗)
(c) 局部ボイド率(水流中に含まれる気泡の体積割合)などを計測する実験を、各種の条件で実施することによって

1) 壁面近傍ボイド率分布と摩擦低抗低減の関係
2) 流れ方向圧力勾配と曲面形状が摩擦抵抗低減特性に及ぼす影響
3) 鉛直壁面における摩擦抵抗低減特性
4) 気泡径が摩擦低抗低減特性に及ぼす影響
5) 摩擦抵抗低減特性に及ぼす水質の影響(清水と海水の相違)
6) 尺度影響および吹出し位置の境界層厚の影響を調査し、マイクロバブルによる摩擦抵抗低減の背景となる流体現象及び実船影響について多くの貴重なデータを得た。なお、6)は長さ50mの平底模型を速度7m/sで曳航するという、実船スケールに迫る規模で尺度影響に関するデータを収集したという意味で特筆に価する。

 結果の概要をまとめると、以下の通りである。

1) 気泡吹出し位置の直後では壁面近傍の局所ボイド率が高いが、後流になるほど気泡の拡散が進んで壁面近傍の局所ボイド率が低下する。それに伴って局所摩擦係数の低減率も小さくなるが、下流へ30mの位置でも有意な摩擦抵抗低減量が残っていることが確認された。
2) 船体前半部に相当する圧力勾配や曲面(順圧力勾配)では摩擦抵抗低減効果が減少し、船体後半部に相当する圧力勾配や曲面(逆圧力勾配)では効果が増加する傾向にある。
3) 鉛直壁面においては、水平壁面の場合に比べて摩擦抵抗低減量は小さく持続距離も短いが、摩擦抵抗の減少効果自体は存在する。
4) 摩擦抵抗低減率はマイクロバブルの径には依存しないようである。
5) 海水中の方が清水中に比べてマイクロバブルの径は小さくなるものの、摩擦抵抗低減効果への影響はほとんどない。
6) 吹出し位置の境界層厚さは摩擦抵抗低減量にほとんど影響せず、壁近傍のボイド率が主たる支配パラメータであると推察される。
2.2 実船性能推定法

 マイクロバブル法に関する以上の知見を基に、概略以下のようにして摩擦抵抗比CF/CF0の計算手順を構築した。まず、船体周りの基礎流場をCFDコードにより計算する。この基礎流場を基にLarrarteの方法により気泡軌跡計算し、気泡軌跡から得られる局所の気泡体積を基に壁面近傍ボイド率αwを求める。壁面近傍ボイド率が求められたら、Yoshida et al.の方法により下式を用いてカルマン定数κを修正し局所摩擦低抗比Cf/Cf0を計算する。このCf/Cf0を浸水表面で平均化して摩擦抵抗低減率1-CF/CF0を得る。
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 ここに、νLは水の動粘性係数、Uτは摩擦速度、dbは気泡直径、aは実験定数である。
 マイクロバブルが摩擦抵抗以外の抵抗成分に影響を及ぼさないと仮定して有効馬力の低減量を求め、断熱圧縮過程であることを前提として算定した空気圧縮機の有効動力を差引いて、正味の馬力低減率を推定する。
 
3. 空気膜法に関する調査
 船体表面を空気膜で覆うことによる船体の摩擦抵抗低減については多くの研究がなされており、空気膜を安定に保持することさえ出来れば摩擦低抗が低減できるが、従来実績ではイーブンキール状態でのみ且つ10ノット以下の船速で摩擦抵抗低減効果が確認されていた。そこで、10ノット以上の船速かつ船尾トリム状態においても摩擦抵抗を低減できる空気膜デバイスを考案すること、考案したデバイスの有効性と限界を確認すること、実船の性能推定法を提案することを研究目標とした。
3.1 デバイス形状の検討

 まず、高速回流水槽試験(最大流速10m/s)を実施して、空気膜デバイスに関する基礎データ収集を行った結果、空気供給口より吹出された空気は、吹出口直後の「膜状気膜」から、雲状の気塊に分離した「雲状気膜」、さらには小さな気泡に分解した「気泡群」に変遷することなど、空気膜の性状の変化を把握し、空気吹出口の形状と高さのみならず、空気吹出口を長手方向に複数配置する場合にはその設置間隔もが空気膜保持性能の重要なポイントであることも分った。
 これらの成果を踏まえて、最適と考えられる空気膜デバイス形状を考案した。
3.2 超大型模型船試験による水槽試験

 考案した空気膜デバイスの有効性を確認するために全長16mの超大型平底模型船を用いた曳航水槽試験を実施した。イーブンキール状態における抵抗試験の結果、船速7m/s(=13.6ノット)においても約20%の全抵抗低減が確認出来た。また、水中テレビカメラを用いた船底の空気膜状態観察結果と低抗計測結果とから、「雲状気膜」や「気泡群」の領域においても、ある程度の摩擦抵抗低減効果があると推察された。さらに、船尾トリム状態(トリム角約0.7度)における抵抗試験の結果、考案された空気膜デバイスにより船速7m/sにおいて約15%の全抵抗低減が得られた。
 表面処理法の検討に使用した超撥水性塗膜を空気膜デバイス領域に塗布した場合についても試験を実施し、通常塗装の空気膜デバイスの場合より最大で6%全抵抗が減少することを確認した。
3.3 実船性能推定法

 超大型模型船試験結果を参考にして三次元外挿法をべースとした実船性能推定法を導出した。この方法は「実船船速が7.0m/s(=13.6ノット)における等価被覆面積率は超大型模型船試験結果から得られた等価被覆面積率(=0.7)に等しい」と仮定して構築されて居り、将来、さらに大きな模型船試験や実船試験を実施して検証を行う必要がある。一例としてVLCCについて試算を行った結果、満載状態で最大8.4%、軽荷状態で最大12.8%のエネルギー節約が得られる可能性が示された。
 
4. 表面処理法に関する調査
 表面処理法については、自己研磨型塗膜・撥水性塗膜・弾性皮膜について、実験による摩擦抵抗低減メカニズムと低減効果の調査、および実船性能推定法の研究を実施した。
4.1 自己研磨型塗膜・撥水性塗膜の抵抗低減効果の調査

 自己研磨型塗料は、船が航走することにより表面が研磨されて粗度が低下し摩擦抵抗が低減するとされるので、効果を検出するには長時間にわたって塗膜を水流に曝す必要が有り、通常の模型水槽試験では調査できない。本研究では回転円筒を用いた摩擦抵抗計測装置を開発し、一定期間実海水中で回転させた塗装済み円筒の表面粗度と回転トルクを計測することによって、自己研磨型塗料9種および撥水性塗料2種の摩擦抵抗特性を評価した。得られた主な成果は次のとおりである。

(a) 自己研磨型塗膜は研磨が進行するに伴って粗度が低下し、初期状態よりも摩擦抵抗が低減するが、初期粗度が大きくなければ、エイジングによる粗度低下も摩擦低抗変化も少ない。
(b) 自己研磨型塗膜の表面粗度が研磨作用によって減少するが、ある値を下回ると粗度低下は停止して摩擦抵抗も変化しなくなり、本試験の供試塗膜では滑面の摩擦抵抗を下回ることはない。
(c) 粗度の大きい撥水性塗膜は、浸漬経時により生物が付着して撥水性が著しく低下するが、粗度の小さい塗膜は生物付着も撥水性低下も少ない。付着生物を除去すれば表面粗度の増大は僅かであり、摩擦抵抗もほとんど変化しない。
4.2 自己研磨型塗膜・撥水性塗膜の実船性能推定法

 回転円筒試験の結果から、実船の抵抗推定に使用する摩擦抵抗係数を推定する方法を構築した。すなわち、回転円筒試験内部の流れを計測した結果と壁近傍では壁法則が成り立つとして推定した乱流の速度分布とを対応付け、回転円筒試験で計測したトルクから円筒表面の等価砂粗度を推定し、Whiteの式など用いることにより実船における粗度修正量ΔCFを推定する方法である。
4.3 弾性皮膜の低抗低減効果

 完全乱流域における摩擦抵抗低減を実現したとする先行研究で使用された弾性皮膜の複素弾性率・比重・膜厚に近い性状のシリコーン樹脂製皮膜3種および合成ゴム製皮膜4種の試験体を製作して低抗を計測したが、有意な摩擦抵抗低減効果は認められなかった。また、弾性皮膜まわりの乱流場計測やモアレ縞を利用した皮膜表面の変動計測を実施したが、摩擦抵抗低減のメカニズムに追ることは出来なかった。しかし、摩擦抵抗低減の可能性は全く否定されたわけではなく、更に広い範囲で素材を探索することにより摩擦抵抗低減を実現できる可静性は残されていると思われる。
 
5. マイクロバブル法の実船実験
5.1 実船実験計画
5.1.1 供試船の選定経緯

 平底船がマイクロバブル法に最適な船形であることは言うまでもないが、超低速平底船に適用し供給空気量当りの摩擦抵抗低減効果で評価すれば空気膜法が勝ると推察される。一方、マイクロバブル法では空気を貯める必要が無いので平底船以外にも適用できること、空気膜法より高速まで適用可能だと期待できることなどから、痩せ型船形もターゲットに入れ開発を進めて来た。
 供試船候補を探索した所、航海訓練所の「青雲丸」が既設の計測装置を備えて居て格好の供試船だと考えられた。本研究で開発した方法にてマイクロバブル法による「青雲丸」の摩擦抵抗低減効果を推定した所、現実的な配置で5%の全抵抗低減率が得られる可能性が示されたこと、本船のような船形にマイクロバブル法を適用して予想通りの効果が出るかを実船スケールで調査することは非常に重要な課題だと考えられることから、本船を供試船とする実船試験を計画した。
5.1.2 計測機器とその配置

 マイクロバブルに関する実船実験では、速力やプロペラ推力・馬力などのマクロ量の計測に加えて、気泡がどのように流れて船体を覆い摩擦低減が発生したかという分布状態の計測が重要である。そのため、局所せん断力計と局所ボイド率計を新たに開発し、流況観測用TVカメラと合わせて船体表面上に配置した。計測機器の配置は、船首両舷に取り付けられた気泡発生部からの気泡流れのCFDによる推定結果に基づいて決定された。TVカメラは、下側から気泡発生装置の作動状態を見るため1つ、船体中央部の流れ観察のために1つ、プロペラの上流に1つ、の合計3つ、局所せん断力計及び局所ボイド率は船体前半部にそれぞれ7つと2つ取り付けた。
5.1.3 事前検討

 既存船を供試船としたこともあり、気泡発生装置や諸計測器および配管・配線類を全て船体表面上に設置することが必要になった。また、既存船への溶接施工を出来るだけ避け、接着工法で代用することが望まれたため、気泡発生装置の作動に関する予備観察を含め以下のような事前検討を実施した。

1) 南星丸による予備実験…マイクロバブルの発生方法や発生装置の配置、観察方法についての知見を得るために、鹿児島大学付属実習船「南星丸」を使って予備実験を実施した。
2) 配線用フェアリングの検討…船体表面に取り付けられる計測機器は全て外付けであり、気泡による摩擦低減効果を損なわないような配慮が必要である。特に各種計測機器からの配線ケーブルはガース方向に配置されるために影響が大きいので、フェアリング形状の検討を行った。
3) 接着工法の検討…計測機器(と付属ケーブル)の船底外板への装着に使用する接着剤を選定するために各種金属用接着剤の接着力を引張り試験により調査し、小型船とモーターボートを使用して接着工法の試行と耐久実験を行い、適用する接着剤と工事要領を決定した。
4) 気泡発生装置の検討----気泡発生装置の吹出し部は、計算で検討した最適配置を参考に、船首部に、バウスラスターを避けるなどの制限を考慮して片舷ずつ3カ所に配置した。船体表面に鋼製角パイプを設置し、外面に多数の空気吹出孔を配置した。装置を試作して予備実験を行い、所要吹出し量を十分越える空気を供給できることを確認した。吹出した空気が剥離を起こさないように角パイプの前後に整流板を設けた。
5) 実船実験長尺平板船を用いた予備実験----実船実験において船体表面に外付けされる気泡発生装置、局所せん断力計、局所ボイド率計、配線類の周囲を整形するフェアリングが、所定の性能を発揮することを確認するため、海洋技術安全研究所の400m曳航水槽において34mの長尺平板船を用いた予備実験を実施した。気泡発生装置、局所せん断力計、局所ボイド率計、配線フェアリングを船底に取り付け、フェアリングが有効に機能していることを確認した。
5.2 実船実験

 実船実験は天候に恵まれ、以下のスケジュールにて良好な状態で実施された。諸機器は概ね順調に動作し、当初の予定に近い実験を実施することができた。
平成13年9月8日〜12日  入渠、計測装置など取り付け工事
      9月13日〜15日  実験航海
      9月15日〜27日  入渠、計測装置など撤去工事
 以下に説明するように、「期待した摩擦抵抗低減効果が定常的に達成できた」とは言えない結果であったが、限られた航走条件では(また一部の計測結果には)抵抗低減効果が明確に認められた。
5.2.1 速力性能計測結果

(1) 速力‐軸馬力計測結果
 マイクロバブルを全ての吹出し装置から吹出した時の速力計測結果を整理して、速力と軸馬力の関係を求めた所、同一速力で見るとマイクロバブルを吹出すことによって軸馬力が増加し、14ノットにおいて吹出し量MAXで4%、1/2MAXで12%の馬力増加となっている。しかし、上段の吹出し位置から気泡を出した場合には、速力14ノット付近で3%、速力19.5ノットで1%程度、軸馬力が低減している。これらの結果から、本実船実験の配置において、速力ベースに見た軸馬力はマイクロバブルの吹出し位置、吹出し量、船速によって敏感に変化していたと判断される。
(2) プロペラ推力の計測結果
 「青雲丸」装備のプロペラ推力計によりプロペラ推力の計測値も得られた。プロペラ推力の変化は、推力減少率が気泡により変わらないと仮定すると、船体抵抗変化に等しい。プロペラ推力の変化率は定性的には軸馬力と同様の傾向を示し、下段または上段のみの気泡吹出しにより14ノットで4%の推力低減が得られた。しかし、下段の気泡吹出し装置を使用した場合には上段の装置を使用した場合に比べて軸馬力と推力の変化率に相違があり、下段の気泡吹出し装置を使用した場合にはプロペラ効率が低下しているのではないかと考えられた。
 このメカニズムの解明は今後の研究課題である。
5.2.2 気泡流れ観測結果

 3個の小型水中TVカメラにより流れの観察を行った結果、上部気泡吹出部から吹出された気泡はほぼ船体に沿い当初の予測に近い軌跡でプロペラ方向へ流れているが、下部気泡吹出部から吹出された気泡流は比較的船体から離れて流れプロペラ面への気泡流入が多いことが観察された。
5.2.3 局所せん断力計測結果

 実船の表面摩擦応力を計測するため、船体表面より僅か上方に浮かせた200mm×200mmの板をバネで支えて、そこに働く摩擦力を計測して摩擦応力を検出する装置を開発した。小型艇を用いた予備実験で計測精度、耐久性を検証して、実船実験に適用した。
 7台の局所せん断力計のうち2台は作動しなかったが、残る5台では安定したデータが取得できた。4台のせん断力計では摩擦応力が増加する場合も見られたが、1台の局所せん断力計では気泡吹出しによってせん断力が明確に低減することが記録された。すなわち、気泡吹出し無しの場合に比べ、船速14kt〜19ktの範囲で摩擦応力の低減が見られ、17ktでの低減率は20%程度にもなった。
 また、気泡を吹出した場合の摩擦力の時系列を解析した結果、摩擦力が吹出し無しの状態とそれよりかなり小さくなる状態が交互に現れ、船体運動により気泡軌跡の変動することが示唆された.摩擦力が小さい状態を持続させることができれば、大きな低減効果が得られると思われる。
5.2.4 局所ボイド率計測結果

 一定体積の水流中に存在するマイクロバブルの直径と数をCCDカメラにより撮影し、画像解析により局所のボイド率を計測する装置を新たに開発した。2台のボイド率計を製作し船底に取り付けたが、1台は実験開始後すぐに浸水して作動しなくなり、残る1台の測定結果のみが得られた。
 計測の結果、船底から5mm以上離れた所を通る気泡が多く、個数では直径0.5mm程度の気泡が多いが、体積で見ると直径1mm程度の気泡の寄与が大きいことが分った。近傍のせん断力計では摩擦力の低減がほとんど認められなかった。気泡を船体に密着させて流す方法の開発と共に、境界層中のどの位置にマイクロバブルが来たら最も効果があるか、今後の解明が待たれる。
 
6. 研究成果
6.1 摩擦抵抗低減

 模型実験、実船実験の結果以下のことが解った。

1) マイクロバブル法による摩擦抵抗低減は、模型実験で10%〜20%程度、省エネ効果は実船実験で最大3%程度が確認された。ただし実船実験では空気吹出し位置、船速等により効果の出ない場合もあることが解った。
2) 空気膜法では模型実験において摩擦抵抗低減量で25%程度(全低抗低減量で20%程度)が確認された。
3) 表面処理法の自己研磨型塗膜では、研磨の進行によって減少する粗度の経時変化と摩擦抵抗低減の関係が確認された。
6.2 実船性能推定法、実験技術

1) マイクロバブル法、空気膜法による実船性能推定法が導出された。
2) 模型実験では塗膜の摩擦抵抗を計測する回転円筒試験装置が、又実船実験では局部せん断力・ボイド率計測法及計器取付法等が開発された。
6.3 結論

 マイクロバブル法、空気膜法は摩擦抵抗低減による省エネに寄与するが、実船への適用に関しては課題が残された。








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