日本財団 図書館


2. 研究の目標
 船舶に限らず機械製品にとって、その損傷原因の多くは「疲労」と「腐食」である。また、両者は時間的ファクターがあり、すぐに結果が現れないという特徴がある。しかし、疲労に関してはかなりのデータの積み重ねや解析ツールがあり、材料、負荷応力、形状係数等がある程度明らかになれば、疲労対策の推論は可能である。
 一方、腐食は、環境(ガス、積荷、温度)、材料表面状況、応力等の多因子が複雑に絡み合い、その発生要因、損傷進行程度等が1つの断面だけで説明が付かず、客観的に評価できる共通の尺度・方式も存在しないケースが多い。また、調査対象であるVLCC自体が巨大であるため調査・観察結果に対する信頼性、建造方法、運用方法の相違等にバラツキが多い。
 そこで、本研究では次のような目標を立て、出来るだけ客観的なデータに基づいた結果の分析、評価を行うように努力した。
 [1] 腐食量の客観的なデータによる評価
・過去の活用できるデータと我々の実測との客観的な比較による評価。
・COT内での腐食の実態を海外にも伝え、批判・評価の授受。
 [2] 現場に根ざした腐食現象の把握・評価
・類推でなく、実船(S/HおよびD/H)での板厚計測、ピットマップ等の腐食実態把握。各主要部位での実船暴露試験。
・COT内の腐食環境の把握。温度計測、腐食モニタリング、採取物の分析。
 [3] 実験室実験による検証と理論化
・実船の腐食環境をべ一スとした腐食現象の解明と客観的数字的裏付け
 [4] 腐食発生メカニズムの解明
・[1]〜[3]の結果を分析することによる腐食発生メカニズムの解明。
 [5] 腐食防止策の提案
・腐食発生メカニズムより見た防食手法の検討。  COT内の腐食発生が、近年建造されたVLCCタンカー自体の問題か否かを明らかにし、正しくその情報を活用することをその目標とした。
z0001_13.jpg
図2 「原油タンカーの新形コロージョン挙動の研究」の目的・目標








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION