日本財団 図書館


5. 平成13年度事業の概要
(1)SR:船舶技術の研究開発
 基盤技術の高度化、海上物流の効率化、環境保全・省エネルギー対策、ニューコンセプトの創出等の当面する技術課題に関して次の研究開発を会員と学・官の共同研究として実施しています。
[1] 船舶の摩擦抵抗低減法に関する研究(SR236:平成10〜13年度)
 船舶の推進抵抗の大半を占めている摩擦抵抗の低減法について、マイクロバブル法、空気膜法、表面処理法の基本的メカニズムの解明とデバイスの考案を行うとともに、実船への適用性を考慮した尺度影響等の研究及び実船実験を行います。
[2] 新しいフリートサポートシステムの開発(SR240:平成11〜13年度)
 最近の通信情報技術の進展等にも対応し、海運・造船の共同作業(SR238)で示された時代を先取りした新しい安全運航管理システム(先進的TQMシステム)の全体システムと各基幹システムのプロトタイプを開発し、その試験運用と評価等を行います。
[3] 原油タンカーの新形コロージョン挙動の研究(SR242:平成11〜13年度)
 国内外で原油タンカーの新しい腐食挙動への関心が高まってきており、その実態を調査分析するとともに、原因とメカニズムを解明し、各種実験等を実施することにより、適切な対策を確立するための研究を行います。
−数多くの実験や技術がSR研究を支えています−
[4] スーパーシャロードラフト船の船型開発の研究(SR243:平成11〜13年度)
 東アジア地域の浅い港湾等に対応し、B/d=4.5〜5程度の浅喫水かつ載荷重量の画期的に大きいスーパーシャロードラフト船の船型開発を行うとともに、波浪中及び浅水域の運航性能や安全性に関する研究を行います。
[5] 実海域対応の船舶性能設計システムの研究(SR244:平成11〜14年度)
 船舶のライフサイクルに対応した実海域での船舶性能を、これまで未解明の非線形領域での新しい解析手法も加えて検討し、性能応答推定法、船速低下推定法等の高度化を図るとともに実船での検証をし、実用的な性能設計システム構築の研究を行います。
[6] 二重殻タンカーの船体構造寿命に関する研究(SR245:平成11〜14年度)
 海洋汚染防止等の観点から、新たに建造・就航している新構造ダブルハルタンカーに焦点をあて、波浪中の荷重や構造応答を収集分析するとともに、実験及び数値シミュレーションによる検討を加え、構造寿命評価技術を得るための研究を行います。
[7] 船殻ブロックのデジタル生産技術の基礎研究(SR246:平成12〜14年度)
 曲がりブロックの中細立てを対象に、現場ノウハウを織り込んだナレッジエンジニアリング活用の高精度曲がりブロック製作技術を開発するとともに、工程管理のデジタル化によるシミュレーション技術を用いた高精度な工程管理技術の研究を行います。
[8] 船舶技術の創造的展開に関する調査研究(SR500:平成12〜   )
 21世紀の時代の転換点に際し船舶技術の創造的展開を図っていくため、モーダルシフト、物流シミュレータ等の検討が進められている海上物流システムに関する調査研究(SR501)、高度な船舶技術が結集している高速船技術の総合的分析等の調査研究(SR502)並びに新エンジンシステムの調査研究(SR503)を行います。
(2) RR:船舶関係諸基準に関する調査研究
 船舶の安全性向上と海洋の環境保全に貢献することを目的として、国際海事機関(IMO)において検討されている重要な課題及び船舶を取り巻く環境の変化に対応するため、主に次のような事項に関する調査・研究を、造船・海運の会員等の参加を得て実施し、適切かつ合理的な基準等の制定に寄与しています。
[1] 船首乾舷の適正化
 満載喫水線条約の見直しに対応して、船首・船体中央部の乾舷及びハッチカバーの技術的要件を検討し、合理的な技術基準案を検討します。
[2] 復原性基準の適正化
 海上人命安全条約の区画及び復原性の改正に対応して、Ro-Ro船の損傷時復原性について、浸水量の推定、浸水中間段階の復原力などを検証します。
[3] 老朽船の安全対策
 我が国から提案され採択され、2002年7月に発効が予定される「船舶の縦強度を旗国検査時に評価し、一定の基準以上の縦強度を持つこと」に関連し、データのサンプリング方法及び基準値を満たさない船舶の補修方法について検討します。
[4] バラスト水による海洋汚染の防止
 内海に生息する有害な海洋生物がバラスト水によって他国の内海に移動するのを防止するため外洋でバラスト水を交換する方法が考えられています。
 この方法を可能とするため、波浪中でのタンク内の遊動水による構造物破壊状況及び復原力喪失状況を検討し、外洋でのバラスト水交換のための指針案を検討します。
[5] バルクキャリアの安全対策
 海上人命安全条約の「バルクキャリアに対する追加安全措置」に関連して、長さ150m未満のバルクキャリアの安全性の再評価及び船側の二重船殻化について、FSA手法を用いて検討します。
[6] 船底塗料による海洋汚染の防止
 2003年以降船舶に新たに塗布することを禁止されている有機錫系船底防汚塗料について、代替防汚剤の評価と新条約の履行のための検査方法について検討します。
[7] 液体貨物の安全輸送
 海洋汚染防止条約の仮想油流出量の見直しに関連して、基本設計に影響を与える流出油量及び流出油保護区画容積について、より精度の高い計算方法を検討します。
[8] 条約基準の国内規則化
 新形式の高速船に関する船体構造、防火構造、航行設備等について設計審査時に必要となる国内技術基準案を検討します。また、防火消防規則の非条約船への適用問題を検討して、必要な技術基準案を検討します。
〔RR45内航タンカー模型を用いた海水打ち込み実験〕
(写真提供:(独)海上技術安全研究所)
○IMO国際会議等への参加
 IMOで制定する国際規則に我が国の意見を反映させるためにRRの調査研究の成果を携えて海上安全委員会(MSC)、海洋環境保護委員会(MEPC)等の会議に積極的に出席しています。さらに、各国の動向把握と情報収集のため、会議出席者等との意見交換を行っています。
〔IMO委員会の模様〕








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION