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4 海難調査の手続
(1)調査方式
 NTSBは、法律上は調査権限を有する海難を認知したるときは自ら進んで調査を開始することができるが、実際には、まずUSCGが予備調査を行ない、そこでNTSBの参加が必要なレベルないしカテゴリーの海難であると決定されたものがNTSBに通知されてくる仕組になっている。通知を受けたNTSBは、その海難がUSCGの船舶が衝突に巻き込まれるというような場合(46CFR §4・40-15(b)(1))には、NTSBが直接に調査にあたらねばならないが、その海難がいわゆる重大海難又は公用船と私船が関連するものであれば、NTSBは自らのルールに従い自主的に調査を行なうか(直接調査)、それともUSCGと共同で調査を実施するのか(合同調査)について選択権を有する。(49U.S.C. §1131)。
 NTSBが調査の実施につき自由裁量権を持つ後者の場合に、NTSBが直接調査を実施しないと決めたときは、通知を受けた時から48時間以内にUSCGに対し、NTSBに代わり法に基づく調査を行なうよう要請しなければならないとされ、依頼されたUSCGも24時間以内にそうした調査を行なうかどうかをNTSBに通知すべしと規定される。(46CFR §4.40-25)。USCG関連の海難は、いわばUSCGの自己調査となるという理由から、NTSBによる直接調査が義務的となるということである。
 かかるNTSBとUSCG間の調査義務の分配は、アメリカの法令が粗雑なため至極明確とは言い難いが、合衆国行政命令集第46巻の第4.40-15条において、「委員会は法に基づき次の調査を行なわなければならない」(The Board shall conduct an investigation…when)と規定されて前記NTSBの調査対象海難3つが挙げられるものの、同法令集同巻の第4.40-25条では、「委員会が、4.40-15(a),(b)(2)又は(b)(3)に基づく調査を行なわない場合…USCGは委員会の要請に応じて調査ができる。」と規定され、公用船と私船が関連する事故及びUSCGの安全職務に関連する重大事故についてはNTSBによる直接事故調査義務が外され、特に合衆国政府の失当行為又は義務不履行(misfeasance or malfeasance)の主張さえなければ、USCGが調査を行なえるということになる。(46CFR §4.40 25(a),49CFR§850.25(a))。
 そしてもしUSCGがこのNTSBに代る調査を行なう場合には、NTSBの調査手続(こちらの手続には公聴会(public hearing)の開催などに関した規定あり)に従うのではなく、USCGの通常の調査の手続による。(46CFR §4-40-30(a))。ただし、この場合の調査は、決してUSCGの単独調査ではなく、USCGの正式調査とNTSBの正式調査とのいわば合同の調査(joint investigation)と考えるべきものとされており(46CFR §4.40-30(f))、したがってNTSBは、そのUSCGによって実施される調査のいかなる段階であってもNTSBが指定した者を参加させることができる。(46CFR §4.40(b))。
 NTSBにより参加を指定された者は、勧告の作成、証人の喚問及び取調べ、追加証拠の提出又は要求等の権限を有するが、ただその者は、調査の進行の指揮に責任を負うUSCGと矛盾を生じさせないため、USCGの方針に従って調査を実施しなければならないとされる。(46CFR §4.40-30(c))。
 右調査に関する手続記録はUSCGの長官からNTSBに提供される。(46CFR §4.40-30(d))。そして、NTSBに代わるUSCGの調査が終了した段階で、NTSBは、その調査の手続記録及びNTSB自らの権限で得た追加証拠に基づいて重大海難の事実、状況、環境、及び原因又は推定原因を決定し、報告書を作成しなければならない。(46CFR §4.40-20,49U.S.C. §1131(e))。
 最後に、右報告書及びUSCGの手続記録は特に国家安全保障上障りがない限り公文書として公開されることになるが(46U.S.C. §6302,46CFR §4.40-35,49 CFR§850.35)、NTSBの調査報告書に関しては、法律上、そのいかなる部分も、報告書において言及された事柄に起因する損害賠償請求に関する民事訴訟において証拠として許容され又は使用されてはならないものとされる。(49U.S.C. §1903(c))。
 
(2)現場調査
 NTSBによる海難調査は、まず調査体制の在り方について検討した上で、事故現場にいわゆるGo-Team(派遣チーム)を出動させることから始まる。そして調査が開始されると、主任調査官(Investigator in Charge:IIC)が指名され(通常はNTSBの上席調査官が任命される)、ゴーチームの指揮官となり、調査体制の編成会議(Organizational Meeting)を開催してフィールド調査の陣容を固め、現場調査(on-scene investigation)を実施する。
 ゴーチームの編成は事故の種類・規模により異なるが、NTSBの大事故調査課の担当調査官に加え、普通は6名ないしそれ以上の数のスペシャリスト(一般には、舶用機関技術士、ヒューマンパフォーマンス、サバイバルファクター、その他事故め種類により火災、冶金等の専門家)をもって構成され、特に世間の関心を集める重大な事故の場合には、ボードメンバーの1名が同行し、首席スポークスマン役を務める。また、マスコミの対応や事故に巻き込まれた遺族・生存者の支援のためNTSBの政務・広報・家族支援局の職員や専門家も赴任する。
 現地では、いわゆる“パーテイーズ”(“parties”)と呼ばれる調査項目別の特別グループが作られ、事故に関係する政府機関(=運輸省)、運航会社、造船会社などが召集され、NTSBの各担当分野の専門調査官が各グループの責任者となって証拠や特別の技術的情報を収集・交換して調査に当る組織が作られ、公正・迅速な事故原因の調査が進められる。現場調査は、通常、事故後10日前後にわたって行なわれ、この間、毎日「調査進捗会議」(Progress Meeting)が開催され、収集された証拠・情報の報告・検討が行なわれ、また調査の結果確実と認められた基本的事実に関する情報は事故現場に同行しているボードメンバー又はNTSBの渉外・広報部長もしくは主任調査官を通じて公表される。また、現場調査が終了したところで(かつ公聴会の、開催以前に)、NTSBの担当調査官により「事実報告書」(Factual Report)が纏められる。
 
(3)公聴会
 公聴会(Public Hearing)は事故調査手続の一環であり、現場調査と並ぶ重要な手続である。NTSBの公聴会の開催は、そのことが公共の利益のために必要であると認められる場合に命ぜられ、その目的は、委員会を援助して事故の原因又は推定原因を決定し、事故の事実、状況及び環境を報告し、また事故を防止して輸送の安全を増進する方法を確保することにある。つまり公聴会はあくまで事実の解明手続であり、決して形式的な結論や対立当事者(adverse party)を出すことにあるのではないし、行政手続法の規定に従って行なわれるものでもない。(49CFR§845-1,2,§845-10)。
 公聴会の開催は、大災害事故の場合に、NTSBの合議又は委員長決定(緊急の場合)により最終決定され、フェデラルレジスターにその日程・場所などが掲載される。(49CFR§845.10)。概ね事故後60日以内に、事故現場に近い都市において公開形式で開催される。1997年度では、NTSBが調査実施した10件のうち1件(油槽船Julie N号事件)につき公聴会が開催された。(1997年報告書)。公聴会の開催決定に基づき、ボードメンバーのうちから議長を務める者1名が選任され、彼〈彼女〉と、彼(彼女)が任命したNTSBの職員とで特別の「審問委員会」(Board of Inquiry)が組織される。(49CFR§845.11)。審問委員会が促進公聴会(expedited hearing)を予定していなければ、審問委員会の委員長は、公聴会に先立ち当事者との「予備審問会」(prehearing conference)を開き、ここで彼らに証人や証拠物件について助言する。当事者は、その際に、追加証拠書類、追加証拠物件又は追加証人の名前などを提出すべきとされ、この時に提出の申出をしていなければ委員長が提出につき十分な理由があると特別に判断した場合を除き、そうした追加証拠を提出できない。(49CFR§845.23(a)〜(d))。
 審問委員会の委員長は、公聴会の開会・継続・休会、公聴会の当事者の指名・取消、手続上の要求の処理、公聴会の実施に通常必要又は付随するその他の行為、証言及び証拠の受理・排除等について権限を有しており(49CFR§845.20,845.26)、調査の進行に関し実質的権限を有する。
 公聴会の開催が必要であるとの決定がなされれば、審問委員会の委員長は、公聴会の当事者として、その者の公聴会への参加が公益のために必要であると認められ、かつその特別の知識が関連証拠の改善に寄与するであろう人、行政機関、会社及び協会等を指名しなければならない。(49CFR§845.13(a))。一般にはUSCGその他運輸省の関連部局、関係運送会社、船舶等又はその部品のメーカーなどが被指名者(designated parties)となる。公聴会で証言するために出席する当事者は、弁護士を同行し、代表させ又は助言を受ける権利があるが、権利主張者又は保険業者を代表する法律家を当事者の弁護士として代理させてはならないとされ、これに違反すれば当事者の地位を失うことになる。(49CFR§845.24,845.13(b))。また、当事者は、審問委員会又は技術陪審(technical panel)が審問の結論を出した後に証人を尋問することができるが(49CFR§845.25(a))、ただこれは、反対尋問(cross-examine)の権利ではない。
 最後に、当事者は推定原因の認定を含めた事実認定及び安全勧告を提示することができる。(49CFR§845.27)。
 
(4)調査報告書の作成・勧告手続
 事実調査文はそれに続く公聴会が終了すると、「海難調査報告書」(Report of Marine Accident Investigation)が作成される。(49CFR§845.10)。まず主任調査官、海上安全局長、各調査グループの担当調査官などによって事故の事実関係が確定され、次いで、そこで纏められた事実報告書を基に事故原因の分析評価が行なわれる。そして、事故の原因、分析、結論、結論の理由、推定原因及び事故再発防止策などについて徹底的に議論された後、主任調査官の手で報告書の草案が起案され、引き続いて最終報告書(Final Report)の作成手続に入る。一般に報告書は標準的フォーマットに従い作成されるが、委員会が事故の性格からそうしてもよいと決めた場合には詳細な物語り的(narrative)スタイルで作られることもある。
 NTSB幹部と主任調査官らにより慎重に練り上げられた最終報告書の草案は次いでワシントンDCのNTSB本部において開催されるボードメンバー全員が参加した公開討議に付され、報告書案を纏めた主任調査官とボードメンバーとの間で厳しい討議を重ね、必要な修正を加え、全メンバーの了解が得られたところで最終報告書が採択され、またその中で確定された安全勧告や安全の実施手順は関係の政府機関、民間団体などに送付される。なお、調査報告書、委員会の調査手続記録及び勧告等は、他の合衆国政府機関による入手情報の扱いと同様、公文書として一般に公開され、公衆の利用に供される。(49CFR§850.35)。
 ところで、NTSBの海難調査報告書は事故原因を解明し、事故の再発防止という理念の下に作成されるものであり、決して事故の当事者、関係者の刑事上ないし民事上の責任を決定する目的のものではないから、そうした法的手続の証拠にはならないはずである。事実、合衆国法典及び連邦行政規則には「事故又は事故の調査に関する委員会の報告書のいかなる部分も、その報告書において言及された事故に起因する損害に関する民事訴訟において証拠として許容され又は使用されてはならない」とされ(49U.S.C. §1154(b),49CFR§835.2)、連邦議会のこの点に関する法政策は最初から明確であった。また1996年には新しくUSCGの海難調査報告書についても同趣旨の証拠能力禁止が明定されて(46 U.S.C. §6308(a))、従来、特に1975年改正の連邦証拠規則(Federal Rules of Evidence)のいわゆる伝聞証拠禁止の法則(hearsay rule)との関係で分明でなく、判例も解釈が分かれていたところを立法上明らかにしたところである。
 もっとも、法が目途とする理念がその通り完全に実現されているかといえば必ずしもそうではない。例えば、本件事故再発防止の観点から事故原因を決定することにあった報告書は、実際には、他の様々な目的に利用され得るし、また事実しばしば利用されているという現実である。すなわち、事故に非行の証拠があればUSCGは船員の免状の停止・取消又は民事罰の賦課の救済手続において、その事故調査の証拠を使用するであろうし、あるいは重大海難の場合には連邦検事が刑事事件において同様にその調査機関が発見収集した情報を証拠提出するであろう。さらに、たとえ、USCGやNTSBが民事責任のために調査をするわけではないといっても、民事弁護士は、そうした海難調査機関により得られた証拠を民事訴訟の場でディスカバリー(開示)手続の根拠として使用することも少なくないのが現実である。
 また、上述のようにNTSBの事故調査報告書に関しては、連邦制定法によりその私的使用が厳重に禁止されているにもかかわらず、事故調査に関つたNTSBの職員(employee)の場合は、彼(彼女)らが調査を通じて知りえた事実の情報(事故調査報告書に述べられた事実の評価を含む)に限り民事裁判手続において証言することが許されている。(49CFR§835.3(b),§835.7)。この点は、そもそもNTSBの事故調査報告書について法が証拠としての使用と証拠能力を否認する趣旨(つまりNTSBが本来の使命・業務と関係なき私的紛争に巻き込まれる事態を回避しNTSBの公明正大性を堅持することと、国民の税金や職員の時間の浪費を回避せんがためにあるといえる)と矛盾しないでもない。そのため、法は、そうしたNTSB職員の証言はあくまで「事実についての陳述」の範囲に限られ、いわゆる専門家の証言(expert testimony)又は意見証言(opinion testimony)を行なうことはできないとし(49CFR§835.3(b))、また職員がそうした証言を行なうについてはNTSBの法務局の厳重な監督を受けるものとするなどいくつかの制限をしている。(49CFR§§835.5-835.8)
 最後に、公聴会の終了後、又は公聴会が開催されない場合は事故調査が終了した段階で、最終報告書の作成手続の中で具体化され、確定された「安全勧告」(Safety Recommendation)が、USCG、米陸軍工兵隊(U.S. Army Corp of Engineers)、船会社、海上貿易団体などの関係機関に対して発せられる。(1997年度ではNTSBは総計で277、うち海上交通に73の勧告を出している。1997年度報告書)。安全勧告は正に国家の運輸システムの改善・改革をもたらすための梃子というべきものであるから、NTSBが果たすべき事故再発防止の基本的役割の上で極めて重要な所産である。もとより勧告は、行政指導であり法的強制力はないが、NTSBの勧告の受諾実施割合は、実に82%以上と極めて高く、その数値は、NTSBの行なう業務の公明正大さ、その高い識見と深い思慮による信頼の大きさがいかばかりかを実証してくれる。
5 懲戒審判
 海難の調査は、NTSBによるものであれ、USCGによるものであれ、その目的は同種事故の再発防止のため事故の原因を明らかにすることである。ただ、かかる海難の原因調査の中で、船員、水先人等海技免状の受有者に違法行為、過失、不適格、法規違反、危険薬物法令違反等の非行が明らかにされた場合には、まずUSCGの調査官により免状・証明書の取消・停止の理由に該当するか否かの調査が開始される。調査の結果、免状受有者等を懲戒処分にすべき証拠が認められると、USCG長官によって指名され、行政裁決の権限を委譲された行政法審判官(Administrative Law Judge)の専権指揮の下で懲戒審判が行なわれ(46CFR§5.501)、行政法審判官の決定が言い渡される。もしこの決定又は命令に不服であればUSCG長官に対する上訴が許され、長官による再審理が行なわれて、行政法審判官の決定の確認、逆転、修正・変更・再手続のため差戻し、のいずれかの決定が下される。以上が、USCGによる船員の懲戒手続の大略である。
 ところで、上訴手続において行政法審判官の決定・命令を確認したUSCG長官の決定については、一定の手続きに従いNTSBに対し再審理(review)の上訴を請求できるものとされている。(46CFR§5.713,49CFR§825)このNTSBへの上訴に関する手続は、USCG長官の決定により不利益を受ける当事者(船員)が、USCG長官の決定の送達を受け取った日から10日以内にNTSBの事件要録書記官(Docket Clerk)宛に上訴の通知をすることから開始される。当事者は、同時に上訴の通知の写しをUSCG長官に対して送達しなければならず、これを受理した長官は直ちに決定の根拠になった審問(hearing)の完全な記録をNTSBに送達する。(49CFR§825.5(a)−(c),§825.10)。
 再審理上訴に関してNTSBが審理できる争点は、[1]重要な事実の認定に誤りがあるか[2]必要な法的結論に準拠先例がないか又は法律もしくは先例から離反ないし違反しているか[3]法律、政策又は判断の実質的及び重要な問題に関わっているか[4]不利益な手続的誤謬が起こったかに限られる。(49CFR §825.15)。
 また、当事者は上訴の通知の提出後20日以内に上訴を支持する準備書面を提出しなければならない。(49CFR §825.20(a))。この準備書面において、当事者は、NTSBの面前での口頭弁論を請求することができるが、ただ、口頭弁論は十分な正当理由があればともかく、通常は許可されない。(49CFR§825.20(a),§825.25)。
 再審理の上訴を請求されたNTSBは、5名のフルメンバー体制で、行政手続法(Administrative Proceeding Act, 5U.S.C. §551)の定めに従い、準司法手続による審理を実施する。そして、USCG長官の決定に破棄事由となる過誤(reversible error)が発見できない場合にはUSCG長官の決定が確認される。しかし、もし決定に破棄事由となる過誤が発見された場合は、NTSBは、[1]その過誤が是正できないものなら決定の全部を取消して起訴を破棄し[2]その過誤が是正できるものならUSCG長官の命令又は結論もしくは認定を取消し、さらに再考すべく事件をUSCG長官に差戻すか、いずれかの裁決を下すことになる。(49CFR§825.30(a),(b))。
 事件がUSCG長官に差戻された場合、長官は、[1]差戻し命令の文言に従って措置するか、[2]それが適切であれば事件を審問したUSCGの行政法審判官に差戻すか、[3]適切な指示をしてUSCGの他の行政法審判官に事件を差戻すことになる。(49CFR§825.30(c))。
 事件が差戻されている間、当事者は法に定められた再審理の全ての権利を保有する。(49CFR§825.35)。なお、審問手続が通告される時から始まる事件の過程を通じ、手続の決定の過程で関わるか又は関わると十分に予想されるNTSBの委員・職員と当事者との間においては、事件の実体的事項に関連するいわゆる一方的通達(Ex parte communication)、すなわち公式記録上にない口頭又は書面による通達で、全ての当事者に事前通告がなされていない通達は制限される。(49CFR§825.40)。
 最後に、NTSBの最終決定については、適切な連邦控訴裁判所又はコロンビア特別区の上級裁判所に対して上訴ができる。(49U.S.C. §1153(a))。
6 国際協力
 NTSBの海難調査権限は、合衆国の領海内のアメリカ籍船舶及び外国籍船舶のほか、国際海域におけるアメリカ籍船舶にも及ぶ。過去において、NTSBは遠くペルシャ湾や南シナ海において海難調査を行なったことがあったとされるが、最近、そうした海外調査実施の報告はない。1997年度では、NTSBの調査管轄下の事件ではないが、先方からの調査要請を受けメキシコで起きた油槽船Patriot号の座礁インシデントを調査した。(1997年度報告書)。
 1997年のIMO「海難及び海上インシデントの調査のためのコード」が求める海難の国際的共同調査との関係では、ワシントンDCに在るUSCG本部の「Office of Investigation and Analysis」(調査解析局)をIMO担当機関とすることが決定されいる。そして現在、他の実質的に利害関係を有する国に関係する海難を認知した場合は、NTSBが中心となり、ときにUSCGと共同して、IMOの調査コードに基づき関係国と同等の資格・権利をもって事故調査に参加協力することになると思われる。
 以上
NATIONAL TRANSPORTATION SAFETY BOARD
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(参考資料)
NTSB の海難調査
1 CFR 49 (Revised as of Oct. 1, 1998) CHAPTER VIII - TRANSPORTATION SAFETY BOARD
2 NATIONAL TRANSPORTATION SAFETY BOARD (パンフレット)
3 TITLE III INDEPENDENT SAFETY BOARD (Independent Safety Board Act of 1974)
4 FEDERAL FAMILY ASSISTANCE PLAN FOR AVIATION DISASTERS (JULY 6, 1999)
5 1996年 航空災害家族援助法 Aviation Disaster Family Assistance Act of 1996
6 WE ARE ALL SAFER (NTSB - Inspired Improvements in Transportation Safety)
7 ANNUAL REPORT 1997 (NTSB)
8 SPECIAL INVESTIGATION REPORT
 PB98- 917003 NTSB/STR-98/02
9 MARINE ACCIDENT REPORT
 PB98-916402 NTSB/MAR-98/02
10 MARINE ACCIDENT REPORT
 PB98-916401NTSB/MAR-98/01
11 MARINE ACCIDENT REPORT
 PB98-916403 NTSB/MAR-98/03
12 HEALY & SWEENEY, THE LAW OF MARINE COLLISION (1998)
13 海難審判法研究報告書(その1)−「グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国、ドイツ連邦共和国及びフランス共和国の各海難審判制度についての調査研究」(財)海難審判協会発行 平成3年
14 鉄道安全推進会議編「鉄道事故の再発防止を求めて 日米英の事故調査制度の研究」(株)日本経済評論社、1998年発行
15 海難原因調査と船員懲戒手続(山内辰彦)(「海難と審判53,54号」(財)海難審判協会、昭和53,54年発行)
16 海難原因調査と船員懲戒(山内辰彦)(「海難と審判56,57,60,61号」(財)海難審判協会、昭和54,55年発行)
17 「NTSBとアメリカの鉄道事故調査」巻末資料3「NTSB法(抄訳)(秋田真志(株)日本経済評論社1998年発行)
18 海難調査報告書の証拠能カーアメリカの海難調査制度の研究(1)(重田晴生)(「法学新報107巻11,12号」)中央大学、2001年発行
以上
(重田晴生委員執筆)








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