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タイ
 私はKrishnee Varanusupakul(Mrs.)と申します。私はタイ政府海事振興委員会(OMPC)の事務局長を務めております。この組織の名称は皆様よくご存知のことと思います。これは海事活動全般の振興に携わる組織で造船所もその対象の一つであります。
 議長、本日、第25回アジア太平洋造船専門家会議にタイ首席代表として参加できることは私の大きな喜びでありまして、この専門家会議を主催され、すべての手配をして下さいました日本政府、国土交通省、日本中小型造船工業会の皆様に、この機会にお礼を申し上げたいと存じます。この場をお借りしましてタイ造船産業の現状と展望について、皆様にお話申し上げられますことを嬉しく存じております。
 現在タイ国内には約200の登録された造船所があります。そのうち約80%は建造・修繕能力100GRT未満の小型造船所で、その他の約20%は建造能力が4,000 GRT以下であるか、または能力80,000 GRT以下の浮ドックを備えています。
 タイにおける造船活動は主として国内から受注する小型船に限られています。それらは巡視艇、浚渫船、タグ等の特殊船、国内水路、沿岸航路向けの小型艇またはバージ、小型旅客艇およびプレジャー・ボートさらに漁船などであります。
 現状では、タイ造船業は大きな拡大と成長の潜在力を秘めています。その要因の一つは、タイの遠洋漁船の多数が一層大型の鋼船への転換を要するという事情にあります。すなわち、タイ国内造船所は今後長期にわたって大きな新造需要に恵まれているということになります。
 一方、タイ国内の造船所では修繕船活動が大きな比重を占めています。それは国内海運企業が新造船よりも主として既存船の修繕に自国の造船所を利用するためであります。沿岸航路や内陸水路に就航している船舶の大半は国内で修繕されますが技術的に高度な、あるいは大型の船舶は外国のヤードで修繕されます。
 造船所に対する政策、振興措置について申しますと海上輸送需要の伸びと船隊増強を図る政府の計画が、造船業の発展に好影響を及ぼすものと期待されています。政府は能力拡大、技術と人的資源の開発による効率化、市場拡大などの面で造船業の発展を図る政策を実施しております。
 このような政策に沿って、造船業への投資拡大と事業活性化を目指した一連の振興策が実行に移されました。すでに実施されている措置には、税制面での措置、資金援助制度、投資インセンティブや特典などがあります。
 産業開発の面では、一般に船舶の設計図面は外国の造船専門家から購入するか、特に技術的に高度な船舶の場合には船主あるいは外国の許諾権者から造船所に支給されます。それでも若干の造船所では、ブロック建造工法、設計・建造技術の改善、造機技術の導入、熟練工の養成など、近代的造船技術を採用して効率を高めています。また外国の造船所から生産性向上、造船技術の革新などの面で技術援助を受けてもいます。このような、技術開発のための海外からの援助や協力は、国内造船所の技術水準に特筆すべき進展をもたらしてきました。
 従来、日本政府からはJICAを通じて各種のプロジェクトにおいて官民両部門と協力する専門家の派遣など技術援助を賜ってきました。援助対象のプロジェクトとしては、造船・修繕船産業近代化プロジェクト及び産業構造改革プロジェクトの専門家派遣などがあります。タイ政府は日本政府に対し、国内の民間造船所への専門家派遣をさらに要請しています。色よいご回答を頂ければ大変ありがたいことです。このような技術援助は、民間部門が絶えず進行する技術の変化に後れを取らず業界の効率と成長力を高める助けとなります。
 造船所近代化計画に鑑み、政府は国内造船産業の構造改革を計画しております。この計画は業界のあらゆる面を対象とするもので民間部門の協力を得て実施されます。海事産業開発マスター・プランに沿って、以下の目標達成を図ることを目的としたタイ造船産業近代化のための包括的な計画であります。すなわちその目標とは、既存のヤードを改善し新規ヤードヘの投資を促進して新造船・修繕船能力を拡充すること、マーケティング戦略を実施に移して市場を拡大すること、技術開発と人的資源開発を奨励、促進することであります。これらの目標を達成するため、先ほども申しましたように競争力強化のための優遇税制導入や新造船・修繕船産業支援の財源創出など、具体的措置が進められております。
 結論として、現在、タイの新造船・修繕船産業は国際市場向けの一層大型の外航船需要に対応するため能力拡充を図る過渡期にあります。短期的展望からすれば、海外のコンサルタントや専門家を通じて移転された技術やあらゆるレベルの造船所要員の訓練が、タイ船舶産業が経済危機を乗り越えるのに役立つでありましょう。しかし長期的に見ればグローバルな市場における競争力を強化するためには、技術的ノウハウ、事業経営、良質かつ廉価な資機材の確実な供給源、十分かつ適格な造船所要員、さらに最も重要な要素として政府の全面的支援など一層の充実が必要とされます。
 将来の展望としては、きわめて明るいものがあります。タイは比較的低いコストで、多数の熟練工を養成しその経験と専門能力を全面的に活用することができます。すなわちタイの造船所経営者と技術的ノウハウを具えた外国の造船所との提携が理想的な状況と考えられ、これによって造船業の将来の成長がもたらされます。従って、この見通しに鑑み戦略的パートナーとの提携は最も歓迎すべきことであり、相互の利益に通じることであります。造船業界の監督官庁としてOPMCは近い将来、さらにその先の将来においても、このようなパートナーシップが成立することを期待しております。
べトナム
 私はLe Locと申しまして、ベトナム造船産業公社の副総裁を務めております。
 ベトナム海運の現況についてお話しますと、ベトナム政府は経済発展への意欲高揚に力を入れておりましてこの方針の下、さらに統合、拡大を進め、また輸出市場を一層重視し、国内の経済組織に有利な条件の整備を進めています。現在ベトナム政府は、経済のすべての分野において年平均6ないし7.5%のGDP拡大という高度成長を目指した5ヵ年計画を実施に移すところであります。造船・建設部門は10.8%の成長、輸出では16.5%の成長を達成しなければなりません。現在ベトナムではほとんどすべての造船所が大量の受注を抱えていまして、一部の造船所では連続建造の契約も得ております。
(ベトナムの造船部門)
 大半の造船所はヴィナシン、すなわちベトナム造船産業公社の傘下にあり二つの中央官庁、すなわち国防省と水産省、さらに地方当局の監督下にあります。現在ベトナムには約60の造船所があります。第2表をご覧下さい。このように最大級の造船所の大半はヴィナシンの傘下にあり、ベトナム造船業全体の能力に70%のシェアを占めています。
 ベトナム造船産業公社(ヴィナシン)は経済的に強力な造船産業グループで、ベトナム政府に属する特別持株会社の目標モデルとして再編されました。ヴィナシンは約14,200名の従業員を雇用し、16造船所と外国との合弁企業4社を含む子会社33社を傘下に収めています。
(近年におけるベトナム造船業の活動)
 近年、ヴィナシンは高率の成長を遂げました。平均年間成長率は30%にも達しています。建造船種は貨物船、油送船、30ノット級のアルミ製高速巡視艇、やはり高速の28ノット級アルミ製客船、LPGタンカー、浮ドック、タグ、吸上式浚渫船、その他、多岐にわたっています。
(造船部門への投資)
 1996-2000年のヴィナシン発展計画を完遂し、以下のような主要目標を達成しました。
 先ず、15,000 DWT型までの船舶の修繕が可能になりました。新造は10,000 DWT型まで可能です。
 多様な漁船、各種の巡視艇、軍用艇、沿岸警備隊用船艇の建造、生産設備、造船用資機材の製造なども手掛けています。
 ヴィナシンは、諸外国との合弁事業、提携においてベトナム側の中心パートナーとして参画し1999年4月以降の現代重工業との合弁事業で、ヴィナシンは400,000 DWT型までの船舶の修繕を実施できるようになりました。
(国際協力計画)
 現在、造船業の分野では各国の民間部門のパートナー50社と提携し、国内の造船所において重要なプロジェクトを実施しています。
 現在、造船業界はベトナム政府からハイフォン市のアンホンとクァンニン州のカイランの両地区で、関連工業団地を建設する認可を得ています。両地区は外資とベトナム造船業とが提携して造船業および輸出向けに補機製造の合弁工場を建設する上で、絶好の立地条件を備えております。
 では次に、今後のベトナム造船業の発展方向について述べたいと思います。
 発展方向ということでは、先ず設計という側面があります。造船部門における高度の需要に対応できるような設計能力の向上のため新設備と人員養成に投資が行われています。
 新造船については30,000トン型までの船舶の新造のため、主要造船所を新技術の適用により拡張、グレードアップいたします。
 修繕船では、400,000 DWT型までの船舶の修繕能力を確保するための投資が行われています。
 以上をまとめますと、現在ベトナム造船業は徐々に発展を進め、その能力を着々と拡充しています。わが国の造船業は、国内・国際市場で造船需要曲線が上昇する次のチャンスを忍耐強く待ち構えております。わが国の経済は開かれていて、今後の可能性と課題に共に取り組もうとする新たな提携相手を歓迎するものであります。
〈質疑〉
(インドネシア代表)
 議長、ありがとうございます。私はオーストラリア代表団に何点かお尋ねしたいと思います。先ずぺーパーの3ぺージですが「政府は建造助成率を3%に引き下げた上で、適用期限を1999年7月31日から2000年12月31日まで延長する決定を下した...」とあります。私がお尋ねしたいのは、1999年7月以前の助成率は、どのくらいだったかということです。つまり引下げ前の率はどのくらいだったのですか。
 2番目の質問は、やはり3ぺージですが研究開発支出についてです。ここには「対象となる研究開発案件には費用の50%を上限とする助成が行われ...」とあります。私がお尋ねしたいのは、研究開発費の額のことです。政府による50%助成の対象となる研究開発支出の総額はいくらぐらいなのか教えて頂けますか。
 それから第3の質問は、4ぺージの商船のことです。オーストラリアは高速フェリー、巡視艇、漁船、その他の小型艇の建造で非常に有名だと思いますが、私の疑問は、商船、つまり通常の貨物船とか、タンカーとか、そういう種類の船、その他にもしかしたら客船など、そういう船の建造でオーストラリア造船所の技術、能力、競争力はどんな状況なのでしょうか。
(オーストラリア代表)
 インドネシア代表の方からご質問を頂きましてありがとうございます。
 先ず1999年7月以前の助成率についてお答え申し上げます。その間の事情を振り返りますと1989年7月に新たな助成制度が発表されて助成率は当初15%に設定され、これが1993年7月から1995年6月までの期間で最終的には5%まで漸減されることになっていました。当時の政府の意図では、実際に1995年6月以降は助成を廃止する予定でした。ところが制度は存続しぺーパーにありますように1998年の見直しまで、現に5%の率で存続したのです。1999年7月から昨年末までは引き下げられましたが、その理由は2003年末まで3年間の段階的解消期間を設けたためです。
 2番目のご質問の研究開発費の金額については申し訳ありませんが手元に資料がありません。しかしキャンベラにいる同僚に連絡をとって、今週末まででよろしければ、その情報を得られないか確かめてみます。少なくとも入手するように努力して、入手しましたら後日お知らせいたします。
 第3のご質問は、オーストラリアにおける貨物船などの建造能力についてでしたが、わが国としては、そういう大型の船を建造、供給する長期的な競争力があるとは思いませんし、また今後も、すでに開発しオーストラリアの競争力が実証されているニッチ市場、つまり高速フェリーなどですが、それに引き続き特化すると思います。ありがとうございました。
(議長)
 今のご回答でよろしいですか。その他にご質問やご意見はありませんか。
(インドネシア代表)
 日本代表、マレイシア代表の方々に若干の質問があります。またベトナム代表団のわが友人にも1問お尋ねしたいと思います。
 日本への質問は、テクノスーパーライナー(TSL)の新プロジェクトのことですがパーセンテージで表すと、どのくらいの船型のTSLが投入されるのですか。また船型とは別に、船速も船型については、在来型の船舶と比べて率にしてどのくらいのサイズなのですか。それから最後の質問はやはりTSLプロジェクトについてですが、この船の投資回収率については、どのような見込みですか。在来船とほぼ同じように8年とか10年で、投資を回収できるとお考えですか。それとも在来船というか旧型船よりもっと早期に、あるいは同程度の期間で初期投資が回収できるとお考えですか。先ず日本代表からお答を頂いて、その後でマレイシアとベトナム代表にご質問したいと思います。よろしくお願いします。
(日本代表)
 ご質問ありがとうございます。私はこのテクノスーパーライナー・プロジェクトを担当しておりますので、私からお答えさせていただきます(木内造船課長)。このテクノスーパーライナーは船速が約50ノットです。本来は貨物船で、それがテクノスーパーライナーの設計コンセプトでした。先ほど申し上げましたように、設計コンセプトでは船体の長さは100ないし150メートルです。在来船と比較すればスピードは約1.5倍といったところでしょうか。しかし最大の問題はアルミ船体であるために、在来船より建造費が高くなることです。今ここで具体的にいくらとは申し上げられませんが、在来船の建造費よりかなり高くなると見込まれます。そして現実に私共は現在、数件のプロジェクトの実施を検討しております。一つは日本国内で貨物船として使おうというものです。その他にも、本土諸島の南に小笠原諸島という群島がありますが、この群島向けに旅客ライナーとして利用しようという計画です。もちろん貨物も100トンまで運ぶつもりです。この目的、つまり小笠原諸島と本土を結ぶ航路用には3年くらいのうちにTSLを建造できると思います。それで、本来の設計コンセプトでは船速は50ノットですが小笠原諸島・本土間の航路では、スピードは40ノットにして旅客定員は800名、貨物も200トン運ぶという構想です。小笠原諸島は本土から約1,000キロの距離にあり、この距離を16時間でカバーしようというわけでテクノスーパーライナーを適用するには有望な青写真だと思います。そして将来のテクノスーパーライナー・プロジェクトとしては、これを上海/日本間、あるいは北海道/東京間にRoRo船あるいはコンテナ船として利用することも考えています。テクノスーパーライナー・プロジェクトについては以上です。こんなところでよろしいでしょうか。ありがとうございました。
(インドネシア代表)
 次はマレイシア代表団の友人にお尋ねいたします。お国の政府が造船業発展のために適切な施策を講じられたことを伺って勇気づけられます。最初の質問は、海運部門に提供される投資額の比率についてです。またその他にも、お国の政府は造船業の発展のためにも同様の便宜を図っておられますか。もしそうだとしたら、マレイシア政府は海運と造船のインフラを同じようなレベルで整備しておられると考えてよろしいですか。
 第2の質問は、政府によるこのようなすぐれた奨励策の成果として、この信用制度を利用して所有されている、あるいは購入された中古船の隻数の例えば過去5年間のデータなど大ざっぱな指標で結構ですが、お示しいただけますか。こういう質問をしますのは、政府が便宜を講じているのに、政府からこんなに魅力的なオファーが与えられているのにお国の船隊が改善されないあるいは増強されないという事態があるとすれば、それは海運業界にとって好ましくないことだと思うからです。
(マレイシア代表)
 議長、インドネシア代表団からのご質問をお受け頂いてありがとうございます。
 融資に対する利率は、借入額によって5%ないし7%の間です。具体的なデータはまだありません。まだ先月発表されたばかりなので。しかし、その8,000万マレイシア・リンギット超の枠のうち、すでに8%近くの融資が決まっています。今も申し上げたように、まだ具体的な詳細はわかりませんが利率は5%ないし7%です。
 最初の制度は2年ほど前に導入されました。その時も金額は同じでした。その枠は使い果たされ海運会社が利用しています。このお金を使って船腹がどのくらい増強されたか、具体的な数値は持ち合わせていませんが第1期では資金は専ら海運向けで、造船は対象になりませんでした。最近の9月に発表された措置で、漸く造船所も対象になったのです。第1期の枠は実際にはあるベンチャー企業というよりベンチャー・キャピタル企業に融資されました。この会社は中古船を買い入れ、また日本と中国に新造船も発注しています。ターゲット市場はケミカル・タンカーと撒積船です。具体的なトン数はわかりません。ありがとうございました。
(インドネシア代表)
 最後の質問はベトナムの代表にお尋ねいたします。ヴィナシンと現代重工業との合弁事業によるこの設備の規模は本当に興味深いことです。しかし、いずれにしても、この修繕設備は今や400,000トンの規模だということですね。ぺーパーの最後のぺージです。第60項のヴィナシンと現代重競合の合弁企業です。能力400,000トンと書いてあります。私の質問は、この400,000トンが単一の乾ドックまたは浮ドックの能力なのか、あるいは例えば1,2年のうちに入渠した多数の船舶の合計数値なのか、ということです。お答え頂けますか。よろしくお願いします。
(議長)
 ベトナム代表の方、お願いします。
(ベトナム代表)
 インドネシアのご質問にお答えいたします。ヴィナシンと現代重工業の合弁企業はベトナムのカンモア州に立地しています。このヤードには乾ドックが2基あります。大きい方は長さ約360メートル、幅65メートルで、もう一方は長さ270メートル、幅45メートルです。大きい方のドックでは400,000 DWTまでの船舶の修繕が可能です。このヤードは1999年から稼動していて能力拡大とともに、入渠する船舶も増えています。今年も経営は順調で通常の船舶の修繕も行っています。よろしいですか。
(インドネシア代表)
 ありがとうございました。しかし、まだわからないところがあります。用地の寸法、長さと幅を教えて下さいましたが、graving dockというかdrydockの建造はすでに完了しているのでしょうか。その点をお尋ねします。
(ベトナム代表)
 はい、完了しています。すでに2年間稼動しています。今年は100隻もの船がこの乾ドックに入渠しました。
(インドネシア代表)
 ありがとうございました。
(日本代表)
 韓国とベトナムの方々にお尋ねしたいと思います。先ず韓国代表にお尋ねします。プレゼンテーションからは少し離れますが報道によれば、投資会社が設立されるということですが国会で討議されたと聞いています。この点について最近の情報はありますでしょうか。
 それからベトナム代表への質問は、ただ今のインドネシア代表からのご質問と若干、関連があります。ベトナム造船企業と韓国企業との間に協力関係があるそうですが私の知識を更新したいと思いますので何か新しい情報があればお聞かせ下さい。
 では先ず、韓国の代表の方から、お答を頂きたいと思います。
(韓国代表)
 ご質問の投資会社とは、造船所への投資を行う会社なのでしょうか、海運会杜が調達する船舶に対する投資会社なのでしょうか。
(日本代表)
 どうもそこのところがよく判らないのですが。ですから、知りたいわけです。これは造船投資の問題です。つまり、専ら造船投資のための公社を設立するということですね。この計画について具体的内容とか詳細とか、ご存知でしたらお話頂けませんか。
(韓国代表)
 私は韓国の造船業における投資については、あまり具体的に把握しておりません。ですから造船業への投資額がどのくらいか、見当がつきません。ですから私が帰国した後に連絡をしてくだされば投資についてある程度のデータなどお知らせできるかと思います。
(日本代表)
 ありがとうございます。それで結構です。お手数をかけて済みません。
 では、ベトナム代表の方に質問させていただきます。先ほどの質問にお答え頂けますか。
(ベトナム代表)
 このご質問について私はあまりはっきり承知していないのですが、しかしベトナムは合弁事業を通じて韓国との投資、協力の関係があります。わが国におけるこの造船協力について言えば1億4,000万米ドル以上を投資しました。これで答になっていますでしょうか。
(日本代表)
 申し訳ありません。二つの質問を一度にしたので混乱が生じたようです。この投資に関する質問は、韓国代表に対する質問だったのです。そしてベトナムに対しては、現代重工業のことかも知れませんが韓国の造船所と提携している造船所があると聞いたので、もし何かご存知でしたら少し詳しくお話頂けませんか。これはベトナムの会杜と韓国との間の合弁事業の話です。
(ベトナム代表)
 判りました。現代重工業とベトナムとの合弁企業、それは確かに設立されました。株式資本の70%は現代尾浦が出資しましてベトナム側の持分は30%です。建設に2年掛かって1999年に稼動態勢に入りました。これでよろしいでしょうか。
(日本代表)
 ありがとうございました。
(議長)
 会場の皆様から、その他にご質問やご意見はありませんか。
 では、インドネシア代表の方、どうぞ。
(インドネシア代表)
 日本代表団にお尋ねしたいと思います。ぺーパーの8ぺージの中小造船業対策の項に「内航海運業に係る規制緩和」という語句がありますが「内航海運業に係る規制緩和」というのは、どういう意味でしょうか。その目的というか、あるいはどういう政策なのか。これが第1の質問です。
 2番目の質問は、9ぺージのB項で「スーパーエコシップ」という語句が出てきますが、このスーパーエコシップについて少しご説明頂けませんか。この船はすでに設計、あるいは建造されているのでしょうか、そしていつから運航されるのでしょうか。これが第2問です。
 そして第3問は国際協力に関する質問です。20ぺ一ジのOSSCに関する記述でOSSCは現在2分野で研修を実施しているということですが、従来も2分野だったと思います。一つは造船所経営で、もう一つは船舶安全管理でした。そして現在は2コースあるということですが。一つは海事国際条約および船舶安全検査コース、7ヶ月のコースですね。もう一つは造船と品質保証制度コース8ヶ月のコースですね。そして24ぺージの表III-5の国名欄を見ますと、インドネシアはこのコースに参加しなかったようです。なぜ、インドネシアが参加しなかったのかお尋ねしたいと思います。恐らく日本側の問題ではなく時に役所仕事でこういうことがありますね。政府対政府の関係ですと、招待が先ず外務省からジャカルタの日本大使館に来て、そこから内閣官房に、それから産業大臣に、さらに局長にということで、それだけで長い時間がかかる上に、それから侯補者を選んだ頃には研修はもう始まっている、それで参加できなかったということもあり得ます。ですから一つご提案したいのですが、アジア太平洋造船専門家会議のように公式招待状は外務省、日本大使館から来るしかしもう一方で、日本中小型造船工業会がインドネシア造船工業会に非公式の招待状を送る、という風にすれば我々は迅速に対応するように政府をプッシュすることができます。また、どこの国のどんな人々が出席するのかといったことを我々の方でも政府と話をして、もっとすばやく対応することができます。インドネシアから1人の役人しか来ないというより2人来る方が、つまり公務員1名と民間人1名が来る方がいいですね。我々が政府を助けることができます。政府は時に忙し過ぎるというか、あまりに官僚的なことがありますが。ありがとうございました。
(日本代表)
 ご質問は3点ですね。第1点は規制緩和について。これは外航船の話です。以前には若干の制約というか規制がありました。以前は全面開放とはいえない状況でした。今では、申請を出すだけで済みます。だれでも参入できます。これが先ず第1問へのお答です。
 それから第2点ですが、スーパーエコシップについてのご質問ですね。このプロジェクトは今年始まったばかりです。実験船は2005年までに竣工します。したがって実用化は大分先の話です。
 それから第3問ですが、経済協力は私どもの管轄です。私自身は官房の人間ですが、ご質問にお答えできる立場にあると思います。この研修コースはJICAのプログラムの一環です。私共では、インドネシアを含め各国に招待状をお送りしています。今おっしゃったような原因で、そういう結果になったのかもしれません。残念ながらお国からは参加を得られませんでした。しかし今後は意思の疎通をもっと密にしてインドネシア側でこの種のプログラムにだれか派遣して参加させたいという場合には、必ずそうできるように緊密にご連絡を取りたいと思います。こんな答でよろしいでしょうか。
(インドネシア代表)
 規制緩和ということになると、国の法律も改正されるのですか。内航海運についても法律があるのでしょうから。今回、内航海運の規制緩和をされる、ということであれば内陸海運に関する法律も改正されるわけですか。日本だけの問題ではあっても、規制を緩和するためには法改正が必要なのでしょう。そうではないですか。これが私の質問です。
(日本代表)
 規制緩和というのは内航船だけのことです。つまり需給の調整が大変で、これについては厳密に規制しなければなりません。ですから規制緩和というのは内航船だけのことで、つまりどこに発注するかの問題です。この規制とは無関係に制約は前から全くないのです。どこにでも発注することが前から可能でした。しかし、これは内航船の商業運航だけの問題です。
(議長)
 他にご質問、ご意見はありませんか。
 大変充実した質疑でした。もうご質問がないようなので、質疑を終りにしたいと思います。
 最後の議事は、次回、すなわち第26回アジア太平洋造船専門家会議についてです。これについて討議したいと思います。本来の計画では、隔年に日本で開催することになっています。日本以外では、韓国、インドネシア、タイ、中国、ベトナム、マレイシアで開催されました。今年は日本で開催しましたので、次はどこか他の国で開催して頂く番です。先ず、次回をいつにするか、ご意見を伺いたいと思います。
(日本代表)
 日本代表団として申し上げますと、ただ今の議長のお話のように、この会議は1973年以来開かれておりまして、隔年に日本で開催されてきました。つまり、ある年日本が主催すれば、次の年はどこか別のアジアの国で開催して頂くということです。しかし来年(2002年)は、残念ながらこの会議を支援して頂いている日本財団等また、会議運営している日本中小型造船工業会の予算の問題があり、隔年しか開催することができません。そこで次回は2003年に開催したいと思います。ご異議がなければ、今後2年おきの開催としたいと思います。よろしくお願いいたします。
(議長)
 ただ今、日本代表から将来の計画について発言がありました。今後、毎年の開催ができないというのは大変残念なことです。従って、隔年開催ということで第26回アジア太平洋造船専門家会議は2003年ということになります。これは提案ですが。これについて何かご意見はありますでしょうか。
(インドネシア代表)
 私共は全面的に了解し、次回を2003年に開くというお考えを支持いたします。よろしくお願いします。
(議長)
 ありがとうございます。ただ今、インドネシア代表から、次回を2003年に開催するというご提案がありました。これについて何かご意見がありますでしょうか、あるいは皆様ご了解頂けますでしょうか。何かご意見がございますか。
(中国代表)
 議長のご提案に全面的に同意いたします。次回は2003年に開催いたしましょう。よろしくお願いします。
(タイ代表)
 2003年に次回の会議の手配を。そして私は、インドネシアが次の主催国になるというご提案を支持いたします。いかがでしょうか。
(インドネシア代表)
 ご支持ありがとうございます。
(議長)
 今後この会議を隔年開催とすることが決定されました。インドネシア代表団から何かご意見がありますか。
(インドネシア代表)
 タイ代表からのご提案にお答えして、私共としてはインドネシアを次回の会議の主催国として自ら申し出ることはいたしませんが、他の諸国の代表団がお決めになることだと思います。次回の主催国がどこになるか、推移を見守りたいと思います。よろしくお願いいたします。
(議長)
 インドネシア代表団のご発言にお礼を申し上げます。次回の開催をお引き受け頂けるというご提案だったと思いますが。他に何かご意見はありますでしょうか。
(日本代表)
 次回の会議の主催国をお引き受け頂いてありがとうございます。従来も何度かインドネシアに会議の主催をお願いしてきましたが、今回また主催をお引き受け頂くようインドネシアにお願いすることになりました。ありがとうございます。そこで来る2003年、次回のアジア太平洋造船専門家会議はインドネシアで開催されます。他の参加国の皆様、これにご異議はありませんか。インドネシア代表団はこの提案を快くお受け下さるそうです。ご快諾に盛大な拍手を送ろうではありませんか。
(インドネシア代表)
 次回の会議の主催国にご指名頂いて大変光栄に存じます。他の参加国の皆様にお礼を申し上げます。次回の開催場所と開催日を後日、決定させていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
(議長)
 改めて御礼を申し上げます。
 その他にご意見、その他のご発言はありませんか。日本代表団、どうぞ。
(日本代表)
 今回は第25回のアジア太平洋造船専門家会議で、きわめて重要かつ特筆すべき年であります。第1回アジア太平洋造船専門家会議以来、インドネシア代表を務めて来られましたWasono氏のご尽力に感謝の意を表したいと思います。この会議の第1回から常にご参加頂き、その間、大変なご尽力を頂きました。アジア太平洋造船専門家会議は当初、政府間の会議として発足いたしましたが、Wasono氏のご発案によりまして、これを、政府代表団だけでなく民間部門の代表も参加できる形に転換いたしました。この意味から、Wasonoさんは多数のアジア諸国における造船業の発展に多大な貢献をされたことになります。そこでWasono氏のご尽力に感謝申し上げたいと思います。さらに、今月29日、わが国土交通省の海事局長が、Wasono氏のご尽力に対する感謝のしるしとして、額をお贈りする予定になっております。
(議長)
 ありがとうございました。ただ今、日本代表団から、Wasono氏が第1回からこの会議に参加して来られたというご指摘がありましたが、そのご尽力は実に多大なものでありました。今回もご出席の栄を賜っておりますので、Wasono氏から一言、ご挨拶を頂きたいと思います。
(Wasono氏)
 議長、各国代表団の皆様、友人諸君、今回のアジア太平洋造船専門家会議は第25回でありますが、私は1973年以来、このアジア太平洋造船専門家会議に23回出席いたしました。私はもう71歳になりましたので恐らく、この会場内で最年長の人間ではないかと思います。1973年から今日といいますと30年に近い歳月になります。なぜこんなに何回も出席できたのか、私にもわかりません。時々自分でも不思議に思います。今日でさえ、またやって来て、このすばらしい会議にもう一度出席し、皆様と再会できるわけですから。この会議が最初に開かれたとき、私の考えといいますか、願望は、特に日本のご協力を得てインドネシア造船業を発展させることでありました。なぜならば日本は、アジアだけでなく全世界において造船最先進国の一つでありましたから。私が造船業界、政府および民間部門の友人たちにこの会議に出席するよう勧めているのはそのためであります。この会議に出席すれば、お互いの出会いがあり情報を交換し、造船業の発展に役立つような事業提携を成立させられるからであります。また東アジア、東南アジア、南アジア諸国の大半が海に面しているからでもあります。そしてインドネシア、フィリピン、マレイシア、日本などのように、多数の島のある国々もあります。これこそ、各国の発展にとって造船業がきわめて重要になる理由であります。我々が船を造り、そして船は貨物の輸送に利用され経済発展に不可欠なインフラを構成します。ですから私はいつもアジア太平洋造船専門家会議に出席できることが大変嬉しく、出席できない時も、その次の会議には是非出たいと思うわけであります。そして特に日本では、第1回の会議以来、各回の開会を宣言された歴代の局長を存じ上げております。佐藤氏、内田氏、謝敷氏、野口氏、神津氏、間野氏、石井氏、戸田氏、小川氏、山本氏、谷野氏、1973年以来、日本の造船を監督する局の歴代の局長さんであります。うち二人の方、佐藤氏と内田氏はすでに他界されたのではないかと思います。そして日本の運輸省とは多年にわたってお付き合いさせて頂いております。この機会に全関係者の皆様、特にこの会議を常に支えて下さった運輸省と日本中小型造船工業会、日本財団の皆様にお礼を申し上げたいと思います。インドネシアはまだ日本のような大造船国ではありませんが、造船産業は発展を続けております。約30年前、この会議が初めて開かれた頃、インドネシアは100トン、200トンといった、ごく小型の船しか建造していませんでしたが、30年経った今、40,000トンまでの船舶を建造できるようになりました。またほんの数ヵ月前には、30,000トンのコンテナ船を建造しました。現在では巡視艇、浚渫船、タンカー、その他、多様な船舶を建造できるようにもなりました。私の考えでは、これはインドネシアと日本の、そして他の東南アジア諸国との有効な協力の成果であります。ですから、ベトナム、フィリピン、タイ、マレイシアなど他の諸国も、それぞれ自国のために造船業を発展させて頂きたいと思います。それぞれの経済発展のためにも、また国民全体の生活水準の向上にも寄与します。そしてもう一度、皆様にお礼を申し上げアジア太平洋地域の造船業が、それぞれの国のさらなる発展に役立つことを祈念いたします。
(議長)
 Wasonoさん、ありがとうございました。
 これで今日の予定された議題はすべて終了いたしましたが、他に何かご意見やご発言はありませんか。それでは第25回アジア太平洋造船専門家会議を閉会いたします。それぞれのお国から遠路はるばる日本までお越し頂いた各国代表団にお礼を申し上げるとともに、早朝からこの会議に参加され、長時間、忍耐強くご協力を頂き、また実り多い討議となったことを感謝申し上げます。今日の会議の議事録を作成し、スタディーツアーの間に、フイードバックの材料として皆様にお配りしたいと願っております。このように順調に会議を終了することができまして、もう一度ご協力にお礼を申し上げます。このアジア太平洋造船専門家会議がきわめて重要な会議でありますのは、それぞれの意見を率直に交換できるからであります。この会議の成果はただちに目に見えるものではありませんが、この機会を利用してお互いに理解を深め意見を交換することができるので、後日収穫を刈り取ることができます。これは徐々に積み上げある形の努力でありますが、この機会を利用しお互いに対面して直接意見を交換できるということは、大変よいことであります。そして最後になりましたが、各国の造船業が今後ともさらに発展し反映することを祈念いたします。








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