議事概要
第25回アジア太平洋造船専門家会議は2001年10月22日に、日本(ホテル海洋)において開催された。会議には下記の各国および1機関の代表団が参加した。
参加国 |
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主席代表 |
オーストラリア |
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Mr.Rod Shaw |
中国 |
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Ms.Lijuan Nie |
インドネシア |
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Mr.Anastasius Riyanto |
日本 |
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矢部哲氏 |
韓国 |
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Mr.SeokChung |
マレイシア |
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Mr.Kadir Othman Bin Abdul |
フィリピン |
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Mr.ManuelSandoval |
タイ |
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Mrs.Krishnee Varanusupakul |
ベトナム |
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Mr.Loc Le |
ESCAP |
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Mr.Satoshi Masuda |
開会の辞
前回の開催国であるマレイシアのオスマン・アヴドゥエル・カデイル氏が仮議長となり開会の辞を述べた。同氏は運輸省海上技術安全局主席船舶検査官矢部哲氏を紹介し、矢部氏は全参加者に対して歓迎の意を表明した。
今回の会議開催国を代表して、アジア太平洋造船専門家会議出席のため遠路はるばる来日されました各国造船専門家の皆様に対して、心より歓迎申し上げます。
この会議は、ご承知のとおりアジア太平洋地域の造船専門家が一堂に会し、率直な意見交換を行うことにより造船分野における地域協力を促進すること及び各国の造船業及び舶用工業の発展に寄与することを目的とした会議であります。1973年に初めて開催されて以来、今回で25回目を数えます。
今年は海外から50名の参加者の方々をお迎えしており、我が国関係者を含めると80名以上もの規模となりました。これだけの多くの方々に御参加いただいたことは、皆様がアジア太平洋地域における造船業の重要性及び地域協力の必要性を認識されているということの表れであり、主催国の責任者として喜びに堪えません。
造船業は、海上での貨物の大量輸送手段である船舶を安定的に供給することや高度化・多様化する輸送ニーズ及び地球環境保護の要請に的確に応えられる船舶を開発し供給することにより世界の経済活動及び人々の生活を支えるという大変重要な役割を果たしています。
しかしながら、世界市場を活動の場とする造船業が今後とも発展してゆくためには世界の関係者が造船業の将来展望とその在り方について共通の認識をもって互いに協力していく必要があるのではないかと考えております。
本会議は、経済成長著しいアジア太平洋地域における唯一の造船専門家会議であります。本日及び明日に開催されます会議及びセミナーにおいて皆様の率直な意見の交換や貴重な情報の交換が活発に行われますことを期待しています。
また、会議及びセミナーの後には福岡、下関へのスタディツアーも予定されております。我が国はいま山々が紅葉で色づき始め一年のうちで最も美しく日本らしい季節を迎えております。わずかな滞在期間ですが、この機会に日本の秋、日本の文化も充分堪能して頂きたいと思います。
この会議が、参加された皆様すべてにとって有意義なものとなるよう心から祈念いたしまして歓迎の御挨拶とさせて頂きます。
オーストラリア
議長、本日の第25回アジア太平洋造船専門家会議にオーストラリアを代表して出席できまして大変嬉しく存じております。これは大変重要な会議であります。オーストラリアは全般的に見ても世界の造船業における主要なプレイヤーではありませんが、この会議に参加できることは大変喜ばしいことであります。
主要なプレイヤーではないとはいえ近年オーストラリア造船業は、特に高速フェリー、軽量艇、機動ヨット、双胴船などの分野で自らニッチ市場を創出することができました。
すでに提出しておりますカントリーぺーパーに沿ってお話を進めさせて頂きます。皆様のお手元のフォルダーに入っていると思いますので、どうぞご参照下さい。
ぺーパーにありますようにオーストラリアの造船業は革新的かつ輸出指向でありますが、これは国内市場が狭いことを考えれば驚くに足りません。他の多数の業界がやはり輸出指向であります。
オーストラリア造船業の成功の要因は、革新的な設計と生産工程にあります。さらに建造船の非常に高い品質と価格競争力にも誇りを持っております。
序論にもありますようにオーストラリアの造船企業は、高速フェリー特に双胴船、また特に長さ約30メートル旅客定員250名から長さ約90メートル旅客定員900名で240台の車両を積載できる船型までの範囲で、すぐれた専門能力を有しています。オーストラリアの商船建造部門は、ニッチ市場で国際競争力を確保しています。ぺーパーでも触れましたように豪華ヨットや一部の漁船などがこれに該当します。
わが国は高速フェリーの建造と輸出では世界の最先端にあります。これらは軽量、高速の船舶であります。既存世代の鋼船やホバークラフトと比較して、あまり高出力を必要としない運航経済性の高い船舶です。
前にも申しましたように、わが国の造船業は輸出指向の高い産業であります。ご覧のようにオーストラリアの高速フェリー建造部門は生産額の90%を輸出しております。
オーストラリアは世界市場に30%前後のシェアを占めております。船舶の販売隻数からして、これは並々ならぬ実績であると思います。
この地域の2大造船企業は西オーストラリア州ヘンダーソンに立地するオーストラリア企業のAustralとタスマニア島のホバート近郊にあるIncatです。
第1表をご覧頂くと、若干の主要な統計数値が載っております。あまり新しい統計ではありませんが、わが業界の規模をある程度把握して頂けると思います。例えば1998-99年の売上高は15億3,300万ドル、約15億3,000万ドルといったところです。
従業員数は約7,000名で、輸出額は約4億8,000万ドル、輸入額は2億2,400万ドル、いずれもオーストラリア・ドルです。オーストラリアは艦艇の建造でもかなりの能力を保有していると思います。巡視艇からフリゲート艦、やや大型の潜水艦に至るまで各種の艦艇を建造しております。そして事実、国防軍向けの工事はオーストラリアの建造量に大きな比重を占めています。
我々はオーストラリアの世界水準の設備と技術を誇りとしております。そして艦艇設計、プロジェクト管理、システム集積化を含む重機械・電子情報技術などの分野において競争力の高いオーストラリアの海事産業製品を開発することで、一層の付加価値向上を追求してまいります。
造船業に対する政府の政策も国内に競争的環境を創出することを通じて業界の成長と促進を図っています。これはオーストラリアの諸産業のグローバルな競争力確保を追求する政府の全般的政策ともぴったり合致するものであります。
業界の意見聴取等に基づいた1998年実施の第三者機関による見直しの結果を見て政府は建造助成率を3%にまで大幅に引き下げた上で適用期限の延長を決定しました。この措置は1999年7月31日から2000年12月31日まで適用され、その後2003年までの3年間で助成制度は段階的に解消されることになっています。この措置は、EUが3年間の段階的解消期間を伴って2000年末までに造船助成を段階的に廃止する方針を決定したことを反映しているものだと思います。
この見直しにより、造船業革新計画(SIS)を導入して造船業における技術革新を促進することも決定されました。これは5ヵ年計画で、1999年7月から実施されたものです。その目的は業界における研究開発と設計革新を一層重点的に奨励することにありまして、そのため、対象となる研究開発案件には費用の50%を上限とする助成が行われます。これもまた、全業種において研究開発を一層奨励し研究開発の振興において官民の協力を一層促進するという政府の全般的方針とぴったり合致するものであります。
船舶の設計・建造における技術革新は、オーストラリア造船業が現在国際市場において享受している競争上の優位を維持するための必須要件であります。これを怠ればもちろん今日の参加国との間でも、きびしい競合にさらされることになります。
オーストラリアの造船労働力は熟練度が高い水準に達していますが、その一方で人件費は、世界水準よりかなり低いものです。中国や韓国より高いもののドイツ、日本、米国の造船所に比べれば低い水準にあります。
資本面でも、また造船事業者が客先に魅力的な支払条件を提示できるという点でも金融面での競争力は輸出増進にとって決定的な要素だと思います。我々が利用している主要な仕組みの一つはオーストラリア輸出金融保険委員会(EFIC)であります。これについては大勢の方がご存知だと思いますし、また造船以外の様々な分野でも、その役割についてお聞きになっていると思います。造船については、OECD船舶輸出信用了解に合致する条件で直接貸付制度により支援を与えています。EFICは建造費の80%を上限に貸付を行います。EFICはまた、造船業界の要請に応えるため、さらに補足的な金融措置も検討しております。
今後10年間に国際商船市場が拡大を続けるという見通しに立って、オーストラリア造船業はその強みと能力を存分に発揮できる船舶を供給する機会を今後とも追求して参ります。前にも申しましたように、そういう強みや能力は高速フェリー、巡視艇、漁船、その他の小型船舶等の分野にありますが、これは短期的にも長期的にも言えることであります。
この地域全般において、我々はオーストラリアで建造されている艦艇の種目に対して高い関心を抱いております。また、高速輸送市場の拡大とともにオーストラリア造船企業は世界の高速フェリー市場におけるシェアを高めて行きます。
高速貨物船の未来を決定する主要因の一つは、在来型海運と航空貨物輸送との間のニッチ市場を開拓することであります。高付加価値品目のメーカーのニーズあるいは新鮮な農産物を求める消費者のニーズに対応する高速貨物輸送において高速船が果たすべき役割が見出されるはずであります。
この種の船舶の船型と荷役設備に変更を加えたり重量車両運搬用など、特化した貨物船を開発したり安全性の高い航路では運航手順を簡素化したり、船速を高めたりするなど多様な改善の余地が考えられます。オーストラリアの設計技術者は、この種の技術開発において先頭を走っております。
オーストラリア造船業の高い競争力からして、その建造船も輸出市場で大きな可能性を秘めております。現在では、ニッチ市場、特に先ほどから何度も言っておりますように軽量船市場に大きなシェアを確立しています。オーストラリア造船業はまた、運航者の要請に適った優秀な設計、建造船舶の質と競争力により高く評価されています。旅客・車両、さらには一般貨物を輸送する高速船の分野で、業界の前途は最も明るいものと見込んでおります。
今後数年間に見込まれる貨物輸送需要の性格は、高速船技術の活用と一層の発展を要求するものでありますが、この面ではオーストラリアの存在がさらに重要性を高めることになります。輸出面では、豪華機動ヨットの他に巡視艇、哨戒艇の需要も伸びが見込まれます。
最後のまとめとして、すでに概略を述べましたが業界が対応すべき主要な課題、特にニッチ市場における競争力を維持するために重要な課題を復習してみたいと思います。すなわち、建造船舶の設計と質のさらなる向上、競争がさらに厳しさを増す国際環境における海上輸送需要の流れに乗るため建造船種の一層の多様化、船艇建造および修繕船部門について、一層効果的な対政府関係の展開、資機材供給元との関係強化及びその関係から生じる価値の増進、そして最後に競争力強化のため研究機関からの技術移転の促進並びに公的研究開発機関の民間利用度低迷の克服などが重点課題であります。
終りに、今回もオーストラリアをこの会議にお招き頂き、本日の会議に参加する機会を賜ったことについて議長に改めてお礼を申し上げます。業界のお仲間であります皆様と、これからの時間、いろいろなお話し合いを持てるのを楽しみにしております。
中国
それでは中国代表として、わが国の状況についてプレゼンテーションをさせて頂きます。すでにお気づきかもしれませんが、今回のカントリーぺーパーは前回のように中国船舶工業公司ではなく1998年に設置された国防科学技術工業委員会、略称COSTINDから提出されたものであります。COSTINDは全国の造船産業の統制管理を担当しております。
民間生産開発部の造船課が造船業管理の日常的業務を担当しております。私の右側のNie氏(Madame)が造船課長で、Chen氏(Mr.)が造船課長補佐であります。
わが国のプレゼンテーションは4部に分かれております。先ず第1部では、業界の全般的状況についてお話したいと思います。第2部では中国における造船所の分布と主要造船所をご紹介いたします。そして第3部では、業界の規制管理システムについてご説明いたします。最後の第4部では、中国造船業における最近の展開についてお話いたします。
第1部:中国造船産業
(産業規模)
わが国の国家統計局がまとめた統計によりますと国内の新造船・修繕船工場の総数は386に達しています(ただし年間収入500万人民元未満の小規模工場を除いた数値です)。造船所は臨海地区と河川沿いに立地し、従業員総数は228,038名で主要造船所は上海、大連、広州の3大造船中心地に集中しています。
新造船・修繕船工場以外に72の舶用機器工場があります(やはり年間収入500万人民元未満の小規模工場を除いた数値です)。その従業員総数は45,869名に上ります。
(造船工事量)
第2表からお判り頂けると思いますが、近年の中国では鋼船の建造量にさしたる伸びは見られません。昨年の建造量は340万トンでした。ここで、ご説明の必要があるかと思いますが中国では通常、船舶建造量を主として貨物船の重量トン数、客船、タグ、漁船等の排水量を合計した複合値で示しています。
ロイズ船級協会の統計によれば、昨年の中国国内の竣工量は1,480百万GTで、全世界の竣工量に約4.7%のシェアを占めました。
第2部:中国における造船所の分布と主要造船所
中国の造船所は上海、江蘇、遼寧、廣東、浙江、山東、天津等、主として臨海地域の省や都市に立地しています。また廣西、安徽、湖北、四川、江西の各州にも中小造船所があります。
以下の各造船所は、売上高、竣工量、手持工事量、輸出価額から判断して中国の主力造船所といえるものであります。すなわち江南造船集団公司、滬東中華集団公司、廣州廣船国際股?限公司、上海船廠(以上いずれも中国船舶工業集団公司(CSSC)所属)、大連造船廠、大連造船新廠、渤海造船廠(以上は中国船舶重工業集団公司(CSIC)所属)の各造船所であります。CSSCおよびCSIC傘下以外にも揚子江船廠、江都粤海造船廠、新世紀造船廠、江蘇省の江揚船廠、南通中遠川崎船舶工程公司、烟台Raffles船廠、福建省の厦門、馬尾両造船廠、長江航運集団金陵船廠等も大規模な建造能力を保有しています。
現在、中国国内には29の主要造船所があります。
第3部:中国造船業の規制管理システム
中華人民共和国国務院の決定により全国の造船業の規制管理は国防科学技術工業委員会(略称COSTIND)が所轄することになりました。COSTINDの定める任務分担に従って、民需生産開発部が造船業の規制管理の実施に当っています。民需生産開発部内に造船課があって日常的業務は、この課の担当です。国内造船産業の管理には様々な側面がありますが、主なものとして開発計画、政策、規則、基準の策定、産業活動の監督、調整などの側面があります。
旧中国造船工業公司は二つの集団に分割されました。一つは新CSSC(中国船舶工業集団公司)、もう一つはCSIC(中国船舶重工業集団公司)で、いずれも1999年7月1日に成立しました。両企業集団は大規模な国有企業で、また国家から投資の権限を認められた企業体でもあります。すなわち従属企業や研究・設計機関に投資する権限を与えられています。COSTINDと両大企業集団との間には、行政上の従属関係はありません。COSTINDによる規制管理は両集団の本社を通じて実施されます。
CSSCとCSICの他にも、中国長江航運集団総公司、中商集団口岸船舶工業公司、中国水産(集団)総公司、中国遠洋運輸(集団)総公司(COSCO)等の大集団も新造船・修繕船事業を傘下に収めています。これらの企業に対しても、それぞれの集団を通じてCOSTINDの規制管理が及んでいます。
さらに、いずれのグループにも属さない造船所、修繕船工場、舶用機器工場もあります。うち若干は純然たる外国企業または中国と外資との合弁企業です。この種の企業に対するCOSTINDの規制管理は省政府の担当部局に依存しています。これらの担当部局は、わが国の規制管理システムにおける第2水準の行政部局でありましてCOSTINDから行政指導を受け、所管の地域における造船業の状況を報告し造船業に関する政策、計画、法令の調整、施行を担当しております。
第4部:中国造船業における最近の展開
(1) 1970年代末期まで、中国造船業は専ら国内市場を対象とし従って、技術的に先進造船国よりはるかに後れていました。79年以降、政府の改革開放政策に従って、中国の造船所は国際市場に進出しました。当初、中国の造船所は主としてハンディサイズとパナマックス型の撤積船など在来型の船舶の輸出を手掛けていましたが、80年代末期からは、さらに複雑な、あるいは大型の船舶を建造するようになっています。
1999年以降、中国の造船所はいくつかの重要な案件の受注に成功しました。ご承知のように、1999年8月、300,000DWT型VLCC5隻の建造契約をイラン国営タンカー会社との間に調印しました。この契約によりCISCの大連新廠が中国初のVLCCを建造することになりました。第1船は今月末にドックを出て艤装に掛かります。その後、南通造船廠も日本の川崎重工業の下請けとして、VLCC3隻の建造を受注しました。この南通造船廠は、日本の川崎重工業と提携して、COSCO(中国遠洋運輸(集団)公司)から超パナマックス型5,250TEU積みのコンテナ船2隻を受注しました。滬東中華造船廠と大連新廠もそれぞれCOSCOから超パナマックス型コンテナ船4隻を受注しています。CSSCの広州造船廠はスウェーデン船主から乗客定員1,600名、車輌走行路延長1,600mのRO-paxフェリー(複数)を受注しました。この種の船舶が中国に発注されたのは初めてのことです。私の承知しているところでは、第1船が現在、艤装工事中で来年引渡しの予定です。
(2) 現在では28の造船所で、外国船主向けに5,000DWT超の航洋船を建造しております。うち7造船所はCSSC所属、4造船所はCCIC所属、その他は地方造船所と外国との合弁による造船所です。
(3) 中国国務院は上海の浦東地区に外高橋造船基地を建造する計画を1999年9月に正式に承認しました。新造船所は2基の建造ドックを備え、第1期工事完了時点で1,080,000DWT、第2期工事が完了すれば1,800,000 DWTの建造能力を保有することになります。現在、新造船所はまだ建設中ですが、完成の暁には中国で最大の造船所となります。
(4) 1999年10月1日付けで、新造・修繕船施設の重複建設または拡張を禁止する規則が発効したことを指摘しなければなりません。従って、今後、中国では造船所の新設は必ずしも自由でなくなります。
一部の外国報道機関は中国が世界の大造船国の仲間入りすると観測しています。しかし我々の見るところ、中国はまだ主要造船国とはいえません。造船能力と建造量において、日韓に遠く及びません。中国で建造される船種は主として在来型で、ハイテク船舶はまだ少数に過ぎません。舶用機器の国内自給率も比較的低い水準にあります。生産性の面では、日韓欧の造船所の後塵を拝しています。中国造船所にとって最大の課題は、生産性向上、経営の強化、品質管理の改善により国際競争に対処するのにリベートを払うなどの手段から脱却することにあります。
現時点でアジア太平洋地域における造船業の発展の状況を見ますと地域の多数の国が近年、造船業において大きな飛躍を遂げていることを知って大変喜ばしく思います。新興造船国の台頭と発展によりアジア太平洋地域は造船業の発展において新たな時代に入ることになるでありましょう。この目標に向かって、造船業における地域協力を一層密にして21世紀におけるアジア太平洋造船業の一層の繁栄を目指そうではありませんか。
インドネシア
インドネシアにおける2001年現在での造船および諸産業の発展状況についてプレゼンテーションを申し上げる番が参りました。
頂いた時間は15分しかありませんので各国代表団の皆様の前でカントリーぺーパー全文を読み上げることはいたしません。その概要だけをお話いたしたいと思います。
最初に、インドネシアにおける造船業発展の歴史を簡単に振り返ります。次にインドネシア造船業の現況、特に1997年の危機以後の状況さらにわが国造船業の設備と能力、そして現在進行中の新規プロジェクトならびに造船業発展の戦略についてお話いたします。そしてプレゼンテーションの詳細な内容については、Joeswanto Karijodimedjo氏に委ねたいと思います。Joeswanto氏は、IPERINDO(インドネシア造船工業会)の会長を務めております。
皆様の前で、インドネシア代表としてプレゼンテーションをさせて頂く機会を賜りまして、誠にありがとうございます。
プレゼンテーションの概略といたしまして、経済危機に見舞われたインドネシア経済の状況、わが国だけではありませんが特にインドネシア経済の状況の改善についてお話申し上げます。第1ぺージからおわかり頂けると思いますが、経済の落ち込みはきわめて深刻で、2002年でも推計値はわずか5%であります。一方、インフレはきわめて高率でインドネシアの海運及び造船業に反映することになりましょう。
わが国は天然資源に富み、また多数の島からなり国内生産にも富み、輸出貨物も増加しております。しかし、海運及び造船の分野において真の発展を期するための確固たる基盤を確立するまでには至っておりません。そのため、インドネシア大使館の館員が皆様にインドネシアのぺーパーを読んで頂くようにお願いしたわけであります。しかし本当に皆様のご注目をお願いしたい本題としてインドネシアに関する少数の項目について、これからお話いたしたいと存じます。
その少数の項目とは、主として以下のようなことであります。
日本政府の緊密なご協力を得て特にJICAのご支援を頂いてインドネシアは現在、日本政府にマスター・プランの実施をお願いしているところであります。このマスター・プランにより、わが国では自国の海運・造船産業の状況をいかにして改善し、日本政府のご協力を得て海運・造船産業を確立するには今後どんな措置を講じればよいのか、日本からの援助を真剣に求めております。このマスター・プランは間もなく実施に移されるものと期待しておりますが、わが国の海運・造船産業をいかにして発展させるか現実の計画を発足させる前に日本、インドネシア両国政府による共同調査に約2年かかると思います。これが第1点です。
第2に、貨物量は膨大なものがありますが、設備投資が不足しております。年間3億5000万ないし4億立方メートルありますが、エネルギー資源輸送船隊の能力はきわめて貧弱でインドネシア船では国内貨物の54%しか積み取ることができず残りの46%の輪送は外国籍船に依存しています。これは国内航路の話です。輸出入貨物では、インドネシア籍船はわずか3%しか積み取ることができません。残りの97%は依然として外国籍船が運んでいます。マスター・プランがこの貨物、自国の膨大な貨物量を対象にすることになれば疑いなく今後30年間に毎年70ないし75隻の船舶が必要になります。皆様にもご想像がつくと思いますがインドネシアには海運・造船産業を発展させる、きわめて大きな可能性が潜在しているのであります。国内貨物の70%、輸出入貨物の20%を自国船が積み取ってもまだ、外国籍船は国内貨物の残りの30%、輸出入貨物の80%を運ぶ余地があるわけです。従って、わが国には巨大な市場が存在し日本政府のご協力を得て今後3〜4年でマスター・プランを実施したいと真剣に願っております。もちろん最初の2年間は共同調査から始めることになりますが。
第3に、インドネシアの銀行システムは財務基盤が極めて脆弱であるという点にご留意頂きたいと思います。どの銀行も造船にはあまり関心がなく、すでにインドネシアでは政府と摩擦状況が生じ政府の船舶建造計画を行き詰まらせてしまいました。国が本当に必要としている船種の建造が止まってしまったのです。例えば現在15隻の船舶が手持工事としてありますが政府はまだこれに手を付けていません。すでに8隻の船舶を輸入し、7隻についてドイツから信用供与を受けていますが、合計15隻の船舶の建造が侯補に上っている9造船所で保留されたままです。これは、まだインドネシア政府が国内の資金手当てができないでいるものですが、それも無関心が原因です。資金的にわが造船業は今なお、あまりにも脆弱です。一方、補助的な船舶、コンテナ船等の現実は、国内輸送とともにインドネシアとシンガポール、インドネシアとマレーシアとの間の輸送についてマーケティングが必要です。インドネシア国内の主要港間についてさえ同様です。そういう種類の船が必要とされていますが、政府は船舶の開発を怠っています。それはすべて政府のプロジェクトなのですが、やはり日本のような国からの関心その資金面を支える財政援助が必要です。
第4に、これはご出席の皆様にとって、はるかに重要性が低い問題だとは思いますが。日本はすでにインドネシア現地法人としてBPK CHKインドネシアを設立しました。従って、場合によっては我々の方は現在インドネシア全土に拡大しているのでインドネシアと日本との間で定期的に就航している日本船にとって、インドネシアで入渠工事を受ける実によい機会だと思います。NK船級は全国に普及しているので、何も心配されることも疑われることもありません。例えばスラバヤ、ジャカルタ等の主要港では十分な設備があります。ですから、わが方としては、日本船がインドネシア向けに定期的に就航してもらう機会を必要としています。インドネシアでの航路が完成すれば、インドネシアで入渠工事をしない理由などありません。日本の船級は普及していますし交換部品、その他の機器についても船に部品等を積み込んでおけば全く問題がありません。例えばピンにしても、日本から持ってくれば、インドネシアの輸入業者が輸入した場合の高価格を避けることができます。ですからこの種の問題は、交換部品や陰極防食装置、その他の機器を日本から積んでくることで避けることができます。従って、インドネシアでは工事の完了が早くしかも価格にしても他の近隣諸国と十分太刀打ちできるはずです。
以上をまとめますと、すでに皆様に関心を持って頂きたいことはご説明いたしましたが造船、海運とも例えば日本、韓国、中国、シンガポールのような先進諸国に少なくとも大きく後れを取らないためにはインドネシアをこの地域における海運国の一つとして発展させなければなりません。