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6. アンケート調査
 研究成果が船舶を運航する現場でどのように利用されているか調査するためにアンケートを実施した。アンケートを依頼した組織は次の5種類のグループである。
 1) 漁業関係:各県の漁業組合連合会
 2) プレジャーボート関係:全国のマリーナ
 3) 学校関係:水産大学、商船大学、各大学の水産学部、水産高専
 4) 商船会社:大手・中手の商船会社
 5) 客船会社:大手・中手の客船会社
6.1 アンケートの内容
 アンケートの内容を表附録4に示す。設問の(1)と(2)は各グループ共通で、設問(3)はグループごとに若干異なる。アンケート依頼先を附録5に示す。依頼数は次の通りで、合計246である。アンケート依頼先の選定には、漁船協会、日本船主協会、日本マリーナ・ビーチ協会の協力を得た。
 1) 漁業関係: 43
 2) プレジャーボート関係: 123
 3) 学校関係: 11
 4) 商船会社: 44
 5) 客船会社: 25
6.2 アンケートの結果
6.2.1 実施と回収
 アンケートは9月に実施した。回答の回収率は次の通りで、全体で約60%であった。
 1) 漁業関係: 26/43  (60%)
 2) プレジャーボート関係: 67/123  (54%)
 3) 学校関係: 8/11  (73%)
 4) 商船会社: 24/44  (55%)
 5) 客船会社: 18/25  (72%)
   (全体) : 143/246  (58%)
 
 アンケート結果を附録6に示す。回収率は良好で、選択肢回答で回答のないものはごくわずかであるので、設問は概ね適切であったと思える。
6.2.2 選択肢回答の分析
(1) 集計
 集計に際して、次のような考慮をした。
1) 設問(2)4)の集計
設問(2)4)は複数回答で、その中に「これらの全て」という選択肢があったが、「これら全て」とその他の選択肢を同時に選択した回答と少なからずあった(附録6参照)。「これらの全て」という選択肢はない方が良かった思われる。集計に際しては、「これら全て」のみが選択されている場合は、「その他」以外の選択肢が全て選択されたものとして加算集計した。結局、「これらの全て」という選択肢は集計からは除外した。
2) 設問(3)6)(漁船・プレジャー・練習船)(3)5)(商船・客船)
「手入れは十分にしているか」という設問の回答選択肢は「a)定期検査を含め十分にしている」「b)気の付いたときにしている」「c)定期検査をしている」の3種類であるが、b)とc)を両方選択した回答は「定期検査をして、かつ気づいたときに手入れする」即ち「定期検査を含め十分にしている」とみなし、a)として集計した。
3) カテゴリー
漁業、プレジャー、学校、船会社の各グループヘの設問(3)は、質問の仕方が若干異なるが、同一の趣旨で質問している設問は同一の設問として扱い、集計した。
 集計結果を表6.2.1に示す。この表から、図6.2.1〜図6.2.3の分析図を作成した。
表6.2.1 アンケート集計表(選択回答)
(数値は%を示す。複数回答は総和が100%以上のものもある。)
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(2) 海難防止研究について(図6.2.1)
1) 海難防止研究成果の認識:
練習船(学校)、客船、商船は、組織的に造船学会との関係が深いため、海難防止研究の成果が公表されていることをほぼ認識しているが、個人経営が多くかつ造船学会との関係が薄いプレジャーボートと漁船の認識度は30〜50%である。
2) 海難防止研究への参加:
練習船(学校)以外では、参加の程度は10%程度である。
3) 海難防止研究成果の入手・閲覧:
成果が公表されていることを知っている人の50〜70%程度が入手閲覧している。
4) 海難防止研究成果の有用性:
成果が公表されていることを知っている割合とほぼ同じ割合の人が評価している。「知っている」人で「研究成果が役立たない」と回答した人の割合は11%であるから、研究成果を役立たせるためには、成果を広く配布する事が必要である。
図6.2.1 アンケート集計結果:海難防止研究について
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(3) 海難一般について(図6.2.2)
1) 海難の危険の知覚:
船種によらず、ほぼ90%が海難の危険を感じたことがあると回答している。海難は全ての運航者にとって、大きな課題であることを確認できる。
2) 海難の主要原因:
(その他を含めて6種類の選択肢の複数回答である。個々の選択肢の最大値は100%、全ての回答者が全ての選択肢を回答すれば各棒グラフは600%となる。)
a) 全体的に「操船ミス」が50%程度指摘されていて、特に、客船で80%と大きい。
b) 「船体構造や設備の不良」と「天候海象情報の少なさ」が次に大きく、各々概ね10〜30%である。
c) 「複合原因」を50%程度が指摘していて、海難原因につながる項目を常に注意していれば相当数の海難は防げることを示唆している。
3) 海難防止の決め手:
(その他を含めて5種類の選択肢の複数回答である。個々の選択肢の最大値は100%、全ての回答者が全ての選択肢を回答すれば各棒グラフは500%となる。)
a) 商船を除いて「船員の教育訓練」が90%程度指摘されている。商船は60%とやや小さいが、船員の資質向上が最大目標であることを示している。
b) 船種によらず「基準の強化」と「船主の経営努力」及び「国の経営支援」が各々20〜40%である。
図6.2.2 アンケート集計結果:海難原因と防止対策について
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