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3.3 タンク底板の腐食に関する調査結果
3.3.1 実船のタンク底板調査結果
 実船調査結果によると、孔食はS/HとD/Hのいずれでも存在するが、D/Hの方がS/Hと比較して、就航直後の発生個数は多いことが明らかとなった。一方、入渠時毎に作成したピットマップを詳細に比較すると、入渠時毎に図13のように一定深さ以上の孔食の分布が異なることがわかった。
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図13 複数回検査時作成ピットマップでの孔食発生位置比較検討結果の一例(D/H)
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図14 孔食発生位置の変化(D/H)
 図13,14に見られる如く、前回検査時に発見されタッチアップ塗装により補修が施された個所と異なる場所で、新たな孔食が発見された。このことから、孔食は、入渠時を起点に発生し成長するという仮説に基づいて、孔食の発生と成長がDock to Dock間で支配されると考え、極値統計法で調査船のCOT毎の最大腐食速度を整理した。その結果を図15に示す。
 Dock to Dock期間で見た場合、S/HとD/Hでは腐食速度の傾向に差異は無いことが判明した。このDock to Dockでの孔食最大腐食速度を極値統計にて分析する方法を、NK殿所有のデータにも適用したところ、同様にS/HとD/Hの間に差がないとの結果が得られた。
3.3.2 タンク底板の孔食発生状況
 S/Hの孔食は、タンク底板のドレンホール間の水路、オイルコートが不完全なCOW(Crude Oil Washing)シャドー境界部、ロンジ材フランジ面等で観察された。一方、D/Hの孔食はタンク全底面発生し、場所の特定が難しいが、上部の構造物(ホリゾンタルガーダ端部、パイプライン等)からの液滴下個所に多く生じている場合もあった。代表的な孔食発生状況を図16に示す。これらの観察結果から、D/HとS/Hに共通して、タンク底板に存在する水の滞留と鋼表面に形成されるオイルコートの状況が孔食発生に関係していることが想定された。
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図15 調査船のCOT毎の最大孔食深さに関する極値統計解析結果
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図16−1 タンク底板での孔食発生状況(典型的事例S/H)
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図16-2 タンク底板での孔食発生状況(典型的事例D/H)








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